地域創造

WWW を検索 jafra.or.jp を検索 powered by google  

書庫

戻る

地域創造レター

News Letter to Arts Crew

1月号-No.129
2006.01.10(毎月10日更新)

●理事長 新年のあいさつ


●今月のニュース

●第6回地域伝統芸能まつり
●制作基礎知識シリーズVol.24



新年あけましておめでとうございます。

●理事長あいさつ

 昨年は、市町村合併や指定管理者制度を迎え、公立文化施設を取り巻く状況が大きく変化した1年でした。最前線で、時には予想もしなかった事態に日々対応されている皆様の頑張りには、心から敬意を表します。まだしばらく落ち着かない状況が続くと思いますが、地域創造では、皆様のお役に立てるよう、精一杯の支援を行っていきたいと思っております。

  昨年は、多くの現場を見て回る機会に恵まれ、さまざまな感動や発見、刺激を受けた、本当に意義深い年でした。
 今年度から新規事業として始めた「公共ホール現代ダンス活性化事業」のワークショップ現場では、子どもの傷ついた心を癒す芸術文化の力を目の当たりにしました。この事業は、地域創造が今年度から2年間のモデル事業として実施しているもので、コンテンポラリーダンスのアーティストを公共ホールに派遣し、1週間程度滞在してもらい、学校でのワークショップや公演を行うものです。
 コンテンポラリーダンスは、若い人を中心に支持を集めている分野ですが、私にはよくわからない部分も多く、正直、期待半分不安半分のスタートでした。しかし、ワークショップを体験した金沢市味噌蔵町小学校の先生から「普段、言葉では友だちとコミュニケーションを取ることができない子どもが、アーティストからさまざまな身体の動きを引き出され、自然に友だちと関わることができており、変化の大きさに驚いた」という話を聞き、この事業をやってよかったと心から思いました。モデル事業としてもう1年続けて、その結果をみながら、今後のさらなる展開を考えていきたいと思っております。
  一方、今年7年目を迎える「公共ホール音楽活性化事業」の現場では、音楽を通じて地域の宝物が再発見されるという、感動的な出来事もありました。2年前に、登録アーティストの田村緑さんが、アウトリーチで島根県浜田市の原井小学校を訪問した際、音楽室の片隅に眠る1920年代製のスタインウェイを発見しました。このピアノは1934年に保護者会が寄付したものだったのですが、損傷が激しく、廃棄される運命にありました。しかし、私どもの事業を通じてこのピアノの価値を再発見した地元の方々が1,200万円もの寄附により、新品同様に修復され、昨年10月には復元記念リサイタルが実施されたのです。芸術文化を通じて地域のパワーが結集するというこうした感動的な出来事も、事業を続けてきたからこその成果だと思っております。
  「公共ホール音楽活性化事業」では、ソロ、多くても数人のグループによる演奏を提供してきましたが、音楽の集大成はやはりオーケストラにあるのではないでしょうか。そこで、本物の音楽を子どもたちに体験してもらう集大成として、来年度新たに「オーケストラプログラム」をモデル事業として実施することにしました。これは、オーケストラを地域に派遣し、コンサートと小中学校でのアウトリーチを行うというものです。企画・指揮・お話は、「オーケストラ人間的楽器学」シリーズで知られる茂木大輔さんにお願いしました。アウトリーチでは、子どもたちが集中できるよう、30人程度の小編成のオーケストラを少人数で聴いてもらう予定です。楽器の役割や特徴を鋭く分析し、ユーモアたっぷりに解説される茂木さんなら、さぞかし楽しい事業になるのではないでしょうか。
 また、新潟中越地震の被災地の皆さまに音楽を届ける「震災復興祈念プロジェクト(仮)」を4月からスタートします。現地の公立文化施設の方々と相談しながら、微力ではありますが、芸術文化を通じた支援を続けていければと思っております。
  阪神・淡路大震災10周年を迎えた昨年10月、被災地の一角に兵庫県立芸術文化センターが産声を上げました。当初の予定から10年遅れての開館となりましたが、復興のシンボルとして地元の方々の大きな期待をいただき、また、芸術監督の佐渡裕氏が情熱を傾けてプロデュースしている平均年齢27歳の兵庫芸術文化センター管弦楽団も設立されるなど、人に支えられ、人を育てる施設として船出することができました。こうした地域の公立文化施設の取り組みに触れるたびに、すべては“人”が基本なのだと改めて思います。
 現在、指定管理者制度の完全実施期限が9月に迫る中、各地でさまざまな議論が行われ、一部混乱が生じているようなことも耳にしています。私は、指定管理者制度とは、公立文化施設を設置した自治体が、その設置目的を実現するには誰が一番相応しいかを決める制度だと考えています。目的さえ明確であるならば、財団であれ、民間であれ、それを実現するに相応しいところ、芸術文化を通じて市民が幸せになれるところを選べばいい。
 もちろん管理等の効率を追求することも必要ですが、そこで生み出された余剰力でソフトの充実を一歩でも二歩でも進めなければならないほど、現在、地域にとって芸術文化政策は緊急かつ重要な位置づけになっています。新聞やテレビで信じられない事件を見聞きするたびに、心の問題にどう対処すべきか、公立文化施設の役割に今さらながらに思いを馳せています。
(聞き手:坪池栄子)

