地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

9月号-No.029
1997.09.10(毎月10日更新)

●平成10年度支援事業助成要綱決定

●トピックス 〜練習場施設の草分け、新潟市音楽文化会館が20周年〜

●制作基礎知識シリーズ <音楽編(1)>


平成10年度支援事業助成要綱決定

10月31日まで平成10年度事業の申請受付

●平成10年度地域の芸術環境づくり支援事業助成要綱決定・申請受付開始
 
 財団法人地域創造では、地方公共団体などが自主的に実施する、創造的で文化的な芸術活動の環境づくりに関する事業に対して財政的な支援を行っています。平成10年度においても引き続き支援を行うため、「平成10年度地域の芸術環境づくり支援事業」として助成要綱を策定しました。
 
 内容は、平成9年度の要綱をベースとしながら、より効果的な支援を目指して、いくつかの変更を加えました。
 
 今回は、特に、この支援事業の趣旨と主な変更点について、お知らせします。


●支援事業の趣旨
 
 この支援事業の趣旨は、ア)長期的な芸術環境ビジョンをもち、事業運営等に顕著な工夫がなされ、段階的、継続的に行われるとともに、各地の関係者の参考となるよう当該事業の内容、運営方法等の情報を全国に発信する事業、イ)3以上の地方公共団体等が連携し、事業費の効率化やノウハウの交流をはかりながら取り組む事業、ウ)地域の人々の参画を得て芸術に対する理解と共感を広げる事業、エ)公立文化施設等の企画運営に携わる地方公共団体等の職員に実践的な研修の場を提供する事業、などを支援することにより、地方公共団体等の自主事業のプロデュース能力の向上や公立文化施設の利活用の活性化を促し、地域の人々が多彩な芸術活動を享受できる環境づくりに寄与することです。
 
 なお、この事業の対象となるのは、「地方公共団体」及び「地域における芸術創造活動の振興に資することを目的として地方公共団体との関連を有しながら設立された公益法人」が企画、制作する事業に限ります。


●主な変更点など
 
○入場料・参加料の単価について
 公演・展覧会等の開催に際して徴収する入場料・参加料の単価について、従来は助成対象事業経費の原則として2分の1を超えないように設定することとしていましたが、鑑賞者の負担の割合は、地域における芸術環境と密接な関連を有しており、事業のプロデュースにあたっての重要な要素であることから、実施団体が地域の芸術環境を勘案して、適正な額を設定することとしました。
 
 この際には、従来と同じく、席数の3分の2程度の入場率を確保することも考慮していただきますようお願いします。


●申請方法
 
 要綱を8月上旬に各地方公共団体(市区町村には都道府県を通じて)に送付していますので、10月31日までに当財団へ申請書を提出してください。なお、市区町村、公益法人が申請する場合は、都道府県を経由して提出してください。


●支援事業に関する問い合わせ
総務部振興助成課 上野・御園生・折居
Tel. 03-5573-4050


平成9年度における助成申請受付・決定状況


表1) プログラム別申請・決定状況


事業数

助成額(百万円)


申請

決定

申請

決定

創造

52

16

372

107


連携

15(60)

11(41)

222

99


単独

92

63

419

212


研修

12

5

14

7


171(216)

95(125)

1,028

424

※()内は地方公共団体等の団体数


表1) プログラム別申請・決定状況


申請事業数

決定事業数

音楽

70

44


演劇・舞踊

39

26


伝統芸能

18

7


芸術・工芸

18

8


映像・その他

18

5


研修

8

5


171

95


平成10年度助成要綱へ

トピックス

●練習場施設の草分け、新潟市音楽文化会館が20周年
 
 今から20年前、「大勢で集まれて、周囲を気にせず大きな音を出して練習できる文化施設が欲しい」という市民の強い声を受けて誕生したのが新潟市音楽文化会館(以下音文)です。今でこそ各地で公共の練習場施設が建設されていますが、当時としては画期的な施設でした。さらに、当初から7人の専門職員が採用されたことで、市民に欠かせない文化活動の拠点として成長することになります。
 
 音文には大中小13室の練習室と、525席のホールがあり、平日でも夕刻になると、仕事帰りの市民が続々と集まってきます。オカリナのサークル、市民吹奏楽団、中高年に人気の社交ダンスサークルなど、練習室は大変な活気に溢れます。
 
