地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

8月号-No.124
2005.08.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●ステージラボ松本セッション報告
●制作基礎知識シリーズVol.23



ステージラボ松本セッション報告 2005年7月5日〜8日

●ラボ開催地の特色を活かしたカリキュラムが充実


 ステージラボがスタートして11年目を迎え、これまで開催した地域は今回の松本セッションを含め23都道府県を数えます。近年では、受け入れ先の公立ホールの実務家にコーディネーターとして加わっていただくスタイルも定着し、毎回、その地域ならではのカリキュラムが実現しています。
 今回ご協力をいただいたのは、サイトウ・キネン・フェスティバル松本(以下、SKF)のおひざ元であり、昨年8月に演出家の串田和美氏を館長兼芸術監督に迎えて開館した「まつもと市民芸術館」(世界的建築家の伊東豊雄設計)です。開館までに紆余曲折のあった施設ですが、日本を代表する演出家が市民と正面から向き合い、さまざまな取り組みを始めたことでその動向が注目されています。特に、北海道でのワークショップをきっかけに3年かけて練り上げた『コーカサスの白墨の輪』が地域における新しい演劇創作の可能性を示したことは、記憶に新しいところです(雑誌15号、レター2005年4月号参照)。
 松本セッションでは、ホール入門、自主事業 I(音楽)、自主事業II(演劇)、文化政策企画・文化施設運営の4コースが開講されました。演劇コースではまつもと市民芸術館の渡辺弘支配人がコーディネーターを務めたのをはじめ、音楽コースでSKFの取り組みについて学ぶなど、松本らしさ満載の4日間となりました。ご協力をいただきました皆様、本当にありがとうございました。

●全員でヴェルディの歌劇に挑戦
 ステージラボと言えば、ワークショップやアウトリーチ見学などの体験型のプログラムが名物になっています。今回も公共ホール音楽活性化事業の登録アーティストOBである礒絵里子さん(ヴァイオリン)、浜まゆみさん(マリンバ)が地元の源池小学校に出掛けてアウトリーチを行った他、人気演出家で「発声と身体のレッスン」という基礎訓練のための本を出している鴻上尚史さんによる6時間のロングワークショップや吉田重幸さんによるコミュニケーションゲームの実演などが行われました。
 なかでも面白かったのが、今年からスタートした現代ダンス活性化事業登録アーティストでもある北村成美さんによるワークショップと、ラボ受講者全員参加で行われた合唱プログラムです。「なにわのコリオグラファー」を自称する北村さんは、関西弁で参加者の心をあっという間に虜に。自分の名前や愛称を元に振り付けを考えた参加者たちは、その動きを連続させて作品にまとめ、水中にいるような不思議な雰囲気のあるホールロビーで発表しました。
 全員参加の合唱は、小澤征爾指揮によるSKFのオペラでこけら落としが行われた大ホールで稽古と発表が行われるという贅沢なものでした。指導は、SKFで1,000人の市民合唱を指揮している中村雅夫さんです。深いワインレッドとイルミネーションで彩られた美しいホールを約120名の参加者が独り占めし、ヴェルディの歌劇『ナブッコ』の「行け、我が心、黄金の翼に乗って」と「千の風になって」に挑戦しました。腹式呼吸の説明から始まった時にはどうなることかと不安でしたが、3時間後の発表では見事なハーモニーが生まれ、「合唱は入口が広くて誰にでも開かれているすばらしい芸術」であることを実証し、全員感激の面持ちでした。

