地域創造

WWW を検索 jafra.or.jp を検索 powered by google

書庫

戻る

地域創造レター

News Letter to Arts Crew

4月号-No.132
2006.04.10(毎月10日更新)

●今月のニュース

●第6回地域伝統芸能まつり
●ステージラボ・アートミュージアムラボ三重セッション報告
●制作基礎知識シリーズ



「第6回地域伝統芸能まつり」

●明日への活力となる“遊び”を堪能




左上・阿波おどり(徳島県徳島市) 右上・竿燈(秋田県秋田市)
左下・竹ン芸(長崎県長崎市) 右下・生國魂神社の枕太鼓(大阪市)
  日本各地の地域伝統芸能、古典芸能を紹介する「地域伝統芸能まつり」が2月11日、12日の両日、東京・渋谷のNHKホールにて開催されました。今回で6回目となるこの催しは、失われつつある各地の伝統芸能等を記録・保存することを目的としてスタートした地域創造の「地域伝統芸術等保存事業」の一環として行われているものです。全国の伝統芸能継承者に発表の場を提供するとともに、イベントやテレビ放映を通じてその魅力や価値を再認識していただき、郷土愛と地域づくりの気運を育む契機となることを願い実施されています。
 今回のテーマは「遊(あそび)」です。日常生活から解放される「祭」と「遊び」。そこに共通するのは、生きていく上で不可欠な明日への活力になるということではないでしょうか。そんなテーマにまつわる地域伝統芸能と古典芸能が披露されました。

●神事からお座敷遊びまで
 1日目、オープニングを飾ったのは徳島の「阿波おどり」です。「エライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ」の掛け声と三味線の音が会場に響きわたり、徳島「娯座留連」を率いる78歳の四宮生重郎さんによるソロ踊りに続いて大勢の子どもたちによる踊りが始まると、客席は今にも躍り出しそうな雰囲気に。三味線を弾くのは盆踊歌『阿波よしこの』の名手として知られ、県民栄誉賞を受賞している99歳になるお鯉さん(本名・多田小餘綾(こゆるぎ))。昭和初期に阿波おどりの全国PRに一役買った自慢の美声を聴かせました。この世代を超えた一体感に、地域伝統芸能のあるべき姿が凝縮されたオープニングとなりました。
 日本各地で五穀豊穣を祈って広く行われてきた神事「田遊び」、獅子舞に続いて登場したのは、何と「祇園のお座敷遊び」でした。華やかな8人の芸妓さんたちによる祇園小唄や、ジェスチャーでするじゃんけん「とらとら」など、普段は映画やドラマの中でしかお目にかかれない祇園芸妓の艶やかさに「本物はすごいね」という声があちらこちらから聞こえていました。「とらとら」には司会の竹下景子さんと石澤アナウンサーも参加し、京都の一夜を満喫する贅沢な時間となりました。
 1日目のラストを飾ったのは、国重要無形民俗文化財である秋田の夏祭り「竿燈」です。竿燈は、最も大きなもので12メートルを超える長い竹竿に、46個の提灯をぶら下げた重さ50キロにもなる代物。これをたったひとりの差し手が腰や肩、額で支えるアクロバットが見所です。NHKホールの天井に届きそうな巨大な竿燈の迫力と、それを操る妙技の素晴らしさに拍手喝采でした。

●「まつり最高です!」で会場は最高潮に
 2日目の会場には、高さが10メートルにもなる太い竹が設置されており、開演前から観客は期待感でいっぱいでした。始まったのは長崎市の「竹ン芸」。お稲荷様のお使いである白ギツネが、祭囃子に誘われて竹の上で遊び戯れる様子をユーモラスかつスリリングに表したものです。
 大阪の「生國魂神社の枕太鼓」では、神輿が横倒しになっても、その上でひたすら太鼓を叩き続ける6人の「願人」の勇姿に惜しみない拍手が送られました。竹下さんから「今の気分は?」と聞かれた願人の若者たちが「まつり最高です!」と言った笑顔が印象的でした。
 そしていよいよフィナーレ。鹿児島の「おはら祭」では、東京でおはら祭をやっている人々も参加し、最後は観客も加わって総勢数百名が「ヨイサー ヨイサー」の掛け声で踊り、まつりは最高潮に達しました。

