地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

10月号-No.126
2005.10.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●「東京芸術見本市2005」報告
●制作基礎知識シリーズVol.23



「東京芸術見本市2005」報告 2005年9月12日〜15日

●今年は音楽にスポット、東京芸術見本市2005開催


 国内外の舞台芸術関係者、アートカンパニーと、全国の公立ホール・劇場の運営団体等が一堂に会する「東京芸術見本市2005」が、9月12日から15日まで東京国際フォーラムと丸ビルホールを会場に開催されました。
 今回の見本市は、これまで取り上げることの少なかった音楽(特に邦楽)にスポットを当てたのが特徴です。また、ブース出展者を含めて参加者がすべてのショーケース、セミナーに来場できるようプログラム・スケジュールを工夫しました。
 財団法人地域創造は、第1回から主催団体の構成メンバーとして参画し、毎回、地域の公立文化施設に関わる重要課題を取り上げたセミナーを企画してきました。今回も全国公立文化施設協会との共催により市町村合併と指定管理者制度をテーマにしたセミナー「公立文化施設はどう変わる!?」を開催しましたが、あまりの関心の高さから入場していただけない事態となり、大変ご迷惑をおかけしました。

●音楽をはじめショーケースが充実
 実際のパフォーマンスをできるだけ多く見たいというご要望に応え、今回の見本市ではショーケースを大幅に拡充。邦楽ニューウェーヴ、サウンドアートやテクノロジーサウンドなどの最先端音楽、コンテンポラリーダンスなど合わせて計29組(オープニングイベント含む)のアーティストがライブパフォーマンスを行いました。
 特に人気が高かったのは、邦楽とコンテンポラリーダンスのショーケースです。邦楽では、林英哲が率いる若手奏者たち英哲風雲の会のメンバー4名による和太鼓アンサンブル、十七絃箏を自在に操る栗林秀明とコントラバス奏者齋藤徹のセッション、そして津軽三味線のホープ新田昌弘と全国大会に最年少で優勝した弱冠15歳の浅野祥がラストを締めくくるという贅沢なプログラム。特に新田とアメリカから来日したギター奏者ディーン・マグロウによるコラボレーションは、日本と西洋の楽器の出会いがお互いの魅力を引き出し合う、ニューウェーヴと呼ぶに相応しいパフォーマンスで、会場から惜しみない拍手が贈られていました。
 コンテンポラリーダンスでは、伊丹アイホールが京阪神のアーティスト──山下残、BABY-Q、砂連尾理+寺田みさこという全国的にも注目されている若手──と共同制作した3作品を30分のショートバージョンで披露。いずれも創作意欲溢れる取り組みで、地域の公立ホールのプロデュース作品を見本市で全国発信する試みとして注目されました。
 難解なサウンドアートなどのショーケースもありましたが、解説付きのものも多く、初心者のホール職員が普段触れることのない先端アートに対する知見を広げるには貴重な機会になったのではないでしょうか。

●指定管理者制度に高い関心
 「公立文化施設はどう変わる!?」のパネリストとして地域の事例を紹介したのが、平成17年4月に4町が合併して誕生した朝来市(兵庫県)の藤井保雄氏(朝来市文化会館・和田山ジュピターホール副館長)と、指定管理者の導入対象になっている市内17館の文化施設全てを公募することが決定し、すでに民間2館、民間と財団のジョイントで1館を運営することになった横浜市の高橋保夫氏(文化芸術都市創造事業本部文化政策課)。
 藤井「合併して一つの市にホールが3つになった(800席、418席、300席)。それぞれ所管も違っていたが、合併協議の中で市長部局に新たに芸術文化課を設けて直営で運営することを選択した」
 高橋「みなとみらいホール、横浜能楽堂、横浜市美術館、にぎわい座という専門館については、財団のノウハウや能力を活用する施設として考えていた。しかし、市長の原則公募という方針により、民間事業者もこうした専門施設にフィフティフィフティの条件で応募できるよう検討している」
 渦中の地域からの生々しい証言の数々に、公立文化施設が革命的な変革期を迎えていることをひしひしと感じた2時間でした。