●NPOに学ぶ
 現在、公立ホールは、市町村合併、指定管理者制度の導入等、存続に関わる大きな環境変化に見舞われています。今回の文化政策企画・文化施設運営コースでは、こうした課題に関わるケーススタディに力を入れ、全国各地から多数の講師をお招きしました。また、設置主体と運営主体のダブル講師が実現したゼミもあり、立場の違いを目の当たりにして考えさせられることも多かったのではないでしょうか。
 特に2日目の「NPOに学ぶ」は、日本初のアートNPOで今年から正式に富良野市の指定管理者として「富良野演劇工場」を運営している「ふらの演劇工房」、コンテンポラリーダンスの火付け役となったアートスペースを運営する「ダンスボックス」「STスポット横浜」の3団体が揃い踏みする贅沢なカリキュラムでした。その中で参加者に物議をかもしたのが、ダンスボックスの事例です。
 ダンスボックスは、大阪市が進める「新世界アーツパーク事業」の中で生まれた小劇場であり、アートNPOです。遊園地と商業施設が複合したフェスティバルゲートの空き店舗を大阪市が専門的NPOに無償で貸し出し、公設民営方式で運営して先端的な芸術の拠点づくりを行い、全国から注目されていました。しかし、2002年から10年計画でスタートしたにもかかわらず、財源としてきた基金の取り崩しが底をついて家賃の支払いができなくなり、事業の継続が危機的状況に。
 「今、フェスティバルゲートで活動する4NPOが『新世界アーツパーク未来計画実行委員会』を立ち上げて、シンポジウムなどを開きながら継続の可能性を探っているところです」(NPO法人ダンスボックス理事長・大谷燠さん)
 「大阪市として施策をつくり、文化振興条例も出来ていて、評価も高いのに、なぜ継続できないのか」と受講者から質問され、この事業を担当している財団法人大阪都市協会の中村和代さんは、「財源として想定していた基金がなくなるのだから事業もなくなるというのが市としての考え方だと言われています。財団としてほかの手立てがないか、調整しているところです」と、苦しい立場を伺わせていました。
 順調にいくことだけではありませんが、来年にオープンを控えたパレア若狭の下島寛久さん(福井県)は、「住民が文化芸術を生活の一部としてとらえ、活動していく結果がNPOという形で表れるということがわかりました。うちの町にはNPOはありませんが、文化芸術を生活の一部にしたいと思っている人たちのお手伝いをして、町の活性化に繋げていきたいと思います」と希望を膨らませていました。

●松本の取り組みを知る
 松本と言えば今年で14年目を迎えるSKF抜きには語ることはできません。立ち上げ当初から市側で仕切り、現在はそのノウハウを観光面で展開するため松本市観光戦略本部本部長として奔走する赤廣三郎さんを迎えたゼミでは、エピソードや、どこの音楽事務所も仲介せずに事務局がアーティストと直接契約するSFKの特徴などについて話をしていただきました。その内容もさることながら、民間企業の創業者社長のようなキャラクターと語り口に世界を相手にしてきた市職員の百戦錬磨のキャリアが感じられたのではないでしょうか。
 また、まつもと市民芸術館の串田館長を囲み、世田谷パブリックシアターの高萩宏ゼネラルプロデューサーが聞き手となって、幼少の頃から現在までの演劇(劇場)との関わりをディープインタビューする演劇ファン垂涎のゼミもありました。3歳の時の農村歌舞伎との出合い、新劇のエリートコース俳優座養成所時代、日本の演劇史に残る自由劇場の結成とアンダーグラウンドシアター自由劇場の開場、民間ホールのBunkamura芸術監督からまつもと市民芸術館に至った歩みまで。それはまさしく日本の現代演劇史の縮図といえるものでした。「ゆっくりものづくりをする、地方から発信をすることを考えている。シアターキャンプやアクターズスタジオのような取り組みから何かが生まれる予感がする」という芸術監督の言葉はアーティストとしての夢に満ちていました。
 このほか、閉鎖された映画館を改装した劇場「ピカデリーホール」に場所を移して、市民の立場で演劇活動を支えている人たちとの交流も企画されました。このホールは、地域の小劇場フェスティバルの走りである松本演劇祭を支えてきた地元企業社長での西堀恒司さんがオーナーとなって去年開場したものです。「芸術文化は誰かが支えないとできない」という西堀さんの信念にふれ、公立ホール職員としての気持ちを新たにしたのではないでしょうか。

●ステージラボ松本セッション スケジュール表

ホール入門コース 自主事業 I
(音楽)コース
自主事業II
(演劇)コース
文化政策企画・
文化施設運営コース

1
開講式・全体オリエンテーション・地域創造紹介
まつもと市民芸術館 事業紹介・施設見学
「自己紹介」 大石時雄 「Who's Who?」 松原千代繁 「自己紹介」 渡辺弘 「コースオリエンテーション」
吉本光宏
「ワークショップ“身体と頭を解放する”」
北村成美(ダンサー、コレオグラファー)
全体交流会

