地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

1月号-No.117
2005.01.10(毎月10日更新)

●理事長 新年のご挨拶

●今月のニュース

●「地域伝統芸能まつり」開催
●制作基礎知識シリーズVol.22


新年あけましておめでとうございます。

●理事長あいさつ


 新年のご挨拶をさせていただく前に、新潟中越地震により被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。また、地元の消防署、消防団をはじめ、復旧に尽力されている方々には心より感謝申し上げます。阪神淡路大震災から今年で10年になりますが、その教訓が活かされている様子が随所に見受けられ、関係各位の日頃の努力の賜物と、大変心強く感じた次第です。
  地域創造は平成16年9月30日に財団設立10周年を迎えました。財団事業の成果を披露させていただくという意味で、紀尾井ホールにおいて、公共ホール音楽活性化事業の新・旧登録アーティストによるガラ・コンサートを開催し、大変ご好評をいただきました。できればこうした試みを続けていければと考えているところです。
 この財団を設立した当初、10年間で基金の積み立てを行うという資金計画を策定し、10年をひとつの区切りと考えて活動してまいりました。今、振り返ってみますと、公共ホールだけとっても全国に約3,000件もあるなかで、年間12、3億円の事業費(今年度は約20億円)でどれほど力添えできたか心もとない感もあります。しかし、ソフト支援、人材育成、情報提供の3本柱を掲げ、精一杯やらせていただいたことは、それなりの評価をしていただけるのではと自負しております。
 特に、公立文化施設には、地域住民と共に協働する、地域住民と共に事業を展開する役割があるという考えを普及できたことが一番の成果であったと思っています。これからもこうした考えによる先導的な取り組みを積極的に支援し、地域の芸術文化環境づくりを向上させる役割を果たしていければと願っております。
  そうした活動の励みにしていただければと、10周年を機に、地域の芸術文化環境づくりに特に功績のあった公立文化施設を顕彰する「JAFRAアワード(総務大臣賞)」を創設いたしました。第1回JAFRAアワードにつきましては、木村尚三郎委員長のもとに審査委員会を設け、厳正な審査のもと、9施設が選ばれました。
 この賞は文化施設を対象にしたものですが、私といたしましては、文化施設に授与するというより、その施設を支えて共に地域づくりに尽力してくださった地域住民の方に差し上げたい、という気持ちで一杯です。公立の文化施設の存在意義は、単に素晴らしい公演や展覧会を企画し、多くの観客を集めることにあるのではなく、地域住民と共に歩み、地域の芸術文化環境を向上させることにあります。今回の受賞施設を支え、共に地域の芸術文化環境の向上に尽力していただいた地域住民の方に心から感謝するとともに、その励ましとなるような賞に育ててまいりたいと思っております。
  一昨年6月に、地方自治法が一部改正され、「公の施設の管理」をNPO法人や民間企業などに委任することができる「指定管理者制度」が導入されました。平成18年の夏には直営で管理する場合を除き、新制度に移行しなければならないことから、現在、公立文化施設においても検討が行われています。
 財団でも昨年から調査研究を始めましたが、公立文化施設において最も留意しなければならないのは、施設管理的な指定管理者ではなく、文化行政の目的に応じたソフト事業を住民と共に展開できる指定管理者を選定するということです。そのためには、設置者側が設置目的について明解、かつ具体的なビジョンをもっている必要があり、自治体にとって大きな宿題が出されたといえるでしょう。これを契機に、設置者、現在の運営者が共に芸術文化振興と地域住民との関係を見直し、芸術文化による地域づくりについて具体的な議論を深めるいい機会になればと思っています。
 指定管理者制度の導入にともない、公立文化施設の評価についても話題になっていますが、地域創造でも研究会を立ち上げて検討を進めています。地域住民の目から見た評価について具体的に示すことができればと思っているところです。
  全国では、今、市町村合併が進められています。地域創造では、こうした合併地域に対して、5年間の経過期間を設けることにいたしました。この間は、助成申請等を旧市町村単位で取り扱い、新市から複数の施設について申請していただいた場合、旧市町村単位で支援を審査します(新市内の複数施設による連携事業の申請も可能)。この経過期間の間に、新市内の公立文化施設の役割分担等を検討していただければと思います。
 地域創造では、今後も地域のご要望にお応えできるよう、一層の努力をしてまいりたいと思っております。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
(聞き手:坪池栄子)

