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今月のレポート

横浜市中区
11月号-No.163

黄金町バザール


 横浜市中区初音町、黄金町、日ノ出町のいわゆる「黄金町」一帯は、かつて、違法な特殊飲食店が立ち並ぶ風俗街だった。そのイメージを変え、新たな街の可能性を探るアートフェスティバル「黄金町バザール」が9月11日に開幕した。これは、横浜市の創造都市政策の一環として行われている総額1億円(*)をかけたプロジェクト。京浜急行(京急)の高架下に新設された2つのアートスタジオと、数カ所の空き店舗を横浜市が借り上げて提供するなどした約20カ所を舞台に、5カ国29組のアーティストとショップが参加。展示やワークショップなどが行われている。商業や飲食も含めた街の魅力を創出し、多くの人々が交流する場を生み出す試みの象徴として「バザール」というネーミングになった。

京急日ノ出町駅〜黄金町駅間の高架下にある日ノ出スタジオ
京急日ノ出町駅〜黄金町駅間の高架下にある日ノ出スタジオ

 京急線日ノ出町駅で下車し、大岡川沿いに出ると、高架下につくられた「日ノ出スタジオ」が目に飛び込んでくる。飯田善彦横浜国立大学大学院教授と、同建築都市スクール「Y-GSA」が設計した、3棟から成るガラス張りの建物だ。ファッションブランドとアーティストのコラボレーションショップなどが入居し、おしゃれな雰囲気を醸し出している。一方で、周囲には特殊飲食店の空き家が残り、かつての街の記憶をかすかに留めている。川沿いの出店ではアーティストがつくった小物などが売られているが、その脇を何度も警官がパトロールし、独特の緊張感が漂う。
 「こうした町の雰囲気もトータルに味わってほしい。横浜トリエンナーレと違い、こちらはむしろ鑑賞という行為から離れ、自然にアートに向き合える構成になっています。子どもからお年寄りまで楽しめる作家や作品を選びました」と黄金町バザールのディレクターで、福岡の街中で美術展を行うミュージアム・シティ・プロジェクトを主導してきた山野真悟さんは言う。

黄金スタジオに出展したアーティスト福本歩の作品。“骨董品もどき”の即売も
黄金スタジオに出展したアーティスト福本歩の作品。“骨董品もどき”の即売も

 黄金町駅寄りにある「黄金スタジオ」は建築家ユニット・みかんぐみの曽我部昌史さんが教授を務める神奈川大学大学院工学部の設計。内部は土間が広がり、立ち寄った人々が縁側に腰掛けてくつろげるつくりになっている。その一角ではお年寄りのサポーターが訪れた観客と言葉を交わしていた。
 このイベントの背景にあるのが、地域の再生に向けて、これまで住民が強い意志で行ってきたさまざまな取り組みだ。約100店だった違法飲食店が周辺に拡散し250店に膨れ上がったのが2002年頃。不法就労の外国人が多く流入し、人身売買なども取り沙汰された。住民が転出し始めたのがきっかけで、2002年に風俗拡大防止協議会、翌年には初黄・日ノ出環境浄化推進協議会(愛称Kogane-X)が発足。05年には神奈川県警と伊勢佐木警察署が合同で対策本部を設置、24時間体制で取り締まりを強化した(バイバイ作戦)。摘発と警戒で売春宿は一掃されたが、同時に人通りも途絶えた。加えて権利関係が複雑なため、土地売買が進まず、約150軒の空き店舗が残り、さながらゴーストタウンのようになってしまった。推進協議会はまちづくり推進部会を発足し、横浜市は空き店舗を転用するプロジェクトを始める。地域防犯拠点「ステップ・ワン」のほか、NPO法人BankART1929が運営するアーティスト・イン・レジデンス拠点「BankART桜荘」、今回の実行委員長である鈴木伸治横浜市立大学准教授の研究室学生とKogane-Xの共同運営によるまちづくり拠点「Kogane-X.Lab」などで、行政とタッグを組みながらさまざまな企画を継続させてきた。
「誰もが安全・安心に暮らせる町になってほしいと願って活動してきました」とこの地で100年続く落花生店を営み、同協議会の副会長を務める谷口安利さんは言う。「垣根を越える力をもっているのがアートのいいところ。アートを介して街の内外の人々が交流しているのが嬉しい。こうして少しずつ、変化していけばいいと思います」。
 横浜市開港150周年・創造都市事業本部の仲原正治さんは「横浜市はスタジオを持ち主の京急から今後10年間借りる予定です。それは市が長期的にこの町に関わるという意味でもあるのです」と語る。「バザール以後、アーティスト・イン・レジデンスなど行っていく予定ですが、とにかく地元の人々と絶えず意見交換しながらやっていきたい」(山野さん)。
 アートが街にどう作用していくのか。今後の変化を見守っていきたいと思った。

(ライター・土屋典子)

●黄金町バザール
[主催]黄金町バザール実行委員会
[共催]横浜市開港150周年・創造都市事業本部、財団法人横浜市芸術文化振興財団
[協力]Kogane-X(初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会)、BankART1929、急な坂スタジオほか
[日程]9月11日〜11月30日
[会場]横浜市中区・京浜急行本線日ノ出町駅〜黄金町駅間の高架下新設スタジオ、大岡川ほか周辺各所

*横浜市が4500万円、企業協賛が300万円、内閣府が地方再生の取り組みを抜本的に進めることを目的に今年度創設した「地方の元気再生事業」から2800万円、その他助成金など。

 

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