地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

8月号-No.076
2001.08.10(毎月10日更新)

●ステージラボ仙台セッション報告

●第6回芸術見本市

●制作基礎知識シリーズVol.14


●ステージラボ仙台セッション報告

ワークショップ系、見学系、実践系とコースごとに特色
 今回の開催地は、政令市として音楽、演劇、メディアアートなど幅広い芸術文化振興を展開している仙台市です。会場は大・小・映像ホールのほか、音楽や演劇の練習室をもち、アマチュアの活動拠点となっている緑に囲まれた仙台市青年文化センター。稼働率9割以上というだけあって、ラボの期間中も中学生や主婦などが練習や発表会に訪れ、仙台市民とともに過ごした感のある4日間でした。
仙台市の取り組みを少しご紹介すると、仙台市では市民の芸術文化活動を振興する目的で1986年に仙台市市民文化事業団を設立。現在、ここが中心となって青年文化センター、イズミティ21などを運営しています。一昨年、サントリー音楽賞を受賞した三善晃氏作曲の『オペラ支倉常長〜遠い帆』をプロデュースしたのもこの事業団です。
 舞台芸術の振興に力を入れている事業団では、設立と同時に音響、照明、舞台美術の裏方養成講座を開講。97年からは「劇都(ドラマティック・シティ)仙台」プロジェクトとして体系化し、プロと地元アマチュアが交流するプロデュース公演などにも着手。また、本年度から新たに戯曲賞(賞金200万円)を創設し、演劇振興係を設けて2002年春にオープン予定の演劇専用練習場の計画を進めているところだそうです。仙台市の事業につきましては、今後、レターでもご紹介していきたいと思います。
 今回はこうした意欲的な取り組みを行っているスタッフの方々が裏方となってラボを支えてくださいました。お忙しいところ、本当にどうもありがとうございました。
●宮城県名物、“齋マジック”を堪能
 美術コースは開催地仙台ならではの見学プログラムが充実。コーディネーターの熊倉純子さんの引率で宮城県美術館と1月にオープンしたばかりのせんだいメディアテークを訪問しました。特に宮城県美術館は15年前から、教育普及プログラムとしてワークショップに取り組んできた草分けで、受講生は同美術館教育普及部の齋正弘さんに導かれて、実際に幼稚園児が行うのと同じ美術館探検ツアーを体験しました。
 短パン、アロハシャツ、肩から水筒を下げたトレードマークのスタイルで登場した齋さんは、早速、“教育普及とは? ワークショップとは?”を受講生に“普及”すべく絶妙のトークを開始。

宮城県美術館の齋正弘さん(中央)による
「美術館探険ツアー」(美術コース)
 曰く「ワークショップでは準備はしない(準備をするとそれを全うすることが目的になるし、準備中が一番面白いのだからそこをみんなで一緒にやる。筆者注:必要な準備はきちんと行われています)、成果を目的としない、経過を大切にする」「ワークショップでは個人が肯定されるので団体行動をしなくてもいい」「子どもは目にウロコを付けていないので何をやっても面白がるが、それは感動ではなく、はじめてのことに出合ってびっくりしているだけ。感動そのものは伝えられないが、感動というものがあることは伝えられるし、その練習はできる。芸術的な体験ができる大人にするためには、このびっくりする練習をすることが大切。僕らが子どもに対してできるのはそこだ」などなど。
 探検ツアー中もワークショップが服を着て歩いているようなトークで、受講生たちは伝説の“齋マジック”にすっかり魅せられていました。
●ようこそ! ラボ俳優養成所へ
 現役の演出家がコーディネーターを務め、最終日に作品を発表するスタイルが定着してきた演劇コース。今回も神奈川県芸術文化振興財団演劇部門プロデューサーで劇作家、演出家の加藤直さんによる厳しい(!?)指導に冷や汗をかく毎日となりました。
 日常的なモチーフを舞台化して自作・自演するこれまでの発表会と異なり、今回の課題は、宮澤賢治の作品やみんなで創作した寓話を音楽的な語り劇にして発表するという超難題で、まるで短期集中の俳優養成所状態でした。最初は恥ずかしくて声も出せず、目線も定まらなかった受講生たちが、ワークショップで身体の使い方に目覚め、稽古を始めてたった2日間で台詞を覚え、見ている人を意識して演じる姿には感動すら覚えました。

