地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

4月号-No.288
2019.4.1(毎月1日更新)

今月のニュース

平成30年度「公共ホール現代ダンス活性化事業」報告

左上:徳島公演『枯れたる木にも花が咲く』クリエイションの様子
右上:『枯れたる木にも花が咲く』公演の様子 提供:徳島県郷土文化会館あわぎんホール
左下:川根本町公演『川根本町の人々。』クリエイションの様子 撮影:岩本順平
右下:映像ダンス公演『川根本町の人々。』 提供:川根本町文化会館

 地域創造では、平成29年度に「公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)」をリニューアルしました。主な改変点は、アウトリーチと公募型ワークショップを実施するAプログラム/市民参加作品を創作するBプログラム/アーティストのレパートリー作品を上演するCプログラムから選択できるようにした上で、3年にわたって実施できるようにしたことです。今回は今年度参加した15団体から、市民参加作品を創作した徳島県郷土文化会館あわぎんホールと静岡県・川根本町文化会館の取り組みを紹介します。

義太夫とコラボレーション〜徳島県郷土文化会館あわぎんホール

 平成29年度から3年計画でセレノグラフィカ(隅地茉歩、阿比留修一。以下、セレノ)と共にダン活に取り組んでいるのが徳島県郷土文化会館あわぎんホールです。「コンテンポラリーダンスを通じて、何か地域に根付くものができないかと考え、徳島の文化的資源である人形浄瑠璃の義太夫とのコラボレーションを企画しました。徳島洋舞家協会の指導者で日舞や郷土芸能にも詳しい檜千尋さんと相談しながら進め、三味線奏者で義太夫の弾き語りをされる鶴澤友輔さんに参加していただきました」と担当の宇野榮展さん。
 友輔さんは第22回国民文化祭・とくしま2007で瀬戸内寂聴が書き下ろした新作『モラエス恋遍路』の作曲・演奏もしたアーティスト。1年目にはAプログラムとして、セレノと友輔さんが顔合わせするワークショップを実施し、コンテンポラリーダンスと義太夫の語り体験をしました。それを踏まえ、今年度はセレノ、友輔さん、未就学児から70歳代までの市民17名が『壷坂観音霊験記』(妻の不貞を疑う盲目の沢市と夫が治るよう観音詣りをする妻・お里の世話物)をモチーフにした創作『枯れたる木にも花が咲く』に挑戦。3月3日の本番では、セレノと友輔さんの沢市・お里さんの弾き語り、ワークショップで市民が創作したパート、阿波踊りや徳島のわらべ唄など「夢と浮世」が交錯した不思議な世界が展開していました。
 友輔さんは、「夫婦の話なら義太夫を知らない人にもわかりやすいし、夫婦の軽快なやりとりがセレノの二人にはぴったりだと思いました。実はコンテンポラリーダンスに対する知識がなく、漠然と不思議な踊りをするものというイメージだけがありました。義太夫は型がきちんとある世界でそれを守ることが大切ですが、コンテンポラリーダンスはその対極にあって自分の中から動きを引き出してくるもの。それがとても面白くて、二つが水と油にならないようにやりたいと思いました。三味線は太夫や人形の息を感じながら演奏します。今回もセレノさんの息を感じながら演奏し、即興の部分もありました。2年がかりでお付き合いがあり、ワークショップにもずっと付き合ったので、自分の世界に閉じこもらずにこういうことがやれたのだと思います」とコラボレーションの意義について話されていました。
 セレノの二人は、「友輔さんに壷坂から9 つのパートを選んでもらいました。そこをすべて義太夫でやる必要はないと言われていたので、壷坂の物語を身体表現で具現化することはしないでおこうと。沢市・お里を私たちが担い、それ以外は参加者の身体から出てきた正直な身体をそのままステージに置き、いろんなものが平等に並んでいる、いろんな夫婦が、いろんな人生が散りばめられている絵巻物のような舞台にしたいと思いました」と振り返っていました。3年目はセレノの公演が予定されており、この経験がどう生かされた舞台になるか楽しみです。

映像とダンスで綴る『川根本町の人々。』〜川根本町文化会館

 同じく29年度から3年計画でダン活に取り組んでいるのが、SLやトーマス号で有名な大井川鐵道の終点、千頭駅から徒歩15分の川根本町文化会館です。人口約6,800人の川根本町は、世界的IT企業がサテライトオフィスを構えたことで注目されているホットな町でもあります。同会館では、これまでもダン活、ダン活支援事業に取り組むなどダンスに力を入れてきました。今回の3年計画では、1年目の東野祥子さんによるアウトリーチ、今年度の中村蓉さんによる市民参加作品創作、3年目の田村一行さんによる公演が予定されています。
 企画プロデューサーの甲賀雅章さんは、「最初は小学校にアウトリーチを受け入れてもらうのも難しかった。でも、子どもたちがダンスで表現することの自由さを実感し、表現力、コミュニケーション能力が上がるのを目の当たりにして、ガラリと変わりました。世代を超え、生きている背景を超えることができるダンスにとても可能性を感じています。今回は川根のいろいろな人たちが出演する作品にしたいと思い、若い人も楽しめるポップなダンスをつくる中村蓉さんにお願いしました。高校のカヌー部や郷土芸能部、障がい者福祉施設、まちづくりの女性グループなどの出演団体候補と交渉を行いました。下見の時にその活動や茶畑などの風景を見てもらい、本番で使用する映像も撮影しました。見慣れた景色がダンサーの身体が入ることで変わって見える、活性化するのがとても面白いと思いました」と話していました。
 3月10日の本番には、アーティストも含め総勢47人が出演。映像に加え、中村さんが振り付けた高校生たちによる『We will Rock You』、女性グループによる『Eat You Up』、福祉施設の通所者による『浦島太郎』、そしてクライマックスには出演者全員で『海の声』を踊り、会場は大いに盛り上がりました。中村さんは、「下見の時に町で見聞きしたことや出会った人がアイデアの元になりました。今回はいろいろな人が参加するため、習熟度やモチベーションにも違いがあり、工夫が必要でした。それでも参加者に渡した振付が、それぞれ“自分の踊り”になって、その人らしい身体のありようを舞台で披露できて良かったと思います」と振り返っていました。
 合同稽古ができず、クリエーション期間が短いなどの課題を克服するため、練習用の振り付け動画による自主稽古を行うなど、出演団体も協働。川根高校カヌー部副顧問の先生から「カヌーは自分を鍛えるスポーツで、他者に自分を魅せる、見てもらうという意識をもつことが少ないので良い経験になりました。町外出身の生徒も多く、町民の方と一緒に創作したり、観客の皆さんに見てもらえたことは貴重な機会になりました」とコメントをいただくなど、それぞれに手応えを感じた公演となりました。

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