地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

10月号-No.138
2006.10.10(毎月10日更新)

今月のニュース

「ステージクラフト〜舞台技術ワークショップ」報告

注目を集める「さいたまゴールド・シアター」での研修に興味津々

 地域創造が埼玉県芸術文化振興財団との共同主催により平成9年度から実施している「ステージクラフト〜舞台技術ワークショップ」。本年度の事業は、8月8日から11日まで、彩の国さいたま芸術劇場を会場に開催され、全国から31名の受講者が集まり、舞台、照明、音響のワークショップに取り組みました。
 この事業の最大の特徴は、本物の公演の裏方を体験しながら舞台技術の基礎を学ぶところにあります。今年度は、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督に就任した蜷川幸雄の新プロジェクトとして全国的に注目されている高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」の中間発表の作品『Pro・cess〜途上〜』が研修の舞台となりました。
 中間発表については、本誌前号の「今月のレポート」で詳しく紹介しましたが、1,200人余りの応募者から選ばれた平均年齢66.9歳のゴールド・シアターのメンバー45名が出演した力作で、世界的な演出家ならではの革新的でプロフェショナルなスタッフワークにふれることのできた貴重な機会になりました。


45個の水槽がセットされた稽古場劇場で講義


 研修初日には、ゴールド・シアターのために招集されたプランナーが講師になり、作品づくりのプロセスを紹介。芸術監督と共に演技指導に当たってきた演出家の井上尊晶さんからは、「個人史をベースにした新しい演劇形態を追求したい」という劇団趣旨、5月から週5日、2カ月にわたって行われた稽古内容等が紹介されました。「どのぐらいの体力があるか、どのぐらいの台詞が入るかなど、2カ月の成果をステージアクトという形を借りてやってみようということになった。新しい集団なので劇場ではなく新しい場所で発表しようと稽古場を劇場につくり直した」と井上さん。
 今回の公演では、人が1人入れる水槽が45個舞台上に並ぶという印象的なセットが用いられましたが、舞台美術を担当した安津満美子さんは、「演出家から水槽を使いたいという具体的な提案があったので、なぜ水槽なのか、から逆に演出意図を考えるところから始めた。役者ひとりひとりが主役の公演だということと、シンプルな物なのでさまざまな見立てができるよう、舞台全体を使って(ばらばらに)並べることにした。今回は稽古場をどのような空間に変えるかも舞台美術の担当だったので、ダクトなどを残してあえて無機質な空間にした」とプランを説明。
 衣裳の小峰リリーさんは、ファッションデザインと衣裳デザインの違いについて「舞台衣裳はキャラクターのデザインをすること」と前置きした後で、「ゴールド・シアターは自分たちを表現するという趣旨なので、自前の洋服を持って来てもらってその中から出演者の表情が引き立つものを選んだ」とのこと。今回の中間発表では披露されなかったのですが、『三人姉妹』を稽古した時に軍服を着てもらった時のことを振り返り、「プロの役者でも着こなすのが難しいのに、人生経験のある人が軍服を着るととても似合うのに驚いた」というエピソードを披露されたのが印象的でした。
 このほか、照明プランナーの岩品武顕さんは、劇場でない場所に照明を仕込むことの課題について説明。バトンを吊る、電気容量を確保する、公演用の調光卓を設置する、各水槽に個別のピンスポットが当たるよう45機の照明を仕込むなど、自前の劇場で、かつ、劇場付きの技術スタッフが充実しているからこそ実現した今回の中間発表の裏側がとてもよくわかる講義内容でした。
 2日目からは3班に分かれて、全員が音響、照明、舞台の実技にチャレンジ。最終日にゴールド・シアターの皆さんのご協力により、実際に受講生がオペレーションをして模擬公演を行いました。1日3回の本番にお付き合いいただきました出演者の皆様には心よりお礼申し上げます。
 最終日の反省会では、「これまで音響しかやっていなかったが、別のポジションを経験して自分の仕事を見つめ直すことができた」「皆さんの舞台をつくる姿勢に感動した。初心に戻ってやり直したい」「講師の方に、うまくいくのが普通だから、普通にできても誰かが褒めてくれるわけではない。それを自分の喜びとして技術を高めていこうと言われてなるほどと思った」など、受講生の言葉からはものづくりの姿勢に目覚めた興奮が伝わってきました。


ステージクラフトスケジュール表


8月8日(火) 
第1日

8月9日(水) 
第2日

8月10日(木) 
第3日

8月11日(金) 
第4日

9:00


専門ゼミ「舞台─1」
9 : 30─10 : 30
(舞台セットの説明、バックステージツアー)
専門ゼミ「照明─4」
9 : 30─12 : 30
(映像を見ながらきっかけの確認)
総合ゼミ
9 : 30─10 : 45
セットアップ─リハーサル−1
10:00