「風を呼ぶ猫」発表会の模様
(演劇コース)
 発表を終えて、受講生たちは「これまで自分の感受性だけで舞台を見ていたが、これからはもっと客観性をもって見られるような気がする」「ワークショップを指導してもらった振付家の伊藤多恵さんに、役になっている時には自分の人間としての都合でよけいな動きを入れないほうがいいと言われてハッとした」「私は人と目を合わせるのが苦手で、視線というのは闘わせるものだと思っていたが、役柄では自然に視線が合わせられた」と、それぞれの俳優体験を振り返っていました。
 加藤さんは今回の取り組みを総評して、「フィクションの肉体をつくる中でみんなそれぞれに自分の肉体を発見し、発表会では肉体と知性とを付き合わせようとする姿が出ていたと思う。こういう“表現”に一人一人が向き合うような場を公の機関が提供していることを評価したい」と言い、「これからも表現を媒介にして、人間や地域や国といった問題と出合ってもらえれば」とのことでした。
●実践型の音楽とワークショップ三昧の入門
 ラボのベテランコーディネーター、児玉真さんによる音楽コースは、インタビュー取材から原稿の書き方、企画のつくり方まであくまで実務を前提とした極めて実践的なカリキュラムとなりました。特に企画ワークショップでは、ヴァイオリニストの森下幸路さんが実際に各地で行っているレクチャーコンサート「音楽の種あかし」の企画書を、森下さんと受講生とのディスカッションで添削する試みにチャレンジ。「もっとターゲットを絞ってほしい」「司会が進行するのではなく森下さん自身に仕切ってもらいたい」「客席から登場してもらえないか」など、さまざまなアイデアが出されていました。
 また、小・中学校の指導要綱改訂で注目されている邦楽では、演奏家を招いた企画づくりと尺八、琴に触って音を出すワークショップが実施されました。「“ぺ”と言うつもりで口を結んだまま、前に向けて息を吐きましょう」との説明で、受講生たちがひとりずつトライ。息の音がブオーという尺八の音に変わると思わず目を輝かせていました。

邦楽体験ワークショップ
(音楽コース)
 「ワークショップを一通り体験してもらいたかった」という入門コースは、コミュニケーションゲームに始まり、音楽、演劇、ダンスのワークショップ、最後は企画づくりまでと、まさにワークショップ漬けの4日間でした。
 関西の劇団太陽族を主宰し、高校生なども指導している岩崎正裕さんのワークショップでは、「行く」「行かない」という3人の短い会話のテキストを用い、グループごとに設定を考えて実演。お化け屋敷からオカルティックな洋館、警察署などを舞台に三角関係の恋人からドロボーまでが登場する、見事な寸劇を披露していました。演劇的なイメージのつくり方をわかりやすく体験できた、面白いワークショップだったのではないでしょうか。

ホール入門コース
演劇コース 音楽コース 美術コース
7月3日(火) 全体オリエンテーション・地域創造事業紹介
仙台市青年文化センター場施設見学、事業紹介
自己紹介〜自分自身そして街、ホールを売り込もう〜」
坪池栄子
「自己・他己紹介〜そして他人を作る〜」
加藤直
「自己紹介と歌唱体験〜演奏家のしたいこと〜」
村上敏明、仲田淳也
「これからの美術館・誰のための美術館?」森岡祥倫、蔵屋美香、熊倉純子
交流会

