地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

4月号-No.048
1999.04.10(毎月10日更新)

●平成11年度 支援事業内定

●公共ホール 音楽活性化事業レポート

●トピックス

〜シアターオリンピックス開催迫る 大型複合施設"グランシップ"オープン

●制作基礎知識シリーズ<ホール・劇場機構編(4)>


平成11年度 支援事業内定

90事業(延べ119団体) 約5億200万円
 
 財団法人地域創造は、このたび「平成11年度地域の芸術環境づくり支援事業」による助成事業を内定し、関係団体に通知しました。
 
 この事業は、地方公共団体や関連の公益法人が自主的・主体的に実施する芸術環境づくりのための事業を、財政的に支援するために実施しているものです。
 
 昨年8月に「平成11年度地域の芸術環境づくり支援事業助成要綱」を各地方公共団体宛に送付し、募集を行ったところ、全国から188事業(延べ224団体)、総額約9億5000万円の助成申請がありました。その後、申請事業に対する審査等を進め、1月25日付けで90事業(延べ119団体)、総額約5億200万円の助成を内定し、関係団体に通知いたしました。
 
 助成事業が単なる一過的なイベントに終わることなく、公立文化ホールの利活用の活性化や、次年度以降の地域社会の文化の向上、地域おこしなどにつながることを期待しています。


●助成プログラムと審査ポイント
 
 助成プログラムは、次の4プログラムで構成されており、各プログラムの助成事業の内容および審査ポイントは次のとおりです。
 
 なお、各プログラムに共通する重要な審査ポイントは、事業の企画・運営に対する地方公共団体の自主性・主体性であり、事業の実施を通じて、地方公共団体等の文化振興担当職員の方々に自主企画事業プロデュース能力の向上や、事業企画・運営のノウハウ取得が期待できるものであるか、という点です。
 
1)創造プログラム
地域の芸術環境づくりに関し、段階的・継続的に推進する事業であり、事業運営の手法において顕著な工夫が認められる事業を対象としたものです。
長期的な芸術環境づくりのビジョンをもち、顕著な工夫を備えた事業であるかがポイントとなります。
 
2)連携プログラム
3以上の地方公共団体が連携し、共同で制作して行うソフト事業を対象としています。連携による経済面あるいは運営面の効率化などがポイントとなっています。
 
3)単独プログラム
地方公共団体等が自ら企画・制作する事業で、地域の人々が何らかのかたちで参画するなど、地域との関連性を有する事業を対象としています。地域の独自性がポイントとなっています。
 
4)研修プログラム
地方公共団体等の職員に実践的な研修の場を提供するため、地方公共団体が自ら企画・制作する研修事業を対象としています。
単なる座学的なものでなく、実践的な研修であるかなどがポイントになっています。


●平成11年度申請および内定の概要
 
 平成11年度支援事業に対する申請・内定状況を前年度と比較すると、地方公共団体等の厳しい財政状況を反映して、申請ベースでは事業数で14(団体数で28)、金額で約1300万円の減となりました。
 
 しかしながら、内定ベースでは事業数で1(団体数で12)の微減となったものの、助成総額を約5200万円の増とした結果、1事業・1団体あたりの平均助成額は約80万円の増となりました。

◎平成11年度における助成申請受付・内定状況
 


表1 プログラム別申請・内定状況


事業数

助成額(百万円)

申請

内定

申請

内定


創造

52

14

277

89


連携

15(51)

12(41)

170

133


単独

116

61

497

276


研修

5

3

6

4


188(224)

90(119)

950

502


※( )内は地方公共団体等の団体数




表2 芸術分野別申請・内定状況

申請事業数

内定事業数


音楽

85

34


演劇・舞踊

60

38


伝統芸能

8

4


美術・工芸

23

7


映像・その他

7

4


研修

5

3


188

90


●平成11年度支援事業より〜ジャンル別事業紹介
 
上記の表にあるとおり、申請ベースでみると、今年も音楽分野が85件と最も多く、次いで演劇・舞踊、美術・工芸、伝統芸能の順となっています。ここでは、各ジャンルごとに特徴的な事業をいくつかご紹介したいと思います。