●コミュニティ・ダンスの本場に学ぶ
 地域創造では、今年度から新たに公共ホール現代ダンス活性化事業(以下、ダン活)をスタートしました。この事業は、コンテンポラリーダンスの登録アーティストを地域の公立ホールに派遣し、1週間程度滞在してダンスの普及事業を行うというものです。こうしたコミュニティ・プログラムの先進地であるイギリスから第一線の専門家クリストファー・トムソン氏(ザ・プレイス ラーニング・アクセス部門ディレクター)を招き、ダン活の参加館の担当者も交えたシンポジウムを開催しました。
 「イギリスには国の機関であるナショナル・ダンス・エージェンシーが全土に9カ所あり、アーティストの育成やダンスによる地域活動を実施している。そのコミュニティ・プログラムの総数は年間7万5,000件に上る。日本でもこうした活動を広げていくためにイギリスの事例が参考になれば」と、シンポジウムを企画した佐東範一氏(JCDN代表、ダン活コーディネーター)。
 トムソン氏は、「イギリスでは、ラバンの提唱により、1950年代から学校教育の中にダンスが組み入れられた。彼は“すべての人にユニークなムーブメントがある。一緒にダンスをすることで失ったコミュニティの気持ち(連帯感)を取り戻せる”というダンスの民主化とコミュニティにとっての重要性を説いた」と、コミュニティ・ダンスが始まった経緯を説明。こうした考えが受入れられた背景として、「コミュニティの崩壊」「教育の意識変化(子どもの教育の重視、教育の機会均等)」「コミュニティ・プログラムに対するアーツ・ファウンデーションからの資金援助」「仕事を求めるダンサーの存在」といった要因を指摘しました。
 日本の現状と重なる状況に、参加者は熱心に耳を傾けていました。

 この他、国際交流基金やブースに出展している海外のアーツ・サービス・オーガニゼーションの企画により、インドネシア、ベトナム、スペイン、オーストラリア、イギリスなどの舞台芸術のトレンドが映像で紹介されるなど、インターナショナルな見本市となりました。
「東京芸術見本市2005」地域創造関連事業
(財)地域創造・(社)全国公立文化施設協会共催シンポジウム「2005!公立文化施設はどう変わる!?─市町村合併・指定管理者制度をむかえて─」
[会期・会場]9月14日 東京国際フォーラムG502会議室
[コーディネーター]吉本光宏(株式会社ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室室長)
[パネリスト]中川幾郎(帝塚山大学大学院教授)、藤井保雄(朝来市文化会館 和田山ジュピターホール副館長)、高橋保夫(横浜市文化芸術都市創造事業本部 文化政策課)
「東京芸術見本市2005」地域創造関連事業に関する問い合わせ
芸術環境部 水谷敏司 Tel. 03-5573-4078

制作基礎知識シリーズVol.23 演劇予算の立て方(3)

●プロデュース事業の場合

 講師 津村 卓(地域創造プロデューサー)
 変更に対する柔軟なマネージメントが必要

 今回は「プロデュース事業」の予算の立て方について整理する。「パッケージ事業」については、制作団体から一定価格でステージを買い取るため、作品をつくるための製作予算を組み、管理を行う必要はないが、「プロデュース事業」ではこれが必要になる。製作予算以外は、基本的にパッケージ事業の予算項目と同じなので、今回は「演劇作品の製作に係る予算」を中心に解説したい。

●プロデュースの主体と企画内容
 一口でプロデュース事業といってもその内容は千差万別であり、あらゆる可能性が考えられる。例えば、企画で生きた鯉を使うとすると、買うか借りるか、ペットショップに協賛してもらうか、死んだ場合のリスクは? 等々さまざまな選択肢があり、そういったことがすべて業務の内容と予算に跳ね返ってくる。
 ちなみにこれまで私がプロデュース業務の中で調達した変わりダネは豚の頭だった。作品を製作するということは、こういう現場レベルで物事に携るということであり、予算を組む上でも柔軟性、即応性、決断力、実行力のある体制が求められる。そのために重要な役割を果たすのがプロデューサーである。
 公立ホールがプロデュース事業を行なう場合、プロデューサーがホールに所属しているとは限らない。個人や制作会社、あるいは劇団のようなプロダクションにプロデュース業務を委託するケースも多い。それよってホールの役割が異なってくるため、実際のプロデュース業務の主体がどこにあるのかを見極めてから事に当たる必要がある。いずれにしても作品製作に係る予算組みは、プロデューサーの責任事項となる。

●演劇作品の製作に係る予算

◎予算項目

  演劇の制作会社が使っている予算書を元に作成した予算項目のサンプルが右頁の表である。通常、「文芸費(作品のプランナー関係の費用)」「舞台費(舞台上のセット・衣裳をはじめ、出演料以外で実際の上演に必要な費用)」「出演料」「制作費(プロダクションのマネージメントのために必要な費用)」の4つに分けられる。詳細項目については、例えば、著作権関係の費用をどこで計上するかなどの決りがあるわけではなく、プロデュース内容によって変わってくるので適宜必要な項目を挙げて予算化する。
 公立ホールのプロデュースでは入ってこないこと多いが、通常は「稽古場代」と「劇場費」が大きな負担になってくる。また、演劇製作は稽古期間が1、2カ月と長いため、ホールの技術スタッフが管理業務とプロデュース業務を両立させることは人員的に難しいので、どちらかをカバーする増員用の予算を計上しておくことを忘れてはいけない。
 また、予算をつくる段階では、演出プランの詳細はほぼ未定の状態。全体の予算規模にもよるが、製作途中での変更に対応するため総製作費の1割程度の予備費を見積もっておく必要がある。
 企画内容によっても全く異なるので一概には言えないが、製作費の内訳は、広報宣伝費も含めた総製作費の2割が劇場費、4割が舞台費、1割が広報宣伝費、1割が予備費ぐらいのバランス。アマチュアのように出演料がゼロになると7、8割が舞台費になるし、逆に出演料が突出するケースもある。いずれにしても、常に全体を意識しておくことは必要だろう。