専門ゼミ「舞台─2・3」
10 : 30─14 : 00
(舞台基礎実習、仕込みの実習)


11:00




総合ゼミ
11 : 00─12 : 15
セットアップ─リハーサル−2
12:00





13:00

開講式・オリエンテーション
13 : 30─14 : 15

専門ゼミ「音響─4」
13 : 30─16 : 45
(オペレーションの説明と実習)
総合ゼミ
13 : 15─14 : 30
セットアップ─リハーサル−3
14:00

一般ゼミ「作品づくりについて」
14 : 30─15 : 50
講師:井上尊晶(演出)、小峰リリー(衣裳)、安津満美子(美術)、岩品武顕(照明)、市川悟(音響)、山田潤一(舞台)
専門ゼミ「音響─1〜3」
14 : 15─17 : 45
(音響プラン補足説明、音響機器の説明と扱い方、仕込みの実習、サウンドチェックの実習、きっかけの確認作業)





ミーティング
14 : 45─15 : 30
15:00




閉講式 15 : 30─15 : 45
打ち上げ 15 : 45─16 : 45
16:00

専門ゼミ「照明─1」
16 : 00─17 : 00
(照明機器の説明と扱い方)



17:00

専門ゼミ「照明─2」
17 : 00─18 : 30
(仕込みの実習)

専門ゼミ「舞台─4」
17 : 00─18 : 30
(オペレーションの説明と実習)

18:00

ホール見学
18 : 30─19 : 00
専門ゼミ「照明─3」
18 : 00─19 : 00
(仕込み・フォーカスの実習)



照明・音響・舞台ゼミの模様
「Pro・cess〜途上〜」公演の模様(撮影:幸田森)


制作基礎知識シリーズVol.25 チケット営業(3)

配券業務と会員制度

 講師 佐藤和久(北九州芸術劇場
 チケットという商品を的確に管理し、会員営業で収入の柱をつくる

●チケットの配券業務

 チケットは基本的に発売日の2週間前までには流通に配券を完了する。
 配券作業は、票券または事業担当者が行う。北九州芸術劇場の場合は、一般発売日の1カ月前に、営業・事業・票券担当者で営業や会員での販売予測を立てながら、一般流通に委託する枚数を大枠で設定している。その後、一般発売日の2週間前までに、営業・会員・流通への配席(席番)を決定して一般流通に配券する。また、一般発売前に会員先行と営業販売(仮おさえ枚数を含む)の枚数が確定されるので、一般発売前日までに再度、配券作業を行う。営業・会員・流通へ配券する座席位置は、ほぼ均一状態になるような配席を心がけている(下図参照)。

◎配券の種類

一般流通/劇場プレイガイド/営業/会員/招待席/車椅子席/事故席/カンパニー席

◎票券業務に関する注意・留意点

・チケットの券面表記に誤りがないか必ず確認する(公演名/日時/会場/料金/スタッフ・キャスト名/主催・後援等のクレジット)
・見切れ席はあるのか、PA席の位置、カンパニー(ファンクラブ)おさえのチケットはあるのか、制作サイドに必ず確認する。
・トラブル回避のために、必ず事故席を数枚確保する。
・ダブル発券防止や票券管理のために、配券表を作成する。

会員制度

◎会員制度を導入する目的

 劇場(会館)が会員制度を導入する主な目的は、公演チケットの先行予約や割引優待などのチケット購入に関する利便性を提供して、会員と劇場との繋がりを高め、チケット販売の促進を図ることで、事業収入の収益率を上げるためである。

◎会員システムの主な形態

 劇場が導入している会員システムにはさまざまな形態があるが、大きく分けると、「カード会社提携型」と「独自開発型」の2つがある。既存のカード会社と提携して会員サービスを行う場合は、業務の合理化や経費の軽減などを図ることができるが、そのカード会社の入会基準をクリアーしなければならないため、入会時の年齢制限や審査などがある。独自で開発する場合は、手続きを簡単にすることもできるが、会員事業に関する実務全般の業務が発生する。
 いずれにしても会員制度を構築する場合には、何を主眼として会員制度を導入するのか、目的を明確にして、地域の特性も考慮しながら構築することが必要となる。
[カード会社提携型]
 カード会社のシステムを導入すると、チケット代金の決済機能(自動引き落とし)、年会費自動集金機能、ポイント蓄積機能、会員データベース作成機能(管理・データベース化)のあるカードが発行できるし、さらにカード会社のクレジット機能やサービス特典を利用できるというメリットがある。
[独自開発型]
 会員制度をもつ公立ホールの多くはこのタイプに属する。自らの劇場のニーズに沿ってマーケティングを行い、地域の特性を考慮しながら、事業展開に沿った会員制度を構築している。会員事業に関する実務全般は、劇場職員が行っているのが一般的である。
 北九州芸術劇場の場合は、入会金500円でチケットクラブ会員に登録できる仕組みで、入会金をカード発行に係わる経費に充てている。会員制度に関する基本的な考え方は、入会に際してのハードルを低くすることによって、多くの会員を確保して情報提供を行い、舞台事業への興味を喚起することを目的としている。開館した初年度には、1万人以上の会員登録があった。現在は4,000名程度で推移しているが、舞台事業への関心が強いコアな会員組織となっている。なお、会員組織の運営・管理は、宣伝営業課が担当している。

