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今月のレポート

広島市
9月号-No.221

広島県立美術館/広島市現代美術館/ひろしま美術館
「アート・アーチ・ひろしま2013」


 市街地にある広島県立美術館(1968年旧美術館・96年現美術館開館)、広島市現代美術館(89年開館)、近代フランス絵画のコレクションで有名な広島銀行が開設したひろしま美術館(78年開館)という県・市・私立美術館が連携した「アート・アーチ・ひろしま2013」が7月から3カ月の会期で開催されている。
  2011年から3カ年計画で進められたこのプロジェクトは、文化庁「地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業」の採択を受けて実施されているもの。最初の2カ年は子どもに対する教育普及事業等、今年は広島と深い関わりのある20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチをキー・アーティストに、3館がそれぞれの問題意識で取り組む展覧会および街中でのプログラムが企画された。
  取材に訪れた8月4日には、館長が顔を揃えたシンポジウムが開催され(*)、今回のプロジェクトに至る経緯などが詳しく紹介された。1989年に展覧会情報を掲載したリーフレットの共同製作が始まり、92年からは館長や学芸員が集う連絡会議を定期的に開催。特徴あるコレクションを有した美術館が市街地に集中しているメリットを生かす取り組みとして、2000年には巡回バスなどを具体化した。
  こうした3館での蓄積に加え、芸術学部を有する広島市立大学が94年に開校し、学生やOBによる活動が始まるなど、アートを巡る環境が変わったことも今回のプロジェクトを後押しした。事務局を担った県美学芸員の山下寿水さんは、「コレクション内容の異なる美術館がどうすれば連携できるか、かなり話し合った。イサム・ノグチなら、それぞれの切り口で広げられるのではないかということになり、県美では“平和”をテーマに『ピース・ミーツ・アート!』として幅広い展示を行った。細々したところまで各館で異なるので、連携を具体化するのはとても大変だった。地域プログラムは、県美が中心となりセトラひろしまなどのNPOと連携して企画した」と話す。
  県美では、日系アメリカ人として葛藤し続けたノグチの作品を軸に、ピカソ、丸木位里・俊、平和記念資料館の資料を撮影している石内都、現代美術家の内藤礼などの多彩な作品を展示。またひろしま美術館では、「その創造の源流」と題して、ノグチに影響を与えた多くのアーティストを紹介するとともに、抽象彫刻からランドスケープ・デザインまで、国境を越えた活動を追った。
  広島という都市とアートの新しい関係性を追求したのが、市現美の「サイト─場所の記憶、場所の力─」。冒頭に、ノグチが構想しながらも実現しなかった『広島の原爆死没者慰霊碑』の模型を設置。次いで、各国の現代美術家が、イランやアフガニスタン、沖縄などの「場所の物語」を、新聞紙で出来たオブジェや映像など“アン・モニュメンタル”な手法で可視化した作品を展示。神谷幸江学芸担当課長は、「慰霊碑は形として残らなかったことで、現在でも語り継がれている。現代のアーティストたちも、その土地に起こったことをモニュメント以外の手法で表現し、語り続ける挑戦をしている。本展を通して、世界中で起こっている戦争、テロなど現実に広島がどのように寄り添えるのかを問いかけていきたい」と話す。




上:広島県立美術館
中:広島市現代美術館「サイト─場所の記憶、場所の力─」展(イサム・ノグチ『広島の原爆死没者慰霊碑(1/5模型)』)
下:アーティストのMAYA MAXXが原爆の日にライブペインティングで広島を表現する「Paint It, Peace!」。10年プロジェクト6年目の今年は広島市立幟町中学校で開催

 一方、地域プログラムでは、ギャラリーでの関連展示やイベントのほか、市内約40カ所のギャラリー・文化施設情報と、同時期に開催される60以上の展覧会・イベントを掲載した「アート・アーチ・ひろしま2013アート・マップ」を作成。そこへの情報提供や地域プログラムのイベント企画に協力したのが、大学OBなどの若手アーティストを積極的に紹介しているギャラリーGを運営する木村成代さんだ。運営団体であるNPO法人アートプラットホームGには、3館の学芸員や大学の教員も理事として参加し、日頃から情報交流してきた。「広島には、学芸員、民間ギャラリスト、アーティストが交流する機会がほとんどない。まずは情報を共有することが必要だと思った」と木村さん。マップには、会期中に開催される被爆建築物である旧日本銀行広島支店での展覧会や、中学校でのMAYA MAXXのライブペインティングなど多彩な情報も掲載され、広島で広がりつつあるアートの動向を浮き彫りにしていた。
  世界中から人々が訪れるヒロシマに、アートによる新たなページが加えられているのを実感した取材だった。

(アートジャーナリスト・山下里加)


●アート・アーチ・ひろしま2013
[会場]メイン会場:広島県立美術館(「ピース・ミーツ・アート!」展)、広島市現代美術館(「サイト─場所の記憶、場所の力─」展)、ひろしま美術館(「イサム・ノグチ〜その創造の源流〜」展)/サテライト会場:アリスガーデン、市内ギャラリーほか
[会期]2013年7月20日〜10月14日
[主催]広島県美術館活性化対策事業実行委員会(広島県立美術館、公益財団法人ひろしま美術館、広島市現代美術館、社団法人広島県観光連盟、公益財団法人ひろしま文化振興財団、NPO法人セトラひろしま)、中国新聞社
http://art-arch-hiroshima.jp/

*記念シンポジウム「ひろしまの3つの美術館が架けるアーチ」
開催日:2013年8月4日/会場:広島県立美術館 地階講堂/パネリスト:越智裕二郎(広島県立美術館長)、角廣勲(ひろしま美術館長)、福永治(広島市現代美術館長)/司会:古谷可由(ひろしま美術館学芸部長)

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