2
「アウトリーチについて」
松原千代繁、津村卓(北九州芸術劇場プロデューサー/地域創造プロデューサー)
「ワークショップを考える」
鴻上尚史(劇作家・演出家、サード・ステージ主宰)
「夢を語ろう!─『夢プラン』のプレゼンとディスカッション─」  吉本光宏
「アウトリーチ見学」 礒絵里子(ヴァイオリン)、加藤洋之(ピアノ)、浜まゆみ(マリンバ)、大橋めぐみ(ピアノ)
「公立ホールの役割」
大石時雄
「伊丹市立演劇ホールの現状〜人口19万都市における試み」
山口英樹(伊丹市立演劇ホール事業担当主任)、大石時雄
「サイトウ・キネン・フェスティバルとの出会い」 赤廣三郎(松本市観光戦略本部本部長) 「声と身体で遊ぶ(1)」
鴻上尚史
「大和のわらべうたで遊ぼう〜こんなアウトリーチはいかが?〜」
吉川友子(なら100年会館事業係長)
「声と身体で遊ぶ(2)」
鴻上尚史
「直営館に学ぶ:魚沼市+小出郷文化会館」
小幡誠(魚沼市文化振興課長)、櫻井俊幸(小出郷文化会館館長)
共通プログラム(合唱)  中村雅夫(指揮)、金岡泉(伴奏)

3
「可児市文化創造センターの現状〜人口10万都市における試み」
大石時雄
「佐世保でタケミツ?」
力武由美子((財)佐世保地域文化事業財団)
「演劇でホールや地域を活性化できるか!?」
串田和美(俳優・演出家、まつもと市民芸術館館長兼芸術監督)、高萩宏(世田谷パブリックシアター制作部長)
「財団改革に学ぶ─鳥取県文化振興財団の改革案を巡って」
柴田英杞((財)鳥取県文化振興事業団副理事長)
「ワークショップってなに?」
吉野さつき(ワークショップコーディネーター)
「そして松本市は何が変わったのか?」
赤廣三郎
「演劇の経済について考える」
佐藤玄(パルコ劇場チーフプロデューサー)、高萩宏
「NPOに学ぶ(1)─NPO法人ふらの演劇工房」 篠田信子(NPO法人ふらの演劇工房理事)、長谷山武則(富良野市社会教育課課長)
「公共ホールはなぜクラシック音楽を提供するのか?」 平佐素雄((株)梶本音楽事務所取締役シニアディレクター) 「NPOに学ぶ(2)─NPO法人ダンスボックス」大谷燠(NPO法人ダンスボックス理事長)、中村和代((財)大阪都市協会文化事業部次長)
「地域における演劇ワークショップを体験する(1)」
吉田重幸((株)ストーリーレーン制作/ワークショップコーディネーター)
「560人の町立ホール音楽事業」
澤田誠((財)入善町文化振興財団主任)
「演劇の場所を探す」
西堀恒司(ピカデリーホール主宰)
「NPOに学ぶ(3)─NPO法人STスポット横浜」 大澤寅雄(NPO法人STスポット横浜事務局長)
番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ「まとめ」 吉本光宏

4
「地域における演劇ワークショップを体験する(2)」 吉田重幸 「アーティストからのメッセージ」
荘村清志(ギタリスト)
「企画してみる(1)」
津村卓、渡辺弘
「グループワーク」
大澤寅雄、吉本光宏
「地域における演劇ワークショップを体験する(3)」 吉田重幸 「参加者の皆さんの発表」
松原千代繁
「企画してみる(2)」
津村卓、渡辺弘
「成果発表」
大澤寅雄、吉本光宏
全体会・閉講式

コースコーディネーター
ホール入門コース
大石時雄(可児市文化創造センター プロデューサー)
自主事業 I(音楽)コース
松原千代繁(東京芸術大学客員教授、アフィニス夏の音楽祭マネージングディレクター)
自主事業II(演劇)コース
渡辺弘(まつもと市民芸術館 プロデューサー兼支配人)
文化政策企画・文化施設運営コース
吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室室長)

ステージラボに関する問い合わせ
芸術環境部 大崎理英 Tel. 03-5573-4164

制作基礎知識シリーズVol.23 演劇予算の立て方(2)