「〈音楽劇〉を提案する」
加藤直
番外ゼミ 番外ゼミ「ガイダンスと自己紹介」
7月4日(水) 「簡単な演出を実現する」
村上敏明、仲田淳也
「報告劇を試みる〜劇場を再発見する」
加藤直
「楽しい公共ホールのすすめ1〜公共ホールの役割」
津村卓
「見学とお話1〜宮城県美術館の普及活動:幼稚園児と美術館を探険!〜」
齋正弘
「楽しい公共ホールのすすめ2〜地域の催しを分析してみる〜」
宮地俊江、津村卓
共通プログラム「広報をいかに考えるか〜広報の活用術について〜」 講師:河野孝、中山弘美 「ハナハトマメマス」児玉真 「ランチ・ミーティング」
齋正弘
共通プログラム「広報をいかに考えるか〜広報の活用術について〜」 講師:河野孝、中山弘美
「楽しい公共ホールのすすめ3〜ワークショップを体験してみる【音楽編】〜」
瀬尾宗利、宮地俊江、津村卓
「〈音楽劇〉の作業場1〜自分の身体を知り使う その1〜」
加藤直、伊藤多恵、萩窓子、大月秀幸
「記事を書く1〜インタビュー〜」
箕口一美
「プログラムを市民とつくる」
木ノ下智恵子、永山智子
7月5日(木) 「楽しい公共ホールのすすめ4〜ワークショップの目的を考えてみる〜」
津村卓
「〈音楽劇〉の作業場2〜語る〜」
加藤直、萩窓子、大月秀幸
「記事を書く2」
箕口一美
「まずは敵?を知ろう〜企業メセナの方針とは?〜」 渡辺大輔、田中典子、岩本直子
「企業への支援要請・実例1」
木ノ下智恵子
「楽しい公共ホールのすすめ5〜ワークショップを体験してみる【演劇編】〜」
岩崎正裕
「〈音楽劇〉の作業場3〜自分の身体を知り使う その2〜」
伊藤多恵
「邦楽の企画を考える」
米澤浩、熊沢栄利子、児玉真
「企業への支援要請・実例2」
蔵屋美香
「楽しい公共ホールのすすめ6〜ワークショップを体験してみる【コンテンポラリーダンス編】〜」 井手茂太 「〈音楽劇〉の作業場4〜動きながら語り・歌い・演技する〜」
加藤直、萩窓子、伊藤多恵、大月秀幸
「邦楽体験ワークショップ」
米澤浩、熊沢栄利子
「グループ・ディスカッション〜作戦会議:企画書を練る・戦略を立てる〜」
「プレゼン大会〜グループごとに支援要請にトライ!〜」
渡辺大輔、田中典子
「ミーティング〜明日のための準備」 「対論講座〜〈劇場〉は何故必要か?〜」
佐伯隆幸
「演奏家という生き方」
森下幸路
番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ
7月6日(金) 「企画書をつくる」 「〈音楽劇〉の作業場5〜発表のための準備〜」
加藤直、大月秀幸
「企画会議1〜グループ討議〜」
児玉真、箕口一美
「見学とお話2〜せんだいメディアテーク〜」佐藤泰
「発表会」
全体ミーティング 「発表、相互批評」 「企画会議2〜アーティストと一緒に考える〜」
森下幸路、児玉真、箕口一美
「反省会とメセナよろず噺」
加藤種男、熊倉純子
全体会(まとめ)

コースコーディネーター
ホール入門コース
宮地俊江(地域創造ディレクター)
津村卓(地域創造プロデューサー)
演劇コース
加藤直(劇作家・演出家、神奈川県芸術文化振興財団演劇部門プロデューサー)
音楽コース
児玉真(株式会社セカンドプロデュースプロデューサー)
美術コース
熊倉純子(企業メセナ協議会シニアプログラムディレクター)
荻原康子(企業メセナ協議会シニアプログラムオフィサー)

