地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

3月号-No.047
1999.03.10(毎月10日更新)

●ステージラボ 神戸セッションレポート

●トピックス〜「福岡アジア美術館」オープン

●制作基礎知識シリーズ<ホール・劇場機構編(3)>


ステージラボ神戸セッション・レポート

ワークショップや演奏会など、生の体験がますます充実
 
 財団が設立されてから10回目のステージラボが震災から4年を迎えた神戸を舞台に開催されました。参加者総数69名中、大阪、兵庫、京都の地元勢が16名を占め、関西弁が飛び交うラボとなりました。ご協力をいただきました皆さま、本当にどうもありがとうございました。


●神戸アートビレッジセンターの活動に学ぶ
 
 今回の会場で、共催としてご協力をいただいたのが神戸アートビレッジセンター(通称KAVC)です。活動の中心になっているのが若手アーティストの育成を目的にした学習、創作、発表で、事務所に置かれたチラシにはアトリエ開放やワークショップの文字が飛び交っていました(ちなみに98年度に自主事業で計画されたワークショップは計20件)。1階のギャラリー展示が見渡せるロビーには、イベント好きのマスターが経営するカフェサロンがあり、アート雑誌やチラシがさりげなく置いてあって、若いアーティストの溜まり場的な雰囲気が漂っています。
 
 KAVCのある新開地はかつて大衆娯楽のメッカとして知られたところで、東京でいうなら浅草の六区。昭和10年代の古い地図を見ると、200メートルほどの新開地本通り沿いには、遊園地、聚楽館(大正2年に建てられた豪華劇場)を頂点に、映画館、劇場、演芸場が10数軒も軒を連ね、多数の飲食店とともに一大歓楽街を形成していました。戦後、神戸の中心は三宮に移り、賑わいのなくなったこの地域を文化の町として甦らせようと計画されたのがKAVCです。先日亡くなった映画評論家の淀川長治さんが生まれ、映画と出合ったのもこの新開地で、新たに淀長さんの記念館を町につくろうと商店街の人たちが活動を始めているそうです。
 
 事業担当の岡野亜紀子さんは、「この4月で開館3周年になり、若いアーティストたちが少しずつここを溜まり場にしてくれるようになりました。チャレンジシアターという企画で、結成5年以内で神戸を拠点にしている劇団をサポートしていますが、その中から、雑貨店や商店に勤める地元の人たちに愛される劇団が出てきた。こういう地元に愛されるアーティストをどう育てるかが、新開地という大衆娯楽の町にできた施設の役割かなと思い始めています」と話していました。
 
 毎回、先進的な活動を行っている公立文化施設が会場になりますが、こうした地域での実践を目の当たりにし、担当者と忌憚のない意見交換ができるのもラボならではの生きた研修の一つになっているのではないでしょうか。


●ラボ名物、ワークショップを満喫
 
 ラボをスタートして5年。この間に地域創造の研修事業のスタイルと呼べるものが4つできました。1つがホール事業の実践者にプログラムづくりを依頼するコーディネーター制度、2つ目が第一線のアーティストを招いて表現を体験するワークショップ、3つ目がグループに分かれてのディスカッションと最終日の発表会という受講者参加スタイル、4つ目が公共ホールをめぐるホットな話題について参加者全員が共通認識を持つための共通ゼミです。なかでも毎回、楽しみにされているのがワークショップで、神戸でも如月小春(演出家)、井手茂太(振付家)、古谷哲也(コンガ奏者)らによる指導が行なわれました。

◎発声から台詞をしゃべるまで
 
 「今回は中高校生を対象に行っているプログラムをダイジェストでやります。この場合、参加者の気持ちにばらつきがあるので、全員が楽しくできるということを一番に心掛けます」――如月さんの優しいオリエンテーションから始まったホール入門コースのワークショップ。声を出すための基本レッスンの後、『ぼくたちの銀河鉄道』の台本を使った本読みに挑戦しました。全員、演劇経験ゼロで、最初は全くの棒読み状態。「子どもだとすぐに感情を込めて読みますが、人前で感情をあらわにしてはいけないと教育されている大人は抵抗感があってできないんです」と如月さん。しかし、「ここは突っ込み。タイミングが勝負!」「周りが子どもとして扱うと子どもの役に見える」など演出的な解説を受けるとみるみる情感が生まれる。
 
 「ワークショップを行う場合、学校に向けて開くと学校で起こっている問題が、市民に開くと町の問題がそのまま入ってきます。そこをよく考えてやる必要があるのではないでしょうか」(如月)