●パッケージ事業(買い公演)の場合(2)

 講師 津村 卓(地域創造プロデューサー)
 業界の慣習を踏まえた予算組みが必要

 前回も説明したように、買い公演のプロダクションに係る予算には、「公演費」「移動トラック費(トランポ代)」「交通費」「宿泊費」「食費(パーディアム・日当)」の5つがあります。今回は、公演費以外の予算について説明するとともに、現地で係る予算について整理します。

●プロダクションに係る予算─公演費以外

◎移動トラック費用

  移動トラック費用は、何トントラックが何台必要かによって金額が異なってくるため、舞台装置が確定するまで決まらないことが多い(ちなみに運転手の宿泊代、有料駐車場代は現地経費で計上する)。また、公演費に含まれることもあるので確認が必要である。
 Aホール・Bホール・Cホールを巡演する場合、Bホールが負担する費用は、一般的にはAホール〜Bホールまでの半額とBホール〜Cホールまでの半額というのが目安になる(この目安は交通費を巡演先のホールで分担する場合にも当てはまることが多い)。ただしカンパニーやホールの考え方、地域がどこかによって話し合いで負担割合が変わることも多い。また、移動に係る経費を合算して巡演先のホールが平等に負担しようという考え方もでてきている(九州地域の公立ホールが加盟しているC-WAVEや地域創造が行ってる公共ホール演劇製作ネットワーク事業はこの方式)。いずれにしても地方公演を円滑に行うための新しい費用負担のルールづくりが望まれるところだ。

◎交通費・宿泊費

  交通費については、まず、カンパニーとホールのどちら側がチケット手配を行うかという問題がある。いずれにしても旅行代理店を通すことが多い。ただし、団体チケットとして手配できる人とできない人がいること、格安の航空券の場合は変更ができないためキャンセルになると多額の負担が発生すること、また閑散期と繁忙期ではチケット価格が何割も変わることに留意する必要がある(人気劇団などには専属の代理店が付いているケースもある)。また、現金で支給する場合には源泉徴収が係るので注意しよう。なお、宿泊については、地元のホテルを使用するためホール側が融通のきくところを手配するほうが合理的である。
 交通費・宿泊費の見積もりをつくるには、例えば、宿泊代1人7,000〜8,000円、交通費1人東京〜大阪往復3万円、市内交通費1人3,000円というような大枠をつくって積算する。宿泊場所等の条件を提示して了解をもらったら、そこからホテル等との交渉に入る。また、市内移動についてもタクシー、バス、公用車等どのように対応するかカンパニーと相談して決める。
 宿泊場所の条件についてはカンパニーとの相談になるが、基本はシングルユースで、スタッフとキャストは別のホテルにするのが望ましい。また、場合によってはスイートルームの使用など特別な条件を求められることがあるが、その場合は、理由をきちんと確認して話し合うことが重要。喫煙、禁煙についても注意が必要となる。

◎パーディアム(食費・日当)

  業界の慣習として、人件費が「ギャラ」と「パーディアム(食費・日当)」の2本立てとなっているため、パーディアムを支払う必要がある。パーディアムを払っている場合は弁当を用意する必要はない。カンパニーから弁当を用意してほしいと言われたら弁当代を徴収してもよい。ボランティアなどが善意で炊き出しを行う場合でも、通常はパーディアムが必要となる。ただし、カンパニーから炊き出しの要望があった場合は実費を徴収しても差し支えない場合が多い。
 金額の目安は、1日4,000円見当。基本的に同額をスタッフ、キャスト、演出家、プランナーなどカンパニーメンバー全員に支払う。海外招聘の場合、契約書でパーディアムについての取り決めを行うが、平均1万円〜1万5千円(ヨーロッパ、アメリカ)程度となっている。
 支払い方法については、原則は現金で一人ずつ渡す(源泉徴収が係るので、金額を決める時に注意すること)。領収書が必要になるため、全員の名前を記入した受取表を作成し、受取印をもらうのが通常となっている。場合によっては制作会社に一括して支払い、個人の領収書をもらうこともある。移動日については地域に入る時間、出る時間によって金額を変えることも考えられるので、ホールとしての目安をつくってカンパニーと相談しよう。なお、やむを得ず作業が深夜に及んだ場合、深夜食が必要になることもある。

