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制作基礎知識シリーズVol.28
公益法人制度改革の影響A 文化財団における留意点

講師 片山正夫
(セゾン文化財団 常務理事)

●それは公益目的事業か?

 今回の改革では、曖昧な行政指導を排除するため、ルールをできるかぎり客観的に明文化することが目指されている。だから公益認定の基準も法律等に明記されている。これによると、新公益法人は公益目的事業を行うことを主たる目的とし、実際にその比率が50%以上でなくてはならない(*1)。
 では公益目的事業とは何か? これについても23の目的事項が法律で定められている(表1)。このどれかに該当し、かつ不特定多数の利益の増進に寄与するものであれば公益目的事業とされる。通常、公共ホールの運営の場合、事業目的そのものは表中の「文化及び芸術の振興を目的とする事業」に該当するだろう。問題は不特定多数の利益の増進に寄与するかどうかだが、これは事業ごとに分解してみていく必要がある。
 例えば、ホールの事業として、@貸館事業A公演事業B付帯事業を行っているとしよう。先ごろ発表された公益認定等ガイドラインの「チェックポイント」に沿えば、@は「施設の貸与」に当たるが、文化芸術の振興を目的として貸し出されているかどうかが公益性判断の分かれ目になる。例えば企業の株主総会や入社式などに貸し出したような場合は、その目的に沿わないので、公益目的外(収益事業等)である。ガイドラインでは、これらを貸し出しの際の取り扱いにおいて区別し、公益目的の貸し出しを優先するよう求めている。予約受付の先行や料金面での差別化など、目に見える形で両者が区別されていることが望ましいだろう。
 Aについては、いわゆる「買い公演」であれば「チェックポイント」にいう「主催公演」に、芸術家を雇用している館が自らの企画で行う公演は「自主公演」に、各々該当すると考えられるが、例えば館のプロデューサーが外部の芸術家を使って作品を制作し公演する場合、どちらに該当するかは不分明だ。ただいずれの場合も公益認定のポイントは、第一に、当該公演を「不特定多数のものの利益の増進に寄与することを主たる目的として位置付け、適当な方法で明らかにしているか」である。地域住民の誰もが公演の開催を知ることができ、そこへの参加の機会も開かれていることが重要だろう。また「自主公演」においては「質の確保・向上の努力」、「主催公演」においては「事業目的に沿った公演作品を適切に企画・選定するためのプロセス」がポイントに挙げられている。
 Bの付帯事業についていうと、併設の飲食施設やショップなどは基本的に「収益事業等」に区分されるべきものと考えられるが、例えば公演パンフレットの販売など、公益目的事業に付随している場合は、当局と協議の余地があるかもしれない。
 なお、ホールの運営が指定管理者の立場で行われていようと、行政からの請負事業として行われていようと、そのこと自体は問題にはならない。あくまで行っている事業の中身が問題となる。また上演される演目が多少“商業的”“娯楽的”内容であっても、それが住民のニーズに沿った広義の文化芸術であるという主張は可能であろう。ただそうは言っても、どこまでを文化芸術と見なすかについては、いずれ限界的事例も出てくるに違いない。公益認定等委員会では、そのような場合、外部の有識者や専門機関に諮問するなどの可能性も視野に入れているようだ。


●必ず赤字でなければいけないのか?

 認定基準でもうひとつ気になるのは、公益目的事業の収入が、実施に要する適正な費用を償う額を「超えないと見込まれる」ことを要件に挙げている点だろう(*2)。認定後、実際に超えてしまうと、これは認定取り消し要因となる(*3)。平たく言えば、「公益目的事業で利益をあげるべきではない」ということである。これについての具体的な判定は、二段階に分けて行われることになる。
 第一段階では事業ごとの損益をみる。が、そもそも公益目的事業はどうやって「1つ、2つ……」と数えればよいのだろうか? この点については、公益目的事業の中であれば類似するものどうしでまとめてよいことになっている。とりあえず先のように、「チェックポイント」での事業区分を参考にまとめてみるとよいだろう。もちろん、ここに挙がっている区分は例示であり、これがすべてだと考える必要はない。また例えば公演に直接関連するワークショップなどは、公演事業に含めてしてしまって問題ないだろう。
 さてそうした上で、各々の事業について収支を対照させる。あくまで事業単位であり(公演単位ではない)、複数の主催公演を行っている場合、主催公演事業全体としてどうか、ということである。もしも収入が費用を上回る場合は、剰余金を、将来その事業で支出するための「短期の特定費用準備資金」という扱いにすることで、収入超過を回避することができる。ただしべらぼうなギャラを支払って経費を増額するなどのやり方は、「適正な費用」に抵触するので不可である。
 第二段階では各事業の収入と費用を合計した上で、収入に、収益事業等の利益(*4)を加える。また、事業を指定しない補助金、寄付金や、館運営全体に係るコストなど、公益目的事業のうち特定の事業に関連づけられない収益・費用もここで合算する。仮にこの段階で剰余金が生じる場合は、周年事業等のための(長期の)特定費用準備資金に積み立て、これを当期の費用とすることで収支を均衡させることができる。それでも余剰金が出る場合は、「資産取得資金」(*5)や「公益目的保有財産の取得資金」への繰り入れに充てることができる。ただ、それらは翌期以降取り崩した時点で今度は収入となるので、同じ調子でやっていると再び収入超過となる可能性もある。必要に応じて事業を拡大したり、料金を値下げしたりという調整を図っていくべきだろう。

