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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

11月号-No.031
1997.11.10(毎月10日更新)

●第1回地方都市オーケストラ・フェスティバル

●クローズ・アップ

〜芸能による村おこし「文化振興基金事業」と「文化施設ネットワーク事業」〜 熊本県立劇場

●制作基礎知識シリーズ <音楽編(3)>


第1回地方都市オーケストラ・フェスティバル

すみだトリフォニーホールが全国プロ・オーケストラを紹介

初年度は5団体が出演、3年にわたり開催
 
 10月26日にオープンしたすみだトリフォニーホールで、来年1月から「第1回地方都市オーケストラ・フェスティバル」が開催されます。これは、東京以外の地域を拠点に活動するプロ・オーケストラ14団体(予定)を今後3年間で3回にわけて招聘するという企画です。初年度の1998年は、群馬交響楽団、山形交響楽団、九州交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、京都市交響楽団の5つのオーケストラが出演します。それぞれに、魅力的なソリストをゲストに迎え、多彩なプログラムを用意しての登場です。このように、同一会場で連続して地方のオーケストラの演奏が楽しめる機会はなかなかなく、今から注目を集めています。
 
 主催はすみだトリフォニーホールと各出演団体で、財団法人地域創造は共催団体として同フェスを支援することになっています。今号では、地方のオーケストラの現状を紹介するとともに、フェスティバルについてご案内したいと思います。


●地方のオーケストラの現状
 
 現在、社団法人日本オーケストラ連盟に加盟するプロ・オーケストラは23団体で、年間公演数は延べ2846、1団体あたりの平均は124公演となっています。その内、東京以外の地域を拠点に活動する14団体の公演数は延べ1596、平均114。3日に1度は演奏している勘定ですが、多くの団員を抱えるオーケストラは、年間数億〜10億円以上の運営経費が必要であり、事業収入だけでは運営できず、在京、地方を問わず外部の補助を受けて運営されているのが現状です。
 
 国や民間の補助が中心の在京オケに対し、地方では、拠点となる市や県が地域の芸術文化振興の核となる団体として、オーケストラを支援してきました。1947年には、初の地方オーケストラとして民間と大阪府、大阪市の補助を受けて関西交響楽団(現大阪フィルハーモニー交響楽団)が誕生、1956年には、自治体直営のオーケストラとして京都市交響楽団が設立され、その後も県および市の補助を受けたオーケストラが各地で誕生しています。最近では、地方公共団体の建設したコンサートホールのソフトを担う団体として、定期演奏会場の協力など、公共ホールと直接的な協力関係を持つ団体も出てきました。
 
 さまざまな公的な支援を背景に、各地方オーケストラは、地域の学校を対象とした音楽教室、巡回コンサートや、ホールとの共同企画など地域の音楽文化の普及と振興のためのプログラムを積極的に展開し、市民に身近なオーケストラとして親しまれています。
 
 そうした地方オーケストラにとって、東京公演は、団員が刺激を受ける貴重な機会ととらえられており、ほとんどの団体が1年から数年に1回は東京で自主公演を行っています。しかし、交通費等経費がかさむため、スポンサーがつかないと経済的にはかなり厳しいのが実状です。


●地方都市オーケストラ・フェスティバル
 
 これら東京ではなかなか聴く機会のない地方のオーケストラを一挙紹介し、ひろく皆様に知っていただこうというのが今回の「地方都市オーケストラ・フェスティバル」です。
 
 フェスを企画したすみだトリフォニーホールでは、新日本フィルハーモニー交響楽団がフランチャイズ・オーケストラとして地域に根ざした演奏活動を展開していく予定で、すでに、出前コンサート、小中学校オーケストラ鑑賞教室などの活動を開始しています。
 
 すみだトリフォニーホールの西田透さんに、今回のフェスティバルの狙いについてうかがいました。
 
 「地方のオーケストラの場合、実質的なフランチャイズとして、長年ホールや地域に根ざした特徴のある活動を展開しているところが多い。今回、フェスを企画したのは、なかなか聴く機会のない地方オーケストラの演奏活動を紹介すると同時に、そうした地方オーケストラのあり方に我々も学ぼうという側面もあります。
 
 一方、地域で決まった聴衆を相手に演奏しているだけでは、質的な向上には限界があることも事実です。今回のフェスは、東京公演というだけでなく、各オケの競演でお互いが刺激しあえますし、お客様にも聴き比べの楽しみがあります。できれば、こういうフェスティバルを5年、10年と継続して、地方オーケストラ全体の底上げにつなげたいですね。それから東京には各地域の出身者がたくさんいます。そうしたこれまでクラシックにあまり興味のなかったお客さんも、自分の出身地のオケ、ということで気軽にホールに足を運んで欲しいと思っています」。