●広がる古典芸能の世界
 今回はいつもの能、狂言に加え、講談と舞楽もプログラムされました。いずれの演目も「遊び」に関わったもので、半能『融 酌之舞(とおる しゃくのまい)』では、梅若六郎がクライマックスで優雅に月下を舞遊ぶシテ(主役)を演じました。また、初登場の講談では、第一人者の一龍斎貞水が、相撲や芝居見物など江戸庶民の娯楽が織り込まれた『め組の喧嘩』を、狂言では、お馴染み茂山家のメンバーが山伏にもてあそばれる『蝸牛(かぎゅう)』を、披露。5年ぶりの登場となる天王寺楽所雅亮会は、酒宴の様子を描いたユニークな舞楽『胡徳楽』を披露し、昔も今も変わらない酔態に観客も苦笑いしていました。

 今年も約4倍の抽選を勝ち抜いた延べ6,000人の観客が舞台を堪能し、出演団体の地元名産品の販売や地域の情報を発信するPRコーナーも大盛況で、手にしたお土産と笑顔が観客と各地域との新たな繋がりを感じさせるものとなりました。

第6回地域伝統芸能まつり
[日程]2月11日、12日
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、遠藤安彦、鎌田東二、香山充弘、三枝成彰、下重暁子、鈴木健二、中沢新一、原田豊彦、山折哲雄、山本容子、林省吾
[後援]総務省、文化庁、NHK
出演団体等
2月11日:
阿波おどり(徳島県徳島市)、藤守の田遊び(静岡県大井川町)、大塩天満宮獅子舞(兵庫県姫路市)、半能『融 酌之舞(とおる しゃくのまい)』、祇園のお座敷遊び「拳」(京都市)、桐生八木節(群馬県桐生市)、講談『め組の喧嘩』、竿燈(秋田県秋田市)
2月12日:
竹ン芸(長崎県長崎市)、雅楽(舞楽)『胡徳楽(ことくらく)』、嘉瀬の奴踊り(青森県五所川原市金木町)、石岡のおまつり─土橋の獅子舞─(茨城県石岡市)、狂言『蝸牛(かぎゅう)』、生國魂神社の枕太鼓(大阪市)、おはら祭(鹿児島県鹿児島市)

●平成18年度 地域伝統芸術等保存事業 助成内定事業一覧

【映像記録保存事業】

青森県鶴田町「弥生画」
岩手県雫石町「安庭あやつり人形芝居を中心とした郷土芸能活動」
岩手県花巻市「マイリノホトケ(十月仏)」
福島県郡山市「糠塚の獅子舞」
茨城県常陸大宮市「西ノ内紙」
埼玉県小鹿野町「河原沢のオヒナゲエ」
埼玉県上尾市「藤波のささら獅子舞」
埼玉県熊谷市「葛和田のあばれみこし」
千葉県旭市「八坂神社「つく舞」祭礼行事」
千葉県銚子市「(1)はね太鼓 (2)跳ね込み太鼓」
富山県高岡市「高岡市の伝統芸能 漆器、銅器」
富山県氷見市「氷見祗園大祭」
石川県小松市「曳山子供歌舞伎」
石川県輪島市「輪島市の曳山祭り」
愛知県豊田市「足助祭り」
滋賀県甲賀市「油日神社・奴振」
和歌山県田辺市「野中の獅子舞」
福岡県豊前市「(1)大富神社の神幸祭 (2)山田の感応楽 (3)求菩提山のお田植祭 (4)宇島祇園 (5)厳島神社の百手祭 (6)畑のどんど焼き」
福岡県芦屋町「芦屋釜の制作技術」
長崎県対馬市「命婦の舞(和多都美神社・海神神社)」
熊本県人吉市「(1)大寶御注連 (2)球磨神楽 (3)神幸行列」
大分県宇佐市「(1)俚舞楽打 (2)神能」
宮崎県野尻町「(1)紙屋城攻め踊り (2)兵児踊り (3)東麓・新地馬場棒踊り (4)鉦踊り」
沖縄県名護市「汀間区のウスデーク」
沖縄県読谷村「座喜味の棒術」

