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的確な判断力と迅速な行動力が求められる特別業務

1月号-No.069

●「制作基礎知識シリーズ 表方の仕事」

制作基礎知識シリーズ Vol.13
表方の仕事編(2)

特別業務の内容
講師 星野茂登子 (シアターマネージメントプラン代表)

●特別業務の内容と役割

 今号では、緊急時の非難誘導など、状況に応じて行う「特別業務」について整理していきましょう。
 特別業務の内容をまとめたのが右頁の表です。緊急時における避難誘導、急病人・けが人への対処といったまさに緊急事態への対応に加え、身体の不自由な方やVIPなど格別 の配慮をもって接遇しなければならないお客様への対応、またチケット不所持などの予期せぬ 出来事への対応、事態に応じて内容を変えて情報提供を行うアナウンス業務などがその主な仕事です。 この「特別業務」は、業務の性質上、毎回発生するわけではありませんが、業務が発生した際は、フロントスタッフには適確な判断力と迅速な行動力が求められ、また確実に業務を遂行することが求められます。通 常業務における「公演時の来場者の管理を行うこと」「舞台を鑑賞しているお客様と舞台上の演者のために、舞台に集中できる空間をつくりあげること」「来場したお客様が開場時から終演時まで心地よく過ごせる接客を行うこと」といった役割に加えて、フロントスタッフにはこうした「安全管理の現場責任者」としての重要な側面 があることに留意する必要があるでしょう。 これは、飛行機における客室乗務員の仕事と同じで、通 常は乗客が心地良く機内で過ごすためのサービスを提供しながら、万が一の時には避難誘導や救急処置ができるよう日頃からマニュアル整備や訓練を行う必要があります。


●マニュアルと訓練

 こうした「特別業務」では、安全管理の側面から緊急時を想定したマニュアルを整備することが望まれます。どのホールにも建築基準法に照らした避難経路図面 や消防体制図などの備えがあり、定期的な消防訓練が行われることになっています。
 しかし、昨今ではフロントスタッフにボランティアなどが協力するケースも増えており、非常用経路や緊急連絡先、緊急時の指示命令系統などを簡便に記したマニュアルの整備やリーダーに対する訓練などにも気を配る必要がでてきているように思います。  いずれにしても当日の誘導灯の消灯状況、緊急時の指揮命令系統など、安全管理上必要な事柄については、日常業務としてフロントスタッフ・ミーティングで確認するなど、当日のスタッフ間で情報を共有することが必要でしょう。

●緊急時の基本的な対応

 劇場・ホールにおいて想定される緊急時とは、地震などの天災、火災、またその他の事故が考えられます。この様な緊急時には、その状況に応じ舞台進行を続行するのか、中断するのか、中止するのかを、フロントスタッフの責任者は主催者と共に決定しなくてはなりません。 また、舞台進行を中断、中止して避難しなくてはならない状況においては、裏方と呼ばれる舞台技術者(舞台監督の指示に従う場合が多い)と、表方と呼ばれるフロントスタッフは、連携して観客を速やかに、確実に避難誘導させることになります。  緊急時の避難誘導については、音声ガイドやフラッシュ式の無人誘導システムも開発されていますが、不特定多数のお客さまが集まるホールにおいては人的な対応が基本になります。日頃慣れ親しんでいる場所でも防火シャッターが閉まるだけで印象がかわりパニックが起きますが、ましてや見知らぬ ホールで事故に合えばなおさら。人が対応してこそパニックも抑えられるというものです。 また、ホールでは、所轄の消防長または消防署長の許可を得て誘導灯を消灯することがあるため、特に緊急時の誘導には留意が必要となります。近年、避難誘導灯消灯システムを完備しているホールでは、細かい条件(※)を守れば、その施設の最高責任者の判断で消灯することも可能になりましたので、これを機にもう一度、消灯時の対応についてフロントスタッフ間で確認しておくとよいでしょう。