●予算枠のマネージメント
 こうした製作予算は、必要な予算を積み上げて作成するというより、企画に応じたプロダクション規模を割り出し、それに応じた予算枠をつくって、その中でマネージメントしていく。
 予算枠の作成は、企画をつくる段階から始まる。表現者(プランナー)とプロデューサーが企画を立ち上げ、その企画の核の部分を具現化するための大ざっぱな座組(どういう作品を、どういう出演者・プランナー・スタッフで、どこで上演するか)を考える。
 この段階では、キャストも演出や美術プランの詳細も未定だが、「出演者は何人か」「美術プランはどの程度のものか(企画内容とプランナーの顔触れによって予測する)」によっておおよそのプロダクション人数(スタッフ、出演者込みの総数)を割り出す。また、ツアーを行なうかどうかも予算組みには重要な要素なので初期の段階で判断する。
 座組、プロダクション人数、旅公演の有無によっておおよそどのぐらいの予算規模になるかを想定し、加えて、座組からどのぐらいの興行収入が見込めるかを折り込んでチェックし、第一段階としての大まかな総製作費を作成する。それをベースに、個別に交渉を重ね、キャスト等が決定してから第二段階の予算組みをつくる。チケット価格も含めた公演の詳細が決るまでに予算が確定できているのがベストである。
 ただし、稽古に入ってから(公演の1カ月前ということ)演出プランが固まるため、演劇製作の予算には変更がつきものとなる。稽古途中で生バンドを使いたいとなると、プロダクション人数が5人、10人と増え、数百万円単位で予算が変わってくる。プロデューサーとして作品づくりを優先させつつも、どういう変更がどういう影響を及ぼすかを的確に判断し、予算管理を行なうことが肝要となる。

●契約
 すべての詳細が確定した段階で、見積りが必要なものは見積りをとり、予算を確定しながら個別に契約を結ぶ。二次利用権についても契約書に盛り込んでおこう。なお、再演の場合は改めて契約を行い、プラン料も再度発生するので留意すること。

製作予算項目
文芸費 原作料(上演権料)
翻訳料
演出料
演出助手料
照明プラン料
装置プラン料
装置補料
音響プラン料
衣裳プラン料
振付プラン料
台本印刷代
文芸雑費
文芸費計
舞台費 大道具代
小道具代
衣裳代
かつら代
履物代
照明費
音楽費(JASRAC)
音響費
効果費/消物
舞台監督・助手料
ヘアー人件費
制作助手料
稽古場代
運搬費
クリーニング代
舞台雑費
録音スタジオ代
アルバイト代
舞台費計
出演料







出演料計
制作費 交通費
通信費
接待費
会議費
稽古場雑費
初日等パーティ代
ケータリング代
資料代
雑費
ビデオ撮影費
舞台稽古撮影費
制作費計

文芸費

[原稿料・上演料]参考として劇作家協会の基準もある。基本的に1作品いくらで支払う。新作、旧作、ネームバリュー等を考慮して算出。
[演出料]基本的に1作品いくらで支払う。企画の打ち合せ段階から考えると、通常延べ2カ月程度の拘束を前提とし、ネームバリュー、実績等を考慮して算出。有名な演出家の場合、市場としての相場がある。
[音響・照明・美術プラン料]1作品いくらで支払う。ネームバリュー、実績等を考慮して算出。
[スタッフ人件費]人数×拘束日数×単価。ポジション(チーフ・スタッフ)や地域によって単価の相場が異なる。地域によっては同業者の組合が標準価格を提示しているところもある。

出演料

原則として単価×ステージ数×人数。1ステージいくらで支払う。稽古拘束に対する出演料は発生しない。従ってステージ数が少ない場合は考慮が必要だが、逆に多い場合は交渉する余地がある。ネームバリュー、キャリア、作品への貢献度等を考慮して算出。有名なキャストの場合、市場としての相場があり、事務所の提示額で契約することがほとんど。古典芸能等では特別な慣習があるので注意が必要。

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