◎音楽分野
 
  新潟県文化振興財団から申請があった「新潟ニューセンチュリーオペラ・プロジェクト」は、県内の総力を結集した新作オペラを、99年度から3カ年かけて創作、上演するというものです。芸術監督・作曲は池辺晋一郎氏に依頼。このプロジェクトの特徴は、県の財団とともに新潟市民芸術文化振興財団、長岡市芸術文化振興財団といった新潟県内の公益法人が実行委員会を組織して制作に取り組むことです。制作された作品は、新潟市、長岡市で初演、その後3年かけて県内3市町村で再演する計画で、作品の質的向上と、地域的広がりが期待されるものとなっています。


◎演劇・舞踊分野
 
  福岡県大野城市の、大野城まどかぴあが実施する「まどかぴあ芝居クリエーション」は、アマチュア劇団の育成と地域の演劇シーンの活性化を目指しています。一般公募6劇団による公演に、プロの演出家・劇作家を「ドラマドクター」として招き、実際に作品を鑑賞した上での批評、アドバイスを行ってもらいます。
 
  今年も地域の素材をもとにした創作ミュージカル事業の申請が目立ちました。岐阜県穂積町では、村を水害から救おうとした代官「川崎平右衛門」を主人公とした町民参加ミュージカル「水滸歌合戦〜戦え! へーえもん」に取り組みます。脚本を劇作家の北村想氏に依頼。公募によるキャスト・スタッフが、9月の上演に向けて準備を進めています。
 
  そのほかユニークなのは、美術館が舞台芸術に取り組む「高知県立美術館 舞台芸術&映像事業」。美術館の有するホールを生かし、既成のジャンルを超えた実験的な公演や上映会を開催します。


◎伝統芸能分野
 
「組踊『月の豊多』」(沖縄県糸満市)公演は、琉球王府時代の組踊を復活公演するというものです。組踊は、琉球王府時代、冊封使を歓迎するために上演されていたという沖縄独特の舞踊劇。1756年に上演されたのが最後とされてきましたが、1988(昭和63)年に、台本が発見され、復活公演へ向けて研究が進んでいました。今回の公演が実現すると何と243年ぶりの公演ということになります。


◎美術・工芸分野
 
「福岡アジア美術トリエンナーレ」(福岡市)は、3月に開館した福岡アジア美術館の開館記念展。アジア21カ国・地域の55人のアーティストが約120点の作品を出品します。テーマは「コミュニケーション」。展示だけでなく、3カ月の会期中、延べ25人のアジアのアーティストが福岡市に滞在し、作品制作、市民との交流事業を行うのが特色です。


●助成事業に関する問い合わせ
総務部助成振興課 Tel.03-5573-4056

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公共ホール音楽活性化事業レポート

  財団法人地域創造は、平成10年度から「公共ホール音楽活性化事業」に取り組んでいます。この事業は、コンサートとともに地域の事情に応じた関連事業(=アクティビティ)を実施することで、クラシック音楽をより身近に感じてもらおうというもので、あわせて公共ホール職員の企画力向上と、実力ある新進演奏家の紹介を狙いとしています。平成10年度には データ欄で紹介した12地域が地域創造との共催で事業に取り組みました。
 
 「“アクティビティ”って何?」ということからスタートし、試行錯誤の1年間でしたが、参加ホール職員の奔走とアーティストの皆さんのご協力により、無事、全事業を終了することができました。今回は、アクティビティを中心に3つの地域の事例を紹介しながら、事業の成果と課題を報告したいと思います。


●アクティビティの実際
 
〜浦和市プラザイースト〜 「企画」の立ち上がるプロセスを体験
 
 埼玉県浦和市のプラザイーストは、ピアニストの高橋多佳子さんによる公開レッスンとコンサートに取り組みました。事業を担当した谷口秀明さんは、9年度までは市の税務課に勤務し、「クラシックは全くの門外漢、休日は野球漬けの日々」だったとのこと。
 
 「企画を考えたとき、プロ野球選手がよくやる『ふれあい野球教室』ができないかと思ったんです。プロってやっぱり憧れじゃないですか」。でも、「ピアノ」でどうやればいいのか? マネージャーや高橋さんと相談する中で、受講生が好きな曲を舞台で演奏し、それを聴いた高橋さんがアドバイス、その模様を公開するという内容が固まりました。
 