【都道府県イベント事業】

千葉県「房総の郷土芸能」
静岡県「伝統芸能フェスティバル」
愛知県「ふるさと芸能祭(仮称)」
三重県「第48回 近畿・東海・北陸ブロック民俗芸能大会」
鳥取県「第42回 郷土の民俗芸能大会」
島根県「しまね子ども神楽フェスティバル」
広島県「ひろしま神楽の祭典'06」
徳島県「伝統芸能フェスティバル〜阿波太鼓の系譜〜」
熊本県「熊本県こども民俗芸能大会」
沖縄県「沖縄芸能の楽しみ方〜芸能基礎講座と鑑賞〜」


ステージラボ・アートミュージアムラボ三重セッション報告 2006年2月21日〜24日

●多彩なアーティストが揃った充実のプログラム


 今回のステージラボは、2月21日から24日まで、三重県総合文化センターで行われました。この施設は、2004年10月にいち早く指定管理者制度を導入したほか、県派遣職員の削減、公募型年俸契約職員の採用など、積極的な運営改革で注目を集めています。
 62,224m2の広大な敷地には、三重県文化会館のほか、生涯学習センター、男女共同参画センター、県立図書館の4施設が設置されています。今回のラボでは、生涯学習センターのLLコンピュータ室を利用した企画書作成、男女共同参画センターの茶室を利用したワークショップ、生活工房の調理室を利用した各地域の名産持ち寄りランチなどが行われ、複合型文化施設の特性を存分に活かした内容となりました。共催者として全面協力をいただきました三重県文化会館のスタッフの皆様には心よりお礼申し上げます。

●アーティストの協力で多彩な成果
 ホール入門コースでは「楽しく学ぼう!」をテーマに、演劇やダンスのワークショップなど幅広いプログラムが実施されました。なかでも6時間に及んだイデビアン・クルーの井手茂太さんによるコンテンポラリーダンス・ワークショップでは、訓練されていない身体から出てくるぎこちない動きが、笑いを誘うダンスになる楽しさを満喫しました。また、市民(NPO)との連携をテーマにした講座では、全国をリードする地域づくりの実践者の熱い話に大いに刺激されました。
 後半は「指定管理者制度に勝ち残るには」と題し、多治見市文化振興事業団の取り組みについて、菱川浩二さんから実際の作業を詳細に紹介していただきました。また、公立ホールの職員出身で、現在は民間として指定管理者に名乗りを上げている(株)ケイミックスで活躍する杉山倫啓さんにも問題提起をしていただきました。「職員一人ひとりの意識改革が最重要」という講師の言葉を受けた参加者は、最終ゼミで「地域の資源」「人財としての職員」「他館とのネットワーク」というキーワードに注目した企画案を発表しました。
 音楽コースのテーマは「舞台の匠」。三重県文化会館の館長であり、日本でただ一人の金管楽器のマイスターである梶吉宏さんなど、さまざまな音楽の“匠”たちから、ワークショップや座学などを通じて、技の奥深さや仕事に対する姿勢を学びました。後半では、講師の皆さんからいただいたヒントをもとに、アーティストと共にコンサートづくりを体験。おんかつ登録アーティストの大森智子さんのチームは、地味なコンビニ店員・ゆうじの恋愛模様を綴ったブログに絡めて、『愛の歌』(フォーレ)、『ジュ・トゥ・ヴ』(サティ)など、愛にまつわる名曲を紹介。お客さんが身近にクラシック音楽を楽しめる企画で、他コースの参加者から大きな拍手が贈られました。
 演劇コースでは、参加者全員が役者デビューを果たし、「創るということ」に挑戦しました。プログラム前半は、三重県出身で劇団太陽族主宰の岩崎正裕さん、作曲家・橋本剛さんを講師に迎え、ピアノ伴奏を使ったワークショップを実施。最後には、岩崎さんが今回のラボ会場である三重県文化会館で演出した県民参加劇を全員で熱演しました。
 後半は、大阪を拠点に全国的に活躍する南河内万歳一座座長の内藤裕敬さんの戯曲ワークショップからスタート。「演劇はルールがある中での遊び」「自分自身の中から発想を膨らまして」という内藤さんの言葉を受け、参加者は、次々と個性溢れる脚本を執筆。内藤さんが一本にまとめ上げ、最終日に全員で演じました。演劇がもつパワーや意味、社会の中での役割を考えるきっかけとなった4日間でした。
 アートミュージアムラボは、地域の資源を活かした「企画づくりの面白さ」を再発見したプログラムとなりました。参加者は三重県立美術館に出掛け、鑑賞教育ツール「アートカードみえ」を使ったアートカルタ遊びを体験。これは、美術館の所蔵作品が印刷されたB6版のカード64枚の中から、「この大根、買い物かごには、入らない」など、ユニークな読み札に当てはまる作品を探し出すもの。その発展企画を考える課題では、アートカードからお気に入りの作品を選び、川柳を考える「アートで五・七・五」など新しいアイデアがいくつも生まれました。自館でもアートカードをつくってみたい、という声が聞かれるなど、大変意義深いものとなりました。

