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今月のレポート

川崎市
2月号-No.178

ミューザ川崎シンフォニーホール
MUZAジルベスターコンサート2009


 2009年12月31日、年越しの「ジルベスターコンサート」が開かれるというので、「音楽のまち・かわさき」のシンボルとして5周年を迎えたミューザ川崎シンフォニーホールに出掛けた。
  今では1日平均約18万6,000人という横浜駅に次いで神奈川県内で2位の乗降客数を誇る川崎駅。かつては大規模な東芝堀川町工場などが建つ工場地区で、何年か前までは空き地が広がっていた西口は、人口140万の政令市の玄関口に相応しい新しい都心へと様変わりしていた。駅から直結したラゾーナ川崎(06年に開業したシネコン・アミューズメント施設・家電量販店などが入った売上高全国2位のショッピングセンター)を目指す年末の買い物客に押し出されるように、同じく駅から直結したミューザ川崎に向かった。
  約2,000席のワインヤード型のホールは、高齢者から子どもたちまで幅広い年齢層の人々でほぼ満席。年越しの慌ただしさから一転、そこは本格的なシンフォニーホールが醸し出す優雅な雰囲気に包まれていた。
  J・シュトラウスのワルツ『南国のバラ』で華やかに始まり、ピアニスト・小川典子の熱のこもった演奏、ホールオルガニスト・近藤岳によるパイプオルガン演奏へと続く。そしていよいよこの日のために結成された150人の市民による「ジルベスター合唱団」が登場。歌劇『タンホイザー』から大行進曲『歌の殿堂を讃えよう』やアンコールの『威風堂々』など。“元気の出るクラシック”のテーマどおり、力強い歌声で2009年を締めくくった。  

:ミューザ川崎シンフォニーホール外観
ジルベスターコンサートの模様
上:ミューザ川崎シンフォニーホール外観
下:ジルベスターコンサートの模様
©Muza Kawasaki Symphony Hall

 「音楽のまち・かわさき」は、工業地帯で公害のイメージが強い川崎市を文化で生まれ変わらせようと、01年に当選した阿部孝夫市長が打ち出したもの。「調べてみると、当時市には3つの音楽教育機関(洗足学園音楽大学、昭和音楽芸術学院(*1)、ヤマハ音楽院本校)、4つの市民オーケストラ、100を超える市民合唱団、企業の吹奏楽団や合唱団など、数々の資源があったのです」と、当時市役所で調査に当たった現ミューザ川崎シンフォニーホール事業部長の池田健児さんは振り返る。
  西口再開発の中核施設としてそのシンボルとなる音楽ホールの建設が決まり、開館に先駆けた02年11月、市は東京交響楽団とフランチャイズ提携を結ぶ(*2)。また、04年4月には市民、音楽家、音楽大学等教育機関、音楽関連団体、企業、メディアなどが参加した民間主体の「音楽のまち・かわさき」推進協議会が発足、街中での音楽イベントなどをスタートする。
  ホールのプログラムは、「フルオーケストラの魅力を伝える」ことを中心に、東京交響楽団、ポップスやジャズなど幅広いジャンルの5人の演奏家によるホールアドバイザー(*3)、ホールスタッフが意見を出し合ってつくっている。オーケストラでは東響による年10回の「川崎名曲全集」のほか、夏には首都圏9つのオーケストラと大学オーケストラ(*4)が勢揃いする「フェスタ サマーミューザKAWASAKI」を開催。約3,000円で“勝負作”を聴ける人気プログラムとなっている。また、70分ほどの演奏を500円〜1,000円の低価格で楽しめるランチタイム&ナイトコンサートを毎月開催するなど、聴衆の開拓にも力を入れている。
  「ホールが市民に根づくまで10年はかかるだろうと覚悟していましたが、この5年でかなり定着してきたと感じています」と事業制作課長の竹内淳さんは言う。立地の良さからホール稼働率は平成20年度実績で99%、年間入場者数は20万人に上る。
  「世界に誇れるホールが出来たことで、市民の音楽活動がより活発になり、『ミューザ川崎市民合唱祭』(*5)の参加団体は年々増加しています。みんな憧れの舞台に立つことを楽しみにしているんです」と言うのは川崎市合唱連盟会長で「音楽のまち・かわさき」推進協議会副会長の高野映子さんだ。
  政令市としての豊富な事業予算をもつホールという場が生まれたことで、フランチャイズのプロオーケストラが地域にブランド力を与え、ホールアドバイザーを通じて新たなネットワークが広がり、市民が地域で音楽活動を行う励みが生まれ、市は新たなまちのイメージを発信するツールを獲得した。東京と横浜という大都市に挟まれた地域のシティセールスとして、これからもホールが果たす役割は大きくなっていくのではないかと感じた。

(ライター・土屋典子)

●ミューザ川崎シンフォニーホール5周年記念公演「MUZAジルベスターコンサート2009」
[会期]2009年12月31日
[会場]ミューザ川崎シンフォニーホール
[主催](財)川崎市文化財団ほか
[出演]秋山和慶(指揮)、小川典子(ピアノ)、大谷康子(ヴァイオリン)、近藤岳(オルガン)、梅田陽子(司会)、東京交響楽団、MUZAジルベスター合唱団

*1 昭和音楽大学の併設校で2006年に閉校。その後昭和音大本校が07年に厚木市から川崎市に移転した

*2 東京交響楽団(東響)はホール優先予約(20カ月前)と利用料金減額(1/2)、年間100日の練習利用ができる。東響は主催公演(貸館)、ホールとの共催公演、ホール主催の特別公演(ジルベスターコンサートなど)、サマーフェスタのほか、子ども向けプログラム、アウトリーチ活動を展開

*3 秋山和慶(東京交響楽団桂冠指揮者)、小川典子(ピアニスト)、小椋佳(作詞家・作曲家)、佐山雅弘(ジャズピアニスト)、松居直美(オルガニスト)

*4 東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団、東京都交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、洗足学園音楽大学、昭和音楽大学

*5 今年で44回目を迎える歴史ある合唱祭

 

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