◎バレエからイデビアンまで踊ってみる
 
 若手のコンテンポラリーダンスとして、今一番ホットなグループがイデビアンクルーです。振付の井手茂太さんとダンサーの斎藤美音子さんを迎えた約4時間にわたるワークショップは、いきなりクラシックバレエのストレッチから始まりました。イメージ通りに身体が動かない参加者たちはリハーサル室の鏡を前にガマの油状態で、美しく身体を動かすことがいかにプロフェショナルな作業かを改めて実感していました。
 
 そしていよいよ井手さん振付(?)のワークショップに突入。「行きは普通に歩いて、戻りは右手と右足、左手と左足を一緒に出して歩きましょう。自然な感じで、途中でおはようございま〜すと、こっちのほうに向かって挨拶しちゃいましょう…」。けむに巻かれたまま、参加者が3人ずつチームを組んで歩き始めると、音楽との組み合わせで、あっという間にイデビアンクルーのダンスの1シーンが出来上がったのには驚かされました。
 
 「基本的な動きをちょっと変えるだけで面白い動きが発見できる、それを音楽と合わせるともっと面白くなる――そういうリズム感の面白さをちょっとやってみました。それとイメージ。イメージトレーニングじゃないけど、イメージするだけで身体の動きは変わってきます。今回のワークショップでも言葉でいろんなイメージを伝えながらやりましたが、稽古場でもたとえ話ばっかりなんで、みんなにうるさがられてます(笑)。僕は、誰にでもその人の味があって、それを引き出すのが振付だと思ってる。その味を見せながら、群舞も見せるというのが、僕らのやっていることです」(井手)

◎演奏家を知り、企画し、トラブルを解決する
 
 音楽コースでは3人の演奏家によるワークショップとミニコンサートが行われました。受講生は3グループに分かれ、最終日の発表会でそれぞれの演奏家のためのコンサートを企画するという、ワークショップと企画づくりの連動に挑戦しました。マラカスを手作りし、リズムワークショップを行ったコンガ奏者の古谷哲也さんを担当したグループは、「古哲のええ音おしえたるぜ〜みんなおいで、コンガで夏祭り」という企画を発表。コンガコンサート、楽器づくり、ダンスなど、全身で生の音を体感してもらおうというさまざまなアイデアが満載でした。
 
 ワークショップではないものの、音楽プロデューサーの山形裕久さんによるトラブルシミュレーションも体験型研修としては楽しいものでした。実体験に基づいたトラブルを出題、受講生が相談して答えるというもので、「悪天候で機材車が時間になっても到着しない。連絡もつかない。さて、どうする」という難問に四苦八苦。公演は中止して日程を振り替える派、あくまで実施を前提に現地で機材を調達するなど対策を練る派。山形さんの答えは、「振替にするとプロモーターのコスト負担が増えるため、あくまで実施を前提にしてやれる方法を考える」そうで、実際に公演開始3時間半前まで現地の機材をスタンバイして待ったことが過去に3回もあるとか。
 
 「こういうトラブル時にはコンサートの構成を変えて対処するなどツアースタッフの力量が試されます。と同時に、ホールには搬入スタッフの増員ができるか、音響照明会社、楽器店などの情報をもっているかなどのバックアップ体制が求められることになります。日頃から心掛けておくといいでしょう」(山形)


●共通ゼミのテーマは市民参加
 
 本年度の調査研究事業の成果を踏まえたシンポジウムでは、作曲家でシュガーホール芸術監督の中村透さん、藤沢市民オペラプロデューサーの関水秀樹さん、演劇の広場づくり事業を実践してきた盛岡劇場元事業係長の坂田裕一さんが一堂に会し、地域での取り組みを披露。市民参加事業の目的、評価軸などについて公開討論が行われました。
 
 特に事例として興味深かったのはシュガーホール(沖縄佐敷町)で行なわれている町民ミュージカル『ぐぁんぐぁんタンメーちゃーがんじゅう』(「元完おじいちゃん、いつまでもお元気で」の意)。「市民参加型事業にスタンダードはありえない。町の歴史や文化といった地域の特徴が市民参加の枠を生み出す」という中村さんが、佐敷町の特徴を徹底的に分析した上で、門外不出の芸能、琉球舞踊、三線、クラシック音楽、モダンダンス、新劇などをちゃんぷるー(ごたまぜ)にして小学生から70歳の老人までを巻き込み、ミュージカルづくりに取り組んでいるというものです。最初はホールの事業に反対していた住民に「シュガーホールに文句を言う会」を結成させ、文句を言うだけでなくやりたいことがあるなら提案してほしいと、そこを母体に市民参加事業をスタートさせたいきさつに至っては、会場から「ホーッ」と声にならない称賛のため息が漏れていました。

