地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

10月号-No.078
2001.10.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●リージョナルシアター・シリーズ
●第6回「芸術見本市」報告

●制作基礎知識シリーズVol.14


●全国から若手実力派劇団をラインナップ

 全国各地の若手・実力派劇団を紹介する「リージョナルシアター・シリーズ」が、今年も10月30日〜11月21日にかけて、東京芸術劇場ほか都内劇場で開催されます。
 このシリーズは、地域創造と東京国際舞台芸術フェスティバルとの共催により1999年にスタート。出演劇団については、各地の公立劇場などから公募した推薦をもとに決定しています。3年目を迎える今年は、北は北海道から南は沖縄まで5劇団が登場。今号では、今年の見どころと、関連事業「リージョナルシアターズ・ミーティング」について詳しくご紹介します。

●今年の見どころ
 今年は、21世紀の幕開けに相応しく、全国から若手成長株で勢いにのる劇団が揃いました。シリーズの先陣を切るスクエア(大阪)は、結成5年目ながら、シチュエーション・コメディの新たな担い手として関西で人気急上昇の大成長株です。
 そして注目は、若手女性陣の活躍です。まずは、スタッフ・キャスト全員が女性という芝居屋坂道ストア(神戸)。作家・演出家である代表の角ひろみは、震災をテーマにした『あくびと風の威力』で第4回日本劇作家協会新人戯曲賞佳作を受賞。同作を携え2001年2月に敢行した下北沢公演では、東京初公演ながら700人を動員しました。勢いにのる彼女たちの新作に期待が高まります。そして今回沖縄から初参加となる演劇企画魚の目(沖縄)は、渡辺奈穂(演出家)を中心に98年に結成されたプロデュース集団。沖縄の現代の若者をリアルな感覚とコトバで切り取った作品が支持を集めています。
 そのほか、実力をつけてきた北海道演劇財団附属劇団であるTPSが、札幌若手劇団のトップランナー、北川徹を作・演出に起用するのも話題です。
 若手勢の中にあって、渋い演技でシリーズ全体を引き締めてくれそうなのが、伊沢勉の会(名古屋)です。プロジェクト・ナビの看板俳優で劇作家の伊沢勉を中心にしたユニットで、今回は伊沢が愛知県文化振興事業団が主催する第1回AAF戯曲賞で佳作を受賞した作品での参加となります。

●ミーティングのテーマは「共同製作」
 会期中10月30日には、各地の公立ホール・劇場の担当者を対象にした「リージョナルシアターズ・ミーティング」を開催します。
 この企画は、地域で活躍する劇団と全国のホール・劇場関係者の交流・情報交換の場として開催するもので、今年のテーマは「共同製作〜作品づくりのためのネットワークについて考える」(仮)です。
 最近、情報交換や共同招聘といったネットワークにとどまらず、公立館同士が本格的に手を組み作品製作に取り組むネットワークが模索されつつあります。ミーティングでは、劇場サイド、表現者サイドがこれからの地域間共同製作を考えるバトルトークを展開します。関心のある方はどなたでも参加できますので、担当までお問い合わせください。
リージョナルシアターズ・ミーティング
[日時]10月30日(火) 13:30〜17:45
[会場]東京芸術劇場中会議室
[参加費]無料
[参加方法]要申込み。申込み用紙をお送りしますので、お問い合わせください。
◎セッション1(13:30〜15:00)
「共同製作(1) 公立ホールが考えるネットワーク」
 照屋幹夫(沖縄市民劇場あしびなー)
 岡野亜紀子(神戸アートビレッジセンター)
ほか
◎セッション2(15:15〜16:45)
「共同製作(2) アーティストが考えるネットワーク」
 長谷川孝治(弘前劇場代表)
 泊篤志(飛ぶ劇場代表)      ほか
◎フリーディスカッション(16:45〜17:45)
※パネリストは変更になる場合があります。

●東京芸術劇場小ホール1
●スクエア「俺の優しさ」(大阪)
[日程]10月30日(火)〜11月1日(木)
[作]森澤匡晴
[演出]上田一軒
[舞台美術]柴田隆弘
[照明]池田哲朗
[音響]三好里美
[舞台監督]松下清永
[制作]伊藤恭子
[出演]北村守、奈須崇、上田一軒、森澤匡晴、松蔵宏明、重定礼子(南河内万歳一座)