●遠藤安彦(えんどう・やすひこ)
1940年生まれ。自治省事務次官を経て、1998年2月から財団法人地域創造理事長。「兵庫芸術文化センター管弦楽団が初顔合わせした時に収録したCDをもらいました。初めて集って演奏したんだから当たり前だけど、お世辞にも感動的とは言い難い(笑)。でも、その成長を思うと本当に楽しみ。2年後に同じ曲を聴いてみたいですね」


●「第6回地域伝統芸能まつり」

「遊(あそび)」をテーマに11の地域の伝統芸能・古典芸能が集う


写真:昨年の地域伝統芸能まつり
昨年の地域伝統芸能まつり
  日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介する「地域伝統芸能まつり」を、2月11日、12日の両日、東京・渋谷のNHKホールで開催します。
 6回目となる今年のテーマは「遊(あそび)」。“遊び”というエネルギーに身を任せることで、どのように日常生活から解放され、生きる喜びを味わい、祭の中で自らの人間性を取り戻してきたのか、11地域の伝統芸能と古典芸能を中心にご紹介します。
 1日目の幕開けを飾るのは、ご存じ徳島の阿波おどり。「踊る阿呆に見る阿呆……」の歌詞と聞き慣れた囃子に合わせてステージ上でにぎやかに踊ります。また、京都祇園のお座敷遊びを取り上げ、三味線など和楽器の演奏と芸妓の唄、舞妓の踊りなどをはじめ、酒宴を盛り上げるための遊技「拳(けん)」などを披露します。
 2日目に登場する長崎の竹ン芸は、神の使いである狐が祭り囃子に浮かれ戯れている様を表現したものといわれ、中国伝来の羅漢踊りに由来するといわれています。10m以上の竹竿を2本立て、その上で2匹の白狐に扮した若者が、笛や太鼓、三味線のお囃子に合わせてスリル溢れる見事な技を披露します。
 ほかにも、日本古来の伝統神事である田遊びの中から千年の歴史をもつといわれる静岡県大井川町の藤守の田遊び、長い竹竿に多数の提灯を付け手で支えずに額や肩等に立て練り歩く秋田市の竿燈、激しく揺れる太鼓神輿の上でリズムを変えずに太鼓を打ち続ける大阪市の生國魂神社の枕太鼓など、さまざまな伝統芸能が登場します。
 古典芸能は、お馴染み京都大蔵流茂山家による遊び心が溢れる狂言『蝸牛(かぎゅう)』が登場。能『融(とおる)』では、優雅に月下を舞遊ぶシテ(主役)を能楽師梅若六郎が務めます。そして、5年ぶりの登場となるのが天王寺楽所雅亮会。酒宴をテーマにしたユニークな舞楽『胡徳楽(ことくらく)』を舞います。
 このほか、地域伝統芸能まつり初となる講談を取り上げ、舞台・テレビ・ラジオなど多方面で活躍する異色の講談師、人間国宝の一龍斎貞水によりその魅力を存分にお楽しみいただきます。
 ホールロビーでは、恒例の地域を紹介するブースの出展、各地域の情報発信や物産品の販売などが行われる予定です。なお、毎年多数のご応募をいただいておりますが、観覧にははがきまたはインターネットで事前に申し込みが必要です。下記の方法に従ってご応募ください。