●三重の伝統芸能を体験
 ラボ恒例の共通プログラムでは、地元団体の方々にご協力頂き、三重県内の地域芸能を体験しました。
 戦国武将・藤堂高虎から名付けられた迫力満点の「高虎太鼓」では、津・高虎太鼓のリーダー、水谷忍さんを招き、彼のオリジナル曲に挑戦。「チュウチュウ、おいしい、甘〜い、ケーキ、1、2、3、4、食べちゃった!」など、太鼓のリズムに言葉をつけたユニークな指導を受け、僅か30分で驚くほどに腕を上げました。
 志摩半島東端の安乗(あのり)地方に伝わる「安乗文楽」は、国の重要無形民俗文化財にも指定された400年余りの歴史を持つ人形浄瑠璃で、人形の動かし方の複雑さなどを体験しました。
 江戸時代初期に日本を訪れた朝鮮通信使を真似たのが起源といわれる「唐人踊り」では、ユーモラスなお面と、黄色を基調にした派手な衣装が参加者を圧倒。最後には、ラッパや太鼓などの音に合わせ「喜びのポーズ」等の踊りを体験しました。

●ステージラボ・アートミュージアムラボ三重セッション カリキュラム

ホール入門コース 自主事業 I (音楽)コース 自主事業 II (演劇)コース アートミュージアムラボ

1
開講式・全体オリエンテーション・地域創造紹介
三重県文化会館事業紹介・施設見学
「演劇ワークショップ」
内藤裕敬
「自己紹介ワークショップ」
明石光弘
「自己紹介」
岩崎正裕
「教育普及事業のプログラムの企画の実際とコピーライト」 高橋直裕、寺島洋子、下栄子、近藤真純、大月ヒロ子
全体交流会
番外ゼミ

