地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

8月号-No.028
1997.08.10(毎月10日更新)

●ステージラボ松山セッションプログラム決定

●トピックス 〜静岡県舞台芸術公園オープン〜

●制作基礎知識シリーズ <映像編(3)>


●ステージラボ松山セッションプログラム決定

「ホールマネージャーコース」を新設、公立ホールの役割を徹底討論
 
 8月5日から8日まで、松山市総合コミュニティセンターでステージラボ松山セッションが開催されます。参加者は、ホールマネージャーコース20人、ホール運営入門コース20人、自主事業/演劇ダンスコース15人、自主事業/音楽コース15人の計70人。今回のラボの模様は、10月号で詳しくレポートしますが、今号では各コースの特色とねらいについて、コーディネーターのコメントを交えながら紹介します。


●各コースの特色
 
 今回のラボの最大の特色は、公立ホールの管理職を対象とした「ホールマネージャーコース」を設定したことです。財団として初めての試みでしたが、定員を超える申し込みをいただき、あらためてコースの重要性を感じることになりました。コーディネーターは横須賀徹氏(元水戸芸術館事務局長)、津村卓(地域創造チーフディレクター)の2人。
 
 「このコースでは参加者に徹底的に討論していただきます。地域において公立ホールの役割を考えた場合、環境と条件によって多くの考え方、課題があるはずです。運営する立場で芸術・創造・資金・地域を踏まえ、自分の地域で何ができるか?を参加者全員で考えます。そのほかにも現場のスタッフが何をしたいかということを管理職としてちゃんと理解し、どう対応するかなど、管理職ならではの悩みと課題について話し合います」と津村コーディネーター。
 
 また、自主事業/音楽コースのプログラムもユニークです。参加者が架空の町で音楽祭を開催する実行委員会のメンバーという想定で企画づくりを行います。「短期間にさまざまな要素が交錯し、本番へと集中していくエネルギーをもった音楽祭のなかには、コンセプト、企画、アーティスト、制作、ファンド、広報宣伝、市民参加、ボランティア、アウトリーチなど事業を考えていくうえで必要なノウハウが集中的に要求されています」と児玉真コーディネーター(カザルスホールチーフプロデューサー)。PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の竹津宜男氏、ゆふいん音楽祭の加藤昌邦氏などの話を参考に、参加者がアイデアを出し合い企画をつくり、最終日には音楽祭新聞をつくるグループワーキングを行う予定です。
 
 自主事業/演劇ダンスコースは、15人中8人が20代という若いコースになりました。「あるジャンルの企画を展開する場合、まずその表現ときちんと出合う必要があります。今回は現代演劇・ダンスとの出合いのきっかけづくりを第一の課題としました」という志賀玲子コーディネーター(アイホールダンスプロデューサー)。このコースは山田せつ子さん(舞踊家、振付家)のダンス・ワークショップを体験した後、それを生かした事業企画実習を行います。
 
 ホール運営入門コースのコーディネーターは、関水秀樹氏(藤沢市芸術文化振興財団プロデューサー)。「『公共ホール』は必ず特定の地域に存在していて、市民との関係をぬきにしては成り立たない」と関水さん。このコースでは、公共ホールがアート(舞台芸術)に主体的に関わろうとしたとき、市民とアーティストとの関係をどう新しくかたちづくるか、さらにこの分野において行政の新しい手法をどうつくり出していくかなど、公共ホールの基本的な仕事について考えます。講師には厚木市文化会館の井上允館長や、福野文化創造センターの米田聡さんなどのベテランホール担当者を迎えます。


●共通ゼミ、レクチャー公演
 
 共通ゼミでは、公開模擬プレゼンを行います。ゼミ1では、上司に企画書を説明する際の上手な説明のポイント、上司としての対応について考えます。ゼミ2では、実際にあるホール担当者が講師の新聞記者・放送記者を相手にプレス発表を行い、各記者に記事にするかどうかの判断と率直な批評をしていただきます。
 
また、今回の開催地がダンスの盛んな松山であることから、ダンスのレクチャー付き公演を行います。演目は、山田せつ子さんのソロ公演『速度ノ花』。レクチャー講師は桜井圭介氏(ミュージシャン、ダンス批評)ほかを予定しています。


