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制作基礎知識シリーズ番外編
アートNPOの最新状況

講師 樋口貞幸
(NPO法人アートNPOリンク事務局長)

 1998年12月に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されてから満10年になった。この間、全国のNPO法人の認証数は741団体から3万5,659団体へと飛躍的に増加し(図1 参照)、定款に「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」<第四号>を含むNPO法人の数も2007年には1万団体を超えた(内閣府データ:2008年9月現在)。  ただし、<第四号>を掲げる法人が必ずしも芸術や文化に関わる活動を行っているとは限らないため、アートNPOリンクでは2003年からホームページなどの独自調査を行い、<第四号>を掲げる法人から学術とスポーツの団体を除き、広義の意味で芸術、文化、生活文化などの活動を行っているNPO法人を抽出、アートNPOとしてカウントしてきた。その結果が図1のとおりで、アートNPOと思われる法人の数は、2007年10月1日〜2008年9月30日の1年間だけでも369法人が設立されている。2003年に指定管理者制度が施行されたのにともない、こうした団体が公立文化施設の運営を行う例も増えてきた(地域創造の「平成19年度地域の公立文化施設実態調査」によると、2007年現在、58のホール、美術館、練習場・創作工房がNPO単独で運営されている)。  今回は、こうしたアートNPOの最新状況について紹介したい。


●アートNPOの現状

 これまで私が事務局長を務めているアートNPOリンク(データ欄参照、以下リンク)では、アートNPO数の把握のほか、文化庁からの受託により2006年、2007年の2カ年にわたりアンケートによる実態調査を行った(*1)。2006年の調査では、1,730団体(*2)を対象に社員数、法人収入、職員内訳(常勤、非常勤、給与の有無など)、活動を推進する上での課題、活動を実施する上でのパートナー、力を入れている活動などについて調査を行った(有効回答率10.6%)。
  組織でみると、アートNPOの約半数が常勤の職員ゼロまたは1人だけ、非常勤を入れても3人以下で運営されており(図2)、有給職員のいる団体はその内約4割、たとえ有給であっても3割が年間50万円未満、8割以上が年間250万円未満であることが明らかとなった。また、法人収入でみても、約半数が年間収入500万円以下であり、ボランティア的な組織実態が明らかとなった。
  パートナーについては、行政(66.3%)、民間(56.8%)、学校(40.2%)、他のNPO(44.0%)となっており、色々な団体と連携して活動している実態が明らかとなった。また、力を入れている活動については、公演・展覧会・映写会などの開催(63%)、市民向けワークショップなど普及事業(42.4%)、アーティストや芸術団体への支援・発表機会の提供(37.5%)、まちづくり・地域コミュニティの活性化(36.4%)、子ども向け事業(31.0%)、情報発信(16.3%)、文化施設の運営(15.2%)、その他(15.2%)、調査研究コンサルティング(10.3%)、政策提言・アドボカシー活動(3.8%)の順だった。アートNPOの活動を社会に定着させていくために重要とされているアドボカシー活動に力を入れている団体はごくわずかであり、今後の課題として注目される結果となった。

*1 アンケート調査の対象はアートNPO法人およびリンクの会員となっている団体(法人格をもたない団体を含む)。なお2007年については、アートNPOに対する助成金制度についての実態調査を行った。

*2 定款に「学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動」を掲げている団体のうち、芸術や文化に係る活動をしていると思われるNPO法人、および主たる活動領域は異なっているが、芸術や文化に関わりのある活動をしていると思われる法人を抽出している。


