地域創造

WWW を検索 jafra.or.jp を検索 powered by google  

書庫

戻る

地域創造レター

News Letter to Arts Crew

5月号-No.097
2003.05.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●平成15年度支援事業紹介

●制作基礎知識シリーズ



平成15年度事業紹介

●10周年を見据えて多彩なプログラムを展開


 地域創造は、平成16年度に財団設立10周年を迎えます。大きな節目を目前に控え、財団では現在、事業の見直しに入っていますが、本年度はこれまでの事業を継続しつつ、今後の展開を見据えて、これまで以上に地方公共団体などと緊密な連携を図りながら事業を実施したいと考えております。皆様の積極的なご参加をお願いいたします。また、いろいろとご意見を伺う機会も多いと思いますので、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

●リージョナル・シアターが5周年特別企画
 1999年から地域を拠点に活動する劇団の東京公演を支援してきた「リージョナル・シアター・シリーズ」が5周年を迎えます。これまでに14地域、21劇団を紹介し、地域劇団の登竜門として評価していただけるまでになりました。
 本年度は5周年特別企画として、地域を拠点に活躍する作家と演出家によるコラボレーション公演を行います。大阪の深津篤史(桃園会)の短編を北九州の泊篤志(飛ぶ劇場)が演出し、京都の鈴江俊郎(劇団八時半)の短編を名古屋のはせひろいち(劇団ジャブジャブサーキット)が演出する2作品です。出演者も、これまでの出演劇団を中心にキャスティングする予定で、劇団・地域を越えた作品づくりを試みます(このほかに3劇団が参加して、2月16日から3月7日まで東京都芸術劇場小ホールで実施予定)。

●アートミュージアムラボが本格的にスタート
ステージラボのワークショップ風景 地域創造では財団設立以来、少人数制・体験型の研修事業「ステージラボ」を実施し、地域の公立ホールの人材育成に力を注いできました。今年度は巷でも話題になっている横浜の赤レンガ倉庫1号館と、ステージラボのコーディネーターでお馴染の中村透氏が芸術監督を務める沖縄・佐敷町のシュガーホールで実施します。
 特に横浜セッションでは、前回の大分セッションで実験的に開催した「アートミュージアムラボ」(公立美術館を地域づくりに生かすことを目的とした研修事業)の1回目を同時開催します。コーディネーターは教育普及事業の第一人者である世田谷美術館の高橋直裕学芸員です。

●ブロックラボで地域に講師派遣
 今年度から新規に実施するのが「ブロック・ラボ」です。地域創造では、これまで公立文化施設の職員および市町村の文化担当者向けセミナーに力を入れてきましたが、加えて、都道府県、政令指定都市の文化担当課長を対象として「芸術文化が地域に果たす役割と公立ホールの有効な活用」について意見交換する場を設けることにしたしました。
 全国を7ブロック(北海道・東北、関東、中部、北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄)に分け、地域創造から2名程度の講師(芸術専門家および総務省職員)を派遣し、各地の事例紹介や質疑応答等を行います。地域ブロックの政策立案担当者に芸術文化による地域づくりについて理解を深めていただくことで、市民、公立文化施設、行政の全国ネットワークの確立を図ります。
 このほか、公共ホール音楽活性化事業には昨年を上回る全国18ホールの参加が決定し、「地域の芸術文化環境づくり支援事業」でも昨年を大きく上回る160事業への財政支援が内定するなど、本年度も積極的に事業を展開してまいります。また、芸術見本市は会場を東京芸術劇場に移し、充実したプログラムで実施するほか、市町村立美術館等活性化事業でも新しい試みを鋭意企画中です。皆様のご協力をお願いいたします。
公共ホール音楽活性化事業
芸術見本市に出展した地域創造ブース

●平成15年度事業スケジュール(予定)

研修会/公演・展示事業 芸術提供・共催事業 要綱発行・募集
4月
◎小澤征爾オペラ・プロジェクト2003特別公演(横須賀市/13日、川口市/17日) ◎ステージラボ・アートミュージアムラボ横浜セッション参加者募集
◎芸術提供事業共催希望団体公募
5月 ●公共ホール音楽活性化事業全体研修会(東京・北とぴあ/13日〜15日)
●アートアプローチセミナー:市町村長等向け(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール/16日)

◎ステージラボ・マスターコース参加者募集
6月 ●公共ホール演劇製作ネットワーク事業 16年度事業説明会(都道府県会館/20日)
◎ステージクラフト参加者募集(7月中旬締切)
7月 ●ステージラボ・アートミュージアムラボ横浜セッション(横浜赤レンガ倉庫1号館/1日〜4日)
●公共ホール音楽活性化事業コンサート&アクティビティの実施(全国18箇所/〜2月)

◎公共ホール音楽活性化事業16・17年度登録アーティスト募集
◎地域の芸術文化環境づくり支援事業要綱発行
◎地域伝統芸術等保存事業助成要綱発行
8月 ●舞台芸術・芸能見本市2003大阪(大阪国際会議場/8日〜9日) ◎能楽座公演(大淀市/3日)
◎ヤング・ピープルズ・コンサート(葛飾区/13日、大井川市/15日、習志野市/16日)