●ステージラボ松山セッション
[日程]8月5日〜8日
[会場]松山市総合コミュニティセンター
[主催]財団法人地域創造
[共催]松山市、財団法人松山市施設管理公社
 
●ステージラボに関する問い合わせ
財団法人地域創造芸術環境部
研修・交流担当 杉田敏、西村直己
Tel. 03-5573-4066 Fax. 03-5573-4060

●ステージラボ松山セッション全体プログラム(予定)
 
8月5日(火)
8月6日(水)
8月7日(木)
8月8日(金)

トピックス

●緑の日本平に静岡県舞台芸術公園オープン
 
 静岡駅から車で約30分ほど行くと、市街地の近くにこれほど清々しい緑があるのかと驚くほどの丘陵地帯、日本平があります。その一角に静岡県が約50億円をかけて整備した静岡県舞台芸術公園が完成し、8月21日から柿落とし公演が行われます。
 
 この舞台芸術公園は、約21ヘクタールの敷地内に磯崎新設計による小劇場、野外劇場、稽古場、宿舎などが茶畑を縫うようにして点在し、稽古場の大きな窓や宿舎からは豊かな緑と駿河湾が見渡せるという別天地。ここを運営するのが、演劇、舞踊、オペラなどの舞台芸術の振興を目的として静岡県が100パーセント出資して設立した財団法人静岡県舞台芸術センター、略称SPACです。
 
 SPACの特徴は、専門家の観点から一貫して事業を指揮する芸術総監督を置いたこと、創作拠点を完備していること(舞台芸術公園内の施設と1998年に静岡駅裏に開場する国際コンベンションセンター・グランシップ内に設ける400人収容の舞台芸術専用劇場)、芸術活動を行う芸術局を設けたことが挙げられます。舞台芸術を創造するための専属メンバーである芸術局員(下記組織図参照)は3年契約の年棒制(最低240万円)で、応募者総数400名余りの中から選ばれた約50名が採用されました。
 
 ちなみに専属俳優の顔ぶれは、高校を卒業したばかりの新人から仕事の傍ら40年来セミプロ的に演劇に関わってきた人など、18歳から63歳までの16名(内7名が静岡県出身)。また舞踊部門はジャン=クロード・ガロッタ(現フランス・グルノーブル国立舞踊センター芸術監督)が3年間指導にあたることもあり、子どもの頃からクラシックバレエなどのレッスンを積んできた新進ダンサー8名が揃いました。
 
 こうした芸術局員を束ねる芸術総監督が、自ら主宰する劇団SCOTの拠点として21年前から富山県利賀村で滞在創作型芸術村運営に取り組んできた演出家の鈴木忠志氏です。鈴木氏は82年に利賀村で第1回世界演劇祭を開催して以来、海外の芸術家を招聘するフェスティバルを数多く手がけ、アーティスト同士の交流によって創作の可能性を広げる試みを続けてきました。
 
 今回もガロッタを招いたのをはじめとして、99年には第2回シアター・オリンピックス(*)の静岡受け入れを決定するなど、舞台芸術公園とグランシップを拠点に静岡の地で国際的な舞台芸術交流事業を展開していく予定です。
 
 SPACの事業の柱としては、国際的な舞台芸術の招聘、専属俳優・専属ダンサーによる公演活動、人材育成事業(市民参加による体験創作劇場の開催)の3つがあります。本年度事業としては、8月21日からのSPAC創立記念公演を皮切りに、8月から9月の毎週末(金・土・日)に稽古を行い、ロッシーニのオペラ『シンデレラ』を下敷きにした音楽劇を創作する体験創作劇場(10月発表予定)、専属ダンサーによる新作公演(振付・ガロッタ、8月の記念公演と12月)、専属俳優による新作公演(演出・鈴木忠志、年明け)などを予定しています。
 
 また、シアター・オリンピックスに向けた準備にも取りかかり、2年後の99年にオペラ版として発表する鈴木忠志演出『リア王』をまずは演劇版として柿落としのプログラムで披露する予定です。
 
* シアター・オリンピックス
鈴木忠志氏を含む国際的な演劇人8名によって提唱された芸術祭。数年ごとに各委員が持ち回りで芸術監督を務め、芸術祭を開催する。第1回を95年にギリシアで開催。