プログラム紹介(予定) ※演目は変更される場合もあります。ご了承ください。

1
阿波おどり ●徳島県/徳島市
「阿波おどり」

400年の歴史をもつ徳島の夏祭。期間中は街中に軽快な2拍子のリズム(よしこの)と情感溢れる音色(ぞめき)のお囃子が響き、踊り子や見物客の身も心も弾みます。自由な民衆娯楽として大きく開花した阿波おどりは日本各地で根づいた上、海外にも遠征するなど、世界的にもその名を知られています。
藤守の田遊び ●静岡県/大井川町
「藤守の田遊び(ふじもりのたあそび)」

わが国を代表する田遊びの一つ。毎年3月17日の夜、大井八幡宮境内で未婚の青年男子によって奉納されます。舞台を清める天狗の所作から、厳かに御獅子を迎える振取。色鮮やかな襷と純白の紙蓑をまとい万燈花がゆれる猿田楽。徳太夫や田植や鳥追など25番に仕立てられた農耕の所作を演じます。
大塩天満宮獅子舞 ●兵庫県/姫路市
「大塩(おおしお)天満宮獅子舞」

大塩天満宮獅子舞は二人立ちの毛獅子の舞で、野獅子の生態を現す野趣溢れる豪快・勇壮な獅子舞です。鎌倉時代を起源に天文2年(1522)より盛んになったといい、氏子8地区がそれぞれ独自の道中舞(宮入の舞)と地舞(奉納の舞)を伝承しています。
桐生八木節 ●群馬県/桐生市
「桐生八木節」

「八木節」は越後(新潟県)で歌われていた「新保広大寺節」が各地に伝わり変化してできたと言われています。大正の初め、八木宿(足利市)の馬方、堀込源太が現在の八木節にまとめ、全国に広めました。桐生では織物業の隆盛とともに八木節が盛んになり、現在では桐生の郷土民謡となっています。
竿燈 ●秋田県/秋田市
「竿燈(かんとう)」

江戸時代中期、お盆を前に邪気や病魔を払い、身を清める「ねぶり流し」と五穀豊穣の願いを込め、提灯を米俵に竿燈全体を稲穂に見立て練り歩いたことが由来とされています。重さ約50kgの竿燈を手のひら、額、肩、腰などに絶妙なバランスで乗せる妙技は必見です。
●京都市
「祇園のお座敷遊び“拳”」

京都の花街・祇園には、今もお座敷で座に興を添える独自な遊びが受け継がれています。その一つに「拳」があります。芸妓・舞妓と客が三味線で唄いながら踊り、勝ち負けを争う遊びです。歌集もなく口伝だけに種類も少なくなりましたが、「狐拳」「虎拳」などを披露して会場を盛り上げます。
●古典芸能
講談 一龍斎貞水
能『融(とおる)』 [出演]梅若六郎ほか
京都六条、河原の院を訪れた僧の前に現れた潮汲みの老人が語る、懐旧の想いと廃墟を照らす月光に浮き上がる融大臣(とおるのおとど)の霊による栄華の舞。融大臣は光源氏のモデルとも言われ、『古今集』の紀貫之の和歌と、その説話的要素を加えた歌物語です。 

2
竹ン芸 ●長崎県/長崎市
「竹ン芸(たけんげい)」

「竹ン芸」は、200年以上の歴史があり、祭り囃子に浮かれた白狐(ビャッコ)たちが竹やぶで遊び戯れる様をかたどり、10m以上の直立した青竹の上で狐に扮した若者たちが芸をする伝統芸能です。毎年10月14日、15日に若宮稲荷神社で奉納され、大勢の見物客が息を呑むようなスリルを味わいます。
嘉瀬の奴踊り ●青森県/五所川原市金木町
「嘉瀬(かせ)の奴踊り」