9月 ●ステージクラフト(彩の国さいたま芸術劇場/2日〜5日)
●市町村立美術館等活性化事業「夢と現実を謳う シャガール版画展」(釧路市立美術館)
◎佐渡裕指揮・京都市交響楽団特別演奏会(赤穂市/5日、大和郡山市/6日、岡山市/7日)
◎能楽座公演(土庄町/13日)
◎舞台芸術公演(川本町)
◎公共ホール音楽活性化事業16年度参加ホール募集
10月 ●市町村立美術館等活性化事業「夢と現実を謳う シャガール版画展」(東和町・萬鉄五郎記念美術館) ◎舞台芸術公演(鳥取県、利賀村)
◎舞台芸術合同公演(利賀村)
◎ステージラボ沖縄・佐敷セッション参加者募集
11月 ●市町村立美術館等活性化事業「夢と現実を謳う シャガール版画展」(砺波市美術館)
●公共ホール音楽活性化事業16・17年度登録アーティストオーディション
◎能楽座公演(つくば市/1日、大分市/16日) ◎公共ホール演劇製作ネットワーク事業17年度企画(案)募集
12月 ●芸術見本市(東京芸術劇場ほか/9日〜11日)
●市町村立美術館等活性化事業「夢と現実を謳う シャガール版画展」(恵那市・中山道広重美術館)


1月 ●第7回地方都市オーケストラフェスティバル(すみだトリフォニーホール/〜3月)
●公共ホール演劇製作ネットワーク事業『だれか、来る』(全国8カ所/16日〜2月18日)

◎市町村立美術館等活性化事業17年度開催館募集
2月 ●リージョナルシアター・シリーズ劇団公演(東京芸術劇場/16日〜29日)
●ステージラボ沖縄・佐敷セッション(佐敷町文化センター・シュガーホール/3日〜6日)
●地域伝統芸能祭り
◎能楽座公演(宮崎県/7日)
3月 ●リージョナルシアター・シリーズ特別企画公演(東京芸術劇場/5日〜7日)
●公共ホール演劇製作ネットワーク事業17年度事業説明会



制作基礎知識シリーズVol.18 アウトリーチの基礎知識(1)

●アウトリーチ活動の位置づけと効果(注1)


 講師 吉本光宏(ニッセイ基礎研究所主任研究員)

支持者(サイレント・パトロン)を増やし、社会的役割を拡大する  

 各地の文化施設でアウトリーチ活動が盛んになっている。アウトリーチ(Outreach)とは、もともと「手を伸ばすこと、伸ばした距離」あるいは「(地域への)奉仕・援助・福祉活動」「(公的機関や奉仕団体の)出張サービス」という意味。文化施設では、例えば、公立ホールが招へいした演奏家を、本番のコンサートとは別に、学校や福祉施設などに派遣し、ワークショップやミニ・コンサートなどを行う事業が、アウトリーチ活動と呼ばれている。しかし、このアウトリーチ(注2)、明確な定義となるとなかなかやっかいなのが実情だ。そこで今回の「制作基礎知識」では、アウトリーチに焦点を当て、昨今の地域の文化施設を取り巻く環境変化とその中でのアウトリーチ活動の位置づけと効果、アウトリーチの類型や具体例について整理してみたい。

●アウトリーチ活動の背景と位置づけ
 1980年代後半から90年代にかけて、各地で急速に整備された公立文化施設。大雑把に言うと、公立ホールは、自主事業(鑑賞事業)と貸館、美術館は展覧会と市民ギャラリーという2つの枠組みで運営されることが多かった。つまり、市民の関わり方は、観客として作品を鑑賞するか、自らの文化活動の場として施設を利用するか、という2つの選択肢に限られていた。
 しかし、文化施設が急増した90年代以降、市民との関係は次第に多様化していく。ホールを例に取ると、市民オペラやミュージカルなど市民自身が舞台に立つ「市民参加型事業」、各種講座やワークショップなどの「普及型事業」、市民がさまざまな形で運営をサポートする「ボランティアの導入」など、観客でもない、また施設の借り手でもない、ホールと市民の新しい出合いや関係が生まれている。そうした視点で眺めると、アウトリーチ活動も、ホールと市民の新しい接点の一つと位置づけられる。

●アウトリーチ活動の対象〜受益者と「サイレント・パトロン」の拡大
 しかし、アウトリーチが他の事業と決定的に異なる点がある。それは、これまでの事業の対象が、もともと演劇や音楽などに興味があったり、ホール運営に関心をもつ市民であるのに対し、アウトリーチの対象はそうした人々に限られない、という点である。芸術に全く関心のない人、あるいは、興味があってもホールに足を運ぶことのできない市民も対象となり得る。別の言い方をすれば、他の事業では、ホールは市民が自らの意思で参加する「待ち」の姿勢であるのに対し、アウトリーチは、ホール側の意思で対象を決められる。つまり「攻め」の姿勢で取り組めるのがアウトリーチの最大の特徴である。
 このことは、あらゆる市民が事業の対象になりうることを意味している。すなわち、アウトリーチ活動によって、文化施設の受益者の範囲を、飛躍的に拡大できるのである。そうした観点から、市民と文化施設の関係を図式化してみたのが【図1】である。