『俺の優しさ』

◎1996年、上田一軒、森澤匡晴により結成。現在メンバーは男性4人。脚本を森澤、演出を上田が担当し、一貫して市井の人間の生活を素材に一幕もののコメディを上演している。関西小劇場界でシチュエーション・コメディの新たな担い手として人気急上昇中の劇団。
◎問い合わせ スクエア Tel. 090-1274-7756

●芝居屋坂道ストア「サイダァーの渚〜マイナス10000℃の夏」(神戸)
[日程]11月3日(土)、4日(日)
[作・演出・衣裳]角ひろみ
[舞台監督]永易健介
[照明]吉本有輝子
[音響]佐藤真弓
[音楽]大木なつ美
[制作]近藤のり子、大木なつ美
[出演]角ひろみ、大木なつ美、日名子知佐、本多真理、末満健一(アプリコット)


芝居屋坂道ストア

◎1995年、宝塚北高校演劇科OGが集まり旗揚げ。富良野塾で学んだ角ひろみを座長に、役者・スタッフともメンバー全員が女性。角ひろみは、98年、阪神大震災と少女たちを描いた『あくびと風の威力』で第4回日本劇作家協会新人戯曲賞佳作を受賞した。
◎問い合わせ OFFICE坂道 Tel./Fax. 0722-52-1726

●伊沢勉の会「お父さんの旗日」(名古屋)
[日程]11月7日(水)、8日(木)
[作]伊沢勉
[演出]竹下喜六
[舞台美術]永井優二
[舞台監督]土居辰男
[照明]安藤昇益
[音響]細川ひろめ
[制作]小林隆朗
[出演]小林正和、伊沢勉、木村庄之助


『お父さんの旗日』

◎名古屋を代表する劇団プロジェクト・ナビの看板俳優であり、劇作家としても活躍する伊沢勉を中心に1992年に結成されたユニット。伊沢作品の上演を軸に、名古屋、大阪で公演を重ねる。2000年に伊沢が『お父さんの旗日』で愛知県文化振興事業団が主催する第1回AAF戯曲賞佳作を受賞。
◎問い合わせ プロジェクト・ナビ Tel. 052-807-2540

●演劇企画魚の目「Sparkling Days.」(沖縄)
[日程]11月10日(土)、11月11日(日)
[作]金城裕樹
[演出]渡辺奈穂
[音響]小越友也
[照明]嘉数貞夫
[舞台装置]真栄平仁
[制作]上田真弓
[出演]前田尚子、知念小枝子、O.Z.E/我那覇孝淳、和宇慶咲輝、熱田裕一、上間了一、金城理恵ほか


『Sparkling Days.』

◎1998年、渡辺奈穂、上田真弓の2名でスタート。現代の沖縄で、より面白く刺激的な、上質のエンターテイメントを企画・創作していくことを目的とした集団。現代の沖縄の若者を、リアルな感覚とコトバで切り取った作品が支持を集めている。
◎問い合わせ 演劇企画魚の目 Tel. 098-886-6880

●シアタートラム
●TPS「遊園地、遊園地。」(札幌)
[日程]11月20日(火)、11月21日(水)
[作・演出]北川徹
[舞台監督]熊倉英記
[照明]吉澤耕一
[音響]大江芳樹
[制作]平田修二
[出演]山野久治、中田春介、大橋哲郎、木村洋次、柴田智之、宮田圭子ほか


『遊園地、遊園地。』

◎1996年、北海道演劇財団設立と同時に、附属演劇集団「シアタープロジェクトさっぽろ(略称TPS)」として結成。札幌を拠点にプロフェッショナルな演劇創造を目指す。今回作・演出に起用された北川徹は、ロンドンマイムスクールでパントマイムを学んだ後、96年、横尾寛とともに札幌でHAPPを旗揚げ。何気ない会話の中に秘めた重層的な世界観が高く評価されている札幌若手劇団の旗手。
◎問い合わせ 北海道演劇財団 Tel. 011-520-0710

リージョナルシアター・シリーズ
[チケット料金]
前売2500円・当日2800円
5演目セット券 8000円
[チケット取り扱い]
チケットぴあ:Tel. 03-5237-9999
E-mail:ticket@mbi.nifty.com
各劇団(上記)