●静岡県舞台芸術センター組織図

 
●静岡県舞台芸術公園
[所在地]静岡市平沢100-1
[敷地面積]約21ヘクタール
[施設概要]野外劇場「有度(うど)」(収容人員550人、ベンチシート)、小劇場「楕円堂」(収容人員150人、可動式)、稽古場(床面積約1200平方メートル)、宿舎棟、食堂棟、事務棟
[設置者]静岡県
[運営者]財団法人静岡県舞台芸術センター
[設計者]磯崎新アトリエ
 
●財団法人静岡県舞台芸術センター
[設立]平成7年7月21日
[理事長]石川嘉延
[芸術総監督]鈴木忠志
[基金]98年までに20億円を予定
 
●SPAC創立記念公演日程
グループ・エミール・デュボア公演『夢、真夏の道の』(8/21〜23)、鈴木忠志演出『リア王』(8/22〜9/7)、『アンティゴネ』(8/29、30)、専属ダンサー公演『かわったDr.ラビュス』(9/4〜6)、鈴木忠志演出『ディオニュソス』(9/12〜14)
[問い合わせ]Tel.054-208-4000

制作基礎知識シリーズ <映像編(3)>

制作基礎知識シリーズVol.1

映画上映会を実施する(3)
映画業界の仕組み
 
今回は映画上映会を実施するに際して知っておきたい映画業界の概況と仕組みを簡単にご紹介します。
講師 山名尚志(マルチメディア・プロデューサー)


●映画市場の概況
 
  映画という文化ジャンルの第一の特徴は、国際化が極めて進んでいることです。1995年の状況を見ると、日本国内での売上の63パーセント(配収ベース *1)、上映本数の52.6パーセントが外国映画(洋画)となっています。
 
  第二の特徴は、全国で公開されるメジャーな映画とそれ以外の映画の差が極めて大きいということです。毎年公開される600本程度の映画のうち、松竹・東宝・東映の大手3社が全国に配給する邦画は60〜70本ほど、ハリウッド映画といわれる大手のアメリカ映画は100本ほどにすぎませんが、これだけで売上は全市場の8〜9割に達します。大手3社が関わっていない日本映画、アメリカ以外の国から輸入された外国映画は、本数的には全体の7割を占めるものの、観客数としては少なく、見に行く人はまだ限られています。
 
  上記は民間の映画館で公開されている映画に限った状況ですが、実際にはこれに加え、市民団体や自治体による上映会、映画祭が全国津々浦々で行われ、過去の名作、芸術映画、実験映画、短編映画、ドキュメンタリー映画などが年間何百本も上映されています。
 
  一口に映画といっても、全国で公開されるメジャー映画、それ以外の単館からせいぜい十数館でしか公開されない劇場公開映画、さらには劇場以外の場所で上映される(=ノン・シアトリカル)映画と、概ね3つに分かれているということを、まず、確認しておいてください。
 
*1 配収
配給収入の略。映画の配給段階で入る収入のこと。映画館での売上(興行収入)から映画館の取分(概ね半分程度)を引いたもの。配収から配給経費と配給宣伝費を差し引いた残りの金額を、さらに、配給会社と製作会社で分け合う。


●メジャー映画の業界構造(1) 邦画メジャー
 
  映画業界は、製作(作品を企画・製作し、完成フィルムにする)と配給(出来上がったフィルムを複製して各映画館にレンタルするとともに宣伝を行う)、そして興行(映画館での上映)の3部門に分かれています。邦画業界の特徴は、松竹・東宝・東映という大手3社が、この3部門すべてを押さえているところにあります。つまり、この3社が、映画作品をつくりそれを全国の映画館に流すとともに、映画館自体を直営や独占的な配給契約によって系列化して運営しているわけです。このような体制をブロック・ブッキングと呼んでいます。
 
  しかし、70年代以降、邦画業界が衰退に向かうにつれ、このブロック・ブッキング体制も崩れてきました。初めに崩れたのが製作部門で、当初は自社内の撮影所ですべての映画をつくっていたのが、次第に独立の制作プロダクションに発注するようになり、さらには他社との提携での製作、すでに出来上がった作品の配給の受託などが当たり前になってきています。また、配給の点でも、映画館数が邦画専用館を中心に激減したことにともない、地方を中心に、系列関係がかつてほどはっきりしたものではなくなってきました。
 