●組織の考え方について

 ところで、前回述べたように、今度の制度変更では法人の機関についても考え方が変わる。例えば理事会は、実質的な執行機関としての役割が期待されている。したがって、地域の“名士”を名前だけずらりと並べた理事会では運営に支障をきたしてしまうだろう。登記すべき法律上の理事は、むしろ慎重に数を絞るくらいがよいかもしれない(顧問、○○委員といった、法律にない役職は、各法人で自由につくって何ら問題ない)。このほか、自治体の関係者が法人の理事を兼任した場合、当該自治体と何らかの取引を行う際、利益相反となる可能性もあるので注意が必要だ。
 一方財団の評議員は、これまで理事長や理事会の諮問機関という位置づけであった。しかし新制度では、財団設立者の意を体して理事(会)を監督・牽制し、理事・監事等の選任・解任を行い、定款の変更など最重要事項の決定を行う立場である。その意味では、名称こそ同じだが全く別のものと考えてよい。相応しい人選も自ずと変わってくるに違いない。

 まっとうな活動を行ってきた既存の公益法人にとって、新制度下における公益社団・公益財団への移行は、さほど困難を伴うものではないはずだ。というより、法の趣旨からして、そうであってはならない。むしろ今見てきたように、移行の準備作業は、現状の各事業のありようをはじめ、人的体制、資産等をもういちど点検する好機ともとらえることができる。ぜひこの機会に、自らのミッションと将来に向けた展望を再確認してみてはどうだろうか。
 また、制度やガイドラインが実際の法人運営の実情に合わない場合は、現場の側から積極的に説明をしていくべきだ。主務官庁の指導に対し、どうしても受身になりがちだった過去とは決別し、制度そのものを全員で育てていく方向に、各々が発想を転じるべきだろう。

表1 公益的事業

1.学術及び科学技術の振興
2.文化及び芸術の振興
3.障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援
4.高齢者の福祉の増進
5.勤労意欲のある者に対する就労の支援
6.公衆衛生の向上
7.児童又は青少年の健全な育成
8.勤労者の福祉の向上
9.教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発展に寄与し、又は豊かな人間性を涵養
10.犯罪の防止又は治安の維持
11.事故又は災害の防止
12.人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶
13.思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護
14.男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進
15.国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力
16.地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備
17.国土の利用、整備又は保全
18.国政の健全な運営の確保に資する
19.地域社会の健全な発展
20.公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上
21.国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保
22.一般消費者の利益の擁護又は増進
23.前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの


●主な公益認定基準
◎公益目的事業を行うことを主たる目的としているか
◎役員等の特定のものに特別の利益を与える事業を行っていないか
◎公益的事業実施に必要な経理的・技術的能力を有しているか
◎公益目的事業に係る収入が、その実施に要する適正な費用を超えないか
◎収益事業が、公益目的事業に支障を及ぼすおそれがないか
◎公益目的事業比率が百分の五十以上の見込みか
◎遊休財産が一定額を超えない見込みか
◎同一親族等が理事または監事の三分の一以下か
◎適正な役員報酬基準を制定し公表しているか
◎他の団体が支配可能となる株式等を保有していないか
◎公益認定取り消し等の場合、公益目的で取得した財産の残額相当額を、類似の事業を目的とする公益法人等へ贈与する旨を定款で規定しているか


*1 認定法5条8号。なおこの場合の比率とは、費用で見た割合のことである。
*2 同5条6号。
*3 同14条、29条2項。
*4 収益事業等の利益はその50%以上を公益目的事業に繰り入れることが義務付けられている=同18条4号。厳密には50%繰り入れる場合と50%以上繰り入れる場合とは扱いが異なるが、ここでは50%の場合について説明している。
*5 建物の修繕引当金を含む。

●内閣府公益認定等委員会ウェブサイト「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/guide/guide.html

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