2
「アウトリーチの見どころ」 児玉真 「演劇のタイプとその制作 その中から市民参加劇について」
岩崎正裕、津村卓
「鑑賞教育キットについて」
下栄子、近藤真純
「アウトリーチプログラム」
大森潤子(ヴァイオリン)、中島由紀(ピアノ)、田村緑(ピアノ)
「おもてなしワークショップ 各地名産持ち寄りランチ」
児玉真、大森潤子、中島由紀
「おもてなしワークショップ 各地名産持ち寄りランチ」(ホール入門コース合同)
「ホールのお仕事〜ふらのに学ぶ」
篠田信子
「舞台の匠(1)〜ピアノの匠〜」
田村緑、鈴木達也、松本安生、児玉真
「市民参加劇をベースに創ってみる」
岩崎正裕、橋本剛
「日本の美意識−礼儀作法−」
稲垣たみ子、高橋直裕
「市民(NPO)と連携する」
園山土筆、山崎弘子
「舞台の匠(2)〜楽器の性格〜」
梶吉宏、小澤櫻作
「演劇のアウトリーチのプログラムを考えてみる」  岩崎正裕、橋本剛 「プログラムの説明、及び企画にあたっての条件・素材検証」
高橋直裕、大月ヒロ子
共通プログラム 「高虎太鼓」津・高虎太鼓、「安乗文楽」安乗文楽人形芝居保存会、「唐人踊り」唐人踊り保存会
番外ゼミ「フォローアップ番外講座」 番外ゼミ 番外ゼミ 番外ゼミ

3
「指定管理者に勝ち残るには〜先輩を囲んで〜」
杉山倫啓、菱川浩二、坪池栄子
「歌のワークショップ」
玻名城律子
「アウトリーチ」
岩崎正裕、橋本剛、津村卓
「企画会議(1)」
高橋真裕、大月ヒロ子
「私のボランティア体験」
大久保邦子、篠田信子
「匠との出会い 〜技〜」
中村透
「鑑賞事業の制作」
佐藤和久、津村卓
「企画会議(2)」
高橋直裕、大月ヒロ子
「市民をめぐる質疑」
篠田信子
「アウトリーチを重ねて」
榎本広樹、小澤櫻作
「作品を創造すること 其の1」
内藤裕敬
「企画会議(3)」
高橋直裕、大月ヒロ子
「コンテンポラリーダンス・ワークショップを体験する」  井手茂太 「舞台の匠(3)〜アーティスト&空間の匠〜」  大森智子、田中靖人、白石光隆、三重県文化会館スタッフ 「作品を創造すること 其の2」
内藤裕敬
「企画会議(4)」
高橋直裕、大月ヒロ子
「踊りにきたぜ!?」  井手茂太 特別ゼミ 「踊りにこられたぜ!?」 番外ゼミ 番外ゼミ
番外ゼミ 番外ゼミ

4
「改善計画をつくろう」
杉山倫啓、菱川浩二
「準備、練習、仕込み」
三重県文化会館スタッフ
「作品を創造すること 其の3」
内藤裕敬
「発表(1)〜三重県立美術館にて」
下栄子、高橋直裕、大月ヒロ子
「グループ討論&壁新聞づくり」
杉山倫啓、菱川浩二
「ランチタイムコンサート1部・2部&アンコール」  大森智子、田中靖人、白石光隆、参加者
「壁新聞発表」  杉山倫啓、菱川浩二、篠田信子、坪池栄子 「まとめ」 小澤櫻作 「演じてみることで何かがわかる そしてまとめ」 内藤裕敬、津村卓 「発表(2)〜茶室にて」
稲垣たみ子、高橋直裕、大月ヒロ子
全体会・閉講式
コースコーディネーター
ホール入門コース
篠田信子(NPO法人ふらの演劇工房理事)、坪池栄子(株式会社文化科学研究所研究プロデューサー)
自主事業 I (音楽)コース
小澤櫻作(地域創造ディレクター)
自主事業 II (演劇)コース
津村卓(地域創造プロデューサー)
アートミュージアムラボ
大月ヒロ子(有限会社イデア代表取締役)
●蘇ったスタインウェイ──自主事業T(音楽)コース「舞台の匠(1)〜ピアノの匠〜」より
 公共ホール音楽活性化事業をきっかけに、島根県浜田市の原井小学校の音楽室の片隅に眠る1923年製のスタインウェイが発見され、新品同様に修復された事例が、自主事業T(音楽)コースのゼミで紹介されました。児玉真さんをはじめ、修復に関わった方々のお話をご紹介します。

●児玉真(NPO法人トリトン・アーツ・ネットワークディレクター)