●第1回JAFRAアワード受賞施設
 「富良野演劇工場」(北海道)、「盛岡劇場」(岩手県)、「小出郷文化会館」(新潟県)、「世田谷文化生活情報センター(世田谷パブリックシアター)」(東京都)、「岡谷市文化会館(カノラホール)」(長野県)、「京都芸術センター」(京都府)、「兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)」(兵庫県)、「伊丹市立演劇ホール(アイホール)」(兵庫県)、「佐敷町文化センター・シュガーホール」(沖縄県)
※授賞式を1月18日に予定しております。受賞施設の活動内容と授賞式の模様は次号のレターでご紹介します。

●遠藤安彦(えんどう・やすひこ)
 1940年生まれ。自治事務次官を経て、1998年2月から財団法人地域創造理事長。「2004年は大型台風が連続して上陸したり、直下型地震に見舞われたり、本当に大変な年でした。仮設住宅で新年を迎えられている方、生まれ育った土地を離れなければならない方などのことを思うと、心が痛みます。今、地域創造としても何かできないか、地元の公立文化施設と相談しているところです」

●「第5回地域伝統芸能まつり」

─祭りの根源である「福」をテーマに開催─

写真:昨年の地域伝統芸能まつり 日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を毎年多くの方々に紹介している「地域伝統芸能まつり」。今年もいよいよ2月26日、27日の両日、東京・渋谷のNHKホールで開催されます。
 5回目となる今年のテーマは「福(ふく)」。「福」とは、子どもの健やかな成長であり、家族のつつがない暮らしや収穫時の豊かな実りでもあります。私たちは、いつも「福」を願い、祭を通じて「福」に感謝してきました。「福」は、祭の最も根源的なテーマともいえるでしょう。今回は、そんな「福」にまつわる演目を北は青森県八戸市から南は沖縄県まで、14地域でそれぞれ継承されている地域伝統芸能と古典芸能を中心にご紹介します。
 地域伝統芸能のうち1日目に登場する福島県・二本松市の「石井の七福神」は、もとは旧暦の小正月に行われていました。七福神と道化役が登場し、おどけた仕草を交えて踊ります。また2日目に登場する鹿児島県伊集院町の「徳重(とくしげ)大バラ太鼓踊り」は、通称「ウバラデコ」とも呼ばれています。直径約1.5メートル、重さ30キロ近くにもなる大太鼓を振り回したり、抱えて走る姿は、独特で勇壮なものがあります。大太鼓の者が将棋倒しになり自力で立ち上がれなくなるコミカルな場面も。
 ほかにも、全国でも珍しい笑いの神事である山口県防府市の「笑い講」、高さ約10メートルのはしごに獅子が昇って舞う千葉県東金市の「北之幸谷(きたのこうや)の獅子舞」、全国的にも有名な長野県岡谷市の「御諏訪太鼓(おすわだいこ)」、伊勢万歳(三重県鈴鹿市)、加賀万歳(石川県金沢市)、伊予万歳(愛媛県北条市)の3つの古典万歳の共演や、高さ6メートル長さ10メートル以上の曳山が登場する「大蛇山(だいじゃやま)」(福岡県大牟田市)など、さまざまな地域伝統芸能が登場します。
 古典芸能は、狂言『居杭(いぐい)』が登場します。ちょっといたずらな「福」をお楽しみいただけることでしょう。また、ロック文楽『曽根崎心中』は、近松門左衛門の悲劇をロックと文楽のコラボレーションで表現した作品。このほかに、今回初めて歌舞伎舞踊を取り上げます。出演は、坂東三津五郎ほかで、演目は「お祭り」。祭礼を仕切る鳶頭の粋でいなせな様子は必見です。また、ホール北ロビーでは、地域を紹介するブースが出展され、各地域の情報発信や物産品の販売などが行われる予定です。
 なお、観覧ご希望の方は、下記の方法に従ってご応募ください。

プログラム紹介(予定) ※演目は変更される場合もあります。ご了承ください。
南大塚の餅つき踊り ●埼玉県/川越市
「南大塚の餅つき踊り」

かつては「接待餅」「祝儀餅」と呼ばれていた餅つき踊りは、上棟式や子どもの帯解き祝い、米寿の祝いなどに餅つき連中が招かれて行われます。餅をつくだけでなく、杵で臼を叩きながら面白い所作とおめでたい唄を交えた芸能です。
石井の七福神 ●福島県/二本松市
「石井の七福神」

二本松市の石井地区には、稲と養蚕の豊作を祈願して演じられる仮装風流の「七福神」が伝えられており、正月の予祝行事として郷土色が濃いことに特色があります。初めに先導役の稲荷が登場し、続いて七福神が次々と舞い込んで祝福の寿ぎをします。
笑い講 ●山口県/防府市
「笑い講」

