地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

11月号-No.127
2005.11.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●平成17年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」スタート
●「公共ホール音楽活性化事業」平成17年度事業シーズンに突入
●制作基礎知識シリーズVol.23



平成17年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」スタート

●モデル事業として全国7都市で実施


 地域創造では、今年度から新たに公共ホール現代ダンス活性化事業(以下、ダン活)をスタートしました。これは、公募により選考したコンテンポラリーダンスの登録アーティスト(2年登録制)を公立ホールに派遣し、1週間程度滞在してワークショップと公演を行う事業です。
 身体表現によるコミュニケーション能力の低下が指摘される昨今、身体の表現力を追求するコンテンポラリーダンスの社会的な役割に注目が集まっています。こうした社会的なニーズに応えるとともに、地域ではふれることの少ないコンテンポラリーダンスを体験する機会の提供を目的として、創設されました。
 平成17・18年度の登録アーティストは新進アーティストから海外でも高く評価されているベテランまで10組。参加館は、多数の問い合わせをいただいた中から、今年度はモデル事業ということもあり7館で実施することになりました。今号では、この事業の皮切りとなった金沢市民芸術村(石川県)と斜里町公民館ゆめホール知床(北海道)での取り組みをご紹介します。

●身体と心の壁を取り払う山田うんのワークショップ〜金沢市民芸術村
 金沢市民芸術村に滞在したのは、ダンサー、振付家として幅広い分野で活躍している山田うんさんです。「4月の全体研修会でパフォーマンスを見てお願いしたいと思った」という金沢市民芸術村・ドラマ工房ディレクターの市川幸子さん。学校との繋がりをつくるところから企画を立ち上げ、アーティストが決まって3カ月という短期間で調整。9月27日〜10月2日にかけて味噌蔵町小学校、北陸学院中学校と、ドラマ工房での一般向けワークショップを行いました。
 3日間通しで行われた一般向けには、演劇経験者を中心に16名が参加。「即興で動く」をテーマに、1日目は一番身近な歩き続けることからスタートしました。身体を動かすことへの抵抗がなくなったところで、ミミズ・ゴキブリ(突然ミミズが身体の中に入ってきて這い回る→突然ゴキブリが出てきて踏みつける)など即興的な反応や動きを引き出すワークが行われました。
 味噌蔵町小学校では、3年生と6年生の2クラスで実施。うんさんは教室に入ると、そのまま黒板に「山田うん ダンサー 女」と書き、無言で子どもたちと握手。一人ひとりの反応に応じて即興でリアクションする「握手ダンス」で子どもたちの気持ちをすっかり虜にしてしまいました。自分の名前をひらがなにして、その中から3文字を使い、ダンサー名を考えた子どもたちは、うんさんの手のひらパフォーマンスに誘われるまま体育館に移動。
 担当の上野千恵子先生は、「6年生ともなると、警戒心、反発心が強く、人の言うことを聞かない子もいます。でも、うんさんは、普段の授業とは全く違うアプローチで子どもの心を開き、新しい感覚を教えてくれた。3年生も、自分で発想する課題を与えるといつも固まってしまう子が、名前の並び替えができるとスムーズに集団に溶け込み、積極的になった」と言い、子どもたちの変化に驚いていました。うんさんは学校でのワークショップの終わりに、「人それぞれにオリジナルな動きがあります。自分のオリジナルな動きを探して、これからも表現のストックを増やしていってください」と児童たちに話していました。

◎市川幸子さんコメント(金沢市民芸術村)
コンテンポラリーダンスをする上では、自分の中の壁をいくつも壊さなくてはいけない。それを体験すること、またそうしてつくられたダンスが物語るものを感じることが、いかに大きな体験かを実感できた。コンテンポラリーダンスは、極端に言うと指さえ動けばできる表現。例えば、体の不自由な人もその人の身体を思いっきり開いて、個性を発揮できれば立派に身体表現ができる。そういう意味で、全ての人に開かれたジャンルなので、今回のように小学校、中学校に限らず、多様な人々にアプローチしていけたらと思っている。

