地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

8月号-No.112
2004.08.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●ステージラボ新潟セッション
●制作基礎知識シリーズ



ステージラボ新潟セッション報告 2004年6月22日〜25日

●公立文化施設のフロンティアを切り拓く“りゅーとぴあ”


 今回の会場となったのは、コンサートホール、劇場、能楽堂をもつ大型複合文化施設「新潟市民芸術文化会館(以下、りゅーとぴあ)」です。上から見るとタマゴ型をした全面ガラス張りのお洒落な建物で、新潟駅から車で約15分、信濃川沿いの白山公園内にあります。ここには日本で最も古い音楽専用練習場「新潟市音楽文化会館(以下、音文)」と新潟県立文化会館もあり、市の文化ゾーンとなっています。
 りゅーとぴあ、音文を運営している新潟市芸術文化振興財団は、1998年の開館当初から民間のプロデューサーをアドバイザーとして迎え、さまざまな事業を展開してきました。音文の事業を継続したジュニアオーケストラ、ジュニア合唱団の育成をはじめ、新潟発を目指したオリジナルミュージカルのプロデュース、俳優養成スクール(キッズもあり)など。加えてこの4月には、今、最も注目を集めている新進気鋭のダンサー・振付家の金森穣氏を舞踊部門の芸術監督に迎え、レジデンシャル・コンテンポラリーダンスカンパニーを創設。オーディションで選考した10名のダンサーとともに新潟に移り住んで創作活動をスタートし、全国的な話題を集めています。
 今回のラボでは、ホール入門コース、自主事業I(音楽)コース、自主事業II(演劇)コース、文化政策企画・文化施設運営コースを開講。りゅーとぴあの全面協力により、その人脈や蓄積を活かしたカリキュラムが実現しました。ご協力をいただきました皆さま、本当にどうもありがとうございました。

コースコーディネーター
○ホール入門コース
 草加叔也(劇場コンサルタント/(有)空間創造研究所代表取締役)
○自主事業I(音楽)コース
 藤垣秀雄(札幌コンサートホール企画主幹)
○自主事業II(演劇)コース
 竹柴源一(舞台創造研究所所長)、真田弘彦(新潟市民芸術文化会館事業課主任)
○文化政策企画・文化施設運営コース
 小林真理(東京大学大学院人文社会系研究科助教授)

●指定管理者制度と評価がテーマ
自主事業I(音楽)コース「広報宣伝と集客の促進」 地方自治法の一部改正により、公の施設の管理について、従来の「管理委託制度」に代えて「指定管理者制度」が実施されることが決定。株式会社等の民間事業者の参入が可能になったことから、今、公立文化施設は大きな課題に直面しています。今回の文化政策企画・文化施設運営コースでは、コーディネーターに文化政策の専門家である小林真理氏(東京大学大学院助教授)を迎え、みんなでこの難題に取り組みました。
 受講生には、「条例改正を担当している」という渦中の職員から、「自分がこれまで意義を見いだしてきたワークショップのような取り組みは評価されなくなるのか」と戸惑うプロパー職員、NPOによる運営を模索している担当者などが揃い、当事者意識の高さは際立っていました。
 初日、自己紹介の後、小林氏による講義がスタート。公立文化施設の現状を踏まえつつ、「民間業者に公の施設の建設から管理運営までまかせるPFI法が1999年に制定されたことで地方自治法を変更せざるを得なくなった」「特区構想の中で自治体から要望があった」「コスト削減」といった指定管理者制度創設の背景や手続き・スケジュールなどの説明があり、基礎的な知識の共有が図られました。

◎小林真理氏発言より
 「自治体がなぜ文化施設をつくったのかの目的をはっきりさせていないことが混乱を招いている。目的が明解なら、民間業者に委託して本来の目的が達成できるのか?と問えばいい。なぜ公的資金を導入して文化施設をつくるのかの動機を突き詰めると、“レピュテーション(国威発揚・威厳)”と“市場の失敗”の二つになる。合衆国連邦が舞台芸術を支援するにあたっても同じような議論が行われたが、その中で市場経済では成り立たないことが明言されている(つまり民間業者に委託するのは無理)。ただし、公的資金を導入するにはアカウンタビリティを担保する必要があり、アートマネジメントが不可欠となる。」