 1月11日、レッスン当日。49人の応募者の中から選ばれた小学生から会社員まで8組が舞台に上がりました。『戦場のメリークリスマス』のテーマを演奏した会社員の鈴木俊輔さんは、独学でピアノを学び、譜面を全く見ない(読めない!)で演奏するという強者。「耳で聞いてもわからない一つ一つの音のイメージについていろいろお話を聞けて良かったです」。
 
 高橋さん自身こうした試みは初めてで「実はできるかどうか不安だったです。でも、皆さんの演奏を聴いていたら、一人一人本当に素晴らしいものをもってることに感動して。すると、こうしたらこの人はもっと良くなる、っていう言葉がどんどん沸いてきました」。
 
 2月のコンサートは満員の盛況。終演後はレッスン受講生が高橋さんを取り囲む場面もあり、ロビーはなごやかな雰囲気に包まれていました。無事、「初めての自主事業」が終わった後、谷口さんは「わからないことばかりで本当に大変でした。コーディネーターやマネージャーも質問攻めで大変だったと思います。でも、高橋さんが本当に熱心にやってくださって。今年の秋にまた同じ企画をお願いすることになりました」。
 
 アクティビティを実施するために、ホール職員は必然的に演奏家やマネージャーと細かいやりとりをすることになります。その中で、「企画」が立ち上がっていくプロセスを共有するのは、とても貴重な経験になったのではないでしょうか。


〜小出郷文化会館〜 子どもたちに、プロの、生の音を届ける
 
 「子どもたちの感性をみがく」ことをコンセプトに掲げる小出郷文化会館では、アクティビティとして小学校への訪問コンサートを企画しました。出演は、ヴァイオリニストの白石禮子さん。白石さんとの事前の打ち合わせの中で出たさまざまな話をヒントに、担当の榎本広樹さんが、お話と演奏、ヴァイオリンに触れられるミニ・レッスンを行うという進行台本を作成。1月12日と13日、1メートルを超す積雪の中、4つの小学校を訪問しました。
 
 司会役の榎本さんは小学生パワーを前に少々緊張気味。弦が羊の腸でできていると説明すれば、真顔で「羊は痛くないの?」と聞かれ、絶句。予想もつかない反応に台本はどんどん改訂されていきます。
 
 あっという間に4校目、小出小学校では4年生116人が音楽室に集まりました。ほとんどの子がヴァイオリンを見るのは初めてで、興味津々。「このヴァイオリンは1765年に生まれたの」という白石さんの話に「おおっ」と驚き、希望者殺到のミニ・レッスンでは、指名を受けた男の子の喜びのパフォーマンスに大爆笑。しかし、演奏がはじまると、その緊張感にぴんとした静けさが音楽室を包みます。テンポの早いクライスラーのスケルツォでは、巧みな弓さばきに思わず「すごい!」という歓声があがり、最後のマスネ『タイスの瞑想曲』では、全員がしっとりとした音色に引き込まれているようでした。
 
 後日、会館に送られたアンケートや感想文には「毎日毎日ごはんも食べなくていいからいつまでも聴いていたい」「ヴァイオリンの音や白石さんが曲に合わせて踊っていてよかったです」など、大人顔負けのイメージ豊かな言葉がズラリ。2月に開催されたホールでのコンサートでは「学校でコンサートを聴いて帰ってきた子どもが、すごいすごい、また聴きたいと言うので一緒に来たんです」という親子連れもいました。
 
 間近で聴くプロの生の音は、しっかりと子どもたちに届き、確かに彼らの世界を広げたようです。自分たちではホールに来られない、あるいは“きっかけ”がなくて来ない地域の人たち(特に子どもたち)に対して、ホールが成しうる仕事の可能性を確認することができた事例でした。


〜新冠町レ・コード館〜 地域の人材とネットワークの力
 
 アクティビティを積極的に展開しようとする際には、地域の中での人材発掘とネットワークが不可欠です。北海道新冠町のレ・コード館では、今回の事業の企画・運営そのものを、ボランティア組織「自主企画事業運営委員会」が行いました。今回取り組んだのは「オペラ」で、声楽家の沢崎恵美さん、中鉢聡さんによる訪問コンサート(学校と老人ホーム)とワークショップ、ホールでのコンサートが行われました。
 