◎会員制度の主なサービス特典

 劇場によってさまざまな工夫を凝らした特典を付与しているが、一般的な内容は、先行予約販売、割引優待、会報誌の発行、協賛施設での優待サービスなどである。
 北九州芸術劇場の場合は、チケットの先行予約購入、ポイント積み立てによる割引サービス(購入金額の5%相当のポイント加算、100ポイント単位=1ポイント1円で利用可能)、公演情報誌の発行(年4回)、協賛店での割引サービスなどを特典としている。

◎情報提供の方法

 一般的には、会報誌を発行して公演情報の提供を行う。会報誌は、実施される公演のスケジュールやチケットの前売情報、演出家や出演者のインタビュー特集など、読者の興味を喚起するような誌面づくりを行っている。発行サイクルは、毎月または季刊(年4回発行)で発行するところが多い。このほかに、DMやメールマガジンを発行して情報を提供するところもある。

◎会員制度の運営に必要な経費

 初期に発生する経費として、会員募集チラシの制作費、入会申込書の制作費、カード台紙の制作費、ホームページ上で申し込み受け付けする場合はその開発費用などが必要となる。通期の主な経費は、カード発行代、カード郵送代、会報誌の制作費および郵送費などである。
 北九州芸術劇場の場合は、年4回発行する会報誌(名称「ステージ通信Q」)の制作費および郵送費が主な経費となっている。「ステージ通信Q」は、北九州市芸術文化振興財団が運営している響ホール(クラシック音楽事業)の情報も掲載している。1号当たり3万部発行しており、チケットクラブ会員のほかに、全国や近隣の公立ホール、財団や自治体関連、マスコミ、企業や市関連施設などの約550団体に配布(郵送)している。1号当たり約237万円(年間約950万円)の制作費および郵送費が発生しており、会員制を維持するためにはかなりなコストが必要となることに留意すべきである。

◎運営費の算出

 会員運営にかかる財源として、年会費を充当するところもある。一般会員だけでなく、特別会員や賛助会員制度を設けて会費収入の増額を図ったり、また、会報誌に広告スペースを設け、企業や団体からの広告収入で財源の補てんをしている劇場もある。北九州の場合は、チケットの販売促進の観点から基本的に広報宣伝費として計上している。

 以上、会員制度に関することを簡素に説明したが、会員からのチケット収入は、事業収入の重要な柱である。一般販売や営業販売の促進とともに、サービスアイテムの充実を考え、新規会員を獲得して、会員販売の増強を図っていくことが必要だろう。

票券管理の方法


1. 席種
最近では、一般的にS席比率が高くなる傾向にある。観客の育成という視点から、ホール最後列や最前列の桟敷に学生割引席などの格安席を設定するところもある。席種を決める場合は、
・ステージから遠くなるほど席種は悪い
・上の階ほど席種は悪い
・2階席前列はS席扱い
・上の階の席が被っている所は音が悪いので席種を1等下げる
というのが基本的なルール。ホールによって見切れ席(ステージの一部が見えない)、音の悪い席などの条件はそれぞれ違うため、個々のホールの特性に合わせた席割りが必要。

2. チケット流通業者への配券
配券方法を間違うと、真ん中に空席ができたり、同じ席を二重発券するなどのミスが出たり、チケットの売れ行き確認が煩雑になったりする。どういう配券も一長一短だが、チケットぴあでは「縦割り配券」を勧めている。これは座席を縦に区切って配券する方法で、どの流通業者にも全席種を配券できる上、良い席から順番に売れていくので売れ行き確認しやすいメリットがある。

3. 特別席
一般客に販売する席のほかに、PA席、カメラマン席のように席はあっても販売しない席、記者や関係者用の招待席、事故が起こった場合に対応する事故席などの特別席がある。
[招待席]S席の中で選ぶのが基本で、中央通路の後ろ辺りに配置することが多い。団体によっては、招待日を何日かに分けるところもある。
[VIP席]皇室対応の場合、セキュリティなどの関係から2階中央最前列を用いる。
[事故席]二重発券などの事故席としてはS席の中から中の上辺りの席を準備することが多い。開演直前に入場することが多いため、通路脇、入口近くなどが便利。

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