●フロントスタッフの特別業務

緊急時における避難誘導

状況に応じて舞台進行を中断させ、観客を客席から順次、確実に避難誘導しなくてはなりません。特に客席扉の通 過に際しては、一度に通れる人数が限られ、将棋倒し等の事故が起りやすいため、使用する各扉にスタッフが待機するなど注意が必要です。また、適確な判断力と迅速な行動力だけではなく、スタッフのホスピタリティが大変重要となります。緊急時には、情報が混乱しパニックを起しやすくなりますので、お客様が落着いて避難できるよう、不安を与えないように、適宜お声がけをすることも重要な役割となります。特に、車椅子をご使用の方や身体の不自由な方については、即座に対応する必要がありますので、常に、開場時の段階でご来場の有無や座席番号の把握をしておくことが大切です。 ※避難誘導灯を消灯(客席誘導灯、室内通路誘導灯は点灯)する場合、全誘導灯(避難口誘導灯、客席誘導灯および室内通 路誘導灯)を消灯する場合には次の対応が必要となる。
・公演開始前の入場者に対するアナウンス
・ 開演中の観客の出入りに対する対応(案内者が必要。全誘導灯消灯の場合は出入り禁止など)
このように誘導灯を消灯する場合はフロントスタッフに対応が求められるケースが多い。

急病人・けが人への対処

軽度の場合 は発生が上演中、もしくはそれ以外の時間帯(開場時・休憩時)であるのか、発生場所がどこであるのか(客席内・ホワイエ)、またその緊急の度合がどの程度であるのかなど、状況に応じて適確に判断し、適切な処置を行うことが大切です。正しい救急処置を行うためには、対応者が専門機関の講習を受講するなど、救急法救急員の認定を受けた者が対処できる環境を作り、日頃から訓練を行っておくことが重要になります。なお、薬を投与するなどの行為は医療行為となるため、医師以外の者が行うことはできません。また、緊急を要する場合(心臓停止・呼吸停止・意識障害・大出血・ひどい熱傷・服毒など)には、直ちに処置をしないと生命に関わるため、手当を行うと同時に、救急車の手配をしなくてはなりません。ご気分が悪いなど症状が軽度の場合には、お客様自身が客席以外の場所(ホワイエ等)で少し休みたいと希望される場合が多いですが、その際に毛布や枕などがあると便利です。なお、毛布は、保温や女性の足元を隠すといった用途もありますが、緊急時には担架の代用も可能ですので、ホワイエに常備してあると良いでしょう。

身体が不自由な方への対応

車椅子や白杖を使用されている方など、事情は違ってはいても、一人での行動するのに支障がある方に対しては、適切な対応を行わなくてはなりません。しかし、相手の方は社会人としては他のお客様と何らかわりはありませんので、過度な対応はかえって失礼にあたります。介助の方の有無やその方の状況に応じて、適切な対応をすることが重要となります。座席への誘導や施設の案内(トイレ・避難口など)を基本的な対応とし、その方に対するパーソナルなお手伝いについては、ご希望をお伺いするなど、心遣いも大切です。

VIP対応

会場への到着時間や控室、客席への入場経路や入場時間など、事前に決定されている内容については、熟知し、状況に応じて適確な対応をしなくてはなりません。当日の状況によっては、VIPの座席周辺のSP席を増やすために、一般 の方のお座席を他へ振り替えざるを得ない場合があります。このような場合には、失礼のないよう、すみやかに対応する必要があります。また、終演時の退場に際してもVIPの方を優先し、退場完了後に一般 の方が退場するといった時間差を付ける場合もありますので、VIPの方の退場経路によっては、フロントスタッフの配置を変更するなどの配慮が必要です。

イレギュラー対応

チケットの不所持(チケットを紛失した、忘れて来てしまった)、ダブル発券(同じ座席番号チケットが発券されていた)、乳幼児の入場(入場不可の公演に乳幼児来場)など、予期せぬ 事態は発生するものです。原則のルールに則った対応となりますが、臨機応変な対応が求められますので、指示命令系統等、マネージメントの体制を確立しておくことが大切です。

アナウンス

来場されたお客様に対して、劇場・ホール内における注意点や休憩時間の案内、販売物の案内などを影アナウンスにて行います。一般 的には、開演15分前、5分前、休憩開始時、第二部開演5分前・終演時の計5回行いますが、アナウンスの内容は、公演によっても変化しますし、天候によっても(傘の取扱い等)変化します。また、禁止行為実行者が多い公演の場合には、アナウンスの内容を厳しいものに変え、回数も増やすなど、状況に応じて行うことになります。基本的なアナウンス内容の場合には、予め録音されたもので対応することも可能です。なおアナウンスを生で行う場合には、フロントスタッフの「通 常業務」の忙しい時間帯に1名が専任となってしまうため、人員配置には注意が必要です。
※緊急時における非難誘導のところでも述べた通り、消防法により、避難口誘導灯等を消灯する場合には「開演中、避難口誘導灯(もしくは誘導灯)を消灯するが、非常の際には点灯する」旨を観客に対してアナウンスすることが必要となる。

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