 学校訪問では運営委員の神山右文さんが自分の住む太陽地区の小学校にコンサートを“誘致”。「校長が面白い事が好きなのを知っていたので、やってみませんかって声をかけました」と神山さん。レ・コード館が出来る前から、毎年野外コンサートなどの運営に携わっていたという神山さんは、当日の司会・進行も手慣れたもので、約150名集まった子どもたちと地区の人たちは、中鉢さんと沢崎さんの絶妙のトークと、生の声楽の迫力を存分に楽しみました。
 
 翌日の発声ワークショップには、市民劇団や地元合唱団のメンバーを中心に約50人が参加。運営委員でもあり、劇団員でもある石田知樹さんが自ら個人レッスンの受講生となり、厳しい(?)指導を受けるなど影の牽引役として参加者を引っ張ってくれました。レ・コード館の堤秀文係長は「“自主企画事業運営委員会”は、ホールでの事業も含めてトータルにまちづくりを考える『地域プロデューサー』集団です。今回は、『地域プロデューサー』ならではの、広がりをもった事業が展開できたと思います」。


●今後の課題
 
アーティストの魅力をもっと伝えるために
 
 アクティビティを通じてさまざまな試みを実施でき、お客様の反応も良かったというのが地域の側の全般的な感想でした。それに対し、アーティストにとっては初めての試みだっただけにかなり負担になった部分もあったようです。
 
 「響きやお客様との距離感など、そのつど条件が違うので、いい演奏をするのに必要な緊張感をどうつくるかが難しかった」という声もあり、ホール以外の場所で演奏する際の環境をいかに整えるかが、今後の課題の一つとなりました。初めてのことで、「あれもこれも」とアクティビティを盛り込み過ぎてしまい、スケジュールがかなりきつくなったところもあったようです。アーティストにとってやりがいのあるコンサートがあってこそ、充実したアクティビティが成立するということを肝に銘じ、アクティビティとコンサートのバランスのとれた企画づくりが、今後の最大の検討課題ということではないでしょうか。


継続への取り組み
 
 こうした事業を各地域がいかに継続していくか? ということも大きな課題です。10年度参加地域からは継続して開催したいという希望が多くあがり、中には自前で事業を継続することを決めた地域もあります。地域創造でも、2地域を11年度も引き続き支援し、継続にあたっての課題や効果を検証したいと考えています。
 
 個々の地域の事情を踏まえながら、アーティストと音楽の多様な魅力を伝えるために、地域創造では、この事業を通じて得られた「コンサート+アクティビティ」実施のノウハウを蓄積し、整理していく予定です。10年度事業について、詳細なケース・スタディ集を発行する予定ですので、ご希望の方はお問い合わせください。


●事業の枠組み
(1)地域のホールと(財)地域創造の共催で、クラシック音楽のコンサートとワークショップ、訪問コンサートなどの関連事業(アクティビティ)を実施する。
(2)事業には、地域創造に登録した新進演奏家の内、開催ホールの希望するアーティストが出演する。
(3)演奏家の出演料、交通費と関連事業に係る経費の一部を地域創造が負担。
(4)開催ホール担当者を対象とした事前研修を開催。その後、事業の企画、実施にあたり、コーディネーターが開催ホールをバックアップ。


●平成10年度コーディネーター
児玉真(カザルスホール・チーフプロデューサー)、箕口一美(カザルスホール・プロデューサー)、能祖將夫(青山劇場・青山円形劇場プロデューサー)、室住素子(オルガニスト・杉原音楽教育研究所所長)、吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所主任研究員)、故・最上紀男(元盛岡市文化振興事業団 事業担当プロデューサー)津村卓(財団法人地域創造チーフディレクター)


●平成10年度参加ホールと出演者
*はアクティビティの内容
◎新冠町レ・コード館/北海道新冠町
沢崎恵美(ソプラノ)、中鉢聡(テノール)
*学校訪問コンサート、発声ワークショップ、老人ホームへの訪問コンサート
 