  きっかけとなったのは、私がコーディネーターとして関わり、2004年3月に島根県浜田市で実施した公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)です。アウトリーチ会場の原井小学校に下見に行った時、音楽室の片隅に置かれていたスタインウェイを発見しました。その時には昭和初期のものらしい、ということしかわからなかったのですが、アウトリーチ本番終了後に、ピアニストの田村緑さんに見てもらい、1923年製の名器であることがわかりました。
 このスタインウェイは損傷が激しく、1年後に廃棄することが決まっていたのですが、田村さんが浜田の方にピアノの価値を説明され、修復しようということになりました。修復には500万円はかかると言われていたのですが、実は私はそんな大金は集まらないだろうと思っていました。しかし実際に動き出したら、1,300万円の寄附金が集まり、無事修復することができました。
 2005年10月には、ピアノ復元記念コンサートを石央文化ホールで行ったのですが、遠方からご高齢の同窓生がたくさん来てくださり、1,100席のホールがほぼ満席でした。コンサート終了後には、修復運動の中心となった同窓会会長の田中瑞穂さんが「とても嬉しかった」と言ってくださり、その時の表情が忘れられなくて、何か人が幸せな気分になるようなことができたのかなと思いました。
 今回修復されたスタインウェイは、火事で焼けた原井小学校の再建記念として、1933年に当時の保護者が寄附金を集めて寄贈したものだそうです。このように、浜田の人たちは昔から、子どもの教育に大きな夢をもっていらっしゃいました。復元記念コンサートでは、演歌が好きな方もニコニコしながら聴いてくださり、プロフェッショナルな技術の結晶といえるスタインウェイやそれを弾く人など、音楽、もっと言えば芸術そのものに対する愛情をみんなが共有しているな、と感じました。
 私は仕事としてお金をいただいて浜田に関わったんですが、それを超えたエネルギーのようなものがまちの空気にはあり、それが今回たまたま、スタインウェイに集約されたように思います。この仕事を超えた部分にこそ、人間は感動し、動かされるのだと思います。このことを、文化の仕事をしている皆さんの心の片隅に残しておいていただけると、仕事に血が通うのではないかと思います。

●田村緑(ピアニスト)

  私が初めてこのスタインウェイに出会った時は、鍵盤が剥がれ、弦も切れていて見るも無惨な状態でした。でも1923年製のスタインウェイは職人・材料ともよく、世界的な名器といわれています。なので、廃棄になると聞いてとてももったいないと思い、つい「棄てちゃうくらいなら持って帰りたい!」と言ってしまいました。修復されて搬入された時には、浜田の方々が、自分たちの大事なものが帰ってきたように迎えていたのが印象的でした。

●鈴木達也(スタインウェイジャパン代表取締役)

  古いスタインウェイが修復された事例は、このほかにもいくつか聞いていますが、すべてに共通するのは“感動”と“偶然”です。文化の仕事に携わる先輩として、皆さんには、感動を起こした偶然の共通項を探し出し、それを踏まえて必然として感動を起こせるようになって欲しいと思っています。

原井小学校スタインウェイ修復の経緯
1873年
原井小学校創設
1933年
火事で焼けた校舎を再建。再建記念に、当時の保護者会が2,405円の寄附を集めスタインウェイを購入し、寄贈。
1973年
新しいピアノが寄贈され、音楽室の片隅に置かれたまま使われなくなる。
2004年3月
公共ホール音楽活性化事業のアウトリーチで、田村緑さんが小学校を訪問し、スタインウェイを発見、保存と修復を訴える。卒業生らでつくる「校舎改築期成同盟会」(田中瑞穂会長)が中心となり、修理費用の寄附を集め始める。
2005年4月
小学校が港町へ移転新築。松本安生・スタインウェイジャパン委託技術者(兵庫県尼崎市)に修復を依頼。
2005年10月
修復されたピアノが納入され、復元記念コンサートを開催。

制作基礎知識シリーズVol.24 舞台監督の仕事(3)