●高校生が砂連尾+寺田のパフォーマンスに釘付け〜斜里町公民館ゆめホール知床
 北海道の斜里町には、コンテンポラリーダンスの新進振付家の登竜門であるトヨタ・コレオグラフィーアワード第1回受賞者、砂連尾理(じゃれおおさむ)さんと寺田みさこさんのデュオが滞在しました。世界自然遺産に登録された秋の知床は、高く澄み渡った空に斜里岳が映え、ワークショップで訪れた斜里高校近くの斜里川を数え切れないシャケが上る、別天地でした。
 中央公民館機能をもつゆめホールでは、地元のバレエサークルのメンバーを中心とした一般向け、小学生・中学生向けと斜里高校でのワークショップを実施。高校では女子の創作ダンスの時間に行われましたが、少しでも気を抜くと集中が途切れ、自分に対する意識から離れられない思春期の自我の強さにさすがの二人も最初は戸惑い気味でした。しかし、寺田さんの解放されたしなやかな身体(心)を目の当たりにし、直接触れ合ううちに、身体(心)が解れ、少しずつ自分の動きが出るように。
 男子も含め、350人の全校生徒を前に、体育館で行われたミニ・パフォーマンスは感動的でした。トレーニングウェアのままの自然体で登場した二人は、国際結婚をした夫婦にインスピレーションを得てつくったという『あしたはきっと晴れるでしょ』の一部を披露。これまで見たことのない表現だからこそ成し得た集中力を高校生から引き出し、男女の身体(感情)の動きと会場が一体になっていました。

◎岩崎みさ子さんコメント(北海道斜里高校教諭)

砂連尾さんの「踊りたくなかったら踊りたくなるまで待とう」という言葉が印象的だった。高校時代は自我の芽生えの時期。恥ずかしがって少ししか動けない生徒も多かったが、相手の身体を動かすワークの中では、微妙な動きの中に普段の生活ではありえない人間関係が現れていて、感動的だった。ゆったりとした時間の中で、落ち着いて自分・他人の身体を意識できたことが生徒の内面に新しい発見を生んだと実感している。この気づきを今後の授業にも繋げたい。

◎砂連尾理+寺田みさこコメント

 最終日にホールで公演したが、都市でやるのとは全く違った体験だった。都市のお客さんはある程度コンテンポラリーダンスを見慣れた「観客」という集合体なので、評価の目に晒されているという感覚が常にある。しかし今回は、1週間滞在し、町の人と触れ合ってから公演を行ったので、客席に座っている一人一人が個人として強く意識された。目の前に座っているコンテンポラリーダンスを全く知らない人たちにどうやったら伝わるかと真剣に考えながら踊ったので、いつもとは違った感覚で集中できた。これは公演をするということの原点に立ち戻る、とても刺激的な体験だったと思う。
公共ホール現代ダンス活性化事業平成17・18年度登録アーティスト(50音順、ソロ・デュオの順)
伊藤千枝、岩下徹、笠井叡、勝部ちこ、北村成美、室伏鴻、山田うん、山田珠実、上村なおか+笠井瑞丈、砂連尾理+寺田みさこ
公共ホール現代ダンス活性化事業平成17年度実施会場(日程/出演アーティスト)
金沢市民芸術村(9月27日〜10月2日/山田うん)
斜里町公民館ゆめホール知床(10月4日〜8日/砂連尾理+寺田みさこ)
名取市文化会館(11月7日〜12日/勝部ちこ)
仙南芸術文化センターえずこホール(2006年1月10日〜15日/伊藤千枝)
多治見市文化会館(2月1日〜5日/北村成美)
茅ヶ崎市民文化会館(2月28日〜3月5日/山田うん)
豊岡市民プラザ(3月1日〜6日/砂連尾理+寺田みさこ)
日程は変更になる場合があります。
公共ホール現代ダンス活性化事業に関する問い合わせ
芸術環境部 畑間・南谷 Tel. 03-5573-4067


●全国24地域で実施、平成17年度事業シーズンに突入〜「公共ホール音楽活性化事業」

  今年度の公共ホール音楽活性化事業(以下、音活)が10月からいよいよ本格的なシーズンに突入します。登録アーティストも2年目となり、各地で意欲的な企画が目白押しとなっています。近くで開催される事業をぜひご覧ください。今号では、9月12日から14日まで青森市で行われたニューオーリンズ・スタイルのブラスバンド、BLACK BOTTOM BRASS BAND(BBBB)の取り組みをご紹介します。