◎浪岡町中世の館/青森県浪岡町
竹村佳子(ソプラノ)、中鉢聡(テノール)
*養護学校訪問コンサート、歌のワークショップ
 
◎函館市芸術ホール/北海道函館市
高橋多佳子(ピアノ)
*ピアノ公開レッスン
 
◎瀬戸田町民会館/広島県瀬戸田町
沢崎恵美(ソプラノ)、中鉢聡(テノール)
*小学生との交流事業、幼児と保護者のためのコンサート、合唱団との交流
 
◎和光市民文化センター/埼玉県和光市
河野めぐみ(メゾ・ソプラノ)、中鉢聡
*オペラの楽しみ方についてのレクチャー
 
◎黒部市国際文化センター/富山県黒部市
竹村佳子(ソプラノ)、中鉢聡
*地元合唱団へのワークショップ、病院訪問コンサート
 
◎小出郷文化会館/新潟県小出町ほか
白石禮子(ヴァイオリン)
*温泉ロビーコンサート、学校訪問コンサート
 
◎プラザイースト/埼玉県浦和市
高橋多佳子(ピアノ)
*ピアノ公開レッスン
 
◎大島町民文化ホール/長崎県大島町
沢崎恵美(ソプラノ)
*老人ホームでのミニコンサート、子ども達へのワークショップ
 
◎三木町文化交流プラザ/香川県三木町
沢崎恵美(ソプラノ)
*シルバー、婦人、ジュニアの3世代合唱団の指導
 
◎西新井文化ホール/東京都足立区
山崎祐介(ハープ)
*ホール探検隊+ミニコンサート
 
◎和田山町文化会館/兵庫県和田山町
川井綾子(ピアノ)、高木和弘(ヴァイオリン)
*小学校での訪問コンサート


●平成11年度参加ホール
◎新規参加ホール
雄勝町総合文化会館(秋田県雄勝町)、寺泊町文化センター(新潟県寺泊町)、韮山時代劇場(静岡県韮山町)、甲賀町農村環境改善センター(滋賀県甲賀町)、温泉町夢ホール(兵庫県温泉町)、ハワイアロハホール(鳥取県羽合町)、春野町文化ホール(高知県春野町)、佐川町立桜座(高知県佐川町)、城島町総合文化センター(福岡県城島町)、シーハットおおむら(長崎県大村市)
 
◎継続モデル地域
新冠町レ・コード館(北海道新冠町)、黒部市国際文化センター(富山県黒部市)

トピックス

シアター・オリンピックス開催迫る、静岡の大型複合施設“グランシップ”出航!


●新しい静岡の顔
 
 JR静岡駅から電車で3分、昨年10月開業のJR東静岡駅南口を降りると、目の前に巨大な建造物が現れる。3月13日にオープンしたばかりの静岡県コンベンションアーツセンター、愛称“グランシップ”である。これは、県が総事業費約700億円の巨費を投じた国際コンベンション施設と文化ホールの複合施設で、静岡県文化財団が運営する大ホール、中ホール、国際会議場等と財団法人静岡県舞台芸術センターが運営する静岡芸術劇場が入る。
 
 旧国鉄跡地を東静岡都市拠点整備地区として開発した最初の施設で、新駅を中心とした文化的新都市構想の中核に位置するもの。磯崎新氏による設計は船をイメージした外観で、アリーナ型の大ホールは天井高約58メートル、西側の大扉が開閉可能な構造となっていて、外の広場と一体的に利用できるなど特徴ある空間となっている。
 
 県文化財団では、自主企画を初年度に15本程度、次年度以降は25本以上計画しており、積極的な自主事業運営を行う。オープニングは、「出会いと交流〜夢・創造〜」をテーマにした総合イベント「しずおか創造ルネサンス '99」。中でも南條史生氏によるグランシップをギャラリーに見立てたスケールの大きい“バルーン(風船)”の現代美術展「バルーンアートフェスティバル」は注目だ。


●舞台芸術センターの拠点施設完備
 
 グランシップの東側に位置するのが、鈴木忠志氏が芸術総監督を務める財団法人静岡県舞台芸術センターの企画制作する作品を発表する静岡芸術劇場である。日本平にある静岡県舞台芸術公園と並ぶ財団専用施設で、舞台芸術の創造、人材育成を図る舞台芸術公園での活動と連携して、静岡から国内外に向けて文化を発信していく方針だ。11年度は、シアター・オリンピックスでの公演のほか、10月頃から毎週末の日替わり公演を芸術劇場において3カ月間にわたってロングランする計画である。


