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今月のレポート

神奈川県
3月号-No.227

カナガワ リ・古典プロジェクト2014紅葉ヶ丘


 桜木町から徒歩15分、石畳の坂道を上ると、横浜能楽堂(横浜市芸術文化振興財団)、神奈川県立音楽堂(神奈川芸術文化財団)、神奈川県立青少年センター(神奈川県)という3つのホールが隣接する紅葉ヶ丘に出る。この3館を舞台に、「カナガワ リ・古典」と銘打った伝統芸能公演が、1月11日、12日の両日行われた。主催は神奈川県。地域の文化資源を新しい発想で発信するとともに、伝統文化の魅力を体感してもらおうという主旨で、文化庁の助成事業「文化遺産を活かした地域活性化事業」の一環として、今年から3年計画で始動した。

 運営団体の違うこの3館が連携してイベントを行うのは、今回が初めての試み。チケット料金は3プログラム共通券6,500円と手軽な値段にし、チラシには親しみやすいイラスト、さらに元NHKアナウンサー葛西聖司さんによる入門者向けプレトークを付けるなど、さまざまな工夫で敬遠されがちな伝統芸能の敷居を低くしていた。
  今回取り上げられた文化資源は、神奈川県境の足柄山に伝わる金太郎伝説、また、女流義太夫の竹本駒之助(人間国宝)、鎌倉能舞台を主宰する観世流シテ方の中森貫太、県下に5座が伝わる相模人形芝居(内3座は国指定重要無形民俗文化財)、洋楽では神奈川フィルハーモニー管弦楽団。こうした地域の宝である県在住の実演家たちが、新作や文明開化の横浜らしい邦楽と洋楽のコラボレーションといった伝統と現代がリンクする企画に果敢に挑戦した。
  能楽堂では、まず義太夫節にて78歳の竹本駒之助が金太郎誕生秘話の名人芸を披露したのに加え、能の『井筒』をモチーフにした二十五弦箏の創作曲と能のコラボレーションや、作家で能楽研究家でもある林望と文楽ファンの人気小説家・三浦しをんの対談などが開催された。また音楽堂ではパーシケッティ、シェーンベルクなどの曲を構成した神奈川フィルの弦楽演奏をバックに、鎌倉ゆかりの能『鉢木』を上演する実験的なパフォーマンスなどが行われた。
  青少年センターに登場したのが相模人形芝居下中座だ。下中座では地元の小田原市立橘中学校と神奈川県立二宮高等学校に相模人形クラブをつくり、長年にわたり後継者育成に取り組んできた。その過程で子どもたちが楽しく演じられる創作作品づくりに取り組み、15年がかりで三段から成る『坂田金時 怪童丸物語』を完成。それぞれの段を中学生、高校生、下中座が披露した。義太夫の生演奏に乗せて、三人遣いの金太郎、動物たち、大百足が登場する人形芝居の醍醐味を満喫できる冒険譚で、客席も一体となって楽しんでいた。



上:プログラムB「能×弦楽オーケストラ」
下:プログラムC「創作人形浄瑠璃『坂田金時怪童丸物語』」(二宮高校・相模人形部による「下鴨神社の段」)
写真提供:古典空間

 今回の事業を担当した神奈川県文化課の藤岡審也さんは、「県が直接行う伝統芸能公演は、能楽、文楽、歌舞伎、民俗芸能等の普及事業中心でしたが、平成20年に制定された文化芸術振興条例の中で地域文化資源の活用が謳われたことから、積極的な取り組みに踏み出しました。また、文化課では現代芸術から民俗芸能まで広く担当しており、多様な実演家との繋がりもあります。そんな時に世界遺産登録を目指す鎌倉の魅力をアピールする企画として、2012年に建長寺で『鉢木』(今回再演)を上演し、手応えを感じました。ただ、県がこうした事業を行うには、地域振興という視点だけではなく、実演家のアーティストとしての思い、そしてお客様の満足という3つの要素を両立させなければいけないという難しさもあります」と話す。
  こうした県の事業を制作者としてサポートしているのが、長年にわたって伝統芸能公演を手がけてきた(有)古典空間のプロデューサー、小野木豊昭さんだ。「“古典”とは過去に生まれ、時代を超えてなお人々に感動を与えるもののこと。それを時代のフィルターを通してとらえ直して現代に再生するのが、“リ・古典”です。こうした事業を民間だけで実施するには限界があり、今回の神奈川県のように、自治体がパートナーとなることで、伝統芸能の世界にも新しい可能性が開けるのではないかと思っています」。
  地域の魅力を発信する意味で、来年は江ノ島、再来年は大山に舞台を移し、新たなコラボレーションを計画中とのこと。どんな斬新な出会いが生まれるのか、伝統を現代に繋ぐ試みとして注目される。

(花光潤子)


●カナガワ リ・古典 プロジェクト 2014紅葉ヶ丘
[会期]2014年1月11日、12日
[主催]かながわの伝統文化の継承と創造プロジェクト実行委員会
[共催]神奈川県立青少年センター
[制作]有限会社古典空間
◎プログラムA(11日/横浜能楽堂本舞台)
・能×邦楽コラボレーション『井筒』(中井智弥作曲)
[出演]中森貫太(観世流シテ方)、中井智弥(二十五弦箏)
・トークセッション
[出演]林望、三浦しをん
・素浄瑠璃 義太夫節『嫗山姥』より「廓噺の段」
[出演]人間国宝・竹本駒之助(浄瑠璃)ほか
◎プログラムB(11日/神奈川県立音楽堂ホール)
・邦楽×弦楽オーケストラ
[出演]藤原道山(尺八)、中井智弥、神奈川フィルハーモニー管弦楽団・弦楽オーケストラ
・能×弦楽オーケストラ
[出演]中森貫太、神奈川フィルハーモニー管弦楽団・弦楽オーケストラほか
◎プログラムC(12日/神奈川県立青少年センターホール)
・創作人形浄瑠璃『坂田金時 怪童丸物語』
[出演]足柄山の段:小田原市立橘中学校・相模人形クラブ、下鴨神社の段:神奈川県立二宮高等学校・相模人形部、金時誕生の段:相模人形芝居下中座

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