◎地元の資源「ねぶた囃子」を生かす

  ニューオーリンズ・スタイルとは、少人数編成のブラスバンドで街を行進しながら演奏する初期のジャズの演奏スタイルのことです。BBBBのメンバーは、音楽を楽しみながら歩くパレードを街の人たちと一緒にやりたいと音活に参加しました。昨年も北海道利尻町、大分県三重町などでパレードし、大盛況でした。
 その彼らに惚れ込んだのが青森市文化会館です。BBBBは『ワッショイ★ブギ』というオリジナル曲を発表しているぐらい祭好きで、ねぶたのある青森とはぴったりの組み合わせ。今回は、青森市文化スポーツ振興公社の26歳トリオ、碇谷英里子さん、田澤拓郎さん、町田直子さんが担当となり、ブログを立ち上げたり、ブティックにポストカードタイプのチラシを置くなど、若手ならではの発想で事業に取り組みました。
 初日の12日は、橋本小学校と青森市に合併された旧浪岡町の大栄小学校。橋本小では鼓笛隊が演奏するねぶた踊りのお囃子をBBBBと子どもたちがセッション。校内パレードをしながら体育館に移ると、低学年の子どもたちが待ってましたとばかりに「跳人」で参加。祭好きの血が騒ぐアクティビティとなりました。大栄小では、20名のトランペット鼓笛隊と『聖者の行進』のセッションを行い、コンサート本番でも共演。また、「あなたの〜、だいじな〜、ものはなんですか〜・・・・」とBBBBがつくった替え歌を全校生徒で合唱しました。
 また、最終日に行った青森東高校吹奏楽部のクリニックでは、ニューオーリンズ・スタイルの神髄である「音を楽しむ」「音に空間をもたせるということを伝えたい」と、メンバー全員で熱心なパート指導を行いました。「身体の力を抜いてリラックスして」「右に向いて吹いてみて、左に向いて吹いてみて、天井の穴に向かって吹いてみて」とリーダーのYASSYさんにジェスチャーたっぷり、全身笑顔で指導されるうちに子どもたちも笑顔に。クリニックの後の合奏では輝くような音に変わり、先生たちも驚嘆していました。
 青森駅前の広場から県庁のある青い森公園まで約30分のパレードは200人近い人々で賑わい、青森ねぶた正調囃子保存会との共演が実現した本番のコンサートでは、和楽器と洋楽器による「ラッセーラー、ラッセーラー、ラッセーラッセー、ラッセーラー」の大合奏に、みんなオールスタンディングで飛び跳ねるなど、「ワッショイ★LIVEあおもり」の名に恥じない音活となりました。
平成17年度「公共ホール音楽活性化事業」実施会場(日程)
青森市文化会館(9/12〜14)、市川市行徳文化ホール(9/29、30、11/19)、山県市文化の里花咲きホール(9/29〜10/1)、アルカスSASEBO(10/21〜23)、取手市民会館(10/27〜29)、新潟市新津美術館(11/1〜3)、幸田町民会館(12/11)、余目町文化創造館響ホール(11/8〜10)、中之島町町民文化センター(11/17〜19)、ゆめたろうプラザ(11/20〜23)、石巻文化センター(11/24〜26)、ながす未来館(12/1〜3)、深川市文化交流ホールみ・らい(12/1〜3)、長崎市香焼公民館(12/1〜3)、伊東市観光会館(12/8〜10)、會津風雅堂(12/8、9、21)、さざなみホール(2006/1/12〜14)、舞鶴市総合文化会館(1/19〜21)、かぶら文化ホール(2/16〜18)、なら100年会館(2/23〜26)、佐敷町文化センター・シュガーホール(2/23〜26)、ゆめニティプラザ(2/3〜5)、大口文化会館(3/2〜4)、めぐろパーシモンホール(3/18)

制作基礎知識シリーズVol.23 演劇予算の立て方(4)

●劇場の年間予算

 講師 津村 卓(地域創造プロデューサー)
 年間総事業費を割り出し、全体での収支バランスを取る

 公立劇場の担当者には説明するまでもないが、劇場の事業は、設置主体である地方公共団体からの「委託費」で運営される場合と、「補助金」で運営される場合がある。
 「委託費」の場合は、事業収入などは事業を委託した地方公共団体の「歳入」となるため、一応の収入見込みは立てるものの、基本的に委託費の範囲で当該事業を実施すればよい。
 それに対し、「補助金」で運営する場合は、「事業収入(チケット収入・広告収入・販売収入・利用料金制のところは利用料等)」「補助金」、そして「外部資金(国や助成団体からの助成金等)」がある場合はそれも含めて予算として計上し、運用することになる。したがって、事業収入が多くなればそれを事業費として使えるが、減ると事業が実施できなくなるなど、より厳密な運営が求められる。今回は、この「補助金」での運営を前提として、劇場の年間予算の作成と管理について解説する。