●シアター・オリンピックスがやってくる
 
 このグランシップと舞台芸術公園をメイン会場に4月16日から約2カ月間にわたって催されるのが、舞台芸術の世界祭典「第2回シアター・オリンピックス」である(スケジュールは右表のとおり)。県民が文化に親しみ、豊かな感性を育むとともに、静岡を国際的な芸術の拠点にするために県が誘致したもので、テーマは「CREATING HOPE〜希望への貌(かたち)」。シアター・オリンピックスは、ギリシアの演出家テオドロス・テルゾプロス氏の提唱で、世界8カ国の演劇人により舞台芸術の創造と再生を目指して創設されたもの。今回は演劇からダンス、オペラなど世界20カ国42作品を上演するほか、ナイジェリアのノーベル文学賞作家ウォレ・ショインカ氏の講演や演劇・ダンスのワーショップなどもある。


●静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)
◎3月13日オープン
〒422-8005 静岡市池田79-4
Tel. 054-203-5714 鈴木秀典(文化財団)
Tel. 054-203-5730 重政良恵(舞台芸術センター)
[オープニング事業]しずおか創造ルネサンス '99(3月20日〜4月25日)
[施設概要]大ホール・海(4626席)、中ホール・大地(1209席)、静岡芸術劇場(401席)、会議ホール・風(500席)、交流ホール、会議室19、展示ギャラリー3、映像ホール(99席)、リハーサル室、練習室4
[設置者]静岡県
[運営者]静岡県文化財団、財団法人静岡県舞台芸術センター
[設計者]磯崎新アトリエ
 
●第2回シアター・オリンピックス
[主催者]第2回シアター・オリンピックス実行委員会
[芸術監督]鈴木忠志
[開催期間]4月16日〜6月13日
[開催会場]静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」・屋内ホール「楕円堂」、グランシップ 中ホール・静岡芸術劇場、県内13市町の公共ホール等
[問い合わせ]主催者事務局 Tel. 054-202-2813

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制作基礎知識シリーズ ホール・劇場機構編(4)

照明の仕事 〜光を操り、台本の世界を再現する〜

講師 桑谷哲男(世田谷パブリックシアター テクニカルマネージャー)


●劇場における「照明」の歴史
 
  劇場に照明が必要になったのは、野外劇場が天候に左右されない屋根付き劇場に変わり、劇場内が暗くなってからです。それでも江戸時代の芝居小屋には明かりとりの窓があり、基本的にはそこから自然光を取り入れて興行が行われていました。
 
  裸火が火災の原因になるため、当時は法令で夜間興行が禁止されており、興行時間は朝6時から17時までで、日暮れには公演が終了していました。公演時間が延びて徐々に夜間興行が行われるようになると、裸火が明かりとして使われるようになりましたが、やはり火元になることが多く、劇場はやがて橋止めや町外れに追いやられていきました。
 
  当時の面白い照明に「面明かり(つらあかり)」というのがあります。これは、黒子がろうそくを役者の顔に近づけて照らす、今でいうフォロースポットです。ちなみに、照明家の立場から言うと歌舞伎が白塗りしたり、隈取りのような派手な化粧をするのは照明が暗かったからだと思っています。ですから、今でもその派手さを生かすために、歌舞伎の照明はシンプルな地明かりしか使いません(一部の創作歌舞伎では近代的な照明を使うケースがありますが例外的です)。
 
  種油、ろうそく、石油ランプ、ガス灯の時代を経て、20世紀初頭に電気による照明という革新的な技術が出現すると、劇場の明かりもそれにとって替わられます。日本で一番最初に白熱灯を用いたのは旧・歌舞伎座で明治22年のことでした。電気技術により人為的に光をコントロールすることができるようになり、光の演出への本格的な取り組みが始まります。最初、ろうそく方と呼ばれていた照明さんは、やがて電気屋さんと呼ばれるようになりましたが、劇場での音響や照明の地位は決して高いものではありませんでした。
 