◎支払い

  昔の興行的な慣習では、カンパニー側への支払いは、契約時点で3分の1、初日に3分の1、楽日に3分の1となっており、契約書が結ばれることもなかった。しかし、現在公立ホールでは、パーディアム以外は、交通費・宿泊費などの経費を含め、公演終了後に代理店やカンパニーから請求書をもらって後日精算するのが通常となっている。

●現地で係る予算
 主催者としてパッケージ事業を行う場合、公演する現地経費として計上しなければならないのが、「現地スタッフ費」「広報・宣伝費」「機材費」「舞台費」「著作権料」「通信費・制作費」である。

◎現地スタッフ費(増員費)

  交通費・宿泊費等の経費を抑えるためカンパニースタッフはできるだけ少人数にするのが原則となっている。そのため、公演本体に必要なスタッフ(舞台、照明、音響)や、仕込み(搬入、搬出)に必要なスタッフを現地で増員することが多い。こうした増員費は主催者負担が原則となっており、必要な人数についてカンパニーから要求がある。人材がいない、技量が足りないなどで他の地域から手配する場合は、別途交通費・宿泊費を計上しなければならない。
 こうした人件費は、地域によって相場が異なり、また、組合経由で手配する契約のところもあるため、日頃から状況を把握して、増員に対応できるような手立てを考えておく必要がある。

◎広報・宣伝費

  チラシ・ポスターについては、カンパニー側から出来上がったものを必要枚数だけ買い取ることが多い。各地の情報が印刷された現物を買い取るケースと、データを受け取り各地で情報を追加して地元で必要枚数を印刷するケースがある。データを受け取る場合、デザイン料を各地が分担する場合があるので確認すること。また、パンフレットについては、必要部数を買い取るケースと販売手数料(通常10%)を取るケースがある。ただし、公立ホールの中には設置条例で有料販売が禁止されているところもある。
 テレビやラジオ出演など、出演者や演出家に宣伝協力を依頼する場合、原則としてギャラは発生しないが、現地までの交通費・宿泊費は必要となる。こうしたスケジュールの調整は、公演の制作を行っているカンパニーを窓口にして行うのが一般的。
 広報・宣伝費については、ホールによっていろいろな考え方がとられており、有料宣伝ができるところもあれば、事業ごとの予算をもっていないところもあるため、各地の実状に応じた予算組みが必要となる。

◎機材費・舞台費

  前号でもふれたが、現地で手配する機材費は現地経費という慣習があるので、機材費を予算化する必要がある。また、張り出し舞台をつくったり、イントレを組んだり、急にパンチカーペットが必要になることなどもあり、「舞台費」を計上しておかないと困ることが多い。

◎著作権料(上演料、音楽著作権料)

  著作権料は必ず主催者費用として弁償することになっている。音楽著作権料についてはJASRAC(日本音楽著作権協会)の規定に応じて支払う。上演料は固定の一定金額+チケット価格(チケット手数料等を引いたもの)×入場者数×一定率で計算するのが通常となっている(率は契約で定める)。

◎通信費・制作費(劇場側で係ってくる制作費)

  その他、主催者として公演を行うためには、現地の制作スタッフが活動するための諸々の経費が必要となる。実際に公演を見たり、打ち合せをするための旅費をはじめ、広報宣伝のための通信費等は必須。また、公演期間中に現金での支出が発生しそうなものをリストアップし、数十万円程度の現金を留保しておくことも必要となる(決済を回していたのでは間に合わない)。

 業界の慣習が多い世界でもあり、また、幕を開けるためには即決即断しなければならないことも多いため、日頃からこうした費用項目の性質や予算の流れについて制作担当者や管理職がよく理解し、柔軟かつ適切に対応することが求められる。

* ここで取り上げている「パッケージ事業」とは、既存の作品(プロダクション)を地域に招聘して公演する事業の総称。ただし、「現地で係る予算」以外のすべての経費(移動トラック費・交通費・宿泊費等)を含めて「公演費」として請求が行われるものは「完全パッケージ事業(完パケ)」と呼び、区別するのが通常。

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