リージョナルシアター・ミーティングに関する問い合わせ
財団法人地域創造芸術環境部
宮地・齋藤 Tel. 03-5573-4065

●ブースを無料公開した「ロビーギャラリー」で一般にアピール

「第6回芸術見本市」が9月12日、13日の2日間にわたり東京国際フォーラムで開催されました。今回の見本市では、芸術文化団体や地域の公共ホールの活動をより広く一般にもアピールしようと、ガラスで囲まれたフォーラムの巨大ロビーに「ブースギャラリー」を設置。ブース部門の一部と特設会場での催しを無料公開し、ビジネスマンたちの興味を誘っていました。
前日の11日、震撼すべきアメリカの同時多発テロ事件が勃発。見本市の特別企画「Focus on the USA」でアーティストのデモンストレーション映像を紹介するために来日していたアメリカのプログラムコミッティのメンバーには大変な衝撃となりました。一時は中止も検討されましたが、「テロに負けるわけにはいかない。こんな時だからこそ国や宗教を越えた文化交流の話をしたい」とのメンバーの意向で実現。期せずして、見本市に集った人々すべてが「芸術文化の意義」について自らに問い質さずにはいられない2日間となりました。
不測の事態にもかかわらず、見本市にご協力をいただき、本当にどうもありがとうございました。


ロビーギャラリー全景


「アウトリーチ」シンポジウム風景

●大阪・東京連続シンポジウム「アウトリーチ」
 昨年に引き続き、今年も地域創造と全国公立文化施設協会の共催により、大阪と東京の見本市で「アウトリーチ」をテーマにした連続シンポジウムが開催されました。今回は、財団が発行した調査研究報告書「アウトリーチ活動のすすめ」で取り上げた公立文化施設のキーパーソンがパネリストとして参加(大阪:厚木市文化会館、小出郷文化会館、岡山県立美術館、東京:仙台市青年文化センター、小出郷文化会館、佐倉市立美術館)。地域の熱心な取り組み報告に会場にはメモを取る人の姿が多数見られました。
 東京では1日目のシンポジウムに続き、2日目に3つの施設ごとに分かれた分科会を開催。小出郷文化会館をテーマにした第1分科会では、6町村にまたがる広域文化施設として利便性の悪い地域に音楽を届けるアウトリーチ活動について、守門村議会議場声楽コンサート、城山トンネルコンサートなどの反響と事業の詳細が報告されました。


「next」で対談する
西田シャトナー(左)と
角ひろみ(右)

 「小出郷文化会館では『文化のまちづくり憲章』にもとづき、すべての取り組みを育成事業と位置づけて実施してきた。アウトリーチ活動で地域に出向くことにより地域とホールとの信頼関係が生まれ、アーティストの才能を活かす場も広がった。しかし、(アウト)リーチはツモらなければ意味がない。これからは、リーチがツモって聴衆育成になるよう仕掛けていきたい」と桜井俊幸館長。「100年後には日本の人口が半減するというデーターもある。小出郷では30年後に現在の4万6千人から3万人にまで減るという。30年後に小出郷文化会館が地域社会で生き残っていたいとすれば、子どもを対象にした育成事業をやるしかない」。直接、事業を担当している榎本広樹さんの危機感溢れるコメントが印象的でした。
 平成16年の開館準備のためにホール運営について勉強しに来たという長野県松本市市民会館建設課の久保田忠良さんは、「小出郷の取り組みを聞いていて一番感じたのは、ホールとしてのコンセプトをきちんと持つことが必要だということ。松本市にはサイトウ・キネンのような国際的な催しもあればアマチュア劇団などの土壌もあるが、今はそれぞれが独自に活動していて、彼らが地域に入っていけてないように思う。個人が自主的にやっている活動をホールが吸い上げるのではなく、設備の整ったホールを媒介にして、仲良しクラブではなく彼らがうまく地域に出ていけるようにできればと思った」と手応えを感じた様子でした。
 このほか、「劇都(ドラマティックシティ)仙台」事業として演劇によるまちづくりを推進している仙台市青年文化センター、まちや人と美術や美術館の関わりをテーマにした「体感する美術」シリーズを市民と一緒に企画し、町中で展開している佐倉市立美術館など。いずれも継続的、多角的な取り組みばかりで、アウトリーチの奥の深さを痛感するシンポジウムでした。
 「芸術的な分野を題材にしてどのくらいまでまちづくりができるのか可能性を知りたかった」(さいたま市ふるさと振興機構・藤野富美子)といった参加者のニーズにも充分応えられたのではないでしょうか。