 このほかにも、ホール計画コースで「僕ら地域プランナーにとってはどれだけ地域を知っているかがバックグラウンドになる。知っているからテーマが出てくるし、意志がでてくる。そうして初めて参加が生まれる」と示唆に富んだ地域論を聞かせてくださった結城登美雄さん、午前2時まで脚本づくりに没頭し、新作狂言仕立て、演劇仕立てで「子どもの劇場」の企画を発表したサービス精神あふれる入門コースの受講生の皆さん等々。見どころ、聞きどころの多いラボとなりました。
 
 如月さんが計画コースの講義で「地域にたくさんの公立ホールが建設されているという新しい環境の中で、アーティストと行政と住民が歩み寄らなければならないのが今の現状。その中であれをやって、これをやってと、一番焦っているのが行政ではないでしょうか」と言われていましたが、今回のラボが、長い目で地域と芸術の関係づくりについて考え直す機会になれば幸いです。

●ステージラボ神戸セッション
[日程]2月2日〜5日
[会場]神戸アートビレッジセンター
 
●コーディネーター
○ホール計画コース
松井憲太郎(世田谷パブリックシアター プロデューサー)
○ホール入門コース
津村卓(財団法人地域創造 チーフディレクター)
○演劇・ダンスコース
市村作知雄(東京国際舞台芸術フェスティバル事務局長)
○音楽コース
村地孝明(財団法人大阪狭山市文化振興事業団(SAYAKAホール)事務局参事プロデューサー)
 
●ステージラボ神戸セッション 全体プログラムへ

トピックス

●世界初、アジア近現代美術の専門美術館、博多に誕生!
 
 3月6日、アジアの交流拠点都市を目指す福岡市に、新たにアジア近現代美術を専門とする「福岡アジア美術館」が、オープンする。場所は、市の中心部、下川端地区の再開発ビル「博多リバレイン」の7、8階。福岡市美術館が、1979年の開館以来、5年ごとに開催してきた「アジア美術展」で蓄積したコレクションや情報を受け継ぎ、より充実した活動を展開する。特に、交流事業に力を入れ、美術を通じたアジアとの交流拠点を目指す方針だ。
 
 そうしたコンセプトを実現するため、美術館には、様々な交流事業が可能なスペースが設けられている。制作する様子をガラス越しにライブで見ることができる交流スタジオ、滞在制作展用の交流ギャラリー、多目的に利用可能なミニホール「あじびホール」など。開館後は、毎年数名のアーティストを招聘して半年ほど滞在してもらい、その間公開制作や市民との共同制作、学校に出向いての授業なども展開する計画だ。
 
 オープニングを飾るのは、前述の「アジア美術展」を発展させた「第1回福岡アジア美術館トリエンナーレ1999」だ。開館を機に3年ごとの開催とし、会期を3カ月に延長、交流事業も充実させる。第1回のテーマは「コミュニケーション〜希望への回路」。アジア21カ国・地域の55人のアーティストが約200点の作品を出品する。アーティストは、学芸員等の担当者がアジア21カ国すべてに赴き、地元のキュレーターの協力を得てセレクトした。会期中は、公開制作、ワークショップなど様々な交流イベントが、館内にとどまらず周辺地域で公開、実施されることになる。
 
 交流イベントに参加する25人は、会期を通じて約1カ月間福岡に滞在する。ぶらりと博多を歩けば、さまざまなアジアのアーティストの作品に直に触れることができ、アーティストと一緒に作品をつくることもできてしまう。ちょっと、アジアの「いま」と出会いに博多まで足を伸ばしてみたくなりませんか?


●福岡アジア美術館
◎3月6日オープン
〒812-0027 福岡市博多区下川端町3-1 博多リバレイン リバーサイト7、8階 Tel. 092-263-1100(学芸課)
[オープニング事業]第1回福岡アジア美術館トリエンナーレ1999(第5回アジア美術展)「コミュニケーション〜希望への回路」(3月6日〜6月6日)
[施設概要]企画ギャラリー(1005m2)、アジアギャラリー(1111m2)、美術情報コーナー、彫刻ラウンジ、交流スタジオ、交流ギャラリー、あじびホール(140席)、招待者用研究室3
[設置・運営者]福岡市
[設計者]日建設計・観光企画設計者・都市未来ふくおか・西日本技術開発設計共同企業体

制作基礎知識シリーズ ホール・劇場機構編(3)

音響の仕事

音響〜劇場の中にいる人を共通の感覚で満たす
講師 市来邦比古(世田谷パブリックシアター テクニカルスタッフ)

