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制作基礎知識シリーズ Vol.12

11月号-No.067

広報・宣伝の仕事編(3)

宣伝の作成〜プレスシートとちらしづくり
講師 中山弘美(広報・宣伝コーディネーター)

●プロモーションに宣材は不可欠です。観客動員に直接働きかける宣材には、ちらしやポスターはもちろんのこと、VTR、DM、懸垂幕、最近ではウェブサイトなどがあります。またマスコミに提供する宣材としてはプレスシートや宣伝写 真が挙げられます。今回はすべての宣材の基本となるプレスシートとちらしについて考えてみます。

プレスシートをつくる
◎作成の実例
 プレスシートとは「公演に関するマキシマムの情報をマスコミに伝達する紙資料」であり、記者はプレスシートを読んでこのイベントを記事として取り上げて一般 に広く知らせるべきかどうかを検討します。つまりメディアに取り上げられるか否かを左右する大きな役割を担っており、ちらしやホールの広報紙とはその役割が大きく異なります。

 プレスシートの構成についてはさまざまな方法がありますが、ここでは私が広報・宣伝業務を委託され作成した今年3月の世田谷パブリックシアター公演『ロベルト・ズッコ』(コルテス作・佐藤信演出・堤真一主演)のプレスシートを例に挙げて説明します。

 『ズッコ』のプレスシートは、表紙を含めて6頁で構成しました。印刷部数は約600部、前売開始日の1カ月前にマスコミや評論家に郵送しました。構成は表紙(1p)、解説(2p〜4p)、作家・演出家・主演者の略歴(5p)、開催データ(6p)の4項目です。構成の順番に決まりはないので、自分なりのフォーマットをつくってみましょう。また出演者・演出家のコメントやインタビューの抜粋、再演の場合に前回の記事集などを参考資料として添付したり、宣伝写 真を同封することもあります。

では、項目ごとの主な内容と作成上の留意点について説明します。

[表紙]
 表紙はぱっと見てある程度のことがわかり、興味をそそる体裁を考えます。基本データであるタイトル(シリーズ企画の場合はシリーズ名も)・日程・会場・問い合わせ先を入れるほか、タイトル回りには最大のセールスポイントを「飾りコピー」として厳選してつけます。『ズッコ』では、「堤真一主演」と唱いました。協賛企業がつく冠公演や特筆すべき助成を受けた団体がある場合は、その企業・団体名を入れるなど状況に応じて考えます。また問い合わせ先には広報担当者の個人名(読みが難しければふりがなつき)を明記しましょう。公共ホールの場合、問い合わせ先に個人名を出さないことがありますが、情報提供側の態勢としては不十分です。不在の場合に備えて制作担当者名と並記すると万全でしょう。

[解説]

 解説の主な内容としては、公演の企画趣旨(シリーズ企画の場合はその説明も)、作家・作品・時代背景の説明、あらすじ、演出・キャスティング・美術プランなどが挙げられますが、どこに重点をおいて解説して順番をどうするかはセールスポイントによって異なります。『ズッコ』の場合は「実在の殺人犯をモデルに書かれた作品」「40歳で早世したフランスの劇作家コルテスの遺作」「没後10周年を機に世界中で連続公演」「作家の青春期60〜70年代の閉塞感が現代に通 じる」「堤真一の初タイトル役、中島朋子との顔合せ」などがセールスポイントでした。

 これらがはっきりわかるような見出しをつけ、それぞれについて解説しました。『ズッコ』は作品や作者が日本ではほとんど知られていないため、作家についての解説、作品が書かれた時代背景、上演歴、作品の解釈(演出家コメント)などを充実させ、作家と作品の基本的な知識をマスコミに伝えるように努力しました。解説の際は、書きたいことがたくさんあっても見出しごとに簡潔に整理し、饒舌にならないよう内容を吟味しましょう。また、演出家や作家のコメントを入れる場合は、記事に引用しやすいように適切な長さにまとめることも必要です。

[作家・演出家・主演者の略歴]
 よく知られた人でも主な経歴を正確に書くことが必要です。通称で呼ばれる俳優も多いので、名前には正しい読みを書き添えます。

[開催データ]
 スタッフ、キャスト(配役表)、会場、公演日程、料金、前売所(前売日)、問い合わせ先などの開催概要をまとめます。

 プレスシートにはこちらの企画意図だけでなく、記者が取り上げやすい「切り口」をどれだけ書けるかが広報担当者の力量 といえるでしょう。まずは、わかりやすく情報を的確に把握できる内容と構成を心がけてください。


