2月号-No.202
2012.2.1(毎月1日更新)
写真
左:岡本保総務事務次官から表彰を受ける清原慶子三鷹市長
右:出席者記念撮影
平成23年度「地域創造大賞(総務大臣賞、旧JAFRAアワード)」の表彰式が、1月16日、東京・グランドアーク半蔵門において行われました。この賞は、地域創造設立10周年を記念して、地域における文化・芸術の振興による創造性豊かな地域づくりに特に功績のあった公立文化施設を顕彰する総務大臣賞として創設されたものです。これまでに58館が表彰され、その活動は広く全国に紹介されています。今年度は、レター1月号で発表したとおり全国から7施設の受賞が決定し、岡本保総務事務次官ご臨席の下、表彰式が行われました。
主催者である財団法人地域創造林省吾理事長の挨拶に続いて、多彩な取り組みが行われている受賞施設の活動について映像による紹介が行われました。表彰状・盾の授与に併せて、岡本総務事務次官から川端達夫総務大臣のお祝いの言葉とともに、「文化・芸術活動は、地域のことは地域が責任を持って決め、自立的に活動していく『地域主権』という大きな課題の基盤となるものであります。住民の方々にいろいろな豊かさを実感していただくためにも、皆様のさらなる活動を期待しています」とのエールが送られました。
また、受賞施設を代表して、三鷹市芸術文化センターにより芸術振興と普及を両立させた事業を展開している三鷹市の清原慶子市長から「昨年は震災をはじめ大きな災害がありました。命が失われ、悲しみの中にある人々を奮い立たせ、復興再生に向けて息吹を吹き込み、人々が未来を切り開き、人の力を信じ、表していく上で、芸術文化活動の活性化が重要であると信じており、受賞を励みに取り組みを進めてまいります」との決意を込めた謝辞をいただきました。
最後に、扇田昭彦審査委員長から、「全国40の応募施設の中から少ない予算で頑張っている市町村の小規模施設について注視しつつ選考しました。昨年は震災、原発事故があり公立文化施設も大きな影響を受けました。その中で地場産業である漆を核に地域再生に取り組んでいる福島県立博物館の取り組みに大きく共感しました」という選考過程の紹介と受賞館についての講評が行われました。
今回の賞は、受賞された施設のみならず、それらの施設を支え、文化・芸術による地域づくりに参加していただきました地域の皆様のご協力に対する感謝を込めて贈られるものです。心よりお祝い申し上げますとともに、今後のさらなるご活躍を期待しております。
●平成23(2011)年度地域創造大賞(総務大臣賞)受賞施設
◎福島県立博物館(福島県)
◎三鷹市芸術文化センター(東京都三鷹市)
◎北方町生涯学習センター きらり(岐阜県北方町)
◎春日井市民会館/春日井市文芸館(愛知県春日井市)
◎滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール(滋賀県)
◎豊岡市民プラザ(兵庫県豊岡市)
◎浜田市立石正美術館(島根県浜田市)
ステージラボの美術コースを独立させ、昨年度からスタートした美術館等職員のための研修プログラム「アートミュージアムラボ」。今年度は昨年度の高知県立美術館から埼玉県立近代美術館に会場を移し、12月7日から9日まで開催されました。アートミュージアムラボの特徴は、先進的な取り組みを行っている公立美術館を会場に、実際に行われている事業を現地で疑似体験する「事業体験プログラム」を取り入れていることです。今回は、2008年に地域の美術館と活動団体が集った「Saitama Muse Forum(SMF)」を立ち上げ、多彩な事業を展開している埼玉県立近代美術館の取り組みを中心に学びました。多大なご協力をいただきました関係者の皆様には心より感謝を申し上げます。
◎豪華な講師陣による刺激的な講義
コーディネーターを務めたのは第1回あいちトリエンナーレの総合ディレクターであり、今年度から埼玉県立近代美術館館長に就任した建畠晢さんです。「状況も問題意識も異なる学芸員の方々に、地域資源を活かした美術館活動についてのヒントを持ち帰ってもらうには各館が共通して考えられる枠組みが必要だと思った」と言う建畠さん。それが哲学者の鷲田清一さんによる「アートと社会の関係」をテーマにした講義でした。
