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制作基礎知識シリーズVol.26
ファンドレイジングA
民間企業の資金調達 (メセナ活動を中心に)

講師 高萩宏

 「メセナ」はフランス語で「芸術文化を保護、支援すること」を意味する。ローマの貴族のマエケナスまたはメッシーナ(Maecenas)という人が文化芸術活動に造詣が深く、芸術家を保護し、その活動を助けたことにちなんでいる。
 1988年に日本で開かれた「企業と文化」をテーマとした「日仏文化サミット」の後、フランスの組織に倣って、日本でも1990年に社団法人企業メセナ協議会が発足する。これを機に企業の宣伝活動と一線を画した芸術文化支援活動を「メセナ活動」と呼ぶことになり、現在ではその言葉も概念もすっかり定着したように見える。
 企業から資金を調達する方法はメセナによるものだけでなく、[表1]のように広報宣伝の一環としてお金を出してもらう方法もあるが、今回はメセナを受ける方法について紹介する。

表1 民間企業のお金の出し方

◎広告宣伝

広告出稿 チラシやパンフレッとなどに有料で広告を掲載してもらう。直接行う場合と広告代理店を通じて行う
セールス
プロモーション
試供品の配布場所や宣伝場所としてロビー等を提供するなどセールスプロモーションに協力する。
冠公演 地元企業のスポンサーによりクラシックコンサートのシリーズを行い、シリーズ名に企業名を付けるなど、公演に企業名や商品名を付けて公演を行う。
ネーミングライツ 施設などに名前を付ける権利(ネーミング・ライツ)を期間限定・有料で販売する。
オフィシャル・
スポンサー
事業ごとではなく、年間にわたり資金提供などの協力をしてもらうスポンサー(オフィシャル・スポンサー)を募る。

◎寄付

  社会貢献として芸術文化活動に対して企業の寄付を募る。
メセナ協議会(http://www.mecenat.or.jp/)のような特定公益増進法人を通じて寄付を行うと税制上の優遇措置が受けられる。

◎事業費

  企業との共催などにより事業を実施する。

 ちなみに企業メセナ協議会では毎年、メセナ活動の実態調査をした「メセナリポート」を発表している。右頁のグラフはその一部を紹介したものだが、1事業当たりの事業費は30万円までの小口も多く(図2)、また、地域文化の振興や公益法人とのパートナーシップがメセナ活動において重視されているのがわかる(図45)。
 企業が本来の営利の追及に直接関係のない文化芸術活動を支援するのは、企業も社会を構成する一員であり、現代社会が抱えている問題に企業市民(コーポレート・シチズン)として積極的に取り組み、問題解決に貢献する義務があるとする考えからだ。これは、文化芸術活動が盛んになることにより、社会が創造性と活力のある状態を保つことが企業の経済的な発展も保障するという論理に基づいている。
 こうした企業による文化芸術の支援方法は、単に資金を援助するだけでなく、企業のもつ多様な資源をさまざまに活用することが考えられている。文化芸術活動に役立つノウハウをもった人材の提供、社内ボランティア活動の推進、一時的に企業活動に使用しないスペースの提供、すでにもっている媒体による芸術文化の普及、広報活動への協力など、数え上げればきりがない(図3)。

●企業メセナの受け方

 前回(2006年12月号)でも述べたとおり、現在、公立文化施設の運営において、こうした企業メセナを受けることは極めて重要になっている。事業担当者が企業の支援を求めるには、いくつか段階がある。以下、順を追ってみていく。
@企画書と予算書を作成する
 支援を求めようとする活動の概要を言葉にする作業から始める。社会性があり、企業の支援を要請するに足る活動であるとアピールすることがポイント。芸術文化の普及を目指す活動、教育的な要素を含む活動、国際文化交流への貢献、その分野での実験的、先駆的な活動など、自分の活動をまず印象づける必要がある。さらに、全体の予算を作成し、収入の見込み、支出の予定をつくることで、事業の実現性をアピールするとともに、どの部分を支援してほしいかを明確にする。
A企業のメセナの方針を知る
 その企業にメセナの実績があるか、どの分野の芸術に興味をもっているか、芸術の先駆的な活動を重視しているのか、芸術活動の子どもへの普及に興味をもっているのかなどについて予め知っておく必要がある。地域との関わり(創業地、創業者の出身地、工場の立地など)や会社の周年事業の可能性なども調べてみる。さらに依頼する企業を定めたら、過去の実績を調べてそれに合わせて企画書のポイントを修正することも大事である。相手先にメセナの実績がなくても、企業文化、企業としての歴史的な展開など、企画事業との関係をつくれる糸口を見つけるなどの工夫も必要。
B企業の窓口を知る
 メセナ活動を行っている企業の場合、専門の部署をもっているか、または広報や総務の一部がメセナの窓口を行っていることがほとんどだ。メセナという言葉もだいぶ一般化してきているので、どこがメセナの窓口かを見つけるのはそれほど難しくはない。実績のない企業の場合は、取締役クラスの趣味から調べて、話を聞いて貰えそうな人に持ち込むか、地域向けの窓口をしている部署を何度でも訪ねて、話を聞いて貰うところから出発するしかない。
C企業を訪問する
 窓口がわかったら、連絡して趣旨を説明する。先に企画書を郵送して欲しいという場合もあるが、とにかく面談の日程を決めて訪問する。企業の担当者は必ず、「なぜ我が社に支援を求めるのか?」を尋ねるので、明確な答えを用意しておくこと。企業メセナは、決して宣伝行為ではないので、事業の社会性を訴えると同時に、その社会性が企業イメージと合うことが大事なポイントになる。話の中で、資金の提供ばかりでなく、さまざまなメセナの方法が提案される場合もあるので、訪問者は事業を熟知していることが望ましいし、柔軟な対応ができる必要がある。
D支援額について
 収支予定の差が支援額の希望額となるが、これがあまり大きいと事業の実現性に疑問が出てくるし、あまり小さいと自己努力で解決しそうに見える。企業のメセナ活動の実績を調べて、支援可能な額を見込むこと、また複数社の支援を受ける形にするなどで支援を受けやすくする。直営施設の場合、広告費の一部を負担してもらったり、解説付きパンフレットの作成費を肩代わりしてもらうなど、資金の受け取り方への工夫も必要である。
E信頼関係を築く
 継続的な支援はお互いに望ましいので、実際の活動の際に見てもらう、参加してもらうことは重要だし、事業の反響まで含めた事後の報告、決算書の提出は欠かせない。信頼関係が出来れば将来的に新しい活動を共同で開発することも考えられる。

●今後

 広告であれ、メセナであれ、個人寄付であれ、とにかく、目の前の文化芸術活動へ、第三者からの資金を少しでも獲得する方法をまず考えてみるべきである。それによってワークショップやセミナーを追加できたり、学生やシニアに割引料金を設定できたりするかもしれない。年に1回の広告が通年になり、さらに大きな広告や、寄付に繋がっていけば素晴らしい。外部資金の導入は事業の社会性を担保するということでもあり、それが「公共」という名に恥じない文化施設になる第一歩となる。

図1 メセナ活動費総額の分布(n=388)



図2 事業費の分布(n=1,573)     図3 メセナ活動の方法(複数回答)




図4 メセナ活動で重視した点(複数回答/n=443)




図5 パートナーシップを組んだ相手(複数回答/n=242)

(社)企業メセナ協議会「メセナリポート2006」より
[調査対象]全国の上場企業、非上場企業売上高上位300社、企業メセナ協議会会員企業等
[調査対象期間]2005年4月1日〜2006年3月31日(2005年度)

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