 実は当初、吹奏楽やロックなどは、音漏れのためホール本番中の練習については制限せざるをえませんでした。そこで、83年に4室の改修に着手。開館以来、音文の職員を務める平田和彦庶務係長は、「当時は音響技術もあまり進んでいなくて、試行錯誤でした。利用者の声を踏まえながら、1室ごとに素材や設計について音響設計会社、施工業者と会館スタッフが議論を重ね、4室目には遮音効果が非常に高く、ミニコンサートもできる練習室も実現しました。結果的に13室それぞれ個性のある練習室になりました」
 
 改修が完了した87年には、利用者も19万人を超え、以来年間約20万人の市民が音文を利用しています。使い込まれた職員手づくりの楽器止めや、各室ごとに備えられた十分な譜面台など、備品1つ1つも利用しやすいよう配慮されています。また、利用者から寄贈されたものも含め、65器の楽器が希望者に貸し出されているのも大きな魅力になっています。
 
 音文では開館以来、鑑賞事業のほかに、練習場施設の特色を生かした育成事業に力を入れており、これが最大の特徴になっています。自主事業費の4〜5割が育成事業費にあてられ、年間の延べ事業開催日数は150日にものぼります。最初の10年間は、初心者を対象にリコーダーから、コーラス、オカリナまで延べ72種類の音楽教室を開催してきましたが、その中から多くのサークルが生まれ、市民の自主的な活動が活発になったものはプログラムからはずしていきました。現在は、そうしたアマチュアがレベルアップをはかるための音楽講座を開催するとともに、将来の新潟の文化を担う人材を育成する、子どもを対象としたオケ、合唱、邦楽の教室を開催しています。
 
 特にジュニアオケのプログラムは充実しており、経験者をオーディションで選んで編成するのではなく、初心者から育成するきめ細かいシステムがとられています。毎年春に団員を募集。団員は、楽器を基礎から学ぶ単科教室、合奏をする初級合奏教室、本格的なアンサンブルを学ぶ合奏教室に分かれ、段階に応じた練習を行います。現在メンバーは小学4年生から高校3年生まで110人。毎週土・日の練習、春の合宿、夏の集中練習を行い、秋にはホールで定期演奏会を開催、まさにホールの専属オケといった感じです。
 
 事業担当の寺田尚弘さんは次のように話しています。「指導者は市内の音楽の先生など18人。ほとんどボランティアで協力してもらっていて、レッスン料は無料。初心者には会館の楽器を貸し出しますから、新潟市の子どもは幸せですね。手間もかかりますが、演奏会のレベルは毎年あがってきてますし、週末には音文にいかなきゃ、という子どもたちがいるのが励みです。開館20年を迎え、今では『音楽のことなら音文に聞け』と、市民からいろんな相談が寄せられるんです。『アマチュアオケに入りたいんですが』という問い合わせから『結婚式で演奏してくれる弦楽四重奏団を探してるんですけど』といったものまで(笑)。これまで培ったネットワークから、これからも音文がいろんな意味でパイプ役になっていきたいと思っています」



新潟市音楽文化会館 利用状況へ
 
[開館]1977年11月
[施設概要]ホール525席、大練習室4、中練習室3、小練習室6、楽器庫。練習室13は完全遮音構造(105db/500Hz)。
[所在]新潟市一番掘通街3-2

制作基礎知識シリーズ <音楽編(1)>

制作基礎知識シリーズVol.2

コンサートを実施する(1)
クラシック興行界の仕組み
 
 今号から3回にわたり「コンサートを実施する」にあたって必要な基礎知識をご紹介します。第1回でクラシック業界、第2回でポップス業界の基本構造について整理した後、第3回ではコンサート実務の基礎についてお伝えする予定です。
講師 山名尚志(マルチメディア・プロデューサー)

  昨年、1996年の国内におけるクラシック・コンサートの数は、首都圏だけで3016件、延べ席数で402万席を数えます(ぴあ株式会社調べ)。全国ベースでは、おそらくこの2倍以上、1万回、1000万席といった状況と推測されます。ちなみに首都圏のコンサート全体では、延べ席数が1520万席なので、その約4分の1がクラシックということになります。


●クラシック興行の構造
 
  音楽コンサートの業務は大きく3つに分けて捉えることができます。第一はアーティストのマネジメント。次にコンサートの企画・営業。最後にコンサートの実施です。ポピュラー音楽業界では、タレントやアーティストを抱えるプロダクションがこのうちの第一の部分を、ブッキング・エージェンシーと呼ばれる企業が第二の部分を、そして全国各地のプロモーター(イベンターと呼ばれることもあります)が最後の部分を受け持っています。
 