●リージョナルシアター・シリーズの女性演出家も登場
 今回の見本市では、これから活躍するカンパニーを紹介する「next」というコーナーを新設。その中で地域創造が主催する「リージョナルシアター・シリーズ」(詳細は2、3頁参照)の参加劇団も取り上げられ、このシリーズ初の女性演出家、角ひろみさん(芝居屋坂道ストア・神戸)と渡辺奈穂さん(演劇企画魚の目・沖縄)が地域で活動する先輩演出家と対談しました。
 角さんと対談したのは同じ関西を拠点とする西田シャトナー氏。「アメリカの連続テロ事件で阪神淡路大震災のことを思い出した。そういえば角さんが注目されるきっかけになった『あくびと風の威力』(第4回日本劇作家協会新人戯曲賞佳作)は震災が題材だったけど…」と問いかけると、「震災直後には芝居にするのだけは避けたいと思っていたが、何年かたって、まるで何もなかったかのように意外なほど遠くに感じている自分がいた。その感情をほじくり出してみたかった」と角さん。その後のたたみかけるような質問に、時折、「エー、わからへん」と戸惑いながらも、「めったに起こらないことを劇的だというのは違うと思う。私にとっては家でボーッとしている時の方が劇的」など、作家としての考え方が随所で聞けた対談となりました。


特設会場でのデモンストレーション

 また、東京出身で芝居をやるために沖縄に移住したという渡辺さんには弘前劇場の長谷川孝治氏がアタック。稽古場の広さや劇団員の生活手段など、地域の劇団運営事情にはじまり、話題はふたりの芝居の共通テーマである現代口語としての方言へ。「母の実家があったので幼い頃から沖縄の芸能を見て育ち、言葉のかっこよさに惹かれて自分のルーツでもある沖縄で芝居をやろうと思った。しゃべっている言葉を録音して構成台本をつくったこともある」と渡辺さん。
 ふたりの話を聞きながら、地域から演劇を変えていける可能性を感じた人も多かったのではないでしょうか。

第6回「芸術見本市」概要
[会期]2001年9月12日、13日
[会場]東京国際フォーラム
[主催]第六回芸術見本市実行委員会(財団法人地域創造、国際交流基金、国際舞台芸術交流センター)
[出展登録団体数]84団体
[芸術見本市総参加者数]2日間延べ1500人

芸術見本市に関する問い合わせ
地域創造芸術環境部 碇・内田
Tel.03-5573-4069 Fax.03-5573-4060

●作品の「委嘱内容」と上演条件などの
「許可内容」に分けて考えよう

制作基礎知識シリーズVol.14 ホール実務に関わる契約(2)

自主公演の場合
 前回は、いわゆるパッケージの買い公演を取り上げましたが、今回は、より積極的にホール自らが演劇の自主制作を行う場合(プロデュース公演)の契約について解説します。

(1)上演契約─オリジナル・ミュージカルを制作する場合
 まず、オリジナル・ミュージカルを制作する場合を考えてみましょう。もっとも、気をつける点はドラマ(ストレート・プレイ)や舞踊作品でもあまり変わりはありません。この場合、多くは劇作家や作詞家・作曲家に戯曲や楽曲づくりを委嘱することがスタートとなるでしょう。この際につくられるのが、「委嘱・上演契約」などと呼ばれる契約です。委嘱・上演契約の内容は、(1)どのような条件で、どんな戯曲(楽曲)をいつまでに完成してもらうのか、という委嘱業務の部分と、(2)完成された戯曲(楽曲)を、どのような条件で上演その他二次利用することができるか、という許可(ライセンス)の部分に大きく分けて考えるとわかりやすいでしょう。もちろん、そのほかに他の契約にも共通するような一般条項といわれる部分もあります(注1)。
 戯曲の場合、日本劇作家協会と社団法人日本劇団協議会が合意した統一モデル契約書が存在していますので、参考になるでしょう。仮にモデル契約書を使わないとしても、契約では同じような事柄がカバーされる必要があるからです。モデル契約書は全部で3種類ありますが、ここでは「執筆委嘱・上演用」が該当します。
 まず執筆委嘱の部分ですが、モデル契約書では作品プロット、第1稿、完成原稿のそれぞれについて、提出期限を決める形になっています。これは、執筆が予定通りに行われているか、制作側が把握するためでもあり、いずれかの期限が守られない場合、制作側は猶予期間を与えて催促した後、契約を解除することもできます。
 次に、完成された戯曲の扱いについてですが、戯曲の著作権は劇作家にあるため、制作側は勝手に内容を変更して上演することはできません(注2)。反面、制作側は当初3年間は日本語圏内での独占的な上演権を持ちます(注3)。モデル契約書では、「執筆委嘱料と上演料」として一定の金額を書き込む形になっていて、決められた上演回数までの上演料はこの金額でカバーされます(注4)。ただし、上演期間内にその回数を超えて上演すると再演となり、1ステージ当たり規定の上演料が必要となります。また、テレビ放映等の二次利用については別途協議して決めることになっており、制作側は独断でテレビ放映等を許可することはできません。
 楽曲の委嘱の場合でも、契約の注意点は劇作家の場合と似ています。ただし、作詞家・作曲家がすでに社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の会員ですと、つくられた曲は自動的にJASRAC管理下に入り、その許可がないと上演利用できなくなりますのでご注意ください。
注1 例えば、一方が契約に違反した場合に、他方が契約を解除したり、損害賠償を求めることができる、とする規定があります。また、前回(「ホール実務に関わる契約(1)」)で説明した裁判管轄の規定を入れることもあります。
注2 もっとも、特にストレート・プレイの場合等は演出家のいわゆるテキスト・レジーが頻繁に行われており、無断改変は許さないという規定との整合性が問題になることもあります。さらには、こうしたテキ・レジによって、当初の戯曲と上演台本がかなり違ってきた場合、その著作権がすべて劇作家に帰属すると言えるのか、という問題も出てきます。戯曲の著作権の帰属については、「著作権と契約編(1)」を参照。
注3 これは、制作側が、戯曲の著作権を持つ劇作家から、一定の期間中の上演については独占的に許可を受けており、他の何者にも上演許可は与えられない、という意味です。
注4 モデル契約書には記載されていませんが、日本劇作家協会の上演料基準としては、「総製作費の5%。ただし、どんな場合でも金100万円は下回らない」とされています。

