地域創造

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今月のレポート

群馬県大泉町
10 月号-No.138

ビッグ盆!


 

 うだるような暑さに覆われていた8月5日。大阪・新世界のフェスティバルゲートで一風変わった盆踊り大会が開かれた。2階の広場には、たくさんの提灯が吊り下げられ、櫓の上でコンテンポラリー・ダンスの踊り手たちが新作盆踊りを披露。櫓の下では、小学生から大人たちまで多くの人が輪になり、踊っている。周囲には、屋台が並び、駄菓子からジャズのCDまで種種雑多なものが売られている。“盆踊り”という見慣れた夏の風物詩なのに、なんとも不思議な情景が展開されていた。

写真:「ウチらの盆踊り」の模様
「ウチらの盆踊り」の模様。寄付者の名札が付いたたくさんの提灯が見える

 この盆踊りは、新世界アーツパーク未来計画実行委員会が企画・主催する「ビッグ盆!」のメイン・イベント「ウチらの盆踊り」で行われたもの。そもそも「ビック盆!」は、フェスティバルゲートを拠点にする4つのアートNPOがそれぞれの得意技を生かして行う4つの企画を総称したもの。
 現代音楽を扱う「BRIDGE」は、日本橋の商店街にある電気パーツを扱う9店舗で展示とBRIDGEとremoのスペースで演奏実演をし、映像をテーマにしている「remo」は、電気屋や喫茶店などでワークショップ参加者と一緒に撮影した映像を上映。就労支援カフェとしても活動している「cocoroom」は、日本橋でニートたちと仕事について語り合える特設カフェを開いた。それらの中心に、「ダンスボックス」がプロデュースした盆踊り“ウチらの盆踊り”があった。
 ダンスボックス代表の大谷燠さんは、「近年、見せるダンスだけでなく、ワークショップなど参加型のものが増えてきた。ダンスボックスでも地域の人たちとワークショップを行い、好評を得てきた。そういった中で、“盆踊り”はよりたくさんの人たちに開かれた踊りの場だと以前から注目していた」と言う。
 この新世界界隈では、約40年前から盆踊り大会が途絶えたままだった。地域のお年寄りに聞くと、かつてはこの地独自の唄と踊りがあったらしい。四方八方に手を尽くし、ようやく『新世界新地小唄』と2曲が収録されたレコードを発見。しかし、その曲を聴いても振付を思い出せる人はいなかったため、ダンスボックスの若手ダンサー(TEN、yum、宮北裕美)と地域の人たちが協働で新しい振付をつくろうということになったとか。
 それに合わせて、全く新しい盆踊りの創作も行われた。cocoroom代表の詩人、上田假奈代さんは地元の恵美小学校に出向いて作詞ワークショップを開催。子どもたちが発した自由奔放な言葉を歌詞にまとめ、振付も前述の若手ダンサーが小学校に出向いて子どもたちの動きやアイデアを活かして考案。アーツパークに出入りするミュージシャン(ウォン・ジクスー+neco眠る)が作曲、演奏を手がけた。
 「ビック盆!」開催のための一番の課題だった資金は、いくつかの助成金に加え、1口3,000円の寄付を募り、寄付者の名札を提灯に吊すという盆踊りならではのアイデアで集めた。
 「最終的には約70カ所から200口を超える寄付をいただきました。これだけの寄付をいただけたのは、4つのNPOが培ってきた地縁と人脈、そして今後の活動への応援だと受けとめています」と事務局を務めた角知子さん。
 実は、「ビッグ盆!」開催の背景には深刻な事情がある。元々、アーツパーク事業は、大阪市の「現代芸術創造事業」の一環として経営不振に陥ったフェスティバルゲートの空き店舗を市が借り上げ、4NPOと2つの任意団体に活動の拠点として運営委託をし推進している事業である。だが、フェスティバルゲート自体の閉鎖問題がもち上がり、大阪市から移転を含む事業の見直しを打診され、事態が紛糾。そこで、4NPOが中心となって「新世界アーツパーク未来計画実行委員会」を結成。地域住民や有識者を招いてシンポジウムを開催し、ここが地域活性化の拠点として機能し、アートもその中で大きな役割を果たすような再生計画を提案してきた。その具体的なイベントとして企画されたのが「ビッグ盆!」だった。
 地域住民からの評判も上々で、当日は関淳一大阪市長も挨拶に訪れるなど、事業継続への光明も見えた感があるが、経済面の厳しさに変わりはなく、今後とも地域との連携事業をどのように発展させることが不可欠だろう。その中でどんな試みが出てくるか、注目していきたい。

(ライター・山下里加)

「ビッグ盆!」(アサヒ・アート・フェスティバル2006参加プロジェクト)
[主催]新世界アーツパーク未来計画実行委員会
[特別協賛]アサヒビール(株)
[後援]大阪市浪速区、(財)大阪都市協会、(財)大阪観光コンベンション協会、新世界町会連合会、日本橋筋商店街振興組合
プログラム
盆踊り復興計画「ウチらの盆踊り」(8月5日/フェスティバルゲート2階イベント広場)
[企画]NPO法人ダンスボックス
「remoscope_workshop in 新世界」
(ワークショップ:7月22日/新世界界隈、上映:8月4日〜6日/日本橋電気街、新世界界隈)
[企画]NPO法人記録と表現とメディアのための組織(remo)
「ニートでアートカフェ─cocoroom in 日本橋」(8月3日〜5日/日本橋つたやビル)
[企画]NPO法人こえとことばとこころの部屋(cocoroom)
「テクノポリタンミュージアム」(展示:7月29日〜8月5日/日本橋電気街、実演:8月6日/BRIDGE、remo)
[企画]NPO法人ビヨンドイノセンス(BRIDGE)

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