●10年間の変化と最新動向

 この10年の最大の変化は、アートNPOの団体数の増加である。加えて、アートそのものを振興するのみならず、コミュニケーションや地域活性化の起爆剤としてアートをとらえるという認識が高まってきたことが挙げられる。それにともないアートNPOやアーティストが社会に果たす役割が明確になり、さまざまな機関、団体と協働する機会も増えて、アートNPOが社会的な存在として成長してきたように思う。その結果、国際交流基金が毎年顕彰している地球市民賞にアートNPOが3年連続で選ばれる快挙ともなった。
  このように、ここ10年でアートNPOが社会的な存在として成長するにつれて、その地域活動も活発になってきた。京都のNPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)はコミュニティダンス(前号レター参照)の振興を提唱し、大阪のNPO法人こえとことばとこころの部屋(COCOROOM)は就業困難者の就労支援や、ニートやフリーターなどの若者に対するエンパワメントにアートを活用する活動を始めている。
  また、アートを主たる目的としていないNPO(育児支援団体、福祉団体、教育団体、環境団体など)がアートの力に注目するようにもなってきた。例えば、沖縄の育児支援団体であるNPO法人うてぃ.らみやは、わらべ歌や影絵遊びによる創造活動を子育てに活用しているし、教育をキーワードに企業・学校・学生を繋ぐ事業開発を行っているNPO法人企業教育研究会(ACE)は、京都のNPO法人子どもとアーティストの出会いが実施している「ダンスで、理科を学ぼう.教科学習とワークショップでのばす学力と表現力」に着目し、研究テーマに取り上げた。ほかにも、別府で温泉を核としたウェルネス産業を開発し、地域活性化などに取り組むNPO法人ハットウ・オンパクは、NPO法人BEPPUPROJECTと協働し、創造産業の開発も視野に入れ、国際規模の現代アートフェスティバルを開催する。
  こうした広がりの中で、これまでアートとは縁のなかった多彩な市民がアートプロジェクトやアートNPOの活動に積極的に参画するようになっている。特筆すべきは、こうした取り組みが、市民が社会に参画できるNPOという仕組みができたことにより、市民イニシアティブによって行われていることだ。こうした萌芽を地域の財産とし、大きく育てるには、NPOに対する社会的な投資の仕組みを早急に整えていく必要があるように思う。
  そのために地方公共団体が果たすべき役割は大きいし、NPOの側も新しい公共としての役割を果たせるように、マネージメントやアカウンタビリティーの向上に務める必要があるだろう。さらに言えば、NPOで働くことがキャリアに組み込まれるような多様でインクルーシブな新しい社会を、私たちはつくっていかなければいけないということなのだと思っている。

●NPO法人アートNPOリンクの活動
2006年にNPO法人認証を受けた、アートNPOのネットワーク組織。全国規模のフォーラムの開催、アートNPOの調査研究、データブックの発行などを行う。
[設立の経緯]
  全国でNPOによるアート活動がスタートしてから数年後には、こうした活動を社会に定着させていくためには、個々の活動の違いを超えて連携していくことが必要だとの認識が生まれていた。アートNPOの先駆けのひとつであるNPO法人アートネットワーク・ジャパンの市村作知雄、メセナ活動の観点から芸術文化活動を支援してきたアサヒビール芸術文化財団事務局長の加藤種男、アートイベントのボランティアコーディネートを行うアートスタッフネットワーク代表の樋口貞幸が呼び掛け人となり、全国で活動するアートNPOの代表者による実行委員会を組織して、2003年10月に「第1回全国アートNPOフォーラム in 神戸」(雑誌「地域創造」15号参照)を開催。
  神戸フォーラムにはアートNPO法人47団体、任意団体40団体など全235人が参加し、現代社会が抱える課題解決にアートが不可欠な存在であることを確認し、「この力を広く社会にアピールしていく」というステートメントを採択。これをきっかけにして、フォーラムの継続とステートメントの実現にむけて、アートNPOをゆるやかにネットワークするプラットフォームとして「アートNPOリンク」(2006年NPO認証)を設立。
  特にフォーラム(全国各地のアートNPOなどが実行委員会を組織して誘致し、アートNPOリンクとの共催で実施)は、開催地におけるアートNPOの信頼度を高め、彼らの活動をバックアップすることに繋がる重要な役割を果たしている。例えば、2005年に開催した前橋フォーラムでは、会場として数十年空きスペースになっていた歴史的建造物を使用。それがきっかけとなり建物の文化財認定に繋がった。また、NPO法人BEPPU PROJECTが、今年の4月〜6月に別府で開幕する国際現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の環境整備を目的として2006年にフォーラムを誘致するなど、フォーラムが突破口となって地域に新たな動きが生みだされるようになってきた。
  こうしたアートNPOの最新の活動方針として、2007年の第7回淡路島フォーラムでアート議定書を策定。その主な内容は、「市民が主体的に芸術に参画する仕組みづくりに取り組む」「芸術文化が地域創造の起爆剤となるよう多様な分野の組織や機関、市民との連携に取り組む」「アートNPOの経営強化と芸術文化支援制度の効果的な改革に取り組む」「ネットワークの強化によりアートNPOの相互支援と社会環境づくりに取り組む」の4点で、地域や社会との協働をアピールしたものとなっている。


図1 全国のアートNPO法人設立数



注)アートNPO法人数の集計について
内閣府ポータルサイト(http://www.npo-homepage.go.jp/portalsite.html)および、各都道府県のNPO情報ページより、認証団体の一覧、またはサイトに掲載されている情報よりアートNPOに該当すると思われるものをピックアップし、各団体ホームページに掲載の活動内容なども参考にアートNPO法人数を集計した。
2008年度の総数が急増しているように見えるのは、アートNPOとみなすための活動条件を緩和し、2007年度9月30日以前に遡ってピックアップした法人も追加したため。調査結果の詳細については、アートNPOリンクのHP(http://arts-npo.org/)参照。

図2 日常的に業務に従事する人数

図3 法人収入

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