●地方のオーケストラの活動〜九州交響楽団の場合
 
 今年の出演団体の1つである九州交響楽団は、1953年創立。九州唯一のプロ・オーケストラとして、活動エリアを九州地区に絞った独自の活動を行っています。現在、音楽監督は石丸寛、常任指揮者は山下一史、楽団員は73人。九響の96年度の活動を例にとって、地方オーケストラの活動の実際を紹介しましょう。
 
 九響は本拠地を福岡市におき、福岡市のほか、北九州市、福岡県、日本芸術文化振興会、地元企業などから幅広く出資を受けて活動しています。収入に占める地方公共団体からの補助金総額は全体の経費の約45パーセントを占めています。練習施設、定期演奏会場などで特に公共ホールとの協力関係はなく、アクロス福岡、福岡サンパレスを借りて定期演奏会を行っています。
 
 次に、公演の内容をみると、自主公演が49公演、委託公演が65公演、年間114回の公演を実施しています。自主公演は、自らの主催公演で、96年度の内訳は定期演奏会10回、巡回演奏会10回、移動音楽教室25回、特別演奏会4回となっています。
 
 定期演奏会は、地元ファンを対象に開催される、言わばホームゲーム。どの団体も力のはいったプログラムを披露しますが、九州交響楽団も華やかなソリストを招きファンの期待に応えるコンサートを工夫しています。巡回演奏会では、新しい聴衆の開拓に力点がおかれ、福岡県内の6会場での公演に加え、福岡市中心部で「天神でクラシック」と題したコンサートシリーズを開催。「タイムスリップ200年」というテーマでハイドンほかを特集したり、ユニークな企画で好評を得ています。また、福岡県からの補助金を背景に、自主公演として福岡県内25会場での移動音楽教室に取り組み、低料金での学校コンサートを実現しています。
 
 地方オケの事業収入の中心を占めているのは、地方公共団体からの依頼公演や、企業の冠による協賛公演です。九響では委託先との共同企画も多く、九州ならではのユニークな公演を多く行っています。九州電力が主催の「親子ふれあいコンサート」は、九州各地の小中高校生のソリストと九響が共演するコンサート。また、福岡市が「アジアに開かれた都市」として毎年9月に開催している「アジアマンス」では、福岡市との共同企画でアジア各国のオーケストラ奏者を招き、九響と合同で「アジア・フレンドリーコンサート」を開催、アジアマンスのオープニングを飾るコンサートとして市民に親しまれています。
 
 今回の地方都市オーケストラフェスティバルについて、事務局次長の石川純一さんは「こうしたフェスティバルが開催されることで、各地方オーケストラの特徴、在京のオケにはないよさが分かってもらえると思います。九響は、よく南国らしく、熱のこもった情熱的な演奏だと言われるんですが、そうした九州交響楽団の演奏を東京の皆さんにも味わってほしいですね」


1996年度 社団法人日本オーケストラ連盟加盟団体公演回数一覧表へ


●第1回地方都市オーケストラ・フェスティバル
○群馬交響楽団 1月18日(日)
指揮=高関健/ソプラノ=豊田喜代美ほか
プッチーニ:歌劇「トスカ」(演奏会形式)
 
○山形交響楽団 1月25日(日)
指揮=村川千秋/ヴァイオリン=千住真理子
ノルトグレーン:山形交響楽団委嘱作品
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品47
シベリウス:交響曲第4番イ短調 作品63
 
○九州交響楽団 2月14日(土)
指揮=石丸寛/ヴァイオリン=豊嶋泰嗣
チャイコフスキー:スラブ行進曲
チャイコフスキー:弦楽セレナードより 第3楽章"エレジー"
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調 作品82
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 作品47
 
○関西フィルハーモニー管弦楽団 3月1日(日)
指揮=ウリ・マイヤー/ピアノ=有森博
パガニーニ:常動曲 作品11
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27
 
○京都市交響楽団 3月8日(日)
指揮=井上道義/ソプラノ=中丸三千繪
R.シュトラウス:4つの最後の歌
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
 