  加えて、最近では、ワーナー・マイカルやAMCといった英米系の映画館チェーンの日本進出が業界を震撼させています。これらのチェーンは、邦画に関しても、ブロック・ブッキングを拒否し、独自の判断で上映作品を決定しているからです。邦画業界の構造は大きな変化の過程にあるということができます。


●メジャー映画の業界構造(2) 洋画メジャー
 
  洋画メジャー映画(アメリカ映画 *2)の場合、製作は米国になりますから、国内では配給と興行という2部門のみです。このうち配給は、米国映画配給会社の現地法人(UIP、フォックス、ワーナー、ソニーなど)と大手のインディペンデント系(=米国系ではない)配給会社(松竹富士、東宝東和、日本ヘラルド、ギャガなど)が行っています。
 
  邦画メジャーとの最大の違いは、上記の配給会社が、系列の映画館網をもっておらず、従って映画作品ごとにどの映画館に流すかを契約していくというフリー・ブッキング制になっていることです(慣習的なつながりはあります)。先に述べた大手3社は、ここでは、最大手の興行チェーンとして登場してきます。例えば、「東宝洋画系公開」という宣伝文句がよく映画の広告に出ていますが、これは、東宝が系列化している洋画専門館で全国で公開するという意味です。洋画の興行チェーンとしては、このほかに、東急系や先ほど述べた英米系などがあります。
 
  ただし、近年では、系列の崩れに加え、邦洋混映館の増大、邦画でも大作については洋画系で公開することが多くなっている(一般的に洋画館の方が大きくて設備もよい)ことから、邦画・洋画の興行面での区別は、かつてほど明確ではありません。
 
*2 洋画メジャー映画
70年代以降、映画市場は急激にアメリカに一極集中してきた。現在では、世界中に輸出され、巨額の興行収入をあげている映画のほとんどが、アメリカのハリウッド系の製作・配給各社でつくられるものに限定されてしまっている。したがって、洋画メジャーとは、そのままハリウッドのメジャー(ワーナー、20世紀フォックスなど)、ミニ・メジャー(ミラマックスなど)各社が関与している作品ということになる(大手がメジャーで、中堅がミニ・メジャーということなので、時代によって多少の移り変わりがある。例えばディズニー系の映画を配給しているブエナ・ヴィスタは、かつてはミニ・メジャーであったが、現在はメジャーの仲間入りをしている)。
ただし、配給作品をすべて自社のスタジオで製作していた1960年代までとは異なり、現在ではハリウッドでも独立系のプロデューサーが製作を仕切り、資金も、世界各国の映像企業や各種の投資組合から募る場合が増えているので、ハリウッド系=ハリウッドのメジャー各社が資金を出した映画とはいいにくくなっている(全米での配給権のみを買い取っている場合も多い)。


●ミニシアター系(非メジャー系)の映画公開
 
  1980年代以降、上記のメジャー映画(商業映画)の業界構造が次第に崩れていくなかで、既存の興行の系列に属さずに独自にアート・フィルムなど全国公開向きではない映画を上映する映画館が増えてきました。これらを一般にミニシアターといいます。
 
  ミニシアターには、東宝や東急などの大手資本によるもの(女性向けのヨーロッパ映画が中心)、大手3社の配給しない(独立系の)日本映画の上映を目的としたもの、上映会活動が発展して館となったものなどいくつものパターンがあり、それぞれ特色をもってプログラムをつくっています。配給は、フランス映画社、アップリンクなどのミニシアター系の配給会社が手がけている場合が通例ですが、独立系の日本映画の場合には製作したプロダクションが直接映画館に持ち込むことも珍しくありません。また、かつては、東京にあるミニシアターでの単館ロードショーというのが標準でしたが、地方中核都市に類似の館が登場していくにつれて、多い場合には十数館程度でミニ全国公開をやる場合も増えてきています。
 
  洋画にしても、邦画にしても、大型の娯楽作品だけが映画ではありません。ミニシアターは、そうしたメジャー系の流通網ではこぼれてしまう多様な映画作品、映像文化を人々に届ける機能を果たしています。
 
  今まで述べてきた通り、映画の配給・興行といっても、邦洋やメジャーかそうではないかによって大きく状況は異なります。自治体で映画に携わる場合には、こうした業界の構造を踏まえ、ミニシアター系の映画製作・配給・興行を中心に、映画文化の発展・普及のために「非」営利的な努力をしている関係者が多数いることを念頭においていただければ幸いです。

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