毎年12月の第一日曜日に行われる全国でも珍しい笑いの神事。鎌倉時代(1199年)小俣八幡宮創建の時、当地の21戸の農家が集まり、大歳神を迎え、収穫と豊作を願って行われたのが起源。祭は頭屋〜講員21人の各家〜から頭屋へと引き継がれています。
北之幸谷の獅子舞 ●千葉県/東金市
「北之幸谷(きたのこうや)の獅子舞」

北之幸谷の稲荷神社の氏子に伝承された2人立ての獅子舞では、高さ約10メートルのはしごに2匹の獅子が昇ります。北之幸谷では本地獅子連に加わっている18歳から34歳までの若連が主体となって芸能の保存・伝承を行っています。
御諏訪太鼓 ●長野県/岡谷市
「御諏訪太鼓(おすわだいこ)」

諏訪大社の舞楽伝承であり、戦国武将武田信玄が川中島の戦いにおいて武威を高めたと伝えられています。御諏訪太鼓流家元七代目宗家、小口大八により昭和28年に御諏訪太鼓保存会を結成。その豪壮たる太鼓の響きは国内はもとより、海外にも広く知れわたっています。
徳重大バラ太鼓踊り ●鹿児島県/伊集院町
「徳重(とくしげ)大バラ太鼓踊り」

通称「ウバラデコ」とも呼ばれる太鼓踊りで、島津義弘公の追悼の祭りにはなくてはならない踊りとされています。大太鼓は直径1.5メートル程、重さは30キロ近くもあり、踊りの中で大太鼓の者が将棋倒しになり、自力で起き上がるのが困難な場面があり、見物人を笑わせています。
古典万歳 ●伊勢万歳(三重県/鈴鹿市)・加賀万歳(石川県/金沢市)・伊予万歳(愛媛県/北条市)
「古典万歳(こてんまんざい)」

正月に家々を訪問し、五穀豊穣・無病息災などを祈り、歌い舞う民間芸能。昭和初期まで全国に多くの流派が生まれ、「萬歳」「万歳」「漫才」と文字も芸も時代にあわせて変化しています。「人々に笑いと福をお届けする」各地の万歳をお楽しみください(写真は伊予万歳)。
八戸えんぶり ●青森県/八戸市
「八戸えんぶり」

春を告げる豊年祈願のお祭りであるえんぶりは、その昔「えぶり」という農具を手に持って舞い、それがなまって「えんぶり」となったと言われています。唄やしぐさのゆっくりした「ながえんぶり」と、テンポが速く勇壮活発な「どうさいえんぶり」が、見る者の目を奪います。
本地の花笠踊り ●広島県/千代田町
「本地(ほんじ)の花笠踊り」

千代田町の本地地区に伝わる花笠踊りは、細く割った竹に桜の花を型取った和紙をつけ、笠から地面近くまでたれ下げた大きな花笠が特徴で、これを頭にかぶって踊る様は、さながら清楚で優雅な万華鏡のようです。地元では豊年踊りとして踊り伝えられています。
大蛇山 ●福岡県/大牟田市
「大蛇山(だいじゃやま)」

大蛇山は、300年以上の歴史をもち、大牟田夏祭りのメインイベントで五穀豊穣、無病息災を願う祇園祭です。高さ6メートル、長さ10メートルの山車に、大蛇を模した幅6メートル、長さ2メートルの尻尾がついた曳山を約300人の引き手が道幅狭しと練り歩きます。
●広島県/三原市
「三原やっさ踊り」

やっさ踊りは1567年戦国智将小早川隆景が三原城を築城した際、人々がこれを祝って老若男女を問わず、三味線・太鼓・笛などを打ち鳴らし、祝酒に酔って思い思いの歌を口ずさみながら踊り出たことが始まりといわれ、現在では三原の夏の風物詩となっています。
●沖縄県
「琉球古典舞踊」

琉球舞踊は古典舞踊をはじめ、明治以降に登場した庶民的な雑踊り、近代の踊り手による創作舞踊、各地域で伝承される民俗舞踊等さまざまなジャンルに大別できます。今回は琉球王国時代、認証状を携えた冊封使を歓待するため披露された古典舞踊をご紹介します。
●古典芸能
狂言『居杭』大蔵流
伯父に怒られてばかりの子ども・居杭。清水の観音にお願いして、かぶると姿の消える頭巾を授かり、さっそくいたずらを…。 [出演(予定)]山本東次郎(大蔵流)ほか
ロック文楽『曽根崎心中』
[構成・作詞]阿木燿子 [作曲]宇崎竜童 [出演]桐竹紋寿、吉田文吾ほか
歌舞伎舞踊「お祭り」
文政9年(1826年)に市村座で初演された三変化舞踊『再茲歌舞伎花轢』の中の一幕。
[出演]坂東三津五郎ほか