  しかし、産業技術の発達により、電気照明や電気音響の可能性が高まってくると、この地位に大きな変化が訪れます。劇場にはこうした技術による表現を専門に扱うデザイナーが生まれ、今やこうした空間表現はコンサートや舞台芸術になくてはならないものになっています。


●照明技術の進歩
 
電気照明の技術的な進歩には、スポットの進歩と調光機の進歩、そしてアナログからデジタルへの進歩の大きく3つがあります。


◎スポット
 
  スポットは3つの方向性で進歩しました。1つが「バリライト」に代表されるムービングライトの出現です。ムービングライトは方向も色も模様も自由に変えられるため、極端に言うと、全スポットをこれにすれば、オペレーター1人でどんなオペレーションもできるようになります。
 
  2つ目が「プロファイルスポット」の登場です。これは、従来の凸レンズ型のスポットに対し、明かりの精度を革新的に向上させたものです。日本ではまだ凸レンズ型が主流ですが、世田谷パブリックシアターのスポットはすべてこのタイプになっています。
 
  3つ目がレンズレスの「パーライト」です。廉価で軽量、取り扱いやすい上、光量が強いという才能に溢れたスポットで、照明器材に革新をもたらしました(但し、高熱を発するため使い方を誤ると危険な場合もあります)。


◎調光機
 
  劇場の中にある明かりを手元で一括してコントロールできる調光機の登場が照明の世界を一新しました。調光機は明かりの点滅、明暗を集中管理する仕組のことで、これによって、照明は単に舞台を明るくするだけでなく、明かりをつくる(明かりで表現する)ことができるようになりました。舞台の進行と同時で対応しなければならなかったオートトランスの時代が長く続きましたが、事前にプログラムが組めるサイリスタ(SCR)調光器の登場により、少ない人数で複雑な明かりをつくることができるようになり、舞台芸術における照明の役割が画期的に変わりました。


◎デジタル化
 
  現在ではこうした調光をコンピュータでコントロールするようになってきました(デジタル化)。紙にデータを書き、フェーダーを組み、手作業で操作する時代から、入力されたデーターをオペレーションする時代へ。コンピュータ化により、作業効率の向上だけでなく、組み間違い、上げ間違いといったオペレーターの人為的なミスが減少し、再現性、確実性が飛躍的に向上しました。
 
  加えて、人間技では限界があった連続キューにも機械的に対応できるため、より複雑で高度な照明プランを実現できるようになりました。ミュージカルや大型コンサートのファンタジックな照明はこうした技術革新の賜です。コンピュータ化により分業が進み、職人が支配していた調光室に若い人たちが出入りできるようになったのも、もう一つの変化でしょう。


●劇場における照明の役割
 
  照明の基本的な役割は、舞台上にあるもの(役者、舞台装置、衣装、小道具など)を見せること(見せないこと)です。それをどのように見せるか、そのためにどのように光を操るかが照明の仕事です。照明を操る基本技術で大切なのは、スポットの明暗、大小、角度、そして色の使い方です。この基本技術がきちんとマスターされているかどうかで仕事のレベルが決まってきます。
 
  照明の役割は、台本に書かれたことをどう再現したいのか(演出プラン)、照明で表わしたいのが時間の推移なのか、感情なのか、リアリティなのかなど、その作品(シーン)で何が求められているかによって変わってきます。冒頭に言いましたが、日本の伝統芸能の場合、歌舞伎も能も日舞もシンプルな明かりで、明かりに意味をもたせることは基本的にやりません。リアリズム演劇の時代も、照明は白い光がメインで(日常生活ではたとえ人が怒っても周りの明かりが赤くならないのと同じです)、専らウソの世界を本物に近く見せる効果が期待されていました。
 
  しかし、小劇場演劇の時代に、リアリズムの白い光に反発し、またあらゆる手段を使って表現したいという欲求があり、照明が自己表現の手段になっていきました。よく照明は「光で空間に絵を描くこと」と言われますが、私自身はその考え方があまり好きではありません。劇場に最先端の機材が導入されたおかげで、予算をかけないで照明でやれることが増えたため、明かりに頼る傾向がありますが、それは演出家の想像力、俳優の想像力、観客の想像力を奪うことにつながります。私は俳優に委ね、装置に委ね、観客に委ね、できるだけ何もしない引き算の照明が一番いいのではないかと思っています。


