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今月のレポート

島根県
2月号-No.154

開館2周年で100万人来館グラントワのクリスマス


グラントワ外観(中庭)
グラントワ外観(中庭)

  島根県西端の益田市(人口約5万人)は、津和野や萩から車で約1時間圏内に位置し、赤銅色の石州瓦の民家が連なるかつての城下町である。ここに2005年10月オープンしたのが「石見美術館」と「いわみ芸術劇場」を複合した島根県芸術文化センター「グラントワ」だ。市民の美術館建設の要望と石西県民文化会館の建て替えタイミングが重なり、「中世文化の薫るまち」を掲げる県西部の文化振興の一端を担う複合文化センターとして構想されたもの。美術館の学芸は県の直営、劇場の運営とセンターの施設管理・広報・営業は島根県文化振興財団が指定管理者として行っている。建物は、28万枚の石州瓦で壁と屋根を葺いた特徴あるもので、水盤のあ る正方形の中庭を回廊と文化施設が囲んでいる。このグラントワが開館2周年で100万人の来館者を迎えたと聞き、12月24日、クリスマスイブの模様を取材に出かけた。

 この日、石見美術館では竹内栖鳳の子犬の屏風など動物の絵を集めたコレクション展「美術動物園」と県展、劇場では市民合唱祭とピアノ発表会、夜には中庭のクリスマス・イルミネーションに加えて、毎週日曜夜の定例夜神楽公演も行われ、ロビーや回廊は、クリスマス特別企画の大蛇(オロチ)との撮影会や映画上映会を終えたNPO主催の無料音楽ライブで賑わっていた。

クリスマスイブの特別企画として行われた大蛇との記念撮影
クリスマスイブの特別企画として
行われた大蛇との記念撮影

 ちなみに石見夜神楽は益田市内14社中で組織している神和会の団体による持ち回り公演である。当日出演社中代表の藤原澄男さんは、「競い合わないと進歩がないが、グラントワがそのためのいい場になっている。劇場でやることで若い女性などが訪れ、底辺の拡大にも繋がっている」という。25日には、コンテンポラリーダンス公演『テーパノン』に地元の木ノ口神楽社中が参加し、セッションを行うことになっていた。神楽は即興性があるので、一昨年8月に行われた「白井剛andアルディッティ弦楽四重奏団」公演にも、道川神楽社中が地元和太鼓奏者の今福優と参加していた。
  こうしたグラントワの現場指揮に当たっているのが、元石西県民文化会館館長として3年間事業の立て直しを行った後、いわみ芸術劇場館長となった山﨑篤典氏だ(センター長は澄川喜一氏)。長年、公立文化施設に関わる中で山﨑館長は「文化が地域に根づくためには地元のアーティストを活用することが重要」と感じ、文化会館時代に地元出身の田村拓男氏(邦楽の日本音楽集団代表)や合唱指揮の第一人者である栗山文昭氏らに呼び掛け、邦楽塾(2004年に島根邦楽集団が旗揚げされた)、合唱塾などを立ち上げた実績がある。いわみ芸術劇場はこうした事業を引き継いで運営されている。
  「美術館との連携を図り、また、地元の神楽や糸あやつり人形を刺激する創造事業にも取り組みたいと思っています。人材育成事業ではキッズを対象とした邦楽、合唱、ブラス(ジャズ)、ファッションショーの短期集中ワークショップを始めました。特に総合芸術であるファッションショーには可能性があると思っています。現在、友の会の会員約2,500人、コレクション展年内入場無料のパスポート会員約3,000人。ボランティア登録は約130人で、劇場受付、美術館などのワークショップの手伝い、映画企画、清掃など11グループに分かれて支えていただいています」と山﨑館長。さりげなくトイレに置かれたクリスマス飾りに、市民のこの施設に対する思いが表れていた。
  企画のユニークさで力を発揮しているのがファッションをテーマにして幅広い事業を展開している石見美術館だ。前述のコンテンポラリーダンス公演も実は美術館の事業で、諸芸術に親しむことを目的に普及事業として企画されたもの。この他、昨年度の「森鷗外と美術」展でのダンスワークショップと音楽劇、今年3月に行われる「モダンガールズあらわる。」展での遊佐未森の昭和歌謡コンサートなど。ロビーや回廊を使った無料イベントとして実施するものも多く、グラントワの大きな魅力となっている。
  劇場と美術館の運営主体が異なる、財団の主催事業にも会場使用料が必要といった状況の中で、中庭などの無料スペースを活用した無料関連イベントの開催、街宣車での宣伝、タクシーの運転手さんまで対象にした企画展の説明会、車で2時間圏内を対象にした広報、わかりやすいタイトルワークなど、できることはすべてやっての100万人達成─イブの夜、その一端を見た思いだった。

(坪池栄子)

●島根県芸術文化センター「グラントワ」
“グラントワ”はフランス語で「大きい屋根」の意味。センター長兼石見美術館館長は彫刻家の澄川喜一(日本芸術院会員/横浜市文化振興財団理事長)。
[開館]2005年10月8日
[施設]石見美術館(森鷗外ゆかりの作品、ファッション、石見の美術をコレクション)、いわみ芸術劇場(走行式音響反射板を備えた1,500人収容の大ホール、400人収容の小ホール、スタジオなど)、回廊、中庭、アートライブラリーなど
[住所]益田市有明町5-15
[設計]内藤廣建築設計事務所

●タイ×日本共同制作ダンス公演『テーパノン』+木ノ口神楽社中
『テーパノン』はタイのアーティストのピチェ・クランチェンが日本のオーディションで集まったダンサーたちと大阪に滞在して制作した作品。

 

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