(2)上演契約─既存の楽曲を使って市民オペラ等を制作する場合
 オペラに限らず既存作品を利用する場合には、対象となる楽曲や戯曲の日本での著作権保護が切れていないかをまず確認しましょう(注5)。仮に権利が残存しているのであれば、著作権者から上演の許可を得る必要があります。この場合の契約が「上演契約」です。もっとも、使われるのが日本の楽曲であれば、上で説明したJASRACが日本での上演権を管理している可能性が高くなります。この場合はJASRACへの上演許可の申請と許可、という比較的簡単なルートでことは運び、幸か不幸か契約交渉という要素はあまり出てきません(注6)。他方、外国のオペラ曲やミュージカル曲を上演したい場合、日本での上演権(いわゆるグランドライツ)は、海外の音楽出版社が管理しており、JASRAC管理外である可能性が高くなります。この場合、権利の管理先を捜し当て、(日本にエージェントがいない場合には)外国の権利者との契約交渉、という些か面倒なルートを辿らなければならないかもしれません。
 なお、既存の日本の戯曲を上演利用する場合、劇作家との上演契約を結ぶことになります。この場合、先ほど述べた統一モデル契約でいえば、「既存作品上演用(独占型)」か「既存作品上演用(非独占型)」のいずれかの書式が参考になるでしょう(注7)。問題となる点は、「執筆・委嘱型」と似ていますが、当然戯曲の執筆という要素はありません。
注5 著作権の保護期間については、「著作権と契約編(2)」を参照。
注6 権利処理の手間という点では、これは概ね幸福なことですが、条件交渉の余地がないことから「不幸」と感じる人もいるかもしれません。
注7 「非独占的上演権」というのは、制作側はその戯曲を条件に従って上演することはできますが、他方、第三者にも同時期に上演許可がおりるかもしれない、ということです。


