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制作基礎知識シリーズVol.40
文化プログラムに対する文化庁の取り組み

講師 山名尚志
(株式会社文化科学研究所代表)

●2つの文化プログラム

 まず初めに、文化庁が「文化プログラム」と呼んでいる対象を整理しておこう。
  レター2017年1月号の制作基礎知識シリーズVol.38で紹介したように、東京2020大会に関する公式の事業(東京2020大会やオリンピック、パラリンピックの名称、マーク、エンブレムなどが利用可能なもの)については、すべて大会組織委員会が管理している。文化領域について言えば、組織委員会が「文化オリンピアード」の公認、もしくは応援プログラムとして認証しているプログラムがそれに当たる。これが文化庁が言う「文化プログラム」の1つ目である。
  2つ目は「beyond2020」と呼ばれる事業だ。これは、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部が中心となって実施している事業で、「日本文化の魅力を発信するとともに、2020年以降を見据えたレガシー創出のための文化プログラム」と位置づけられている。
  このbeyond2020でも公式のロゴマークを作成し、2017年1月より利用の認証を開始するなど、組織委員会の「文化オリンピアード」に類似した展開を行っている。ちなみにbeyond2020のロゴマーク申請には「文化オリンピアード」への参画申請のような厳しい制限はなく、営利・非営利の別なく、任意団体を含めて、幅広く利用が可能である。
  ここでひとつ注意しておかなければならないのは、beyond2020が「東京2020大会の公式の事業ではない」ということだ。もちろん、国がこうした事業を展開するのは、東京2020大会の開催が前提となっている。しかし、組織委員会が関与していない以上、オリンピックに関連する名称やマークは一切使用できない。国の政策的な位置づけとしてはオリンピックの関連事業だが、beyond2020のロゴマークを使った事業の実施に当たって「オリンピック関連」と公に告知することはできないのである。


●文化庁の取り組み

 文化庁としては、「文化芸術の振興に関わる基本方針:第4次基本方針」に定められた文化庁自身の東京2020大会への政策指針に従いつつ、上記2つのプログラムに“参画する”ことになる。この点についてだけ言えば、文化庁は他の参画主体と立場的に変わらない。2017年3月1日現在、文化庁では合計21の「公認文化オリンピアード」事業を主催しているが、そのいずれも組織委員会に対して正式に申請し、認証を受けたものだ。
  とはいえ、もちろん2つの文化プログラムの展開において文化庁が主導的な役割を果たさないわけではない。実際、2017年度について文化庁では、文化プログラムの推進に関連する予算として329億円を計上しており、積極的な取り組みを進めつつある(既存事業の継続を含む)。その内、予算323億円とそのほとんどを占めているのが、「国が地方自治体、民間とタイアップした取組の推進」である(他の事業としては、国立文化施設の多言語対応や夜間開館などの機能強化、公立・私立の文化施設の多言語対応支援など)。
  「国が地方自治体、民間とタイアップした取組の推進」は大きく2つのプロジェクトに分かれている。ひとつは文化庁等が主催するプロジェクトで、「文化庁芸術祭」「文化庁メディア芸術祭」「国民文化祭」「全国高等学校総合文化祭」などの既存の大型事業もここに組み込まれる(こうした既存事業も、2020年に向けては、申請・認証を経て、文化プログラムという位置づけを与えられることになる)。
  もうひとつは地方公共団体、民間等が主催するプロジェクトへの支援である。これについては、地方公共団体等の公募に対し、文化庁が助成金を付ける枠組みとなる。なお、助成金が採択されたとしても、自動的に2つの文化プログラムのいずれかに認証されることにはならない。認証に当たっては、当該事業の主催者である地方公共団体等から組織委員会もしくは内閣官房への申請が必要となる(文化プログラムに申請するかどうかは、採択された側の任意の判断)。


●文化庁主催のプロジェクト

 文化庁が主催のプロジェクトについては、既存事業の継続のほかに、新規取り組みのため「戦略的芸術文化創造推進事業」(2017年度予定額701百万円)が用意されている。これは、全国の芸術団体・関係機関等に、
@全国各地の有形・無形の文化資源を掘り起こし、その積極的な活用や新たな文化振興モデルの構築を図る
A総合的にアーツプロジェクトを企画・実施できる人材育成とそのネットワーク形成を図る、
B全国各地の文化活動・資源を国内外に発信する
などの枠組みで企画を公募するもので、採択されたものが文化庁の委託事業として文化プログラムの認証に進むこととなる。
  この事業に関連して注目すべき点が2つある。ひとつは、上記のAの取り組みに向け、全国芸術系大学コンソーシアム(JUCA)が2016年7月19日に設立されたことだ。これは、国立4・公立10・私立42の芸術系の56大学が集まった初めての全国組織であり、すでに各大学の事業を紹介するポータルサイトの開設や、文化庁庁舎において若手芸術家の作品展示を行う「アーツ・イン・文化庁」等のプロジェクトを展開している。こうした芸術系大学の協働が実現に至ったことは、文化芸術分野におけるレガシー構築の大きな成果であり、今後の動きが期待される。
  もうひとつは、上記のBの取り組みとして、文化情報プラットフォーム(具体的にはデータベースやポータルサイトなど)の構築が進みつつあることだ。日本の文化芸術活動の情報発信、特に外国語での世界への発信は必ずしも十分な水準に達していない。文化情報プラットフォームの構築に関しては、こうした課題の解決として、東京2020大会時だけでなく、文化芸術を契機とした日本へのインバウンド需要拡大のためのレガシーとしての役割発揮(例えば各地域の文化芸術活動や文化資源の世界的なPRのきっかけづくり等)が期待される。具体的内容については2017年度中にもある程度明らかになる予定だ。


●地方公共団体、民間等が主催するプロジェクトへの支援

 地方公共団体、民間等が主催するプロジェクトの支援としては、「文化芸術創造活用プラットフォーム形成事業」(2017年度予定額2,960百万円/17年度についての公募はすでに終了)が用意されている。この中心となる「文化芸術創造拠点形成事業」(予定額2,400百万円)は、2016年度まで「文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業」(文化芸術グローカル化推進事業)として公募されていたもので、地方公共団体が主体となり、地域の芸術団体や産学官とともに取り組む地域の文化芸術資源を活用した事業の支援(上限原則8,000万円)、地方公共団体等による文化事業の実施体制構築の支援(上限原則2,000万円)等が行われる。採択された場合は、文化プログラムの認証を受けることが推奨されている。
  「文化芸術創造活用プラットフォーム形成事業」については、上記グローカル化事業の継続に加え、2017年度より「先進的文化芸術創造拠点形成事業」(2017年度予定額2,960百万円/17年度についての公募はすでに終了)が新設されている。この事業の特徴は、事業の継続性を重要視し、原則5年間の継続補助となっていることだ。この事業も、採択された場合は、文化プログラムの認証を受けることが推奨されている。

  以上見てきたように、文化庁の取り組みは、既存事業や既存予算を、組織委員会もしくは内閣官房の認証制度への参画を通じて、文化プログラムへと関係づけるものが多くなっている。とはいえ、こうした取り組みにより、結果として2020年に向けて多くの「文化プログラム」が世に出ていくことになることは確実である。
  この流れをどのように自地域の文化振興、地域づくりに活用していくか。そのための工夫が求められている。


●文化庁「文化プログラムの推進」
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/2020_bunkaprogram/index.html

●beyond2020プログラム
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/beyond2020/

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