●制作者との関わり

 講師 草加叔也(空間創造研究所・劇場計画コンサルタント)
 制作者との緊密なコミュニケーションが必要


●制作者と舞台監督のコミュニケーション
 舞台芸術作品の制作および上演を行っていく上で、制作者と舞台監督が密にコミュニケーションを図り、あらゆる情報を共有していくことは、手際よく作業を進行させていたくめの重要な要素となる。
 以下、前回示した舞台芸術作品の創造プロセスに沿って、公演から撤去までの各段階において、舞台監督が担う業務の中で制作者がぜひとも押さえておくべきポイントについて整理を行った。なお、実際の制作業務では、むしろシナリオにない想定外のことが起こることが常である。そのためには、知識だけでなく、フィールドワークを重ねて、想像力を鍛えていくことが制作者にとっての不可欠な資質となる。

●準備期間に必要とされること
 まず、プロダクションをスタートさせる段階では、全体の大きな骨格を組み立てていく必要がある。そのための具体的な要素としては、上演作品の概要、稽古および公演を行う場所“劇場”の情報、制作および公演スケジュール概要、そしてこのプロダクションを支えるスタッフワークなどがある。以下、特に準備段階で舞台監督と制作者が協議する必要のあるポイントを整理した。

◎稽古場の公演場所“劇場”の選択

  まず、予定されている「作品を創造するために必要な稽古場」と「公演を行うための劇場」の選定が大きな課題となる。稽古場には、創造作業を行うための広さやそれを支える諸条件(連続使用、搬入条件、遮音性能など)をクリアすることが求められる。また公演を行う劇場には、必要な舞台面積・舞台設備のほかに、興行に必要な客席数や公演作品を上演するのに相応しい空間の質などが求められる。

◎必要なスタッフの招集

  舞台照明や音響のオペレータ、舞台転換スタッフなど、作品を上演するのに最も相応しいスタッフ・チームを招集することは、舞台監督の重要な仕事のひとつ。もちろん、人件費の制約を踏まえた招集が条件となるため、制作との協議は欠かせない。

◎進行スケジュール素案の作成

  「稽古」「仕込み」「本番」「撤去」「旅(移動公演)」など大まかな制作・公演スケジュールの組み立てを行う必要がある。この際、舞台技術的な側面(予算も含め)での情報は基本的に舞台監督が掌握していることから、まず大まかな進行スケジュール素案を制作との間で合意しておく。

●リハーサル間に必要とされること
 リハーサル段階は、具体的な舞台芸術作品を形にしていく段階である。多くの職能が同時に稽古場に集まり、日々作品を形にしていく作業を行うことになる。この稽古場の進行を司るのも舞台監督の重要な役割である。また、この間に舞台技術に関わる最終的な外部発注業務の仕分けと発注先が決定、さらに進行スケジュールが時間単位で決定される。

◎舞台技術関係予算の把握

  大道具、小道具および衣裳等の製作物から舞台照明機材や音響機材などの調達物に関わる経費(人件費も含む)の把握。本水・火気・レーザーなど特殊効果に関わる経費や、字幕スーパーの製作、舞台技術者が外国人だった場合の通訳費用、各種手続きや許可申請のための諸経費なども考えていく必要がある。予算に関わることは速やかに制作と協議する。

◎チケット販売の制約と解除

  当然、売れる席は1席でも早く売り出したいところであるが、演出や舞台装置の変更があることを見越して、一部の席を売り止めにすることがある。特に舞台前への張り出しや客席内での演出の可能性、舞台近くまで廻り込んだバルコニー席をもつ劇場などでは、鑑賞条件を大きく左右する舞台装置となる可能性があることを考慮し、売り出し当初には席を売り止めにすることがある。その設定、解除の判断も舞台監督による場合が少なくない。

◎詳細スケジュールの決定

  少なくともリハーサル期間には、詳細な仕込みスケジュールを決定する必要がある。特に舞台監督との調整が必要になるのは、マスコミ取材のタイミング、ゲネプロの公開、プレビューの実施など出演者の招集だけではなく、プロダクション以外の関係者へのアナウンスが必要な場合である。