●入場料
各1回券:S4,000円/A,3000円/B2,000円
5回セット券:S16,000円/A12,000円/B8,000円

クローズ・アップ

 芸能による村おこし「文化振興基金事業」と「文化施設ネットワーク事業」〜熊本県立劇場

 「行動する美しい劇場」。1982年12月にオープンした熊本県立劇場が、その特色をはっきりと打ち出し始めたのは、元NHKアナウンサー・鈴木健二氏が館長に就任した88年7月以降のことです。
 
 鈴木氏は就任後、半年をかけて熊本県下98市町村すべてに足を運び、神楽などの伝承芸能に出合う一方、過疎の現実を目の当たりにしました。そこで劇場に「文化振興基金」を設立、県内で行われる氏の講演会などの全収入と、県内外の個人、企業による寄付を基金として積み立て、県下の市町村でさまざまな事業を展開していくことになります。
 
 最初に着手したのは、波野村に伝わる「中江岩戸神楽三十三座」です。当時、年に1度のお祭りのときに一部が上演されるだけという、いわば消滅の危機にあった伝承芸能を、1年半の年月をかけ、完全に復元。90年1月に異例の徹夜公演を行い、大きな反響を呼びました。
 
 「保存会では最初、3日に分けて公演するという話でした。それを館長が『これは本来、一昼夜かけて舞っていたもの。ぜひ、お願いしたい』と働きかけて実現しました。徹夜公演のため、条例を変更しなければならなかったんですが、これが通常の行政の立場なら、『規則に引っかかる』で、夜通し公演という発想すら出てこなかったのではないでしょうか」(県立劇場企画事業課・本田恵介氏)
 
 公演には延べ6000人の観客が詰めかけ、大成功を収めました。波野村ではこれをきっかけに、定期的に上演できる「神楽苑」「神楽殿」を建設するに至りました。
 
 また、清和村では文楽人形浄瑠璃が危機的状況にありました。村に残っている義太夫のテープは音質が悪く、演目も1つぐらいしかなかったといいます。しかし、NHKとの交渉を経て、人間国宝による義太夫のテープ10巻が村に寄贈されたことをきっかけに、ふるさとの芸能はみごと息を吹き返し、「文楽館」の建設へと繋がっていきました。現在では年間100もの公演が開催され、観光客を巻き込んでの村おこしに一役かっています。
 
 「それまで埋もれていた文化を掘り起こし、県立劇場の舞台に乗せることで、観客が感動し、その感動が継承者である人々の誇りとなる。『文化振興基金事業』は県立劇場としての大きな役割を果たしていると思います」(企画事業課長・上村浩誠氏)
 
 94年度からは熊本県から助成を受けるようになりました。そして、ハンディをもつ人と県民による「こころコンサート」や、劇場専属のチアリーダーチームによる公演など、事業は伝承芸能以外にもさまざまなジャンルに広がっています。
 
 また、県立ならではの事業として、劇場が力を入れているものに、「文化施設ネットワーク事業」があります。これは、県立劇場が招聘元となって国内外の舞台芸術公演を各地のホール(主催者)に低料金で提供するというもの。89年度に、イタリア文化会館の紹介でローマ国際室内管弦楽団を招聘したことがきっかけでスタートしました。
 
 劇場では、招聘からツアーのセッティング、統一広報や共通の印刷物制作を担当し、加えて公演先に職員を派遣し、上演のノウハウを提供します。招聘のための経費(事務費)は県が出し、ギャラや公演のための経費は各主催者が負担金というかたちで出して、劇場で取りまとめています。「ここ10年ぐらい、文化施設が増えていますが、事業費は微々たるもの。いい舞台が安く提供できれば、地域の人々にとってメリットになります。また、新しい施設から職員が県立劇場に派遣され、3カ月〜1年の研修を受けるというようなことも6、7年ほど前から続いています」(本田氏)
 
 これまでも年に数回、県の公立文化施設協議会において情報交換はされてきたそうですが、この事業をきっかけに、県内各地のホールとのネットワークが強化されているとのこと。
 
 「今年度からは、"鑑賞の機会をあまねく広げていこう"ということで、新たに内容を見直し、A、Bの2種類に分けました。Aは海外の団体を招聘し、会館で上演するもの。Bは体育館や公民館で楽しめるもので、県の出身者など国内のアーティストが中心。どちらも親しみやすいプログラムになるよう工夫し、ライブの楽しさを知っていただける構成になっています」(上村氏)

●熊本県立劇場文化振興基金事業実績(一部) *会場=県立劇場の場合省略

1989年度


 

