地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

4月号-No.168
2009.4.10(毎月10日更新)

今月のニュース

第9回地域伝統芸能まつり

箱根仙石原湯立獅子舞(神奈川県箱根町) 写真:箱根仙石原湯立獅子舞(神奈川県箱根町)



 日本各地で脈々と受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介している「地域伝統芸能まつり」が、2月21日、22日の両日、東京・渋谷のNHKホールで開催されました。9回目となる今年は、私たちの祖先が天や地に捧げてきた無病息災や家内安全、五穀豊穣などのさまざまな“祈り”をテーマに、全国から10の地域伝統芸能と4つの古典芸能が集い、延べ5,000人の観客を魅了しました。
 また、今年もホールホワイエでは、全国の地域伝統芸能の映像記録を発信するウェブサイト「地域文化資産ポータル」(http://bunkashisan.ne.jp/)コーナーを開設するとともに、まつりに参加した地域の名産即売コーナーやそれら地域の観光文化情報を掲載したパンフレットの設置など、地域色豊かで賑やかな催しとなりました。


●見えない稲の聖霊が力士を圧倒!

 1日目のオープニングを飾ったのは、愛媛県今治市大三島町の「一人角力(ひとりずもう)」です。拍子木の音とともに緞帳が上がり目に飛び込んできたのは舞台上にある土俵。その土俵に上がった力士は行司の差す軍配と掛け声につれて、目に見えない精霊と三本勝負で、エアギターならぬ“エア相撲”を行います。力士が独りで悪戦苦闘している姿は真剣であればあるほどユーモラスで、客席の笑いを誘っていました。1勝1敗で迎えた最後の一番、稲の精霊が力士を豪快に投げ飛ばし、豊年満作が約束されて、今年の「まつり」が目出度く開幕しました。
  今回が初登場である神奈川県からは、獅子が湯立てをするという全国的にも珍しい「箱根仙石原湯立獅子舞」が登場しました。湯立てとは、熱湯が煮えたぎった釜に浸した笹で湯を振りまき、無病息災を祈る神事。獅子頭をかぶった神楽師が客席にも湯を振りまき、観客も共に御利益にあやかりました。
  「湯立ての作法は代々跡継ぎである長男によって継承されてきました」と保存会会長の勝俣清治さん。保存会では子どもたちが普段から笛や太鼓などのお囃子の練習も行っており、今回の舞台では中学生と高校生が普段の稽古の成果を披露するなど、伝統が世代を超えて受け継がれていく一端を垣間見た思いがしました。
  同じく初登場となる高知県からは「山北棒踊り」が登場し、1対1の打ち合いと複数人での演舞を披露。保存会では、後継者育成を目指して小学生への指導を始めたとのことで、「棒を使って踊るのは格好いい」という6年生2人が大人に混じって背丈以上ある木棒を軽々と扱い、喝采を浴びていました。
  初日のハイライトは、勇ましい掛け声とともに、高さ6m のはしごの上でさまざまな演技を命綱なしで披露した「加賀鳶はしご登り」です。はしご登りは、加賀とびはしご登り保存会によって継承されていますが、金沢市消防団1,100人全員がその会員であり、消防訓練と保存会の活動を並行して行っているとのこと。今回は、はしごに乗り始めて12年という登り手によって約20分間で27種類の手に汗握る演技が披露されました。


一人角力(愛媛県今治市)
一人角力(愛媛県今治市)