●予算作成スケジュール
 劇場の年間予算のおおよその作成スケジュールをまとめたのが【表1】である。劇場だからといって特別な進行があるわけではなく、基本的に行政の予算編成の日程に合わせて、劇場サイドで予算を詰めていくことになる。ただし、公演の企画は単年度予算の進行より早いため、前年度ベースの予算枠を想定しながら交渉を進めることになる。
 8月中に来年度事業の概算を、一度、所管課に提出するが、これはあくまで目安的なもの。こうした概算を財政が取りまとめて、来年度予算の骨格となる「予算要求限度額」が定められる。この限度額に基づいて、9月〜10月にかけてプログラムの内容を見直し、詳細資料を作成する。
 注意しなければいけないのは、これが予算要求資料のもとになるので、来年度事業についてはこの9月〜10月にはめどをつけておかなければならないということ。また劇場によってはこの時期に「プログラム会議」を開くところもある。
 なお、指定管理者制度に移行した場合、予算についても協定書で取り決めるため、前述のような予算折衝やスケジュールではなくなる。

表1 予算作成スケジュール例

時期 内容
以前 今年度ベースの予算を前提に、必要に応じて事業企画を進行。
8月〜9月 今年度ベースの予算を前提に、来年度事業の概算(予算枠)を作成。
所管課で集約し、財政と調整を行い、予算要求限度額が定まる。
※一般に県・政令市の予算作成スケジュールは市町村より早い。
9月〜10月 8月末〜9月にかけて来年度事業を検討する「プログラム会議」を実施。
おおよそのプログラム内容を作成する。
※これに合わせて秋に理事会を開き、プログラムと予算を諮るところもある。
このプログラムをもとに、詳細資料を作成し、所管課に提出。
所管課で予算要求資料を作成し、予算要求を行う。
※外部資金(国や助成団体からの助成金等)の採択はまだ決定していないため見積もりとし
て算入し、調達できた場合の予算措置を担保しておく。
採択決定は1月〜3月。場合によっては議会後にずれ込むこともある。
12月〜1月 財政との最終折衝。
1月 首長説明により予算編成終了。
2月〜3月 議会に予算を上程し、承認を得て、確定。
並行して理事会にプログラムと予算を諮り、承認を得て、確定。
※黒字になった場合は、年度末に補正予算を組んで補助金を返納する、来年度予算に繰り 越す、基金を積むといった方法がある。

●年間総事業費を割り出す
 事業ごとではなく、年間で予算を管理する場合、全体での収支バランスをどのようにとっていくかが重要となる。委託費で事業を実施すると、委託費1億円なら年間の総事業費は1億円だが、補助金の場合は、事業収入を増やすことができれば総事業費は1.5倍にも2倍にもなる。
 個別事業費の積み上げから年間予算をつくることが基本だが、その前に、年間総事業費がどの程度見込めるかという大枠を割り出してみるといいのではないだろうか。
 例えば、補助金総額5,000万円の場合、それをベースにしてどのぐらいの事業ができるかを考えていく。まず、教育普及事業のような収益の上がらない事業の予算規模を決める。それが1,000万円だとすると、残りの補助金が4,000万円となる。外部資金が2,000万円見込めるとして、補助金と合わせるとベースの金額は6,000万円となる。
 チケット収入で事業費の60%回収を目標とすると、補助金・外部資金でカバーするのは事業費の40%、つまり総事業費は6,000万円÷0.4=1億5,000万円となる。この総事業費を事業毎に割り振ってくわけだが、すでに決まっている事業から予算を割り振っていくと、残りどのぐらいの事業が実施できるかわかるわけだ。

●年間予算の管理
 演劇公演の場合、事業費が確定するのが遅く、事業収入など不確定要素が多いため、個別事業の予算と年間予算を平行して管理することが重要となる。こうした予算管理のためのツールとして、私が使っているのが【表2】の管理表である。事業ごとに収入内訳を作成して管理するとともに、事業費の増減、チケット収入の増減を常にチェックし、年間の総事業費と補助金総額が予算どおりになるよう全体で調整を行う。
 最大の課題は補助金総額を絶対に超えないようにすること。そのためには、結局、収入を増やすか、事業費を減らすかして調整するしかないが、プロデューサーとしては神経をすり減らす作業である。

表2 年間予算管理シート


日程 演目 公演データ
(会場/ステージ数/総キャパ/チケット価格/作・演出等)
総事業費
(千円)
収入内訳 入場率
(動員人数)
補助金率 事業形態 事業種類
チケット収入 補助金充当 外部資金充当



○月○日
〜○日
○○○
2,000 900 1,000 100 90%
(900)
50% 主催 市民参加(ミュージカル)
△月△日 △△△
7,000 4,875 2,125 0 65%
(975)
30.4% 主催 鑑賞(演劇)













小計 20,000 12,000 5,000 3,000









○月○日
〜○日
子どものための演劇ワークショップ(計7回) 700 0 700 0
100% 主催
△月△日 発表会 1,000 100 800 0
90% 主催












小計 3,500 500 3,000 0




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