三加和町・山森こども神楽、秘境に能と狂言が行く(八代郡泉村、五家荘平家の里)、天草音楽祭、中江岩戸神楽三十三座・完全復元徹夜公演

90年度


御松囃子御能、清和文楽人形芝居(県立劇場、山鹿市八千代座、砥用町勢井神社殿)、文政三年棒踊り・想像復元公演、シルエット劇団「まつぼっくり」(県立劇場、玉名市民会館)

91年度


沖縄・八重山舞踊(県立劇場、山鹿市八千代座)、天領の唄を聴く会、熊本の「動」と「静」を観る、シルエット劇団「まつぼっくり」(沖縄県石垣市民会館)

92年度


獅子が舞い、虎が踊る、こころコンサート

93年度


新伝承・宇土太古26(宇土市総合グラウンド)

94年度


太鼓フェスティバル「熊本の空が響く」

95年度


チアリーダー公演「Cheer!青春」、いま、菊池川は流れる

96年度


いま、緑川は流れる

97年度


第2回こころコンサート


●熊本県立劇場
[施設概要]コンサートホール(1813席)、演劇ホール(1172席)、練習室(3室)、リハーサル室(2室)、会議室ほか
[所在地]熊本市大江2-7-1

制作基礎知識シリーズ <音楽編(3)>

制作基礎知識シリーズVol.2

コンサートを実施する(3)
パッケージ購入について
講師 高橋利枝(文化科学研究所研究プロデューサー)

  ホールが自ら主催者になりリスクを負って行う事業は、すべてホールの自主事業です。ただ、その形態は、西欧のオペラハウスなどのような、企画・演出から始めて全く新しい舞台作品を制作し上演する「自主制作」、企画・制作された公演を購入する「パッケージ購入」などさまざまです。
 
  日本の大半の公共ホールでは、機能や人材、経費などの面から、先に述べたような西欧型の自主制作を行うことは現実的には難しいことが多いので、ここでは、公共ホールで最も多く見られる鑑賞系自主事業の形態である「パッケージの購入」について、特にクラシックに視点を置いてお話したいと思います。


●パッケージとは?
 
  パッケージとは、アーティストのギャラ・交通費、当日の舞台まわりの運営に関する費用などすべて込みで料金設定がなされている公演を指し、基本的にはツアーの切り売りと位置づけられます(*)。音楽事務所などからこれを購入すると、基本的には、ホールは何もしなくても、当日になればアーティストがやってきて演奏が始まります。ただし、事前の広告宣伝、チケット販売、公演当日のお客さまへの対応(モギリ、案内など)などはホールが行うべき範疇となります。
 
  これを購入した場合、チケット収入とパッケージ料金の差額はホールが負担することになります。このように、金銭的なリスクはすべて負うということから、この公演はホールの自主事業(=ホールが主催者)と位置づけられます。なお、主催者であるホールは、このほかに、公演内容・公演の安全確保などに責任をもつ必要があります。
 
*日本人アーティストの場合は、交通費、宿泊は別途という場合が多い。


●パッケージの仕組みと情報収集
 
  海外招聘の場合、招聘元は、公演日程の確保のために、オペラやオーケストラで公演の3年以上前、その他で2年以上前に海外のマネジメントと交渉を行います。
 
  この時点で、同時に、公演費用を決定づける大きな要素についても交渉が行われます。具体的には、日本での最低公演回数、アーティストや随行員の飛行機や宿泊のランクなどについてです。これらがすべて決まれば、日本での公演回数が決定すると同時に、それにともなうギャラ、来日にあたっての交通費、滞在費などが算出されますので、この金額に、国内での交通費(売り先ホールの場所はこの時点では未定なので、何カ所かを仮定して試算)と当日の舞台まわりの運営費などを加えて、全公演の総費用を算出します。これを1公演あたりに割り振ったものがパッケージ価格となります。
 
  このようにして決定したパッケージの情報については、各音楽事務所からホールに提供されるアーティストリストにより知ることができます。これを見て興味深い公演について資料を請求すると、より詳細な情報が提示されます。さらに、お馴染みのものとして、公文協リストもあります。ただし、各音楽事務所のリストは、毎年秋から冬にかけて翌々年度の公演情報を提供するのに対して、公文協リストは、毎年6月発行で翌年度の公演が掲載されますので、音楽事務所のリストの段階で申し込みが多くあった場合には、売り切れということもありえないとは言えません。
 
