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今月のレポート

青森県青森市
1 月号-No.129

青森県立美術館プレイベント 県民参加型演劇『津軽』


 青森空港から車で約30分。縄文遺跡として有名な三内丸山遺跡の隣に建設中の青森県立美術館(2006年7月開館)を会場にしたプレイベントがスタートし、県民にひと足早い施設のお披露目が行われた。
 青森県立美術館は、シャガールがバレエ公演の背景幕として描いた『アレコ』(3枚、縦9m×横15m)を収蔵するアレコホール(天井高19.5m)を中心に、棟方志功、寺山修司、奈良美智など青森出身の個性的な作家群を1作家1部屋に常設展示するなど、 “青森派”を標榜する新しいタイプの地域美術館。10年前から構想され、当初は美術館、劇場、コンサートホールの並ぶ総合芸術パークを整備する計画だったが、財政再建のため一部事業を凍結し、現在の三村申吾知事の下、美術館の建設が実現した。
 コンペで選ばれた青木淳による設計は、青森の雪に溶け込む真っ白な外観で、展示スペースは全て地下、壁面の一部が土色という遺跡の採掘場をイメージしたもの。湿度の関係で作品展示ができない期間を活用し、何もない空間を体験してもらうとともに、総合芸術パークとしての理念を継承した、美術にとどまらない多彩な事業展開の一端を県民に味わってもらおうとプレイベントが企画された(下記参照)。
 その第1弾が、津軽出身の小説家、太宰治が3週間かけて故郷を1周した旅行記『津軽』原作による県民参加型演劇。津軽旅行に来た女子大生2人を狂言回しに、企画展示室を次々と巡りながら、大人の太宰が子ども時代の自分と共に友人や乳母と出会い、自分もふるさとの一部であることを発見するという筋立て。青森、蟹田、弘前、金木、小泊の5つの町のエピソードを、公募で集ったその地域の人々が演じるという仕掛けで、企画・脚本・演出を美術館の総合芸術としての取り組みを統括する舞台芸術総監督の長谷川孝治(弘前劇場主宰)が担当した。
 12月11日、ロビーに集った観客約250人と共に全6時間に及ぶこのツアーを体験したが、途中、観客も参加した花見のシーンで作中に描かれた地元名物の蟹やシャコが振舞われるなど、オープン前の美術館がこういう使われ方をしたのは前代未聞ではないだろうか。
 「県立美術館は県民のものだというメッセージを込めてこうした県民参加のプレイベントを企画した。来年は寺山修司の『全歌集』をモチーフにして、22歳までの寺山を県民と一緒に芝居、もしくはダンスを多く盛り込んだ演劇にしたいと思っている。太宰も寺山もそのスキャンダラスな生き方のために地元にちゃんと理解されていないところがある。もっと親しんでもらえれば」と長谷川舞台芸術総監督。今後も総合芸術として、企画ごとに実行委員会を組織しながら、『アレコ』を題材にしたダンス作品の創作(3月に海外・国内6カンパニーによる公開コンペを実施し、来年度本公演を予定)や映画祭など、さまざまな事業に取り組んでいきたいと意欲をみせる。
 今回のプレイベントで驚かされたのが、地元資源の重要性と津軽弁の豊かさ。13歳の太宰を演じた高校2年生の西山広野さんは、「自分のことしか書かない、傲慢な人だなと思っていたけど、反省するところもあって少しはかわいいと思えるようになりました」と振り返る。
 太宰の乳母・たけを演じた対馬てみさんにインタビューをしていたら、ボロボロになった文庫本を取り出し、標準語の文章を流ちょうな小泊弁で読み上げ始めた。演技をしているわけでもないのに、芝居のワンシーンのような表現力には圧倒された。「生まれも育ちも小泊で、モデルになっているたけさんも身近に見てきた方。今もあちこちに名残のある60年前の小泊の姿が描かれているこの作品にはとても思い入れがあります。お芝居は学芸会以来ですが、方言だからやれたんだと思います」。
 この言葉を聞きながら、幾多の時代の反逆児(アーティスト)を輩出してきた“青森”という地域を見つめることは、美術や演劇といったジャンルや作品を超えた“人間の生き様としてのアート”を回復することに繋がるのでは、という強い思いに駆られずにはいられなかった。
(坪池栄子)
青森県立美術館
[開館日]2006年7月13日
[設置・運営]青森県
[住所]青森市大字安田字近野185
[施設概要]地下2階・地上2階、総床面積約16,000m2(企画展示室、常設展示室、アレコホール、シアター、ミュージアムショップ、レストランほか)
[設計]青木淳
[常設作家]シャガール、棟方志功、寺山修司、成田亨、奈良美智など
[開館プレイベント]県民参加型演劇『津軽』(12月3日、4日、10日、11日)、韓国映画祭「究極の韓流!!」(12月)、「矢野顕子出前コンサート IN アレコホール」(12月)、舞踊劇『アレコ』公開コンペティション(3月)
[開館記念展]「シャガール『アレコ』とアメリカ亡命時代」展(2006年7月)、「縄文と現代」展(10月)、「工藤甲人」展(2007年3月)
[問い合わせ]青森県文化観光部 県立美術館開館準備局 http://www.aomori-museum.jp/ja/

地域創造レター 今月のレポート
     2006.1月号--No.129

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