「ロベルコ・ズッコ」



ちらしをつくる
◎ビジュアル勝負

 ちらしが果たす役割は、公演のイメージをビジュアル化した上で情報を正確に伝えることです。プレスシートがペンの力でマスコミに訴える宣材ならば、ちらしはビジュアル勝負です。オリジナルちらしをつくる場合、ビジュアルは企画者、制作者、演出家など公演に深く関わる者の意図が反映されるべきものなので、商業ベースの公演などでは、このビジュアル制作には多大な労力と経費が注ぎ込まれます。ちらしの善し悪しが動員に影響すると言っても過言ではないからです。

 デザイナーの選定の後、必要であれば演出家らとのディスカッションを経て、メインビジュアルを決定します。イラストの場合もあれば、再演ならば前回の舞台写 真を使うこともあるでしょう。出演者が最大のセールスポイントならば、作品や役柄の雰囲気に合わせて写 真を撮るのが最も効果的なちらしをつくる方法です。出演者のスケジュールを調整し、撮影場所(スタジオ)を手配し、デザイナーと協議して、写 真家、ヘア&メイク、スタイリストを決め、ビジュアルに求められているイメージを具現化していきます。イラストの場合でもデザイナーとともにイラストレータを選定し、企画内容と希望を詳しく伝えて依頼します。

 ビジュアルづくりを安易に考えると完成度の高い魅力的なちらしは出来上がりません。市民オペラなど数年間継続する企画ならば、プロの写 真家に舞台や稽古の撮影を依頼して、次回のビジュアルになるようなクオリティの高い素材を残す努力をしてください。次回のちらしがどれだけ臨場感や熱気が伝わるものになるか、動員にどれほど効果 的か、安易に考えなかった結果は必ず数字に表れます。

◎いろいろなちらしを観察する

 近隣公演のちらしを集めて観察してみると、デザイン、サイズ、紙質など実に多様につくられていることがわかります。その中で気に入ったデザイナーに発注するという手法もあります。年間の主催公演を同じデザイナーに依頼してイメージを統一すると、一目見ただけで「あのホールの催し物」と認知され宣伝力がアップします。またホールの広報紙や数公演まとめた総合ちらしを宣材としている場合がありますが、公演個別 の魅力を伝えるには不十分です。予算状況にもよりますが、できる限り個別 の宣材をつくりましょう。

◎いろいろなちらしを観察する
 近隣公演のちらしを集めて観察してみると、デザイン、サイズ、紙質など実に多様につくられていることがわかります。その中で気に入ったデザイナーに発注するという手法もあります。年間の主催公演を同じデザイナーに依頼してイメージを統一すると、一目見ただけで「あのホールの催し物」と認知され宣伝力がアップします。またホールの広報紙や数公演まとめた総合ちらしを宣材としている場合がありますが、公演個別 の魅力を伝えるには不十分です。予算状況にもよりますが、できる限り個別 の宣材をつくりましょう。

◎情報の基本は5W1H
 文章の基本の「いつ、どこで、誰が、何を、どうする」(5W1H)は、ちらしづくりでも基本です。どんなに良いデザインでも基本情報が把握できなければ何にもなりません。基本情報とともにチケット発売情報も正確に記載します。会場の地図や駐車場の案内も省略しないほうがいいでしょう。しかし、それらすべてを漫然と載せていませんか。ビジュアルで引きつけ、内容は? いつ、どこで? 問い合わせ先は? というように読む人の思考の流れに沿ったレイアウトを心がけましょう。

 また、託児やワークショップなどホール特有のサービスや付随企画は忘れずに告知しましょう。利用しやすく開かれたホールというイメージづくりも大切なことです。

 時折起きるトラブルは、出演者の顔写真が手許にあるからと何年も前のものを承諾なく使用したり、撮影者名なしに舞台写 真を載せたりする肖像権、著作権の問題です。日頃から敏感に反応し細心の注意を払ってください。

 これだけ労力をかけてつくったからには効果的な配布方法を考えなければもったいない!近隣のホールや市役所に置く以外にも、地域の特性に合った配布方法があるはずです。いつもより視野を広げて探してみましょう。

 また今後は、従来の宣材のほかにウェブサイトを充実させて速報性を高めることが課題になるでしょう。稽古風景の画像や空席情報、掲示板などを盛り込んだインタラクティブなサイトを運営していきたいものです。

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