地域創造

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制作基礎知識シリーズVol.27
公立文化施設の評価を考える@

講師 吉本光宏
(ニッセイ基礎研究所 芸術文化プロジェクト室長)

 地域創造では、平成16年度から「公立文化施設における政策評価等に関する調査研究」を実施してきた。この度、3年間の成果として「公立ホール・公立劇場の評価指針(以下、本評価指針)」がまとまり、報告書が発行された(*)。今回の制作基礎知識シリーズでは、この調査結果(評価指針)についての解説を行うとともに、公立文化施設の評価について考えてみたい。
  指定管理者制度の導入などを背景に、公立文化施設の評価に対する関心やニーズは高まっているが、具体的な評価方法の構築、有効な評価基準や指標の設定が容易でないことなどから、公立文化施設では、これまで必ずしも適切な評価が行われているとは言えない状況が続いていた。
  そこでこの調査研究では、専門家研究会を設置し、1年目は指定管理者制度の実施に関する留意事項と評価の基本的なフレームに関する検討を、2年目は全国各地の8館の協力による評価調査を、それぞれ実施した。その2年間の成果と専門家研究会での1年間の検討に基づいてまとめられたのが本評価指針である。


●評価の目的と流れ

 公立文化施設だけではなく、最近ではあらゆる政策分野に評価制度が導入されているが、まず、「評価の目的」を明確にしておく必要がある。重要なのは、評価はそれ自体が目的なのではなく、現状や問題点、課題を把握し、その改善策を見出すための手段である、という点である。
 いわゆるPDCAのサイクルの中で、「施設の設置目的や目標がどの程度達成されているか」「事業の所期の成果が得られたか」「住民がサービスの内容や質に満足しているか」「円滑な運営が行われているか」「経営の効率化が図られているか」といったさまざまな視点から、事業や運営の点検を行うのが評価である。その結果に基づいて、運営や事業の改善を図り、必要な場合にはミッションや戦略を見直していくこと、それが、評価の最も重要な意義である。
 同時に、こうした評価のプロセスや結果を住民に積極的に公表し、公立文化施設としての説明責任を果たしていくことも評価の重要な側面である。
 本評価指針における評価の流れは右頁のフロー図に示したとおり、次の4つのステップによって構成されており、1年単位でそれらが循環する構造となっている。


◎ステップ1
ミッションの確認(再設定)と評価体系の構築
◎ステップ2
評価データの収集(調査)・分析と段階評価に基づいた自己チェック
◎ステップ3
評価と改善計画の策定
◎ステップ4
評価結果の市民への公開、運営・経営改善計画の実施とミッションの妥当性の点検・再設定

●評価フレーム

 本評価指針で作成した評価フレームは、次の3つの大きな戦略・評価軸に基づいている。
(A)設置目的:当該文化施設の設置目的をどの程度達成しているか
(B)運営・管理:利用者に対するサービスの質や施設の管理状況は十分か
(C)経営:効率的な運営と適切な経営努力が行われているか
 そして、3つの戦略・評価軸ごとに複数の戦略目標(=評価大項目)ならびに戦略(=評価小項目)を設定し、それらを評価するための指標や基準の検討を行った。
 つまり、戦略目標、戦略、評価指標・基準を一つのセットとして、それらを体系づけたものが、本評価指針で設定した評価フレームである。その具体的な内容は次回以降に解説するが、ここで重要なのは、本評価指針で示された評価フレームは、すべての公立ホール・公立劇場に共通のものではなく、施設ごとにカスタマイズやアレンジが必要だという点である。
 また、この評価フレームを明確に設定するためには、何よりも評価を実施する個々の文化施設のミッションが明確となっていなければならない。そこで、この評価指針では、ミッションが適切に定められているかどうかを、評価の第1ステップ(A-0)として位置づけている。

●本評価指針の狙い

 本評価指針の作成に際しては、次の4点が重視された。
@多くの公立文化施設で導入されているのは、入場者数、稼働率など、いわゆるアウトプット指標が中心の事務事業評価であるが、本評価指針では長期的なアウトカムを評価指標に組み込み、アウトプット指標に偏った評価の弊害を改善することが念頭に置かれた。
A本評価指針では、ミッションを可能な限りブレイクダウンし、公立ホール・公立劇場の本来あるべき姿や目指すべき方向性を提示するとともに、運営データによる短絡的な評価の危険性を示すことで、評価に取り組むことが設置団体や財政当局に公立文化施設の意義や役割を示す“武器”となるよう企図された。
B公立ホールや公立劇場の地域や住民に対する幅広い効果を視野に入れ、本評価指針では、教育や福祉、まちづくりなど、地域の活性化に対して公立文化施設が果たすべき役割を、評価指標の中に明確に位置づけた。
C政策目標は達成すべき数値として示すべきだという考え方が主流となっているが、本評価指針では、数値化になじみにくい定性的な戦略目標や評価項目について、解説式のモデル指標を設定し、自己点検が可能で、改善の方向性を示唆するしくみを取り入れた。
 次回以降は、本評価指針の特徴となっている「戦略・評価ユニット」の仕組み、ミッションのブレイクダウンに基づいた「評価体系」、そして、段階評価・チェックリストに基づいた評価、運営・経営データに基づいた評価、調査データに基づいた評価、という3つの「評価方法」などについて解説を行う予定である。

●公立ホール・公立劇場の評価の全体フロー


●公立文化施設における政策評価等に関する調査研究(2007年3月現在)

◎研究会委員
逢坂恵理子(森美術館プログラムディレクター) *2006年12月までは水戸芸術館現代美術センター芸術監督
草加叔也(有限会社空間創造研究所代表取締役)
熊倉純子(東京芸術大学音楽学部助教授)
櫻井俊幸(小出郷文化会館館長)
田邊國昭(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川幾郎(帝塚山大学大学院法政策研究科教授)
橋本博幸(熊本県立劇場事務局長)(平成16〜17年度)
平田オリザ(劇作家・演出家/青年団代表/大阪大学教授/キラリ☆ふじみ芸術監督)
吉本光宏(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室長)
◎オブザーバー
芳賀克男(総務省自治行政局行政課監査制度専門官)(平成16年度)
◎協力公立文化施設
栃木県総合文化センター
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
小出郷文化会館
可児市文化創造センター
吹田市文化会館
鳥取県立県民文化会館
北九州芸術劇場
南城市文化センター シュガーホール


*報告書をご希望の方は下記までお問い合わせください。
芸術環境部 飯川・栗林・山下
Tel. 03-5573-4185

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