地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

11月号-No.175
2009.11.10(毎月10日更新)

今月のニュース

都市行政文化懇話会報告
全国から16市長が集い、幅広いテーマで懇談

写真:
左・加藤種男氏の講演
右・講演後には早稲田桜子さん(ヴァイオリン)と大熊理津子さん(マリンバ)によるミニコンサートが催された



 今年度も文化芸術による地域づくりに高い関心をお持ちの市長の皆様をお迎えした「都市行政文化懇話会」が、10月15日に地域創造会議室で催されました。
  冒頭の林省吾理事長からの挨拶に続き、財団の顧問のひとりであり、地域と文化芸術についてのご意見をいただいてきた山折哲雄氏(宗教学者、国際日本文化研究センター名誉教授)、産業政策を研究されている後藤和子氏(埼玉大学経済学部・経済科学研究科教授)、メセナ活動のキーパーソンとして知られる加藤種男氏(社団法人企業メセナ協議会研究部会部会長、財団法人アサヒビール芸術文化財団事務局長)による講演が45分ずつ行われました。
  京都で20年近く生活されてきた山折氏は、海外に誇るべき日本文化として、神仏に対する信仰と自然景観が一体となった庭園を例に挙げ、千年以上にわたって育んできた日本人の美意識、文化意識という大きなテーマで話をされました。まず、カメラを片手に騒ぎながら名園を通り過ぎる観光客の増加に対して、肉眼でものを見ることを忘れてしまった日本人の文化意識の荒廃を指摘。ニューヨークで発行されている雑誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』の日本庭園ランキング(日本の庭園の研究者が現地調査を行って発表)において、回廊を備えていて見せる工夫が行われている島根県安来市の足立美術館の庭園が、7年連続して1位を獲得していることなどにふれながら、「日本文化の精髄を伝えていくための工夫を各地域で行っていただきたい」と話されていました。
  後藤氏は、クリエイティブ産業と都市政策をテーマに話をされました。ヨーロッパでは20年前から付加価値の高い産業にシフトする政策が取られてきたのに対して、日本は産業構造の転換に出遅れたと問題を提起。フランス・ナント市の創造都市政策やクリエイティブ・クラスという考え方にふれながら、これからの日本では、優れたコンテンツを生み出し、新しい産業を興すためには、文化政策と産業政策を一体にした取り組みが不可欠であると指摘されていました。
  アサヒビール文化財団での活動を中心に、アートの領域で企業と市民と行政の協働を推進してきた加藤氏は、「ニューコンパクト」という考え方を中心に紹介されました。これは、20年にわたり地方都市が疲弊してきた日本の現状に対し、広義の文化振興によって地域のコミュニティを再生することを提案したものです。「製造販売の一体化、小規模経営、地産地消、Face to Face の顧客管理といったコンパクト経済によってコンパクトな社会をつくるべきだ。そのためには地域の技術をブランド化する文化力が必要だし、圧倒的なビジョンの喚起力をもち、すべての営みに効果的に関わることができるアートが重要になる」と加藤さんは力説されていました。
  市町村長セミナー等でもこうした刺激的な最新情報をお届けする講演会が開催されていますので、ぜひそちらにもご参加いただければと思います。


公立文化施設活性化事業(音活/ダン活)報告
16組のアーティストが地域と交流

写真:
左・リコーダーに合わせて今野尚美さんが即興演奏(井倉中学校)
右・たかすメロディーホールでのワークショップ(中央が隅地茉歩さん)



 下半期には地域創造が各地の公立文化施設と共催で行う事業が本格化します。中でも「公共ホール音楽活性化事業(おんかつ)」と「公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)」は、地域とアーティストが交流する貴重な機会です。今年度は両事業で計16組の登録アーティストが全国30地域に出かけ、学校でのアウトリーチなどを実施します。今回は、まなび広場にいみ(岡山県新見市)、たかすメロディーホール(北海道鷹栖町)の模様をご紹介します。


●小規模校で交流(おんかつ)