●もぎり体験から劇場機構見学まで
入門コース「劇場・舞台・技術を知る」 ホール入門コースでは、このところ定番となっている人気の表方ワークショップの他、劇場経営から事業企画、劇場機構までホール業務全般への理解を深めるカリキュラムが実施されました。
 劇場経営についての講義では、衛紀生氏が、「電気洗濯機は使う人によって機能が変わるわけではないが、アーツは見る人によって変わる共感型の商品(双方向性のある商品)だ。そういうアーツの特性を活かしたマーケティングをする必要がある。つまり質のいい観客がいるとそれだけパフォーマンスの質が上がるわけで、観客の“量”ではなく、どうすれば“質”が担保できるか考えるべき。そのためにはずっと聴き続けている人、観続けている人を大切にする、個客対応のワン・ツー・ワン・マーケティングをすることが重要」と熱弁。刺激を受けた参加者も多かったようです。
 また、劇場コンサルタントとしてりゅーとぴあの建設にも携ったコーディネーターの草加叔也氏が自ら案内人となった劇場機構見学は、りゅーとぴあの技術スタッフの全面協力で、実際に袖幕やホリゾント、照明やセリを動かす贅沢なツアーとなりました。

●豪華な共通プログラム
共通プログラム2(選択ゼミ)「ボディパーカッションワークショップ」「狂言ワークショップ」 共通プログラム1では、りゅーとぴあの自主事業「ワンコインコンサート」を見学しました。これは、クラシックの聴衆を増やす目的で年6回実施されているもので、料金は500円。今回はマリンバの浜まゆみさんが登場しましたが、平日の午前11時だというのにコンサートホールには約1300人の聴衆が詰めかけ、ものすごい熱気で受講生たちはびっくり。1時間以上のコンサートは、マレット(バチ)に蛍光塗料を塗り、ブラックライトで照らして、幻想的なマレットの動きと演奏を暗闇の中で楽しむ実験的なパフォーマンスから、金魚とモモンガの着ぐるみキャラクターが登場する聴衆参加のボディパーカッションまで。本当に充実していました。
 「着ぐるみをつくったのも着ているのもホールの職員です。子どもを対象にした『ホールはともだち』という事業でつくったキャラクターで、他にもバックステージの種あかしツアーで出てくる『たねアシカ』がいます(笑)」(某職員)とのことでした。
 共通プログラム2では、人間国宝の山本東次郎氏による狂言ワークショップ、話題の金森穣氏によるダンスワークショップが行われるなど、ひときわ豪華なプログラムになりました。若干29歳で芸術監督を務める金森氏の存在感は格別でした。

●実践的な自主事業コース
 音楽、演劇ともにりゅーとぴあの実務担当者がコーディネーターや講師として参加。いずれも新潟ならではの工夫があるカリキュラムになりました。札幌コンサートホールの藤垣秀雄氏がコーディネーターを務めた音楽コースでは、プロモーターやアーティストとの付き合い方から広報宣伝まで音楽事業を企画する上での基礎を学ぶとともに、実際にりゅーとぴあに提案することを前提とした企画づくりを行ないました。ワンコインコンサートでのアンケート、コンサートの半券で飲食割引が受けられる協力店のヒアリング調査などのフィールドワークを行なった受講生たちは、実証的に企画することの醍醐味を体感したのではないでしょうか。
自主事業II(演劇)コース「歌舞伎ワークショップ(6) ワークショップ発表」 演劇コースの目玉は、丸2日間かけて取り組んだ「歌舞伎ワークショップ」です。舞台創造研究所の竹柴源一氏と一緒にコーディネーターを務めたりゅーとぴあの真田弘彦氏は、「りゅーとぴあの建設準備として歌舞伎ワークショップをやった。3日合宿して、衣裳、かつら、背景も手作りして最後に発表。その時の実行委員が核になって市民歌舞伎の「みなと座」を立ち上げた。そういう経緯もあり、みなと座のメンバーに手伝ってもらって歌舞伎のワークショップを企画した」と言います。
 出し物は『白波五人男』。今回は衣裳が準備できないため、新たにつくった人形で歌舞伎振りをやることにし、謡と歌舞伎振りに分かれて稽古を行ない、最終日に発表しました。

●ステージラボ新潟セッション スケジュール表

ホール入門コース 自主事業 I (音楽)コース 自主事業 II (演劇)コース 文化政策企画・文化施設運営コース

1
開講式・全体オリエンテーション・地域創造紹介
(財)新潟市芸術文化振興財団事業紹介、りゅーとぴあ施設見学
「“隣人を知る”“自分を知る”」
草加叔也
「事例発表:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館」 寺田尚弘 「コースガイダンス─自己紹介とラボ参加の動機─」 竹柴源一、真田弘彦 「自らを知る」「文化施設、文化政策をめぐる環境1」 小林真理
「観客創造とマーケティングを考える」
衛紀生
「事例発表:札幌コンサートホールkitara」
「自主事業企画の着眼点」
藤垣秀雄
「公共劇場の独自的な参加型演劇事業の取り組み」
真田弘彦、漢幸雄、土井美和子
「文化施設、文化政策をめぐる環境2」
小林真理
番外ゼミ