(3)俳優・ダンサーの出演契約
 作品や公演時期が決まると、俳優、ダンサーなどへの出演依頼が可能となりますが、ここで結ばれるのが「出演契約」です。出演契約では、公演日程ばかりでなく、稽古日程や稽古場所も規定しておくべきでしょう。特に、多忙な出演者の場合、稽古日程の確保は大きなテーマとなります。次に問題となるのは、出演者の「降板」についてです。遅刻・欠席や契約違反があった場合に契約を解約できる規定のほか、出演者に不良行為やスキャンダルがあった場合にも、解約できるようにしておく契約が一般的です(注8)。また、逆にホール側が公演中止を決めた場合の措置も記載しておくべきでしょう(注9)。
 事務所や劇団に所属する俳優の場合、契約書に署名するのは誰かという問題もあります。契約書は、当事者として署名(記名捺印)した者しか拘束しないのが原則ですから、事務所が契約当事者ならば、理論上、出演者は契約に直接しばられてはいないことになります(注10)。ですから、事務所が契約当事者になる場合、そこが十分な管理能力や責任能力を持っているのか、慎重に検討すべきでしょう。このほか、出演者は実演家として、公演の録音・録画や放送を拒絶できる権利を持っていますから、公演の二次利用についても作家やデザイナーと同様に、規定しておくべきでしょう(注11)。
注8 出演者が犯罪行為を行って逮捕されるような場合が、その典型です。
注9 公演キャンセルについては、「ホール実務に関わる契約(1)」を参照。
注10 これと似て非なるものに、事務所がアーティストの代理人として、アーティストのために署名する場合があり、この場合にはアーティスト本人が契約当事者ということになります。
注11 実演家のいわゆる著作隣接権については、第2回参照。

(4)各種スタッフ契約
 出演者だけでなく、振付家、演出家や装置、衣装デザイナー等とも契約を結ぶ必要が出てきます。これを広い意味で「スタッフ契約」などと言います。演出家や振付家との契約の場合、公演日程と共に稽古日程を規定すべきことは出演者と同様ですが、むしろ逆に、演出家や振付家サイドから、公演の質を維持するために最低これだけの稽古時間を保証して欲しい、と要求されることもあり得ます。
 デザイナーとの契約の場合には、まず業務の範囲を特定することが必要になります(注12)。装置、衣装デザイナーに共通して、事前ミーティングへの出席、デザインの提出(および手直し)、装置や衣装の製作への立会いや助言、仕込みやリハーサルへの立会い、等が考えられる作業ですが、特に「デザインの提出」の意味が問題になることがあります。装置で言えば、デザイン画の提出のほか、デザイン図面の提出でいいのか、設計図面の提出まで求められるのか、模型の提出は必要か、といった問題で、やはり契約書に記載しておくべきことです。
 このほか、再演に関する規定もあります。振付家は著作者ですので、振付家の承諾がなければ再演ができないことは当然です。他方、演出家は一般に著作者ではないため(注13)、契約に記載がない場合、法的には再演にノーと言ったり、追加の報酬を要求できないことになってしまいます。そこで、演出家の立場からすれば、契約上、再演の際の取扱いを決めておく必要性が高いことになります。これに対して、デザイナーはやはり著作者ですから、契約上の取り決めがない場合、勝手にデザインの再演利用はできないはずです(注14)。
 なお、出演契約・スタッフ契約を通じて、制作者は労働基準法の規定をよく理解して、出演者やスタッフの雇用条件がこれに違反しないように、気を配るべきでしょう(注15)。
注12 なお、日本舞台美術家協会では、大変詳細な「舞台美術家のための契約問題ハンドブック」を発行しており、またサンプル契約書も公表しています。
注13 演出家や指揮者は、俳優やダンサーと同じ「実演家」です。
注14 もっとも、いずれの場合も、契約で再演の際の条件を決めておく実益はあります。
注15 出演者やスタッフが「労働者」だとすると、問題となる労働基準法等の規定には、(1)時間外・休日労働の禁止、(2)女性・年少者の特例、(3)契約条件の説明義務、(4)最低賃金と賃金の支払時期、(5)労災の適用、(6)労働安全衛生法の遵守、などがあります。

(5)その他の注意点
 以上のほか、新聞社や放送局の事業部など、さまざまな団体が公演の共同主催者やスポンサーとなる場合、これらの団体との「共催契約」や「後援契約」を結ぶことがありますが、ここでは割愛します。
 なお、コンサート事業や伝統芸能の自主事業であっても、問題となる契約の種類と内容の注意点は大同小異です(注16)。また、映像制作の場合にも、必要な契約の種類は似ています。ただし、映像の場合、制作の過程でキャスト・スタッフに要求される作業内容が異なること(注17)、完成した映像の利用方法が異なること(劇場公開、放送、ビデオ化等の多角的な利用が当然)、そのためにすべての利用権を製作者に集める(注18)のが普通であること、等が異なります。
注16 もっとも、伝統芸能の場合、そもそも契約を結ぶのか、また、座頭とだけ結ぶのかなど、実績に即して考えるべきでしょう。
注17 例えば、俳優であれば、撮影時の出演だけでなく、いわゆるポストプロダクション作業が必要です。
注18 上映や放送等、具体的な利用方法や条件を記載しておくと良いでしょう。

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