図1 ホールと市民の関係に新しい流れをつくり出すアウトリーチ活動
ホールと市民の関係に新しい流れをつくり出すアウトリーチ活動
 
  アウトリーチによる市民への「働きかけ」によって、まず、芸術を体験したことがない、あるいはチャンスのなかった(したくてもできなかった)市民(1) が、芸術にふれることでアートに関心をもつ市民(3) になる可能性がある。その中から、観客として実際にホールに足を運んだり(4) 、市民参加型事業に参加する人(5) も出てくるだろう。あるいは、自分で演劇や音楽活動を始めたり(5) 、ボランティアとして参画する市民(6) が現れてくるかもしれない。このように文化施設利用者の潜在層を開拓し、顕在層へと移行させていく可能性を、アウトリーチはもっている。
 重要なことは、これらアウトリーチの経験者が、実際にホールの観客や利用者に結びつかなくても、ホール運営にとって大きな意味をもっているということである。ホールや劇場などの文化施設の存在が広く市民に受け入れられるかどうかは、普段利用しない人でも、文化施設の重要性や意義を認識している人がどれだけいるか、ということにかかっている。アウトリーチ活動は、いわば、そうした「サイレント・パトロン」とでも呼べる文化施設の支持層(2) を増大させる可能性をもっているのである。
 このように、アウトリーチ活動には、文化施設の受益者の間口を拡大し、新しい観客や聴衆の育成を促していく効果があると考えられる。特に子どもたちを対象にしたアウトリーチは、将来の観客育成という点で有効であり、学校やPTA、両親などを通じた広がりを考えれば、大きな効果が期待できる。

●アーティストとのネットワークづくり
 次に指摘しておきたいのは、アーティストとの密接な関係づくりである。通常の公演だけでは、アーティストや芸術団体と文化施設との関係は一過性のものに終わる。それに対し、アウトリーチでは、より深い関係が築かれる。ほとんどのホールや劇場では、レジデントの劇団や楽団をもつことが現実的でないことを考えると、アウトリーチに協力してもらえるアーティストは、ホールにとっても貴重な存在となろう。
 また、アウトリーチはアーティストや芸術団体にとっても大きな意味をもっている。ステージに立つこと以外の方法で、アーティストとしての職能を発揮する場が生まれるからである。つまりアウトリーチは、芸術家の新しい社会的役割や価値を創出するものだともいえる。さらに、そうした活動の積み重ねが、芸術は一部の人たちだけのものではなく、広く一般市民の公共的な財産であるという認識に繋がり、サイレント・パトロンの拡大に結びついていくだろう。

●文化施設の社会的役割の拡大
 最後に、アウトリーチ活動を行うことによって生じる文化施設の活動領域や役割の拡大について指摘したい【図2】。劇場やホール、美術館は、これまで文化行政の末端に位置する執行機関として、整備・運営されてきた。しかし、アウトリーチによって、サービスの対象や領域は、文化行政の範囲内に留まることなく、教育や福祉など、他の行政分野に拡大できる可能性があるということだ。とりわけ芸術を体験したことがない、あるいはしたくてもできなかった市民に目を向ければ、文化施設が、これまでの枠を超えて、地域社会全体にさまざまなサービスを提供できることが見えてくる。
 アウトリーチは、これまで「鑑賞する」もしくは「自分でする」対象でしかなかったアートと市民の間に新しい回路を切り開き、相互の交流を醸成する。そのことで文化施設の活動は地域に開かれたものとなり、芸術やアートのもつ力が市民に浸透し、地域が活性化されていく。文化施設は、アウトリーチによって、「アートを軸にした総合的な社会サービス機関」へと脱皮できる可能性を秘めている、と思えるのである。

図2 アウトリーチのもたらす文化施設の活動領域の拡大
アウトリーチのもたらす文化施設の活動領域の拡大


注1  雑誌「地域創造」第14号(3月25日発行)の特集「アウトリーチ」に掲載された原稿を加筆、再構成したものです。
注2  アウトリーチは芸術普及、教育普及、あるいは館外活動、などと言われることもある。特に美術館では、作品の収集・保存、展示、調査研究と並ぶ重要な事業として、教育普及事業という枠組みの中で取り扱われてきた。今回は、アウトリーチをそれらを包含する広い意味で扱うこととし、用語もアウトリーチに統一した。また、今回は主に劇場やホールにおけるアウトリーチ活動を中心に記述したが、図表には美術館も含めるかたちで整理した。

●雑誌「地域創造」申し込み方法
「アウトリーチ」特集号(第14号)をご希望の方は氏名・所属、役職、郵便番号・住所、電話番号、雑誌第14号希望と明記し、310円分の切手を同封の上、郵送にてお申し込みください。
[問い合わせ・申し込み先]
〒107-0052 東京都港区赤坂6-1-20 国際新赤坂ビル13F 財団法人地域創造「雑誌申し込み係」宛
Tel. 03-5573-4067


ページトップへ↑