「嘉瀬の奴踊り」は、金木新田の開墾事業の成就祈祷に始まったとされ、古くから伝わる田植え踊りであるとともに、秋の豊作を祈願したとされる伝統芸能です。奴の動きは一見簡単に見えますが、中腰を基本とした激しく速い動きで歯切れのよいリズムが特徴です。
石岡のおまつり─土橋の獅子舞 ●茨城県/石岡市
「石岡のおまつり─土橋(つちばし)の獅子舞」

古来、武士が「武運長久」を祈願したのが始まりといわれています。江戸時代元禄期に町人が参加して家内安全、無病息災を祈願する庶民の祭となり、現在に至っています。毎年9月に、石岡市内を40台を超す山車囃子や獅子囃子舞が練り歩きます。
生國魂神社の枕太鼓 ●大阪市
「生國魂(いくたま)神社の枕太鼓」

大阪三大夏祭のトップを切って行われる「いくたま夏祭」は「陸のいくたま」と称され、夏の風物詩として多くの浪花っ子に親しまれています。その夏祭に奉納される神事の一つが「枕太鼓」で、太鼓を叩く人の背もたれが大きな枕に似ていることからこのように呼ばれています。
おはら祭 ●鹿児島県/鹿児島市
「おはら祭」

「おはら祭」は昭和24年に市制施行60周年を記念してスタートしました。当初はおはら節の踊りのほか自動車仮装パレードが主体でしたが、昭和36年、現在のような踊り中心の祭になりました。平成13年に第50回を迎え、総踊り等参加者約2万2千人が集う南九州最大の秋祭に発展しています。
●古典芸能
雅楽(舞楽)『胡徳楽(ことくらく)』 [出演]天王寺楽所雅亮会
雅楽は、現存する合奏音楽としては世界最古といわれています。平安貴族にとって、雅楽は最高の遊びの一つで、当時の天皇も雅楽を楽しんでいました。雅楽には「管絃」「舞楽」「歌物」の3つの演奏形態があり、舞楽は、音楽とともに奏する舞をいいます。今回は、酒宴をテーマとした舞楽「胡徳楽」を紹介します。
狂言『蝸牛(かぎゅう)』 [出演]茂山逸平、茂山宗彦、茂山茂ほか
主人の祖父のために、長寿の薬といわれる蝸牛(かたつむり)をとってくるよう言いつけられる太郎冠者。しかし、太郎冠者は蝸牛がどんなものか知りません。主人に教えられた蝸牛の特徴を頼りに、藪にやって来た太郎冠者は……。
観覧申し込み方法
「地域伝統芸能まつり」の観覧は無料です。
応募要領
官製往復はがきに(1)郵便番号、(2)住所、(3)氏名、(4)年齢、(5)電話番号、(6)入場希望日(2月11日、12日のいずれかを記入。両日希望の場合は、それぞれ別にお申し込みください)、(7)入場希望者数を明記の上、下記事務局までお送りください。1枚につき2名まで入場できます。未就学児も1名といたします。返信はがきには自分宛の住所、氏名を記入してください。
応募先
〒160-8555 東京都新宿区舟町7-6-704
地域伝統芸能まつり事務局
応募締切
1月23日(月) 必着

※地域伝統芸能まつり公式サイトからもお申し込みいただけます。
http://www.jafra.nippon-net.ne.jp/matsuri

※応募多数の場合は抽選。発表は本人に直接通知いたします。なお、ご応募いただいたお客様の個人情報は、本イベントの抽選、当・落選告知および個人を特定しない統計資料作成の目的で使用させていただきます。また、お客様の事前の承諾なく個人情報を業務委託先以外の第三者に開示・漏洩いたしません。

第6回地域伝統芸能まつり
[日程]2月11日、12日
[開演]午後2時30分(両日とも)
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[後援]総務省、文化庁、NHK

地域伝統芸能まつりに関する問い合わせ
総務部 関根健 Tel. 03-5573-4056

制作基礎知識シリーズVol.24 舞台監督の仕事(1)

●舞台づくりを支える人々と舞台監督の位置づけ

 講師 草加叔也(空間創造研究所・劇場計画コンサルタント)
 舞台作品の創造組織のスタッフワークを束ねる舞台監督とは?