  劇場における「音響」は、大きく2つに分けられます。ひとつは、劇場の空間がもつ特有の「音の響き」のことで、何らかの音が発せられた時、どう響くのかあるいは響かないのかということです。もうひとつは、劇場における演し物にまつわる「音の響き」のことで、演し物に合わせてどういう音をどう響かせるかということです。
 
  前者が「建築音響」と呼ばれる分野で、後者が今一般的に「音響」と呼ばれている分野になります。厳密には「舞台音響」と呼ばれ、さまざまなレベルの専門のスタッフが関わって仕事をしています。今回は、この「舞台音響」について概観します。


●劇場における「舞台音響」の歴史
 
  電気などなかった時代に、演し物は、生の俳優の台詞、あるいは音楽家の歌や演奏がマイクなどを使わずに、演じられ演奏されてきました。演劇の効果音も生で出され、小道具係などが担当していました。近代劇が始まり、写実性が重視されるようになると、音響効果は写実性を支える大きな要素となり、専門のスタッフが登場しました。
 
  20世紀に入り、マイクやアンプ、スピーカーなど電気音響の基礎がつくられ発達するにつれて、劇場にも放送設備として持ち込まれるようになりました(ちなみに電気音響の基礎はベルやエジソンの発明や発見に基づいています。アンプは1906年の3極真空管の発明によってつくられました)。
 
  演説会で使用されることから始まり、音楽会でも歌や楽器にマイクが使用されるようになりました。ラジオ放送やレコードの収音技術の発達によりマイクやアンプの技術が向上し、映画のトーキーの始まりにより劇場のスピーカーも飛躍的に音質が向上しました。また、演劇の効果音再生にも電気音響がさまざまに使われるようになり、再生機器もレコードプレーヤーからテープレコーダーに代わり、音響効果の仕事は進化していったのです。
 
  エレキギターなど電気楽器が普及し、劇場内の音の大きさが増大するにつれて急速にシステムの質が向上していきました。そしてビートルズに代表されるポピュラー音楽の大規模なコンサートが始まり、多チャンネル、多機能な音響コントロールシステムが使用されるようになっていきました。  現在では、ミュージカルのような電気音響システムをフルに使う演し物が増え、また観客の音の良さへの要求も高まってきて、良質で多彩な音響演出に対応できるシステムの構築が劇場の電気音響を考える時の基本となっています。

●舞台音響ー電気音響システムの今後
 
  空気の振動を電気信号に変換し、何らかの信号処理をして、また再び電気の振動に変えるのが電気音響の基礎です。その際の電気信号はアナログ信号であり、信号処理もアナログ信号処理です(アナログとはギリシャ語からきた言葉で「似たもの」という意味です。音の高さや強弱がそのまま電気信号に変換され、処理されているということです)。
 
  アナログ信号処理技術は究極に近く、新たな発展を期するためにデジタル信号処理が導入され急速な普及が行われています(デジタルとはラテン語で「指」という意味でそれから数字という意味へ変化しました。デジタル処理とは信号を数字的に扱うということです)。
 
  家庭内にも普及しているCDプレーヤーやMDが身近なデジタル音響機器ですが、音響に関わるすべてのところが現在デジタル化に向かっています。デジタル化することで音質の改善、配線上の伝送障害の軽減、記録メディアの質の向上といったことだけではなく、複雑な操作をシンプルにする、あるいは「記憶」を駆使して操作の支援を的確に行うといったことも可能になってきました。それらを通じて、今、新たな「舞台音響」の世界が始まろうとしています。


●劇場における「音響」の役割
 
  「音響」の最も大きな役割は他者である観客、出演者(俳優、演奏者)、スタッフが同一の空間の中で共通の感覚を共有化する手だてであるということです。
 
音が感動を呼ぶのはそれ故です。
 
  具体的には、演し物に合わせてどういう音をどう響かせるかが「音響」の仕事になります。演し物の種類によって必要とされる仕事は異なります。基本的な考え方を右頁の表に整理しておきましたので参照してください。
 
  前に述べたように、「音響」は永い劇場芸術の歴史の中でつい最近分野として登場してきたジャンルです。あるがままの音の響きを受け入れることから、任意に音を響かせるように進化してきました。音響スタッフはこういう自分たちの仕事を「音」をつくるといいます。
 
  「音響」とはシステムのことだけではなく、音にまつわる情緒、情感のことも含んでいます。声の伝達、音楽の伝達、効果音やいろいろな音の伝達、音の環境づくりを基本とし、そこに五感を通じて情緒、感情が関わるように設計され、デザインされ、効果音などは創作され、オペレートされ、音が出される=「音」がつくられていくのです。