ステージラボに関する問い合わせ
芸術環境部 研修交流担当 山口・坂田・齋藤
Tel. 03-5573-4068

●第6回芸術見本市

 地域の公共ホール、劇場などの関係者と、国内外の舞台芸術関係者との交流の場である芸術見本市が、9月12日、13日に開催されます。6回目を数える今年の見本市は、おなじみとなった東京国際フォーラムを会場に、70団体が出展予定です。
特に今回は、出展登録団体をビジターに紹介する企画として、「公共ホールの担当者対象のジャンルセミナー」「各コースプレゼンテーション後のアフタートーク」を実施。ジャンルセミナーは、演劇、ダンス、音楽、ワークショップの4分野で、ナビゲーターとして演劇では、津村卓氏(財団法人地域創造プロデューサー)と松井憲太郎氏(世田谷パブリックシアター)、ダンスは永利真弓氏(アンクリエイティブ代表)、音楽は田村光男氏(ステーション代表)、ワークショップは伊地知裕子氏(ミューズカンパニー代表)が進行を行います。
ほかにもシンポジウムや、アメリカをはじめとする海外からのプレゼンターを招いたイベントなどを実施し、皆様の来場をお待ちしております。
芸術見本市開催概要
[名称]The 6th Tokyo Performing arts Market 第6回芸術見本市
[主催]第六回芸術見本市実行委員会(財団法人地域創造、国際交流基金、国際舞台芸術交流センターで構成)
[日時]2001年9月12日、13日
[会場]東京国際フォーラムD棟、ロビーギャラリーほか
事業内容
[プレゼンテーション・アリーナ]
 舞台芸術に関わるさまざまな出展登録団体がブース出展し活動を紹介。ロビーギャラリーは入場無料。
[見本市ミーティング]
 出展登録団体とビジターとの交流会
[ジャンルセミナー]
 演劇、音楽、ダンスなどジャンル別にナビゲーターがレクチャー。
[見本市特別企画@「next」]
 細川展裕(演劇プロデューサー)や角ひろみ(芝居屋坂道ストア)が登場。次世代の一翼を担うカンパニーを紹介。
[見本市特別企画A「Focus on the USA」]
 日米文化トレード・ネットワーク(CTN)の推薦作品などを紹介。
[主催団体・共催団体企画]
[出展登録団体プレゼンテーション]
 ショーケース、映像プレゼンテーション、パフォーマンスプレゼンテーションを実施。
出展登録料:4万5000円〜
ビジター参加料(2日間共通)
前売り3000円(8月31日申し込みまで)/
当日3500円
申し込み方法
下記の事務局まで、電話、FAX、E-mailなどでご連絡ください。参加要領・詳細などをお送りします。
[芸術見本市事務局]
〒106-0032 東京都港区六本木7-3-12-6B
Tel. 03-3466-7241/03-3423-6235
Fax. 03-3466-7287
E-mail:info@tpam.co.jp
●シンポジウムにも注目! ぜひご参加ください(要事前申込)
◎アウトリーチ活動の実践家をパネリストに招いたシンポジウム
 ホール外への出前公演やワークショップなど、より多くの住民に芸術文化を提供する「アウトリーチ活動」。観客の間口を広げるほか、アーティストと地域や市民に結び付ける活動として、近年、注目を集めています。今回のシンポジウムでは、このアウトリーチ活動に焦点を当て、実際に携わっている第一線の方々を交え、今後の活動の方向性を展望していきます。
【第1部】シンポジウム 
[日時]9月12日 10:30〜12:30
[会場]東京国際フォーラム ホールD
[コーディネーター]吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所主任研究員)
[コメンテーター]熊倉純子(社団法人企業メセナ協議会シニアプログラムディレクター)
[パネリスト]櫻井俊幸(小出郷文化会館館長)、只野俊幸(仙台市青年文化センター事業課事業係長兼演劇振興係長)、永山智子(佐倉市立美術館学芸員)
【第2部】分科会
[日時]9月13日 10:30〜12:00
[会場]東京国際フォーラム G棟会議室
[講師]櫻井俊幸、只野俊幸、永山智子

昨年のシンポジウム
◎リージョナルシアター・シリーズ プレシンポジウム「リージョナル注目の女性演出家特集」
 全国各地の注目劇団を紹介するリージョナルシアター・シリーズ。3年目を迎える今年は、北海道から沖縄まで5劇団が、10月30日〜11月21日まで東京芸術劇場小ホールほかで公演を行います。今回は、リージョナルとして初めて女性が代表をつとめる劇団が登場することから、今後の活躍が楽しみな2人の女性演出家・代表をクローズアップするトークセッションを開催。彼女たちの作品の魅力に迫ります。
[日時]9月12日 15:45〜17:15
[会場]東京国際フォーラム ロビーギャラリー特設ステージ
[パネリスト]角ひろみ(芝居屋坂道ストア・神戸)、西田シャトナー(劇作家・演出家)、渡辺奈穂(演劇企画魚の目代表・沖縄)、長谷川孝治(弘前劇場代表、劇作家・演出家)

演劇企画魚の目
『Sparkling Days.』
シンポジウムに関する問い合わせ
地域創造芸術環境部 碇・内田
Tel. 03-5573-4069
※参加申込書は8月上旬発送予定