2
「活動を通じて劇場をつくり、まちをつくる」
山口英樹
「演奏家、音楽事務所との交渉、契約の方法」
中根俊士
「日本演劇の歴史に見る参加型演劇−市民参加型歌舞伎(地芝居)−」
竹柴源一、武内裕子
「文化施設を地域に生かす」
鈴木滉二郎
共通プログラム1「1コインコンサート」 浜まゆみ(マリンバ)、大橋めぐみ(ピアノ)
「劇場を取巻く環境の変化を捉える」
草加叔也
「演奏家からみた望ましいホールのホスピタリティ」
藤垣秀雄(ゲスト:村治佳織)
「演劇の自主制作事業や住民参加型事業の企画や制作ポイント」
竹柴源一、真田弘彦、漢幸雄、土井美和子、笹部博司
「文化施設の評価」
鈴木滉二郎
共通プログラム2(選択ゼミ)  「ダンスワークショップ」 金森穣(演出・振付家、りゅーとぴあ舞踊部門芸術監督)
 「狂言ワークショップ」 山本東次郎(狂言師、大蔵流山本会主宰)
 「ボディパーカッションワークショップ」 浜まゆみ、大橋めぐみ
交流会(全体)

3
「サービス、ホスピタリティ、マナーを学ぶ(1)」
星乃もと子
「広報宣伝と集客の促進」
横山邦彦
「歌舞伎ワークショップ(1) 音楽としての様式的台詞」 竹柴源一、尾上松辰 「文化施設を地域のものとしていく取り組み」
小林真理
「サービス、ホスピタリティ、マナーを学ぶ(2)」
星乃もと子
「模擬事業企画(アンケート調査)」
藤垣秀雄、寺田尚弘
「歌舞伎ワークショップ(2) 様式の動きと創造」 竹柴源一、尾上松辰 「ケーススタディ:レ・コード館」
堤秀文
「劇場・舞台・技術を知る」
草加叔也
「模擬事業企画(企画内容のとりまとめ)」
藤垣秀雄、寺田尚弘
「歌舞伎ワークショップ(3) 観客を意識しての創造」 竹柴源一、尾上松辰 「ケーススダディ:能登演劇堂」
中畠三雄
「“公演を創る”制作の実践を知る」
市村作知雄
「自主事業もしくは公立ホールの役割、使命」
蔵隆司
「歌舞伎ワークショップ(4) 総合芸術としての創造」 竹柴源一、尾上松辰 「自らを考える」
小林真理
番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ

4
「劇場が果す“使命”と“業務の基準”策定(1)」 草加叔也、市村作知雄 「模擬事業企画(チラシ作成、広報戦略企画)」 藤垣秀雄、寺田尚弘 「歌舞伎ワークショップ(5) 総ざらい」
竹柴源一、尾上松辰
「総括に向けたグループディスカッション、まとめ」 小林真理
「劇場が果す“使命”と“業務の基準”策定(2)」 草加叔也、市村作知雄 「模擬事業企画(グループ発表)」
藤垣秀雄、寺田尚弘
「歌舞伎ワークショップ(6) ワークショップ発表」 竹柴源一、尾上松辰 「総括」
小林真理
全体会・閉講式

ステージラボに関する問い合わせ
 地域創造芸術環境部 富士原・大崎 Tel. 03-5573-4064


制作基礎知識シリーズVol.21 邦楽の基礎知識(1)

●邦楽の分類と流派による違い

 講師 杉浦 聰(埼玉大学講師)
 成立した時代と支持者の好みによって細分化

●邦楽と流派
 日本には数多くの伝統音楽があります。邦楽とは「本邦(わが国という意味)の音楽」「近世邦楽」を略した呼称といわれ、広義には雅楽や声明などの古代の音楽、能狂言や平家琵琶などの中世の音楽も含みますが、一般的には江戸時代以降に生まれた、三味線による音楽、箏による音楽、尺八による音楽、琵琶による音楽などを指しています。
 音楽文化は生まれた時代の庇護者によって、後の時代も守られました。雅楽は宮中や寺社仏閣によって、能楽や平家琵琶あるいは琵琶楽や尺八楽は武士(明治以降は上流市民)によって、三味線音楽は江戸市民(明治以降は一般市民)によって、です。成立した時代の好みや支持者の好みによって音楽の表現が異なったということも、たくさんの芸能が平行して続いてきた理由でもあります。