●劇場での仕込み作業の間に必要なこと
 仕込みに入る時期には、作品の基本的な演出は決定されており、本番の舞台に合わせた調整が図られるタイミングである。この期間には、舞台装置などを建て込むことと本番に向けた最後の舞台稽古が実施される。ただし、大掛かりな舞台装置を仕込む場合には、そのために多くの時間を必要とし、ややもすると出演者を入れた舞台稽古の時間が制約されることも起こる。そのようなことを防ぐためにも十分な情報の共有が必要になってくる。

◎仕込みスケジュールの堅持と確認

  舞台装置の建て込み、舞台照明および音響設備の調整などそれぞれにとって物理的な仕込み時間が確保され、最後の舞台稽古に向けた調整を滞りなく行うことができているか。時間的、物理的なトラブルはないか。場合によって変更が生じていないか。その結果、演出家や指揮者などの本番に向けた最後の舞台稽古の時間、スケジュールに影響を及ぼすことがないか、といった進行管理を行うこの場合、変更情報の共有が不可欠となる。

◎舞台稽古スケジュールの確認と進行

  仕込み期間に行うもうひとつの重要な作業が、この舞台稽古である。本番の装置を飾り、衣裳を着け、実際の舞台照明と音響を入れた形での通し稽古までを行う。ただし、物理的な仕込み作業の進行いかんによっては、出演者や演出家の劇場への入り時間の調整など制作者と舞台監督との息の合った進行が必要とされる。
 また、マスコミや観客などを入れたフォトコール、公開稽古やプレビューなどを本番前のタイトな時間の中で実施するケースも増えている。

◎スタッフや関係者へのホスピタリティ

  それぞれのスタッフは短時間に過不足なく作業を行っていく必要がある。その作業を円滑かつ迅速、安全に行えるような環境整備やホスピタリティを提供することも制作者の重要な役割になる。そのためにも舞台監督との連携は不可欠である。

●本番期間に必要なこと
 初日が開けば、公演スケジュールどおりの進行が基本であるが、演出家のダメ出しやキューの変更、衣裳の調整など公演の合間をぬって様々な調整が必要となる。この間の日々の進行スケジュールの調整を指示していくのも舞台監督の役割であり、制作者と全ての調整をしながら進めていくことになる。

◎劇場着到時間の連絡調整

  日々の作業(調整)により、出演者・スタッフの劇場入り時間調整が毎日行われる。もちろん通常のウォーミングアップのための時間や作動チェックのための時間が必要であるが、演出の変更など調整のための時間を確保し、具体的な指示を舞台監督が行っていくことになる。

◎バラシ(撤去)とツアー手配

  初演の公演終了後、舞台を撤収するためのスタッフの手配、大道具や調達物の引き取りのための車両の手配など、仕込み時同様に搬出計画の立案、進行を舞台監督が指示する。大道具などこの作品のために製作されたものについては、再演の可能性がなければ廃棄処分の手続きを進め、再演が予定(期待)されている場合には、倉庫などへの格納計画を策定する。また、作品によっては次の公演地への移動を行うこともある。その場合には、次の劇場での搬入計画を確認しつつ撤収作業を進行させる。

●舞台監督とのリレーションシップ
 舞台制作の進行は、マニュファクチャーとは異なり常に同じ条件で製作が行えるわけではない。作品ごとに創造や上演に関わる出演者・スタッフの総力が試されることになる。
 舞台監督は、その作業進行の舵を握ることになるが、大海に乗り出す船にはそれに相応しい職能の分化が求められるし、また小船を手足のごとく操るのも舞台監督の鍛えた手腕ということになる。つまり制作者には、作品に応じてその水先案内に卓越した舞台監督がパートナーとして必要となる。そして両者がより多くの情報を共有し、協働して作業に当たっていくことが、より良い作品を創造するための第一歩となる。

ページトップへ↑