観覧申し込み方法
「地域伝統芸能まつり」の観覧は無料です。
○応募要領
 官製往復はがきに、(1)郵便番号、(2)住所、(3)氏名、(4)年齢、(5)電話番号、(6)入場希望日(26日、27日のいずれかを記入。両日希望の場合は、それぞれ別に申し込みが必要です)、(7)入場希望者数を明記の上、下記事務局までお送りください。1枚につき2名まで入場できます(未就学児も1名といたします)。返信はがきにはご自分宛の住所、氏名をご記入ください。
※下記公式サイトからもお申し込みいただけます。
○応募先
〒160-8555 東京都新宿区舟町7-6-704
地域伝統芸能まつり事務局
○応募締切
2月7日(月) 必着
※応募多数の場合は抽選。発表は本人に直接通知いたします。
○問い合わせ
ハローダイヤル Tel. 03-5777-8600

第5回地域伝統芸能まつり
[日程]2月26日、27日
[開演]午後3時(両日とも)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[後援]総務省、文化庁、NHK
※地域伝統芸能まつり公式サイト
http://www.jafra.nippon-net.ne.jp/matsuri/

地域伝統芸能まつりに関する問い合わせ
総務部事業課 鈴木智行 Tel. 03-5573-4056

制作基礎知識シリーズVol.22 舞台美術の基礎知識(1)

●舞台美術の分類と作業の流れ

 講師 島次郎(舞台美術家)
 表現・劇場の形態を的確に把握し、綿密なプランニングを

 今回から3回にわたり、ホール職員が知っておくべき舞台美術の基礎について紹介する。ひと口に舞台美術といっても、歌舞伎、文楽のような様式のある古典芸能や、自由な表現のできるコンサート、ダンス、オペラ、現代演劇などいろいろある。このシリーズでは、現代演劇の舞台美術の現場について取り上げ、仕事の内容について整理する。

●舞台美術の定義と分類
 舞台美術とは、演技以外の視覚的効果を上げる要素のすべて(大道具・小道具、衣裳、化粧、照明)をトータルに指す呼び方である。しかし、日本において舞台美術家が行う仕事という意味では、大道具・小道具によってデザインされた演技空間(舞台装置)のことを、通常、舞台美術と呼んでいる。
 舞台美術には、古典芸能のように一定の様式が必要とされるものや、表現ジャンルの特性によって、例えばオペラだとオーケストラの演奏スペースの確保やダンスだとフロアーの問題など、留意しなければならないところがある。しかし、現代演劇の場合、決まりごとは何もなく、作品の内容や演出意図によってありとあらゆる創造が行われている。
 舞台美術の形態にもさまざまなものがあるが、上演される劇場の形態によって大きく異なる。舞台と客席が分かれているプロセニアム型の劇場、何もないブラックボックス型の劇場、劇場の構造そのものがない野外では、舞台美術家がやる仕事の内容そのものが変わってくる(上演スペースと舞台美術の関わりについては次号で紹介する)。
 また、舞台美術が固定しているか(通称「一杯飾り」と呼ばれ、最初に仕込んだ装置のままで最後まで上演する)、転換があるかという違いも大きい。転換があるものには、劇場機構(セリ、回り舞台、バトン等)をフル稼動して動かすタイプのものと、舞台美術自体に稼動するための装置を組み込むタイプのものがある。その他の形態としては、「仕掛けもの」と呼ばれる、本物の水や火などを使うタイプの美術もある。しかし、実際は、さまざまな要素が分かちがたく入り交じった創造が行われているのでタイプ別に分類することは極めて難しい。
 また、舞台美術の表現としても、写実的なもの、抽象的なもの、様式的なもの、表現主義的なもの、平面的なもの、立体的なものとこれもさまざまであり、素材も多岐にわたっている。
 いずれにしても、舞台は客席と切り離しては成立しないものであり、また、観客がいることがファインアートと一番違うところで、舞台美術の本質であるため、いかにして舞台と客席の一体感を創出するかが、舞台美術家の大きな課題となる。