●音響スタッフの仕事
 
  音響スタッフには大きく二通りあります。ひとつがカンパニーなどとともに「劇場を訪れる音響スタッフ」、もうひとつが「劇場付きの音響スタッフ」です。それぞれの仕事について以下に説明します。
 
◎劇場を訪れる音響スタッフ
[コンサート関係] ポピュラーコンサートの音楽ミキシングは非常に専門化された職業です。ひとつのコンサートに、客席で聞こえる音をコントロールするハウスオペレーター(システムプランも行う場合が多い)、ステージ上の音をコントロールするモニターオペレーター、スピーカーシステムを最良に調整するチューニングオペレーター(ハウスオペレーターが行う場合もある)、機材を提供する会社のスタッフ、本番付きでマイクやスピーカーの移動を行うスタッフ、アンプやワイアレスマイクの管理をするスタッフなど大勢の音響スタッフが関わっています。
 
[演劇、舞踊関係] 演劇や舞踊においては演出家、振付家と共同して作品の中の音を構築していく音響プランナーと、日々同じではない舞台に合わせながら演出の意図、プランナーの意図を再現していくオペレーターが作品づくりに関わっています。プランナーとオペレーターが同一である場合も多いです。
 
◎劇場付きの音響スタッフ
  劇場に所属してその劇場の響きをよく知り、音響システムに熟知したスタッフのことです。舞台全体の安全管理を行い、音響システムを最良に維持していく技能をもち、そして劇場を訪れるスタッフに対して懇切丁寧にシステムの使用説明や、アドバイスを行うことを日々の仕事としています。主催事業ではプラン、オペレーションを行う例が増え、ただマニュアルに則った管理をすればよいということではなくなりつつあります。

 音響スタッフの仕事にはマイク一本の操作や、家庭にもあるCD、MDを動かし、音量を調整するといった簡単に思われる仕事があり、誰もが始めようと思えば始められます。小さな劇団では俳優が操作したり、事務職の人がマイクの操作を行う場合がよく見受けられます。しかし劇場では観客という見知らぬ方々を相手にするのです。出る音にアマチュアもプロもありません。基礎知識、基本的な技能、安全知識が必要なことは言うまでもありません。ボランティアスタッフなどについて言及される現在、一般の利用者向け基礎講座の普及が望まれます。


<催し物別の音響の仕事>
 
◎講演会・セミナー・シンポジウム
  舞台上の話し手の声を客席全体に明瞭に伝えることが音響の仕事です。さまざまな声の大きさ、ニュアンスをもった話し手の人たちです。その人に合わせて微妙な調整をします。ビデオ投影、多元中継など多様な技術が要請されます。
 
◎クラシックコンサート
  観客に対する電気音響の作業は最小にとどまりますが、録音が重要な仕事になります。またレクチャー付きコンサートも増えてきました。コンサートホールでの明瞭なアナウンスは難しい技術です。また演奏位置、残響可変など音の専門家としてのアドバイスが要求されます。
 
◎ポピュラーコンサート
  歌はもちろん、楽器それぞれにマイクを立て、楽器からの直接の信号も含め数十チャンネルに及ぶコントロールを行い、観客・聴衆に良質の音を提供します。音楽ビジネスともリンクし、観客の音への要求も高く、非常に専門性にあふれた音響の仕事です。
 
◎演劇
[ストレートプレイ]
  会話を中心とした演劇です。声は基本的にはマイクを通さずに演じられます。劇の進行に合わせた音楽や効果音が再生機器(テープレコーダーやMD、CDなど)を駆使して出されます。演出と綿密な共同作業を行います。音響は観客を感動に誘う大きな手立てです。
 
[ミュージカルプレイ、音楽劇]
  歌と踊りと音楽を中心にした演劇です。踊りながら歌うためワイアレスマイクを使用する場合が大半です。音楽は生演奏の場合もあれば録音の場合もあります。電気音響をフルに使いながら自然な音をつくるのは難しく、技術力が要求されます。ロックミュージカルともなるとポピュラーコンサートと同じようなシステム、能力が必要です。
 
[舞踊]
  舞踊作品で音響は欠くことのできない分野です。特にモダンダンスや、日本舞踊の創作作品では音楽の選択、劇場での音響空間の創出において作品づくりになくてはならないポジションです。振付家と作品意図について充分な打ち合わせが必要です。フラメンコ舞踊などの民族舞踊でもマイクによる補助を必ず行います。クラシックバレエでも劇場で何らかの音響スタッフの関与があります。

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