●実演家の権利と著作権者などへの対応

●著作隣接権とは一体なんでアルカ?
 ダンサーの舞踊や俳優の演技、またミュージシャンの演奏といった「実演」は著作物ではありませんが、実演家の権利として保護されています(表1参照)。演出家や指揮者も同様です。こうした実演家の権利は、「著作隣接権」といわれるもののひとつです。
表1 実演家の権利
権利の種類
内容 例外
録音・録画権 実演(舞踊・演技・演奏等)を録音・録画する権利(増製権を含む) 実演家の許可を得て映画の著作物に録音・録画された実演
放送・有線放送権 実演を放送・有線放送する権利 実演家の許可を得て録音・録画された実演
送信可能化権 実演をホームページにアップロードするなどの権利 実演家の許可を得て録画された実演
譲渡権 実演の録音物等を公衆に譲渡する権利 1.実演家の許可を得て録画された実演
2.一度適法に譲渡された実演
  表1を見ればわかるとおり、実演家の権利の対象になるのは、現実に行われた「その実演」だけです。ですから例えば、ある舞台作品について、初演の演出と同じような演出で再演されたとしても、初演の演出家は基本的にクレームをつけたり、演出使用料を請求することはできないのです。ですから、このような演出家の権利を確保するためには、初演時に主催者と演出家との間で、再演についての取り決めをしておくことが必要になります。同じように、ある俳優の演技を別の俳優がまねたからといって、原則としては権利の侵害にはなりません(ただし、有名タレントの物まねをしてテレビCMに出演する場合などは違った問題があり得ます)。
 上記のほか、著作隣接権としては、レコード製作者の権利(いわゆる原盤権 注1)や、放送事業者・有線放送事業者の権利があります。しかし、こうした実演家の権利やレコード製作者の権利の中には、「演奏権・上演権」は含まれていません。例えば、買ってきたCDをそのままCDプレーヤーで再生してホール内で流したとしても、ミュージシャンやレコード製作者の権利を侵害することにはなりません。ですから、実務上は、CDから他の媒体に複製したりしない限り、実演家やレコード会社の許可を得る必要はないことになります。
 これに対して、CDに含まれる歌詞と楽曲は著作物ですから、原則として舞台公演のための演奏(テープやCDの再生を含みます)には著作権者の許可を得る必要があります。日本では、ほとんどの楽曲と歌詞は社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理しておりますので、実務上はJASRACへの使用許諾申請を行うことになるでしょう。
注1 音楽用CD等のマスターテープ(いわゆる原盤)を製作した者に発生する権利。

●権利者への対応
 このように、「著作権者」「著作者」あるいは「隣接権者」といった権利者は、「著作物」や「実演」に対して一定の「禁止権」をもっており、権利者の「許諾」がなければ作品の録画などの利用行為はできません。しかし、この原則には幾つかの例外があります。例えば、1.非営利目的の上演や演奏は、2.観客から入場料等を受け取らず、3.実演家に報酬が支払われないならば、著作権者の許可なくすることができます。著作権者は、これを止めることはできません。
 また、他人の著作物や実演は、一定の条件で「引用」して利用することができます(注2)。他人の著作物をパロディ化する場合など、この「引用」として認められるか、議論になることがありますが、一般的に、日本の裁判所は他人の著作物のパロディ利用に対して寛大とは言えないように思います。
注2 著作権法第32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定しています。判例では、引用が認められるためには少なくとも、1.引用する側と引用される側の作品がの間が明瞭に区別でき、かつ、2.両者が主従の関係になければなりません。

 なお、引用そのものが適法だと認められる場合でも、出典を明示することが義務づけられますので、注意が必要です。このからみで、舞台公演で他人の作品を引用した場合には、どのように出典を明示すればいいのか、質問されることがあります。一般的には、公演プログラムや会場での掲示を利用して、見やすく引用元と引用箇所を示せばいいのではないでしょうか。また、上で申し上げたとおり、そもそも引用が認められるためには一定の条件をクリアしなければなりません。出典さえ示せば、どんな引用でも認められるわけではありませんのでご注意ください。
 このほか、私的使用のための著作物や実演の複製や、教育機関での複製は、やはり一定の場合に認められています。ただし、「私的使用」と認められるための条件は厳しく(注3)、公演のための戯曲や楽譜のコピーや、公演アンケートの内容を次回公演のチラシに掲載したり、ホールのホームページに掲載するような行為は、いずれも疑問のあるところです。ですから、公演アンケートの内容をチラシやホームページに掲載利用したいのであれば、アンケートの目立つ場所に、「本アンケートの内容は、チラシや当ホールのホームページに掲載利用させて頂くことがあります」等と表示し、入場者の了解をとるようにするべきでしょう。
注3 「個人的、家庭内又はこれに準ずる限られた範囲内の利用」でなければなりません。