鷲田さんは、「どうして現代アートのアーティストがアトリエや美術館ではなく、地域社会や障害者施設などで活動しているのかがかなり前から気になっていた。美術は何かをつくることだったのに、何もつくらないアーティストも増えている。彼らが行っていることの意味について、現時点で考えていることを話したい」と前置き。「若いボランティアとアーティストの協働作業を見ていると、ゆるゆるな空気でやっているのに最後に形や行動になるものはそれしかありえない着地点になっている。ルールや規律で秩序をつくるのではなく、アーティストの強い感覚と密度の高いセンスによって、ゆるゆるなのに知らない間に人が育っている」といった観察などを踏まえながら、アートの役割について示唆に富んだ講義が続きました。

ゼミで講義を行う鷲田清一さん
また、サウンドアーティストの藤本由紀夫さんと作曲家・鍵盤ハーモニカ奏者の野村誠さんという美術館で型破りな活動をしているアーティストによる講義も行われました。藤本さんは、1997年から10年にわたって1年に1日だけ美術館のあらゆる場所を開放して行った体感型展覧会「美術館の遠足」(西宮市大谷記念美術館)について紹介。野村さんは美術館の展示作品を“楽譜”に見立て、子どもや大人が一緒に音楽をつくるワークショップを参加者と一緒に行いました。「楽譜として演奏するために、普通なら数分しか鑑賞しない絵をみんなで長時間かけていろいろな角度から見るのがとても面白い」と野村さん。ルノアールの絵画など本物の作品を使ったワークショップは、絵との関わり方が180度変わる希有な体験でした。
◎SMFの多彩な事業を体験
SMFの事業については、運営の中核メンバーを講師に招いたユニークな講義が行われました。建築家の青山恭之さん(うらわ建築塾代表)と三浦清史さん(JIA埼玉代表)は、美術館のセンターホールに設置された簡易組み立て式の伝統工法を活かした茶室「方丈庵」で、釘を用いない木造建築の継手を紹介。“エア点前”でお茶とお菓子がふるまわれるなど、新たな発想で伝統に光を当てる試みを体感しました。その後も茶室では、俳句朗読と音楽のコラボレーションや、彩のくに創作舞踊団による創作ダンスが披露され、SMFが美術館の空間を活かして取り組んできた事業のプレゼンテーションと講義が行われました。

美術館センターホールに簡易式茶室「方丈庵」が登場した「Air点前でちょっと一息」
また、埼玉在住の作曲家の柴山拓郎さんは、「プロデュース」というソフトを用い、人の話し声など楽器ではないものを使ってヘンテコ音楽をつくるワークショップを紹介。SMFのようなプラットフォームを構築し、美術館が場を提供することにより展開できる活動の可能性を肌で感じられるカリキュラムとなりました。
●アートミュージアムラボ 埼玉セッション
◎第1日(埼玉県立近代美術館)
・ゼミ1「アートと社会」(鷲田清一)
・ゼミ2「メディアとしての美術館」(藤本由紀夫)
◎第2日(埼玉県立近代美術館)
・実地研修イントロダクション「SMFプロジェクトとは?」(青山恭之)
・ゼミ3「臨機応築とアート─方丈庵と〈き〉がわりの假具から─」(三浦清史)
・ゼミ4「展示作品から作曲する」(野村誠)
・ゼミ5「音楽と映像をまとう俳句の通路─『ハイブリッド天国』と『空飛ぶ法王』俳句朗読コラボ」(夏石番矢)
・「Air点前でちょっと一息」(小宮幸子)
・ゼミ6「ダンスが茶室にやって来た!〜コレオグラファーの目による創作ダンス公演について」(藤井香)
・ゼミ7「美術館と現代音楽の新たな接点」(柴山拓郎)
・ゼミ8「埼玉モデルをめざして─みんなでつくるミュージアム─」(山尾聖子)
◎第3日(埼玉県立近代美術館・北浦和西口銀座商店街)
・ゼミ9「美術館空間論─ホワイトキューブを超えて─」(青木淳)
・ゼミ10「今日はあなたも噂のひと:回遊美術館U視察&参加、アーティストトーク」(山本耕一郎)
・ゼミ11「まちと美術館の協働:アートプロジェクトと地域資源・市民参加」(熊倉純子)
※「事業体験プログラム」は、ゼミ3〜ゼミ8、ゼミ10