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今月のレポート

奈良県奈良市
4月号-No.168

奈良県立図書情報館「劇的☆めくるめく図書館」


奈良県立図書情報館
奈良県立図書情報館

 2010年に遷都1300年祭を迎える古都・奈良に、ユニークな活動で県外からも注目されている奈良県立図書情報館がある。開館3周年記念イベントは、なんと演劇公演『劇的☆めくるめく図書館─ならノれきしデたわむれロ』。劇団カムカムミニキーナ主宰の松村武さんが作品監修・総合指導を行い、公募で募った市民約60人が出演するという型破りな企画だ。  



館内各所でパフォーマンスが繰り広げられた 撮影:山下里加
館内各所でパフォーマンスが繰り広げられた 撮影:山下里加

 観客は4つのグループに分かれ、館内を移動しながら古代の冒険活劇やコミカルな王朝恋愛絵巻など短い4本の時代物語を見て回る仕掛け。上演場所も、受付カウンター前や雑誌コーナーの一角など図書館そのままの状態に暗幕を張っただけの“舞台”だが、階段や本棚などを活かした演出で日常の中の非日常が楽しめた。ラスト、観客や出演者全員が揃った「めくるめく宴〜それから1300年後の風景〜」では、4つの物語に仕込まれていたキーワードが繋がる構成で、話題の「せんとくん」「まんとくん」も登場し、記録することや伝えること、書物に記すことの大切さを問いかけるフィナーレへと昇華されていった。終演後、5歳から76歳の演劇初心者たちは、万雷の拍手を浴びて誇らしげに観客に向かって礼をした。

館内各所でパフォーマンスが繰り広げられた 撮影:山下里加
館内各所でパフォーマンスが繰り広げられた 撮影:山下里加

 奈良出身の松村さんは地元の郡山市で演劇ワークショップを開催しており、そこに同館の担当者が来たことが依頼のきっかけになった。「図書情報館からのオーダーは、『演劇で何かやってください』だけでした。だったら前例のない事尽くしをしようと思った」と松村さん。4つの物語も4カ月かけて市民と協働でつくり上げた。「奈良県民は保守的ですが、いざという時の跳躍力はすごい。これを機に表現することの面白さに目覚めてほしい」と語った。

 奈良県立図書情報館は、従来の図書館サービスに加え、行政文書などを保管する公文書館、そして情報発信基地という3つの機能を備えた施設として計画され、館長に民間から奈良在住の歴史地理学者である千田稔氏を招聘して2005年に開館した。千田氏は「殻を破る図書館」を提唱し、自らもゲストと対談する「図書館劇場」という連続レクチャーを開催している。
  「殻を破る図書館」は、事業計画の中にも具体的に反映されており、通常の図書館機能・サービスを充実させる事業と並んで、「既存図書館の概念を超える企画事業」が明記されている。さらにそれらの事業を推進する企画・広報戦略グループが設置され、嘱託職員を含む6名が従事している。“殻を破る企画”として本年度は演劇、昨年度はファッションショーを開催。その他、ピアノやチェロのリサイタル、NPO法人との協働によるネットショップ支援、経営相談会、医療・健康相談会などを開催してきた。
  「文化、経済、福祉、スポーツなどすべてのジャンルで本が出版されている。図書館は、あらゆる分野と連携できるのです」と副館長の尾登政司さんが言うように、随所に図書館ならではの工夫が盛り込まれている。例えば今年1月の働き方研究家の西村佳哲さんがファシリテーターを務めたトークセッション「『自分の仕事』を考える3日間」(*)では、配付資料にゲストの著作と推薦図書一覧と、同館が所蔵する関連図書一覧が添付された。また、会場では奈良の書店が出張販売し、本と出会う機会にもなっていた。
  一方、企業との連携も盛んで、今回の『めくるめく図書館』も実行委員会を立ち上げ、同館と複数の企業などが負担金を出して実施。「自分の仕事」では、ホテル日航奈良と提携した宿泊プランをつくり、3日間で全国から延べ51人が宿泊した。同ホテルに対しては、宿泊者向けに館長の推薦図書を貸し出す事業も行っている。
  これらの活動の背景には、指定管理者制度の導入を意識した危機感がある。「図書館は直営で継続的かつ安定的な運営が望ましいと思っていますが、机上の空論では説得力がない。積極的に存在意義を示していかなくては」と尾登さん。「だからこそ、上がってきた企画にブレーキをかけずにチャレンジしています。おかげさまで入館者数も右肩上がりで、昨年10月に150万人目のお客様をお迎えしました」。
  古都で未来を志向する図書館の歩みを見守りたい。

(アートジャーナリスト・山下里加)

●平城遷都1300年記念事業、奈良県立図書情報館開館3周年記念事業『劇的☆めくるめく図書館─ならノれきしデたわむれロ』
[主催]古都物語実行委員会(奈良県立図書情報館、平城遷都1300年記念事業協会ほか)
[会期]2月28日
[会場]奈良県立図書情報館
[作品監修・総合指導]松村武(劇団カムカムミニキーナ)

●奈良県立図書情報館
[開館日]2005年11月3日
〒630-8135 奈良市大安寺西1-1000
Tel. 0742-34-2111
http://www.library.pref.nara.jp/
*西村佳哲さんは開館年度から、働くことを考えるトークセッションを毎年開催。今後も継続する予定。

 

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