●その他、ホール実務に関わる権利
 歴史的なナマの事実は著作物ではありませんので、例えば実在の人物や出来事に基づいて戯曲を著作したという場合、他人の「著作物」を利用したことにはなりません。ただし、題材や描き方によっては、著作権法とは離れて、モデルとなった人物やその遺族への名誉毀損やプライバシー侵害に当たる、というクレームを受ける危険性はありますので、注意が必要です。こうした名誉毀損やプライバシー侵害の場合、作家側の「表現の自由」との衝突が往々にして問題になります(注4)。
注4 もっとも、裁判では表現者の側に厳しい判決が下される例が多く、劇作家でもある柳美里氏の処女小説が実在の人物の名誉とプライバシーを侵害したとされた「石に泳ぐ魚」事件でも、裁判所は、「プライバシーの侵害は、プライバシーの開示が表現行為にとって必要不可欠な場合に限って認められる」と限定的な見方を示しています。
 プライバシーとは似て非なる権利に、著名人などに認められるパブリシティ権があります(注5)。典型的なのは、出演タレントのグッズを勝手に製作販売するような場合で、このような「商業目的」や「営利目的」がない場合には、そもそもパブリシティ権は問題になりにくいと言われています。
注5 パブリシティ権とは、「自分の氏名又は肖像を有償で第三者に専属的に利用させる権利」のことで、著名人の顔、氏名、声、個人情報など、およそその著名人を示す情報は広く権利の対象になります。
 さて、以上は、著作や実演、名誉といった形のないものに発生する権利の話でした。これに対して、形あるモノについての問題になるのが所有権です。例えば、舞台美術のデザインは著作物で、そこには著作権が発生します。それと、デザインに基づいて現実に製作された装置や衣装を誰が所有するか、ということとは全く別問題です。主催者が材料費や手間賃を負担して装置や衣装を製作した場合、モノとしての装置・衣装の所有権は主催者がもつ場合が多いでしょう。しかし、そのことは、デザインの著作権が主催者に譲渡されたことを意味しないのです。
 前回お話した著作権の中には、「作品を鑑賞する権利」というものは含まれていませんでした。ですから、誰かがこっそりホールに忍び込んで舞台公演を見たとしても、作家やデザイナーといった著作権者の権利を侵害したことにはなりません。しかし、ホールに忍び込めば、ホール経営者の所有権を侵害することになります(注6)。観客は、入場料を支払ってホールの許可を受けて、初めてホールへの入場を許されるのです。
注6 もちろん、住居侵入罪という犯罪に該当する可能性も高いでしょう。
 何を当たり前な、と思われるかもしれませんが、所有権と著作権の関係は意外と混同されがちです。例えば、著作権や実演家の権利の中には録画権(複製権)も含まれますから、原則として著作権者や実演家の許可がなければ舞台公演は録画できないはずです。しかし、上で説明したように「私的使用」が目的の場合の複製(録画を含みます)は誰でも自由にできますから、「私的視聴のためだ」と言われてしまうと著作権や実演家の権利を理由に録画を止めることは難しいのです。こんな時、ホール側がカメラの持ち込みや場内撮影の禁止の拠り所にできる権利があるとすれば、それはホール自体の所有権(またはその現れである施設管理権)ということになります。

●著作者人格権と著作権・隣接権の寿命
 著作物を現実に創作した者を「著作者」と呼び、原則としてこの「著作者」が著作権をもちます(詳しくは前回制作基礎知識参照)。ところが、この著作権は契約などで自由に譲渡することができるため、著作権が譲渡されてしまって、「著作者」と「著作権者」が違う個人・団体になるという事態も起こります。この場合、「著作権者」には著作権(著作財産権)があるのですが、実は「著作者」にも、一定の人格権というものが残ります。これを「著作者人格権」と言って、譲渡も相続も放棄もできない権利だと言われています。
 また、著作権や隣接権には保護期間というものがあり、この期間が過ぎれば誰でも利用できるようになります。このように保護期間の終了した作品を「パブリック・ドメイン」に陥った、などと言います(注7)。なお、アメリカ、イギリス、フランス等の旧連合国や旧連合国民の著作物については、「戦時加算」といって日本での保護期間が延びることがあるため、注意が必要です。
著作権(著作財産権)
公表権 未公表の自分の著作物を公表するかしないか、また、いつ、どのような形で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権 自分の著作物を公表するときに、どういう著作者名を表示するか、あるいは表示しないかを決めることができる権利
同一性保持権 自分の著作物の内容、又は題名を意思に反して勝手に改変されない権利
(名誉・声望保持権) 著作者の名誉等を害する方法で著作物を利用する行為は禁じられる
注7 著作権の場合、原則は著作者の死亡の翌年から50年ですが、無名・変名・団体名義の著作物などは公表の翌年から50年で保護期間が終了します。


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