●照明スタッフの仕事
 
  技術スタッフ(音響も含む)の仕事には、作品をつくるための仕事と劇場付きのスタッフの仕事の2通りがあります。世田谷パブリックシアターの場合、劇場にプランナーを雇用してこの両方の役割を担っています。世田谷を例にとって技術スタッフの仕事を説明したのが、下記の表です。大きく分けると、劇場の管理スタッフとしての仕事、作品をつくるための仕事、公立で運営されている地域の舞台芸術専門施設としての仕事があります。ここでは公演のための仕事について少し説明しましょう。
 
  照明スタッフには、照明の設計図を考えるプランナー、卓を操作するオペレーター、必要に応じてピンスポットやステージ上の照明機器を操作する人などがいます。主な仕事としては、照明プランの作成、仕込み図の作成、コンピュータへのデータ入力、公演のためのスポットや各種照明機材のセッティング(つり込み、回路確保、フォーカシング=スポットの大きさや方向性を決めること)、安全管理などがあります。こうした準備の後、舞台稽古での明かり合わせを経て、公演時には実際のオペレーションを行います。
 
  通常、公共ホールの場合、こうした公演に向けての仕事より、日常の機器管理・安全管理に重きが置かれがちですが、地域の舞台芸術専門施設としての役割をもっと重視すべきではないでしょうか。組織体制から見直す必要があるとは思いますが、アマチュア文化団体の技術研修やサポート、要請があればある程度のプランニングまでできるような体制になればと思います。


●技術スタッフの仕事と役割
 
◎日常業務
・劇場、稽古場、作業場などの施設管理
・劇場設備、備品の整備、管理
・技術セクションに関する予算、契約の管理運営
・附帯設備、備品、消耗品の運用管理
・劇場運営のための打ち合わせ・会議
・委託業務の管理
・舞台系施設の防災、警備、空調などの安全管理と避難誘導
・劇場利用の窓口相談
・視察、見学などの外来者対応
 
◎舞台業務
・貸館時の技術面での使用条件などの打合わせ
・貸館時の搬入、設営、撤去時の立会いと技術指導
・貸館時の舞台進行の安全管理
・貸館時の舞台設備の操作、サポート
・関係官庁への書類届け出確認
 
◎事業業務
・自主事業などの企画業務への参画
・自主事業などへのプランナー、オペレーターとしての参加
・自主公演に関わる予算などの作成、管理
・主催公演の館外における公演への参加
・区民が利用する時の技術サポート
 
◎その他
・プロ、アマチュア向けの技術人材育成事業
・設備の改善、新規購入の計画、提案
・外部関連機関、団体との交流
・調査、研修、視察の計画と実施
・公演、活動記録などの整理保存


●催し物別の照明の仕事
 
◎講演会やシンポジウムなど
こうした「大会もの・式典もの」の照明は軽視されがちですが、一般の人が初めて劇場に足を運ぶのはこういう時が一番多いので、市民へのプレゼンと心得て、看板の見え方、客電を落とすスピードまで細かく計算して明かりをつくることが必要です。これがきちんとできるかどうかでその劇場のレベルがわかります。
 
◎クラシック・コンサート
ただ明かるくすればいいというのではなく、ピアノ発表会では手元に陰ができないか、オーケストラでは演奏者の目に照明が入らないかなどに注意して、演奏しやすい環境をつくることが求められます。
 
◎ポピュラー・コンサート
大規模なコンサートでは最新の照明機材が使われることが多いため、常に最新機器についての知識をもっておくよう心がけましょう。また、スタッフ数も多く、アルバイトも多いので安全管理には一層の注意が必要となります。
 
◎伝統芸能
歴史的に地明かりなど生明かかりのシンプルなものが多いのですが、舞台を均一な明るさにすることが求められます。これは簡単そうで実は大変な技術が必要なことです。
 
◎演劇
演劇の明かりをつくるという仕事の中に、照明の技術の基本がすべて含まれています。台本、演出、演技、音楽、美術などへの理解力を深め、それをいかに応用するかが求められます。日本の伝統芸能を除いて、照明に定式というのはないので、基礎的な技術をマスターした後は、経験と応用力で対応するしかないと思います。

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