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今月のレポート

徳島県
11月号-No.175

阿波人形浄瑠璃月間「ジョールリ100公演」


 「文化立県とくしま」を掲げて2年目になる徳島県が、10月3日から1カ月にわたって100本の人形浄瑠璃を集中上演する「阿波人形浄瑠璃月間『ジョールリ100公演』」を開催している。会場は、現存数100棟を誇る農村舞台や県立阿波十郎兵屋敷、徳島城内に設置した小屋掛け舞台など。プログラムは、古典から「人形ジョールリ・ヌーベルバーグ」と名付けられた新作やコラボレーション(ロック、能、現代邦楽、ダンス、女性ヴォーカル)まで多彩だ。  


第7回法市農村舞台公演。人形浄瑠璃にオカリナ演奏、糸操り人形、阿波踊りなど多彩な演目が公演された。Photo: Kazumi Narabe
第7回法市農村舞台公演。人形浄瑠璃にオカリナ演奏、糸操り人形、阿波踊りなど多彩な演目が公演された。Photo: Kazumi Narabe
第7回法市農村舞台公演。人形浄瑠璃にオカリナ演奏、糸操り人形、阿波踊りなど多彩な演目が公演された。
Photo: Kazumi Narabe

 10月11日、阿波の文化交流の場にしたいと2004年から始まった小屋掛け舞台では、朝から夕方まで子ども人形浄瑠璃クラブなどの公演が次々に行われていた。現存する農村舞台のうち、定期的に公演が行われているのは数棟だけで、そのほとんどは休眠状態だ。この日は、2002年に70年ぶりに復活した今山農村舞台と、県の最西端に残る東みよし町の法市農村舞台で公演を行うというので、法市に出かけた。
  九十九折りを上ると山あいに法市農村舞台が見えた。6年前に80年ぶりの復活を遂げ、県内はもとより東京、関西圏の600人近い人々から募金を得て2年前に改修。新しい瓦屋根は夜になると徳島が誇る青色LEDで輝く。吉野川を見下ろす舟渡神社の境内に残る舞台を守るのは15戸29人、平均年齢70歳を超える集落だ。保存会会長の細川努さんは、「守り続けていくにはマンパワーが足らない。こうした取り組みが集落の産業に結びついてくれれば」と話す。校外学習で来た小学生など人口の10倍を超える観客が盛りだくさんの演目を楽しんだ。
  12日は、1934年に建てられた脇町劇場(オデオン座)で「人形ジョールリの可能性 in オデオン座」が開催された。うだつの町並みで知られる脇町(現・美馬市)にあるこの芝居小屋は、後に映画館となったが95年に閉館。山田洋次監督『虹をつかむ男』のロケ地となったことから保存に弾みがつき、99年に昭和初期の芝居小屋の状態に復元された。メインプログラムは、徳島県三好市出身でジョールリ100のコーディネーターでもある文楽座の人形遣い・吉田勘緑と木偶舎が、若いロックバンドをバックに舞うオリジナル『女殺油地獄』。内容はまだ荒削りだが、音楽に乗り小気味よく動く人形に、観客は目を奪われたようだ。

 「文化立県」は、「大都市と競ってナンバーワンを目指すのではなく、徳島の文化やオリジナリティを活かし、オンリーワンを目指す」という飯泉嘉門県知事のリーダーシップで実現した。2007年に開催した国民文化祭を一過性のものにしないため、2億円の基金を創設し、あわ文化の継承・発信・発展に取り組むベースをつくった。08年3月には文化立県とくしま推進会議を発足。県民環境部に文化スポーツ立県局を設け、国民文化祭で掲げたモチーフ「第九(徳島は日本初演地) 」「人形浄瑠璃」「藍」「阿波踊り」から毎年1テーマずつ、5年にわたって事業を展開する。年4,000万円の予算の内1,500万円は、担い手の育成のために文化団体の助成に使われる。立県局発足3カ月後には、初演地鳴門市と徳島市で、「第九初演90周年フェスティバル」を開催した。
  四宮洋司・文化スポーツ立県局局長は、「徳島で暮らしてきた人々が培った精神の遺産、集積された人間の英知には世代、地域を超えて感動を与える力がある。もう一度掘り起こして、磨き上げ、新しい視点も加えて提供していこう、それが文化立県の考え方です。副産物として観光や新たな産業に結び付けば」と言う。地元の文化を掘り起こす過程で地域が活性化し、住み続けたいと思う地域をつくるのが目的だ。
  そのためには、高いハードルを越えねばならない。人形浄瑠璃を例に取れば、高齢化が進む継承団体が後継者を育て、観客をうならせるための技術を磨かねばならない。文化立県がそのきっかけとならねばならない。
  来年のテーマは天然染料の藍。徳島経済を支え、人形浄瑠璃や阿波踊りなどの文化を育んだのは藍が生み出す莫大な富だった。しかし今、化学染料や安価な輸入染料に押され、産業として自立できるギリギリの状況にあるだけに、再生のきっかけとなる企画が求められている。この難しいテーマに文化スポーツ立県局の担当者は挑むことになる。

(ジャーナリスト・奈良部和美)

●阿波人形浄瑠璃月間「ジョールリ100公演」
[主催]徳島県、文化立県とくしま推進会議ほか
[会期]10月3日〜11月3日
[主な参加プログラム]
◎阿波十郎兵衛屋敷定期公演(10月3日〜11月3日/徳島県立阿波十郎兵衛屋敷)
◎第6回徳島城内小屋掛公演(10月10日、11日/徳島中央公園)
◎第7回法市農村舞台公演(10月11日/舟渡神社境内 法市農村舞台)
◎第12回全国人形芝居サミット&フェスティバル(10月3日、4日/あわぎんホール)
◎人形ジョールリの可能性 in オデオン座(10月12日/脇町劇場オデオン座)
◎犬飼農村舞台公演(10月18日、11月3日/五王神社境内 犬飼農村舞台)
◎UA・能役者 with 人形ジョールリ(10月18日/八幡神社境内 北川舞台)
◎新作人形浄瑠璃『哀れ銀十郎 〜傾城阿波鳴戸より〜』(10月23日/あわぎんホール)
◎阿波人形浄瑠璃フェスティバル(10月24日、25日/あわぎんホール)
◎新作人形浄瑠璃公演(10月31、11月1日/徳島県立21世紀館)

 

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