 10月1日〜3日、新見市で事業を行ったのはピアニスト今野尚美さん。「ホールのない所で生まれ育ったこともあり、ピアノ1台あればどんな所にも飛んでいき演奏できるピアニストになりたいと思っていた」という今野さん。今回はその思いを伝えるにはピッタリの、全校生徒14〜34人の小規模校(小学校3校、中学校1校)で子どもたちと交流しました。各小学校では、“音楽で想像力を膨らませよう”をテーマに、得意の即興演奏を活かし、絵本『きつねのおきゃくさま』に音楽をつけるなど、バラエティに富んだプログラムを披露。菅生小学校では音楽でイメージが膨らんだ絵本の世界に、先生、児童、授業参観の保護者が揃って涙ぐむ一幕も。また、閉校予定の井倉中学校では、生徒がリクエストした音を使い学校に捧げる即興演奏を披露し、みんな感激していました。
  コンサートのハイライトは、ナレーション付きで演奏されたムソルグスキー『展覧会の絵』です。大曲を楽しめるように、今野さんがオリジナルの台本を作成。ホールスタッフ岩井洋子さんの朗読に合わせ情景が変わる凝った照明も加わり、音楽朗読劇のような仕上がりでとても盛り上がりました。新見市の事業担当の石橋博さんは「親しみやすく、海外経験豊富な憧れのピアニストと出会い、子どもたちが世界的な視野で物事を考えるきかっけになったと思う」と話していました。


●アットホームなホールとの出会い(ダン活)

 9月28日〜10月4日の1週間、鷹栖町に滞在したのは、幅広い世代の人たちとコミュニティ・ダンスをつくってきたセレノグラフィカ(隅地茉歩+阿比留修一)です。たかすメロディーホールの近藤弘一さんは「新しいジャンルに挑戦したくて、ダン活に応募しました。アーティストは他者の身体と丁寧に向き合うことを大事にされている人柄がアットホームな雰囲気のホールに合うと考え、セレノグラフィカに決めました」と言います。ホールでのワークショップに加えて、鷹栖高校と鷹栖中学校にアウトリーチに出かけました。アーティストのデモンストレーションの後、腹筋の内側を使う“ダンサーの身体づくり”、空間の感覚をつかむ“ダンサー脳の開発”を行い、最後に日常的な動作からダンスを創作、発表しました。鷹栖中学校の藤井浩一先生は、「体を動かすことすべてをダンスに仕立ててしまうのが凄い」と感心していました。メロディーホールには市民の三分間芝居を上演する名物企画「熱闘三分間劇場」がありますが、「オリジナルな個性を大事にする点で、三分間劇場とコンテンポラリーダンスはとても相性がいい」との声もあり、今後の新展開が期待されます。


●公共ホール音楽活性化事業
クラシックの登録アーティストとコーディネーターを派遣し、地域交流プログラムとコンサートを行う。今年度は全国19カ所で実施。
◎平成21年度今後の開催地(日程/派遣アーティスト)
青森県八戸市(10月29日〜31日/福島青衣子)、北海道滝川市(11月17日〜19日/ピアノトリオ・ミュゼ)、埼玉県東松山市(12月3日〜5日/ピアノトリオ・ミュゼ)、兵庫県西宮市(12月10日〜12日/吉川健一)、茨城県那珂市(12月10日〜12日/ Quintet「H」)、長野県川上村(12月11日〜13日/今野尚美)、熊本県八代市(12月17日〜19日/高橋和歌)、岡山県勝央町(12月18日〜20日/小谷口直子+福島青衣子)、山形県白鷹町(2010年1月28日〜30日/ Quintet「H」)、三重県多気町(2月4日〜6日/今野尚美)、京都府城陽市(2月5日〜7日/吉川健一)、大阪府河内長野市(2月5日〜7日/福島青衣子)、岡山県真庭市(2月18日〜20日/吉川健一)、高知県高知市(2月18日〜20日/ Quintet「H」)、和歌山県日高川町(3月4日〜6日/高橋和歌)、高知県土佐清水市(3月5日〜7日/吉川健一)

◎問い合わせ
芸術環境部 沼田・瀬川・小澤
Tel. 03-5573-4093

●公共ホール現代ダンス活性化事業
コンテンポラリーダンスの登録アーティストとコーディネーターを派遣し、地域交流プログラムと公演を行う。今年度は全国11カ所で実施。
◎平成21年度今後の開催地(日程/派遣アーティスト)
岐阜県可児市(11月10日〜16日/新井英夫)、兵庫県朝来市(11月30日〜12月6日/キリコラージュ)、山形県白鷹町(12月8日〜14日/鈴木ユキオ)、和歌山県和歌山市(12月15日〜21日/東野祥子)、鹿児島県鹿屋市(2010年1月18日〜24日/新井英夫)、山梨県笛吹市(1月25日〜31日/セレノグラフィカ)、長野県茅野市(2月9日〜15日/東野祥子)、東京都八王子市(3月8日〜14日/伊藤千枝)

◎問い合わせ
芸術環境部 加藤・坂間・大澤・玉木
Tel. 03-5573-4056

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