  そのほかの情報入手手段としては、やはり音楽事務所や個人とのネットワークが重要となるでしょう。また、他ホールで素晴らしい演奏を見たら、その公演に関係している音楽事務所に直接電話して(紹介等がなくても問題はありません)、次にツアーが行われるときには、買う買わないは別にして、声をかけてくれるように依頼しておくという方法もあります。
 
  このようにして情報を入手したら、ホールサイドでは購入の有無、日程などを検討することになります。一方、音楽事務所サイドでは、申し込み状況などによりツアーの移動経路や演奏者の休日などを勘案しつつ、アーティストを抱えているマネジメントなどと交渉しながら、最終の日程を決定していきます。
 
  このような流れですので、基本的には公演日の1年半〜2年前から申し込みは可能になりますが、やはり申し込みが集中するのは、翌年度予算の目処がついた時期ということで、公演前年度の秋から冬が多いようです。
 
  海外招聘・日本人にかかわらず、ツアーの中で日程が空いていれば、最低1カ月前でも、公演を買うことは不可能ではありません。ただし、最低でも3カ月はないとチケットが販売出来ないですが・・・。


●パッケージ公演の成功のために・・・
 
  実際のホール運営においては、パッケージの仕組みよりも、どのソフトを選べばいいのかが最も重要な点になると思われます。ただ、ソフト選択については、そのホールの目的、長期的視野に基づく年間プログラムの中での当該事業の位置づけ、自主事業費、地域性などを踏まえて行われるべきものであるため、ケースバイケースで、一概にどんなソフトがいいとは言えません。
 
  そこでここでは、具体的な例として、グリーンホール相模大野の活動内容をご紹介します。
 
  このホールではさまざまな活動を行っていますが、公演については、定例と単発の組み合わせ手法をとっています。これは、単発でいろいろなパッケージを購入することで音楽事務所やアーティストと付き合ってみて、本当によい公演については定例公演化して実施していくというものです。これによって聴衆も育成されてきますし、回を重ねることで有効な広告手段などのノウハウが蓄積されるため職員の負担が軽減され、その分、また新しい単発公演に力を入れることができます。
 
  例えば、「ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団」は、当初は単発事業として行われましたが、「クラシックにはあまり馴染みがなかったけれども楽しかった」というお客さんを多くひきつけたこともあり、翌年からは、ニューイヤーコンサートとして継続実施しています。
 
  また、個々の事業をシリーズの中の1公演という位置づけにしていくという方法もとっています。例えば、毎年、来日の大規模オペラ・バレエ・オーケストラを1公演ずつ行いますが、それぞれ単発の事業とせずに、3事業をまとめて毎年恒例の「クラシック・ベスト・コレクション」シリーズとして位置づけます。また、これはオリジナル事業ですが「MUSIC LAB 音楽の実験室」として、毎年テーマを決めて実験的なクラシック事業を複数展開しています。
 
  このようにシリーズ化することによって、個々のアーティスト名が分からなくても、公演のおおまかなイメージやテイストがお客さんに伝わりやすくなりますし、広報活動も効果的に行うことが出来ます。例えば、前述の「音楽の実験室」では、以前にカウンターテナーのコンサートを行ったことがありますが、その当時はまだカウンターテナー自体への認知が非常に低く、単発公演として実施したのでは集客は難しそうでした。しかし、「音楽の実験室」シリーズの一環ということで公演イメージが伝わり、小ホールながらほぼ満席になったそうです。
 
  以上、グリーンホール相模大野の例をご紹介しましたが、ほかにもパッケージ事業を有効に活用して、個性を発揮している例は数多く見られます。
 
  パッケージ購入とは、いわば、当日運営ノウハウ付き公演を音楽事務所から完全に買い取って、それをお客さんにチケットというかたちで小売りする形態と言えましょう。
 
  その意味では、アーティストの知名度や曲名などの公演の力で集客したくなるものですが、「パッケージソフトとはいえ、契約したからには主催者はホール。だから、ソフトは厳選して選択するし、それをより多くの方々に楽しんでもらうために、広告宣伝手法もチケット販売も努力する」というグリーンホールのお話にあるように、パッケージを買えばすべておしまいではなく、主催者としてホール全体のプログラムを作成し、それによって聴衆を育成していく姿勢をもつことも大切なことのようです。(協力:グリーンホール相模大野)


 音楽事務所が組織している業界団体「社団法人日本クラシック音楽マネジメント協会(マネ協)」(正会員は66団体)が、年に1度発行している『クラシック音楽マネジメント・ガイド』。所属している演奏家や海外アーティストの招聘スケジュールが掲載されている。


 

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