演出者の創造したい舞台を具体化する舞台づくりの裏の責任者「舞台監督」の仕事を3回にわたって紹介します。

●まず、“劇場”とは
 「舞台監督」という職能をつまびらかにするためには、「劇場とは?」という問いから始める必要がある。
 それは、日本の劇場においては、「上演する場」と「創造する組織」が独立した存在として別々に活動を行ってきたという背景があるからだ。欧米の劇場ではこの2つは一体のもので、“作品を創造する”という本来の劇場機能とそれを支える職能が劇場に備わっている。特に、量において日本の劇場・ホールの圧倒的多数を占める「公立ホール」は、基本的にこの“舞台芸術を創造する意思と力”を外部に依存してきた。その結果、劇場という言葉のもつ意味が形骸化し、単なる“場”や“器”としての総称に止まってきた経緯がある。そのため、舞台づくりに関わる職能についても組織的に位置づけられることなく、未整理のまま今日に至っている。
 以下、舞台監督について整理するにあたり、単なる場や器としての「劇場」ではなく、舞台芸術を自ら創造し発信する継続的な意志を備えた「機関(institute)」としての劇場を前提に話を進めたい。

●創造する力を支える人たち
 劇場では、舞台芸術の創造・発信機能を支えるため、実に多くの才能や技能、専門的な知識や経験を蓄えた職能を必要としている。実際に舞台で表現活動を行う出演者はもとより、演出家、舞台美術家、プロデューサー、制作係、広報・宣伝係、票券係、教育・普及係、衣裳係、大道具・小道具・衣裳などの製作係、技術監督など、一見すると異なる専門性をもった人々が協働し、創造を支える力になっている。そして「舞台監督」もその中の重要な職能のひとつに位置づけられる。
 ただし、舞台芸術が「上演する場」と「創造する組織」が分離した形で共存してきた日本においては、こうした専門家と劇場の関わり方や雇用関係もまちまちであるため、いずれの職能の確立もまだ道半ばの感がある。したがって、こうした職能を個別に整理しようとすればするほど現実との乖離や齟齬が際立ち、誤解を生みかねない。それを承知の上であえて大きく分類するならば、舞台芸術を創造する力を支える職能は、以下の3つに分けられる(*)。

* 「観客」も広い意味で舞台芸術活動を創造する力を支える大きな役割を担うが、ここではあえてふれない

◎アーティスト(+デザイナー)

出演者や演奏者などだけでなく、演出家、ドラマトゥルグ、舞台美術家、舞台照明・舞台音響・衣裳の各デザイナーなどをいう。

◎テクニシャン

舞台技術者と総称される職能。技術監督、舞台機構・舞台照明・舞台音響などのオペレーター、劇場技術管理者、大道具製作、そして舞台監督なども含む。

◎アドミニストレーター

舞台制作業務を司る業務を中心に担う職能で、プロデューサーや制作担当だけではなく、広報・宣伝係、教育・普及係、票券係などもその一翼を担う。
  この分類において、舞台監督は「テクニシャン」の中に位置づけられる。テクニシャンとは、一般に舞台技術者と総称される職能を指す。これら全ての舞台技術者に求められる職能として不可欠な本来的資質は、舞台芸術に対する知識と理解力である。加えて舞台芸術を創造・発信していくために必要とされる個々の専門的知識と技能、そして経験値が必要となる。また、地域の劇場に所属する劇場技術管理者には、先の本質的な資質に加えてそれぞれの劇場および設備の管理と運用能力、そして劇場が備えられている地域への貢献も重要な使命として位置づけられるようになってきている。
 しかし日本においては、こうした同じ舞台技術者が、例えば照明会社や大道具会社など別の組織に所属しているため、別な職能とみられてきた。ただ、最近では高機能化する劇場設備を効率良くかつ安全に運用する専門的技能を備えた職能として、「劇場技術管理者」としての専門性の確立が求められるようになってきている。