●屋根の上で躍動する9頭の虎

 2日目のオープニングを飾ったのは、650年の歴史をもつ宮城県加美町の「火伏せの虎舞(とらまい)」です。中国の「雲は龍に従い、風は虎に従う」という故事にならって虎舞を奉納して火伏せを祈願したのが始まり。今では毎年4月29日に50頭の虎(2人1組)が出て、勇壮な太鼓に合わせて獅子舞ならぬ“虎舞”を披露しながら街中を練り歩きます。今回は9頭の虎が登場。ラストには本番同様、9頭が揃って大屋根に上り、お囃子に乗って踊る風情は格別のものでした。
  伝統行事・伝統芸能の宝庫である京都からは「六斎念仏踊り」が登場。鉦や太鼓を打ちながら念仏を唱えて歩く平安時代の「踊り念仏」が今に伝えられたもので、幾つもの団体が京都のお寺を中心に活動しています。今回出演したのは京都中堂寺六斎会でしたが、四ツ太鼓、豆太鼓を使った洗練された太鼓技には驚かされました。文化庁の「伝統文化こども教室事業」により小学生のグループも生まれるなど後継者も育っているとのことで、今回も93歳の長老と共に3歳、5歳、11歳の幼い三兄弟が達者な技を披露していました。
  地域伝統芸能まつりの柱のひとつが古典芸能です。今回は、能を代表する『葵上(あおいのうえ)』とキノコが増殖する不思議な狂言『菌(くさびら)』の古典に加え、東儀俊美さんが数百年ぶりに覚え書きから復元した舞楽『採桑老(さいしょうろう)』と梅原猛さんの新作能『河勝(かわかつ)』が上演されました。
  梅原さんは「能の研究をしてきた成果として、世阿弥の祖といわれている河勝を能にしたいと思った」と言い、梅原さんの分身である平成の拗ね者(茂山千之丞)が神社で河勝の怨霊と会うところから能が始まるという斬新な作品となっていました。
  2日間の締め括りとなったのが岐阜県美濃市の「花みこし」です。花みこしは、和紙で栄えた美濃らしく、ピンクの和紙でつくった大量の花びらを4〜5メートルの割竹にさして何十本も花のシャワーのように飾った御輿のこと。2基の花みこしが、「オイサーオイサー」の掛け声とともにNHKホールを練り歩き、春を呼ぶ華やかなフィナーレとなりました。


火伏せの虎舞(宮城県加美町)
火伏せの虎舞(宮城県加美町)


●第9回地域伝統芸能まつり
[会期]2009年2月21日、22日
[会場]NHKホール(東京都渋谷区)
[主催]地域伝統芸能まつり実行委員会、財団法人地域創造
[実行委員]梅原猛、鎌田東二、香山充弘、三枝成彰、下重暁子、鈴木健二、瀧野欣彌、中沢新一、林省吾、日向英実、山折哲雄、山本容子 *五十音順
[後援]総務省、文化庁、NHK

●出演団体等
第1日:「一人角力」(愛媛県今治市)、「因幡の傘踊り」(鳥取県鳥取市)、「箱根仙石原湯立獅子舞」(神奈川県箱根町)、「銀鏡神楽」(宮崎県西都市)、古典芸能・能『葵上』(塩津哲生ほか)、「真野音頭」(新潟県佐渡市)、「加賀鳶はしご登り」(石川県金沢市)、「山北棒踊り」(高知県香南市)
第2日:「火伏せの虎舞」(宮城県加美町)、「隠岐国分寺蓮華会舞」(島根県隠岐の島町)、「六斎念仏踊り」(京都市)、古典芸能・狂言『菌』(山本東次郎ほか)、古典芸能・舞楽『採桑老』(東儀俊美、十二音会)、古典芸能・新作能『河勝』(作:梅原猛/大槻文蔵、梅若玄祥、茂山千之丞ほか)、「花みこし」(岐阜県美濃市)



ステージラボ徳島セッション報告 2009年2月3日〜6日

写真:
左上・「阿波人形浄瑠璃を体験しよう!」(共通プログラム)
右上・「阿波おどりをたのしもう!」(共通プログラム)
左下・山田うんさんのワークショップ「身体と頭を解放する」(文化政策企画・文化施設運営コース)
右下・田村緑さんの「体感しよう 音楽編」(自主事業コース)



 今回のステージラボは、阿波踊りや人形浄瑠璃で有名な徳島県で開催されました。会期は2月3日から6日までで、会場となったのは徳島県郷土文化会館です。
  徳島県には、神社の境内などに209棟もの農村舞台が残っています。その内、208棟が人形芝居用の舞台で、それは日本に現存しているものの9割以上に当たります。県ではこうした地域文化資源を活用した「文化立県とくしま」の推進を目的に、平成20年度に2億円の基金を創設。飯泉嘉門知事を会長とした推進会議を設けて、「人形浄瑠璃」「阿波踊り」「藍染め」「日本初演が行われた第九」の4つの柱で事業を進めています。新年度には、農村舞台などを活用した「阿波人形浄瑠璃月間〜ジョールリ100公演」(2009年10月3日〜11月3日)を開催する予定です。
  今回のラボでは、こうした徳島らしい伝統芸能体験プログラムが企画されたほか、指定管理者制度への移行を経て、改めて公立ホールやアウトリーチの意義について考えてみる機会ともなりました。共催者として全面協力をいただきました徳島県、財団法人徳島県文化振興財団の皆様には、心よりお礼申し上げます。


