地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

12月号-No.104
2003.12.10(毎月10日更新)

●特集「クリスマス&新春企画特集」

●クリスマス企画カレンダー
●年越し・新春企画カレンダー

●制作基礎知識シリーズ




●クリスマス&新春企画特集

 2003年も残すところあと1カ月ほどとなりました。地域創造が来年度設立10周年を迎えるのを機に設けた新規事業の募集も、お陰様で無事終了いたしました。年末を迎え、ホール・美術館のみなさまも来年度の事業計画や予算の詰めの作業に忙しくされていることと思います。どのような事業を展開されるか、地域創造といたしましても期待をふくらませています。
Jazz & Gospel from N.Y.  さて、今号では、毎年恒例の年末年始シーズン企画の情報を特集しました。全体の傾向としては、パイプオルガンを活用したクリスマスコンサートと市民合唱団が活躍する第九の定番企画が圧倒的に多くなっています。財政難から新しい企画にチャレンジすることが年々難しくなっている様子が伺えます。この時期に行われる第九としては、佐渡裕指揮による「サントリー1万人第九コンサート」があまりにも有名ですが、この催しも今年で20回を迎え、新世代の育成を目指し、大学生による ユースオーケストラを結成して本番に臨むとか。
ウインターコンサート  そんな中で、11月27日に開館する岩手県の北上市文化交流センター・さくらホールが、オープニング事業として年末年始企画に意欲をみせています。同センターは、専門家と市民のワーキンググループが計画づくりを行い、動向が注目されていたホールです。クリスマス企画では、公募による子どもたち約70名や吹奏楽部の選抜生約100名がそれぞれプロのコンサートに交流出演するほか、12月31日には全館を使ったオールナイトイベントを敢行。「現在、カウントダウンライブの出演者を募集中です。どのぐらいの応募があるか不安ですが、朝6時(!)までやれればいいなと。うちのホールは全面ガラス張りで外からよく見えるので、屋内にあるジャスミンの樹や竹林を飾り、イルミネーションで年越しらしい雰囲気を盛り上げたいと思っています」(北上市文化交流センター・谷垣詩子さん)
年忘れ!オリエンテーリング  昨年に開館したホールとしては、平田オリザ芸術監督で注目されている富士見市民文化会館キラリ☆ふじみが、ダンスフェスティバル(12月20日、21日)と新春邦楽演奏会(1月25日)という市民公募企画を行います。「会館の目的の一つができるだけたくさんの市民に足を運んでもらうこと。2つとも市民の要望で決まった企画で、ダンスには子どもたちのグループなど約20団体の応募があったため、追加公演を決めました」(キラリ☆ふじみ・関繁雄館長)
新春わかくさ能  このほか、会館のシリーズ企画の中で季節色を出しているところも多く、親子のためのコンサートシリーズの中で、会館主催によるコンクールで入賞した若手邦楽家と「箏で奏でるクリスマス」を企画した韮崎市文化ホールや、近くの町からパイプオルガンを移送する大胆なプランを実現した多治見市文化会館など、担当者の工夫が伺えます。

制作基礎知識シリーズVol.19 美術館の教育普及事業(3)

●実務を遂行するためのチェックシートと注意点


 講師 大月ヒロ子(有限会社イデア代表取締役)
多様な事業の「人、モノ、金」をコーディネート

 教育普及事業を企画し実施するというのは、料理をつくって食べる行為に似ている。意外に思われるかもしれないが、この行為には、美術館の教育普及事業を企画・実施する時の「人・モノ・金」という3大要素が実にわかりやすく納まっているのだ。

●団体対応プログラムの企画書例
※クリックすると別ウインドウで大きく表示
団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例 団体対応プログラムの企画書例
コンセプト、概要、内容、会場レイアウト、スタッフ構成、タイムスケジュール、購入物品、広報計画、運営方法、収支計画、器材、ランニングコストに関することなどが盛り込まれている。この基本形からバージョンアップさせていく。

 今回は、こうした料理の順序に沿って、教育普及事業における業務を整理してみた。以下のようにチェックシート風に並べてみると、いかに事前の準備に心血を注がねばならないかがわかってくる。外から見たのでは決してわからない、隠れた仕事量の多さには驚かされる。つまり、教育普及事業とはこれだけ詳細な作業を積み重ねなければならない、人手の必要な部門なのである。しかし、この大変な“準備”をクリアすれば、ほぼ8割方成功するという方程式にも繋がっているので、気合の入れ甲斐もあろうというものだ。
 ただし、注意しなければならないのは、教育普及事業の内容が多岐にわたるため、関わる人々も多岐にわたるということ。教育普及担当学芸員、ボランティアスタッフ、アーティスト、学校の先生などが大きな柱となるが、各人の立場の違いにより、責任範囲とそれぞれが行う事業の内容が異なるため、それらをうまくコーディネートする必要がある。
 「教育普及担当学芸員が館の事業に関しての全責任を負い、アーティストや学校の先生、ボランティアは、その事業の内容により、限定された範囲の責任を負う」「教育普及担当者がコーディネーター的役割を演ずる場合もあれば、ファシリテーターとして現場で采配を振る場合もある」「アーティストが行う事業にはそれ自体が芸術表現というものもあれば、教育の指導者的立場が勝るような事業もある」ということをケースバイケースで判断することが重要となる。

●教育普及事業のためのチェックシート(料理にたとえて)

□テーマ、日時を予定する
おおまかな企画書をつくり、関係各方面に当たりスケジュールを確認。

□手持ちのお金を確認(綿密な予算立て)
公立館の場合は単年度予算という制約があることを念頭に置くこと。特に年度始めの事業などは、準備期間も短く、予算要求額と決定額の違いなどに影響を受けやすい。できるだけシビアな予算立てが成功への近道となる。イベントやアウトリーチ事業など、館外で活動を行う際の保険料などは、忘れがちなので要注意。