●舞台監督が担う役割とは
 舞台芸術を創造する力を支えるのに必要な職能は、作品の内容や公演規模によってさまざまに異なり、それぞれの舞台技術者が担う役割も千差万別となる。そのため、場合によっては一人の人格がいくつかの職能を兼務するということもよく起こる。
 なかでも舞台監督は、作品創造組織のスタッフワークにおいて最大公約数的な職能であり、いかなる規模のプロダクションにも不可欠な存在であるため、時として演出家的な役割(演出助手)を期待されこともある。特に日本のように小規模プロダクションが多いところでは、望むと望まざるとにかかわらず、作品の創造や公演活動の過程で発生するあらゆる事象に関わるので、現場で起こる課題を手際よく処理していくことがその役割あるいは職能と誤解をする向きもある。このような実態が舞台監督という職能の専門性を曖昧にしている原因のひとつでもあるが、創造体制が劇場に組み込まれていないため、分業化できない脆弱な日本の制作体制が抱える根本的な問題に起因する結果でもある。
 とは言うものの、公演ポスター等で必ず舞台監督という職能がクレジットされるほど、作品上演のために重要な役割を担っていることは誰もが認めるところだ。ただ、仕事内容が多岐にわたるため、一般的にはその職能がわかりにくく、上演の間、舞台袖から舞台技術者や出演者に対して公演進行のための指示を出している人程度の理解に止まっているところがある。もちろん、本番の進行を司ることも舞台監督の重要な役割の一つであるが、それ以上に作品創造の過程においてさまざまな役割を期待されている。
 以下簡単に紹介すると──。

◎プロダクション立ち上げ時

  スケジュールづくりやキャスティングの支援、公演を行う劇場の下調べや舞台技術的な課題の整理と解決。そして技術進行スタッフのチームづくり。

◎作品制作段階

  稽古場の手配と稽古の進行管理、舞台美術・舞台照明・舞台音響・衣裳などのデザイン打ち合わせと進行、大道具や小道具製作図の作成から発注、場合によっては衣裳の製作発注、特殊効果(裸火・スモーク・レーザーなど)の進行管理や禁止行為の解除申請、劇場との仕込みおよび進行打ち合わせ、舞台技術に関わる予算管理。

◎劇場での仕込み段階

  搬入・搬出、仕込み進行、舞台稽古、字幕調整、フォトコールや通し稽古(ゲネプロ)。

◎本番

  大道具の転換など本番進行の全て。
 ただし、10人の舞台監督がいれば10通りの職能があり、10本のプロダクションがあれば10通りの作業が舞台監督に課せられる。結果、先に示したように雑用係的な職能と誤解を受けることにもなる。しかし、舞台監督ほど舞台芸術作品の創造に対する理解はもちろんのこと、舞台制作過程と舞台技術に関する幅広い知識や経験、そして何よりもスタッフからの信頼がなければ務まらない仕事はほかにない。
 近年、施設の大型化や高機能化が進むにつれて、舞台監督という職名で総称される職能を欧米の劇場システムのように、より専門性の高い職能として分化していこうという動きも出てきた。それが「プロダクション・マネージャ」「テクニカル・マネージャ」「ステージ・マネージャ」という3つの職能分類である。
 こうした議論が行われるようになった背景として、一人の人格が負いきれないほど舞台監督が担う実質的な作業が複雑化・多様化してきているという現実がある。ちなみにプロダクション・マネージャは「舞台進行に伴う予算管理を行うとともに、舞台セットの移動やツアーにおける技術連絡調整、そして舞台セットの仕込みなどの進行管理を行う」、テクニカル・マネージャは「搬入から搬出までの舞台製作の進行や劇場の技術的課題、そして舞台スタッフなどの管理を担う」、ステージ・マネージャは「稽古から本番に至る進行管理を行い、特に上演中の舞台進行と舞台スタッフを統括する役割を担う」とされている。
 次号以降、舞台監督の具体的な実務について時系列に従って、この3つの役割に分けながら紹介していきたい。

ページトップへ↑