●舞台美術の作業の流れ
 【表1】をご覧いただきたい。これは、私の仕事の仕方を例に、舞台美術の現場作業の流れを整理したものである(ただし、台本のあるプロデュース公演の場合であり、台本がない新作や劇団公演ではこうした手順を追えないことが多い)。
 スケジュールと決まっている内容を確認し、仕事を受注してから後の流れは、(1)プランニング、(2)発注・製作、(3)仕込み、の大きく3段階に分けられる。
(1) プランニング
 舞台美術家にとって最も重要な仕事がプランニングである。台本を読み込み、演出家の演出プランを受けて、演技空間をデザインしていく。ブラックボックス型の劇場や野外公演などのように、舞台や客席といった劇場の基本をつくるところからスタートする場合もある。
 イメージスケッチと図面で演出家やスタッフとビジュアルイメージのすり合わせを行い、合意したら、私の場合は、加工しやすいスチレンボードで白模型を作成する。
 白模型という立体にしてプランを再確認してから、技術スタッフのチェックを経て、プランを確定する。こうしたプランニング作業においては、作品のイメージを具体化することがもちろん基本だが、いくら素晴らしいプランでも実現できなければ意味がないので、要所要所で予算的なチェックを行うことが必要となる。
(2) 発注・製作
 プランの仕上げとして、具体的な色、マチエールが付いた色模型(本模型)を作成する。これが、舞台の最終プランを練っていくための共通ビジュアルになり、役者が空間イメージをつくるための題材となり、大道具の受注者がものづくりを行なうための見本になる。稽古が始まる前に色模型が完成しているのが理想だが、白模型段階で稽古はじまりというのが大方の実情である。台本がないケースや劇団公演の場合は、それも間に合わないことが多い。
 大道具製作会社に発注する発注図面は舞台美術家が作成するが、その後の管理は舞台監督が行い、色・マチエール・仕上がりなどのビジュアル面の管理を舞台美術家が行う。
 完成した舞台美術は劇場に搬入する前に仮り組みを行うのが理想。工場で仮り組みができれば、そこで事前に美術の全体確認、組み立て金具のジョイント確認ができるため、劇場に入ってからの大道具の仕込みが非常にスムーズになる。
(3) 仕込み
 劇場に搬入し、組み立てるのは大道具係の仕事である。舞台美術家は置き道具をおいた後の床や壁の色調整、可動セットの動きの確認とそれによる修正対応、照明が入ってからの最終色調整を行い、ゲネプロで最終確認となる。

【表1】舞台美術の作業の流れ
(1)-1 プランニング前半 (1)-2 プランニング後半 (2) 発注・製作 (3) 仕込み
詳細確認 イメージスケッチを元に、立体にするための修正を加えながら白模型の設計図を作成 発注図面(平面図、立面図、寸法入りのパーツ図)の作成 搬入
プロデューサー、演出家、舞台監督との打ち合せ 白模型作成(スチレンボードでつくられた1/30〜1/50の舞台セットのミニチュア) 具体的な色、マチエールが付いた色模型の作成(具体的な舞台セットのミニチュア。本模型) 組み立て
演出家による演出プラン、美術イメージの提示とプロデューサーによる予算枠の提示 白模型を元にプランナーとして再度プランを練り直し 色模型を元に最終のスタッフ会議。衣裳デザイナーチェック、照明仕込みイメージチェック 置き道具をおいて最終確認(床、壁等の色調調整、動きのチェック)
上演スペースの確認(劇場図面確認、劇場下見) 確定した白模型を元に、大道具製作会社立ち合いのもと、スタッフ(プロデューサー、演出、照明、音響、舞台監督等)に素材案も含めてプレゼンテーション
白模型を元に稽古場に仮舞台を立て込み
発注(発注先はプロデューサー、舞台監督、舞台美術家が相談して決定) 照明のシュート、場当たりを見て、最終的な色直し
取材活動(時代考証、資料収集、現場視察) 大道具製作会社が製作的チェックと予算的チェックを行い見積もり作成 発注先と打ち合せ(技術スタッフが立ち合って、模型、図面を見ながら細く発注) ゲネ
イメージスケッチの作成(平面図・立面図) スタッフ会議(演出、照明、音響、舞台監督等)により、技術面、演出面のチェックとプランナー間の調整 発注後の管理 初日
イメージスケッチを元に演出家、プロデューサー、舞台監督と合意するまで打ち合せ 技術的実験(必要な場合) 仕上がり確認
照明家、音響家による技術チェック 借り道具の調整 道具の仮組み
イメージスケッチ合意 スタッフのアイデアを取り入れた白模型の修正
美術プラン合意
見積もり作成


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