●アウトリーチがテーマ

 今回のラボでは、いずれのコースも初日の自己紹介からコーディネーターの問題意識が反映したプログラムとなりました。
  環境の激変が続く今だからこそ「改めてホール運営について考え、課題を共有しよう」というテーマのホール入門コースでは、初日からお互いの課題を出し合うという厳しい現実からスタート。自主事業コースは、日本クラシック音楽事業協会の丹羽徹さんが初コーディネーターを務め、自分の好きな曲をかけてその良さをみんなに伝えるという面白い試みが行われました。クラシックだけでなく、ポップス、民謡、演歌など「選ぶのが大変だった」という1曲に託されたさまざまな思いが溢れ、音楽事業を行う原点を共有する貴重な時間となりました。
  文化政策企画・文化施設運営コースは、考える前にまずは頭と身体をほぐしてもらおうと、山田うんさんによるコンテンポラリーダンスのワークショップが行われました。『スーダラ節』や『サザエさん』などコミカルな音楽に乗せて、跳びはね、おしりで歩き、徹底的にウォームアップ。最後は二人一組になって「じゃんけん」や「あっちむいてホイ」という身近な手遊びをアレンジした“全身じゃんけん”や“最大級あっち行こうホイ”などで汗を流しました。「ダンスは身体のド真ん中のエクステンションだと思っています。ド真ん中から信号を出すことによって、普段身体を動かしているかどうかに関わらず、あり得ないほど身体が動く」とうんさん。
  今回のラボでは、全コースでアウトリーチをテーマに取り上げました。音活登録アーティストOBのピアニスト・田村緑さんによる小学生向けのモデル・プログラムを実際に体験し、それぞれの観点から講義が行われました。このモデル・プログラムは、子どもたちが練習している曲を取り上げた演奏と楽曲解説、楽器の体験的学習(ピアノを解体して構造を見せ、響板の下に潜るなどして体験的学習を行う)、子どもと演奏家を近づけるコミュニケーション(夢について語る)、鑑賞(音楽絵本『スイミー』)、参加(演奏技術がなくても演奏できるハンドベルを用いた共演)を1コマで行うという、考え抜かれたものです。
  自主事業コースで行われた児玉真地域創造プロデューサーによる講義では、「公立ホールの役割は自治体の文化政策の具現化だとすると、ホールの中だけで事業は完結しません。ホールが活動していくことによって生活が変わるような、ホールが出来て良かったと思えるような恩恵を地域に広げるには、ホールがアートセンターとして開かれた事業を行う必要があります。アウトリーチはそのためのアートの側からの働きかけであり、“使える(有効な)”形式です」と整理されていました。
  この他、ホール入門コースでは、国指定重要文化財の犬飼農村舞台に出掛け、保存会の指導で襖カラクリ(人形浄瑠璃の背景画を転換する仕掛け)の操作を体験したり、文化政策企画・文化施設運営コースでは、PFIの建設と直営による事業運営で注目を集めている福島県いわき市いわき芸術文化交流館アリオスについて学ぶなど、いつもながらにバラエティに富んだカリキュラムとなりました。


●徳島の心にふれる?阿波踊りと浄瑠璃体験

 ステージラボ恒例の共通プログラムで取り上げたのは、もちろん徳島名物の阿波踊りと人形浄瑠璃です。阿波踊りの指導をしていただいたのは、阿波おどり振興協会・徳島県阿波おどり保存協会合わせて33連ある内で、囃子の実力にかけては右に出るものがないという娯こじゃへい茶平の方々。男踊り、女踊り、女ハッピ踊り、笛、鉦、太鼓に分かれて稽古を行いましたが、腰を落として地をはうように進む男踊り、手を高く掲げ半身にそらして優雅に進む女踊りの魅力に、参加者はみんな虜になっていました。また、人形浄瑠璃は、阿波十郎兵衛座と阿波人形浄瑠璃研究会青年座の方々に指導していただき、『恵比須舞』『三番叟』『傾城阿波鳴門』のさわりを稽古しました。
  大ホールで受講生による発表を行った後、指導していただいた3団体の本番を鑑賞。フィナーレ、阿波踊りが描かれた緞帳が上がると、絵から抜け出たかのような総勢60名の娯茶平連が登場し、迫力あるパフォーマンスを披露。まさに徳島の心に触れた、贅沢な共通プログラムとなりました。


●ステージラボ徳島セッション カリキュラム


●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
津村卓(地域創造プロデューサー)
◎自主事業コース
丹羽徹(社団法人日本クラシック音楽事業協会事務局長)
◎文化政策企画・文化施設運営コース
吉本光宏(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室長)

●ステージラボに関する問い合わせ
芸術環境部 尾形尚子
Tel. 03-5573-4076

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