  クラシック興行の特徴は、上記の3つすべてをジャパンアーツ、梶本音楽事務所、神原音楽事務所といった「音楽事務所」が果たしていることにあります(大きな交響楽団や歌劇団もこうした事務所機能をもっています)。音楽事務所は、まずアーティストとマネジメントの契約を結び、次にコンサートの企画を立て、全国でツアーを実施していきます(場合によっては、フリーのアーティストからコンサートの企画・実施の代行を依頼されることもあります)。
 
  加えて、海外のアーティストや楽団の招聘も業務の1つとして行っています。この場合には、海外のアーティストのマネージャー(エージェントともいいます)と交渉して興行日程を押さえていくということになります。音楽事務所の強みは、国内アーティストを抱えていることに加え、この招聘ルート(海外のマネージャーやアーティストへのコネ)を確保していることにあります。
 
  こうした音楽事務所が組織している業界団体が「社団法人日本クラシック音楽マネジメント協会(マネ協)」です。現在、マネ協に所属している正会員は66団体で、年に1度、『クラシック音楽マネジメント・ガイド』を発行して、所属している演奏家や海外アーティストの招聘スケジュールを発表しています。公共ホールに営業に訪れたり、公文協資料にコンサートの価格表を掲載しているのは、ほとんどここに所属している団体です。


●手打ち興行と売り興行
 
  コンサートの実施は大きく2つのパターンに分かれます。1つは手打ち興行と呼ばれるもので、音楽事務所がコンサートに関わるすべての経費・リスクを負う一方で、チケット収入や企業からの協賛金収入はすべて自社に入るやり方、つまりコンサートを企画・制作しつつ、主催も行う方法です。現在、この手打ち興行は、そのほとんどが東京と大阪に集中しています。これは、東京や大阪でないと、コンサートを黒字にするだけのファンの絶対数が確保しにくいためです。
 
  もう1つが売り興行と呼ばれるもので、この場合は、コンサート運営の実務は事務所で行い、経費やリスクはその興行を買った側が負います(主催者はコンサートを買った側になります)。その代わり(滅多にあることではありませんが)どんなにチケットが売れても、音楽事務所側は当初に合意された一定のパッケージ料金だけを受け取ることになります。
 
  かつては、こうした興行の売り先は、新聞社などのマスコミ事業部が中心でした。しかし、各地に自治体のホールが建った現在、売り先の主体は完全にそうしたホールとなっています。東京や大阪では手打ちで興行を行いつつ、その他の地域に関しては、全国津々浦々の公共ホールに営業し、旅費節約のために効率的なツアー・ルートをつくりながら、各地で売り興行をしてまわる。ヨーロッパのオケなど大きなコンサートについては、アジアの近隣諸国までを含めたツアーをつくり、できるだけ損益分岐点を下げていく。
 
これが音楽事務所のやっている仕事です。


●公共ホールの立場
 
  上述したように、公共ホールのクラシック興行とのかかわりの第一は、音楽事務所から興行を買う主催者としての役割です。クラシックのコンサートの場合、ポップス系のコンサートや演劇などとは異なり、舞台装置の仕込みなどはほとんどありませんから、集客が主催者としての最大の仕事になります。従って、単に音楽事務所のお薦めの興行を買うというのではなく、自分のホールがある地域にはどんなお客さんがいるのか、どういったコンサートで、また、どんな宣伝をすればそのお客さんを集めることができるのか、ここをよく考えて興行を選んでいく必要があります。
 
  ここから一歩踏み込むと、今度は、「こういうアーティストに、こういうプログラムをやって欲しい」ということを企画していくことになります。アーティストの多くは音楽事務所に所属していますので、この際も、音楽事務所が主要な交渉先となります。ただし、このときには、興行を買う、買わないの交渉ではなく、アーティストの出演交渉を行っていくわけです。
 
  近年ではオーケストラのレジデンスを行うホールもでてきました。また、さまざまな企画に積極的に取り組んでいるホールの場合には、既存の音楽事務所がマネジメントしていない国内のアーティスト、あるいは招聘ルートをもっていない海外のアーティストを呼びたいということもでてきます。ここまで来ると、ホール自体が、アーティストのマネジメントや海外からの招聘という、今まで音楽事務所しかやってこなかった業務領域にも入っていくことになります。
 
  しかし、現在のクラシック興行界の一番のテーマが「聴衆の育成である」と言われているように、集客できるコンサートを企画するのは、プロの音楽事務所にとっても決して容易なことではありません。自分の地域に新しい聴衆を育てる覚悟で臨む必要があるでしょう。

クラシック興行界の仕組み(図)へ

 

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