●三味線音楽の分類と流れ
 ひとくちに三味線音楽といっても多くの流派が存在します。さまざまな分け方がありますが、これを「その音楽がどのような場で演奏されるのか」という観点で分類したのが【表1】です。劇場音楽(その中でも歌舞伎で演奏される音楽か、人形芝居で演奏される音楽か、ということがあります)、非劇場音楽(純演奏を楽しむ音楽)、その他労働の場で歌われた音楽など、といった分け方です。ただし、これも創立当初は劇場音楽であったものが、時代が経つにしたがって活躍の場を非劇場に移した、というものも多くあるので注意が必要です。
 三味線音楽は中国から琉球を経て日本に16世紀半ばに三味線が輸入される以前にあった芸能、例えば「浄瑠璃」とか「流行り歌」などといった同じ祖先をもつ一族から、やる気のある人々が独立分派したので、血縁関係がある音楽として整理することもできます【表2】。血縁関係ですから、曲調などは似ているのですが、その音楽の支持層の嗜好にあうように表現を変えていった結果微妙な違いが生じ、今ではそのわずかな違いがそれぞれの流派のアイデンティティとなっています。そのため、専門家以外にはその違いがわかりにくいという面があります。
 ちなみに「流派」という言葉は、【表1】や【表2】で示した名称を「流」とすると、流がさらに分かれて同じ流の中で複数の家元がいる場合、その家元に率いられている小グループを「派」として使い分けをしています。

表1 三味線音楽の演奏の場による分類



長唄……歌舞伎
義太夫節……人形芝居(文楽)・歌舞伎
常磐津節……歌舞伎
清元節……歌舞伎




地歌箏曲
荻江節
はうた・俗曲・うた沢・小唄
東明流
大和楽
一中節
河東節
宮薗節
新内節
元は劇場音楽


民謡三味線
津軽三味線

表2 邦楽(三味線・箏・琵琶・尺八の音楽)の流れ
表2 邦楽(三味線・箏・琵琶・尺八の音楽)の流れ
図表の見方
系統図の中で実践で結んであるものは親子関係にあります。点線で結んであるのはさかのぼると祖先になるという関係です。名前の書かれたものは全て現存する流派です。なお、うたいものと語りものは歴史的な視点によるジャンルわけで、内容によるものではありません。語りものの中の浄瑠璃は、三味線と結合して以来、江戸前期に次々と分派していったために、たくさんの流派があるのです。

●演目(曲目)の違い
 三味線にしろ箏曲にしろ、たくさんの流派がありますから、例えば有名な『春の海』という曲を習いたくて箏を習い始めたが、習った流派のレパートリーの曲ではなかったので習えなかった、という笑えない話を時々聞きます。また、新曲の場合も西洋音楽と違い、その曲を外部の作曲家に委嘱した流派、あるいは作曲した演奏家の系統以外の流派では演奏されない、ということも多いのです。
 つまり、有名な曲でも、その曲をレパートリーとしている流派はひとつだけしかなく、同じ名前の曲があったとしても内容は別の曲であることがほとんどです。演奏家自身についても、二流派以上を掛け持ちしている人はほとんどいないため、ひとりの演奏家に長唄の越後獅子と津軽三味線の演奏を頼んで、両方とも演奏できるということはありません。

●演奏形態の違い
 目的によって音楽が違うという歴史があるため、演奏形式も異なっています。例えば「長唄」は歌舞伎上演の際に劇場専属の音楽として舞踊の伴奏やBGM用の音楽として発達してきました。しかし、歌舞伎そのものは中世に出来た能狂言の演出を取り入れたため、能狂言で用いる囃子(笛、大鼓、小鼓、太鼓)をも採用したので、長唄は歌と三味線のほかに囃子も取り込んでいます。そのため長唄のみ舞台でこの三者が同時に出演し、他の三味線音楽は歌と三味線の二職のみで行われています。また、歌と三味線の人数も流派ごとに違いがあります。
 劇場音楽に分類される三味線音楽は「役者と違う世界」で演奏するという意味で、舞台上に演奏用の台を組み、その上で演奏しますが、この演出法は演奏会の時も踏襲されています。それに対して地歌箏曲や琵琶楽は、元来室内楽として畳の上で行われたものなので、演奏会のときは舞台に直接(あるいは薄い台……所作台を置き)座って演奏します。邦楽にはこのような過去の演出形態に基づく演出の約束事というものも存在します。逆にこうした約束事や見台(譜面台)の形状の違いで、いま行われている音楽を見分ける、ということもできるのです。

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