□季節を考える
実施する時期を熟慮する。ターゲットとなる人々が参加しやすい時期・時間帯、他の事業(地域のお祭りや運動会や卒業式など学校の行事)とバッティングしない日時を選び抜く。企画側の思い込みを避けるためにも、各方面への確認が重要となる。

□メンバーを考える
どのような対象者に向けて、誰がどのような立場で関わっていくのかを決める。ここで、それぞれの責任範囲を明確にしておく必要がある。これをうやむやにしてスタートすると、後に混乱を招き、全体の士気の低下に繋がることとなる。

□献立を考える
プログラムの細部を決め込んでいく。ぐらつきのないコンセプトのもとに、誰をも魅了する企画を練る。オリジナリティーや新鮮さ、そしてネーミングも重要。内容を的確に伝えつつも、参加したくなる、そして多くの人が興味をもつ言葉を探そう。

□食事会があることを知らせる
単なる広報に終始するのではなく、事業の内容に合わせて、きめ細かく広報先を選定し直すことが必要。特に教育普及事業はバリエーションが豊かなので、館が従来からストックしている送付先に漫然と広報するのは避けたい。お金をかけなくとも、日頃のリサーチや人的情報ネットワークにものをいわせた広報は実りが大きい。個人データの蓄積が可能な催しが多く含まれる教育普及事業の強みを生かし、情報が伝わるのを待っている人には確実に届ける努力をしたい。さらに、イベントなどにおいては警察や消防署への通達、保健所の許可なども発生してくる場合があるので注意を。

□冷蔵庫の中にある食料、調理道具や食器をチェック
館内にある資源を有効に利用しよう。素材、道具、空間、人材……身近にあると意外に見落とすもの。気持ちを新たにして、見渡してみよう。それまでに気づかなかった館の魅力や新たな使い方を思いつくかもしれない。

□買い出しの材料をメモ・買い物
教育普及関係の購入物は雑多で、わかりづらいものが多い。購入ルートやモノの細かなデータをきちんと把握していないと、実施までに購入できなくなる可能性もある。また、購入に関する書類の作成も担当者が行おう。内容を把握している担当者がタッチすることで、すべてが確実に進むはずだ。

□買い物・旬の良い食材を安く入手
事業のテーマや内容に関わりのある企業などに材料の提供や協力を求め、館の負担を軽減しよう。これによって関わりをもつ個人や企業が増え、以後のネットワークとして役立つこととなる。

□調理する順番を考える
タイムスケジュールの細部を詰める。特に外部発注の制作物などある場合は、予定どおりに進まないので、ゆとりのある計画を立てよう。また、館内部でもいくつもの事業が平行して進行していることも自覚して、準備段階の時間配分にも十分気をつけたい。

□調理スペースをフルに活用、担当する人を決める
館の内外をフルに活用して事業を展開しよう。できるだけ単独ではなく、他の事業とも関連をもたせ、館全体で盛り上がるようにセッティングすれば、思わぬ相乗効果が得られるものだ。スペース、プロジェクトごとにどのように人の配置をし、それぞれがいかに連携して動くか、シミュレーションする必要がある。関わる人々すべてが全体の流れと自分の役割を把握できるよう、ビジュアルマップを作成すると、それまで見えなかった問題点に気づくこともある。期間が長く、人数が多い場合は、ローテーション表も必要になってくる。万一の欠員や、アクシデントが起こった場合の代替案(中止も含め)も完璧につくっておかなければならない。頭の中で、そして紙の上で何度も実施状況をイメージしてみよう。

□器を選んで、盛り付ける、環境を整える
せっかく企画・制作した良い事業も、提供の仕方によっては、ぱっとしないことがある。コンセプトが良く伝わるような魅力的なデザインを心がけ、ビジュアルのクオリティを高く保つよう努力したい。良質なミュゼオグラフィーは参加者の意欲や理解の度合いを上げる効果もあることを自覚して、きちんと考えておこう。

□食事
事業実施!

□始末良く片付ける
素早く完璧に片付ける。再利用可能なものは、すぐに使える状態にして保存すること。こういった仕事は、スタッフがその場所にいるうちに片付けておくのがベスト。タイムスケジュールには片付け時間も必ず入れておくこと。

□過程の振り返り
参加者へのアンケート調査や収支の分析、量的・質的な評価を行う。シビアな客単価の計算は企画者側にとって客観的な事業把握に必要なデータとなる。客単価が高いからといって挫けるのではなく、低いものと上手に組み合わせて魅力的な事業を行えばよいのだ。クールな数字は予算交渉の際にも役立つので、面倒がらず、計算を習慣化しよう。また、文化的事業の評価は質の評価と合わせて成り立つものなので、評価の基準が量的評価のみに偏らないよう注意しなければならない。アンケート調査・モニター調査を行なう際も、この両面のデータが採取できるようフォーマットを作成すること。何のために評価をするのか、目的をしっかりと見定めなければ、せっかくの評価・調査も無駄になる。

□次に行う際の戦略を練る
失敗こそ成功の素。うまくいったところはさらに育て、不具合があったところは手直しする。一度行った事業はそれで終わりと考えず、継続してブラッシュアップしていきたい。

□メモを残す
記録を整理し、公開する。記録を残すことが目標ではないが、客観的な記録は貴重なデータとなるので、次回の広報にも積極的に活用しよう。また、情報公開により、参加できなかった人たちに事業を周知することもできる。後の研究にも役立つのでデータの保存を心がけたい。担当者の引継ぎの際には、このような資料こそ生きてくるのだ。


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