地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

9月号-No.185
2010.9.1(毎月1日更新)

今月のニュース

地域創造フェスティバル2010報告
2010年8月3日〜5日

写真
左上:調査研究結果報告シンポジウム 新[アウトリーチのすすめ]
右上:邦楽デモンストレーション(箏:山野安珠美・市川慎・小池摩美)
左下:ダン活プレゼンテーション(上村なおか&笠井瑞丈)
右下:おんかつプレゼンテーション(ヴァイオリン:小野明子、クラシックギター:益田正洋)



 8月3日から5日までの3日間、東京芸術劇場を会場に地域創造フェスティバルが開催されました。今年で3回目となるこの催しは、地域創造の事業を広く紹介するとともに、公共ホール、自治体職員の方々の今後の事業のアイデア探しやネットワークづくり、情報交換の場となることを目的としています。今回から現代ダンス活性化事業の登録アーティストによるプレゼンテーション、演劇セミナー、情報交流コーナーなどプログラムも拡充され、また連日にわたって交流会が開催されるなど、地域創造の事業の柱のひとつとなってきました。連日の猛暑にもかかわらず、全国から350人以上の方にご来場いただき、関係者の皆様には心からお礼申し上げます。


●これからのアウトリーチのあり方を探る
 オープニングプログラムとして、当財団が平成20・21年度の2カ年にわたって実施した調査研究事業『新[アウトリーチのすすめ]』に関する調査結果を報告するシンポジウムが開かれました。調査を担当したニッセイ基礎研究所の大澤寅雄さんが、地域創造の事業だけで304団体延べ1,200回行われるほどに広がったアウトリーチについて、実施先の学校の先生および参加した児童を対象に実施したアンケート結果を中心に報告。続いて研究会委員で調査も担当した同研究所芸術文化プロジェクト室長・吉本光宏さんの司会により、委員の大月ヒロ子さん、熊倉純子さん、堤泰彦さんと児玉真/津村卓・地域創造プロデューサーが、報告書では伝えきれなかった点について語り合いました。各地に広まったアウトリーチについて改めて問題提起をするとともに、アウトリーチができるアーティストの開拓や育成、コーディネーターの役割と重要性についてなど、活発な議論が交わされました。
  また、調査研究を受けて、「教育との連携」「福祉との連携」をテーマにしたシンポジウムが5日にも開催されました。福祉分野で数々のワークショップを実施している体奏家・新井英夫さん、障がいのある人たちと社会を繋ぐ活動を展開するエイブル・アート・ジャパン事務局長の太田好泰さん、教育学の立場からワークショップ・デザイナーの育成に尽力している青山学院大学教授の苅宿俊文さん、津村プロデューサーが、それぞれの立場から取り組みや考え方を披露。なかでも教育学的見地からアーティストによる芸術のアウトリーチが「コミュニティ形成(仲間づくり)の教育」に大きな役割を果たせるとした苅宿さんの言葉は、シンポジウムの参加者を大いに勇気づけていました。


●今年スタートのプログラム
 今年から本格的にスタートした公共ホール現代ダンス活性化支援事業登録アーティストによるプレゼンテーションは、2日間にわたり、2つの小ホールを会場に行われました。16人(組)のダンサーが30分の持ち時間でパフォーマンスとワークショップを行い、参加者は鑑賞とワークショップ体験を満喫しました。「それぞれのアーティストによって表現も手法も違う。それを凝縮して体験できてよかった」という感想があちこちで聞かれました。
  また、公共ホール演劇ネットワーク事業(以下、演ネット)の関連セミナーでは、演ネットで学校でのアウトリーチを行った南河内万歳一座代表で劇作家・演出家の内藤裕敬さんによる音楽を使ったイメージ遊びのワークショップ(50分)と、苅宿さん、群馬大学教授の茂木一司さんをパネリストに招いた教育学的見地からのワークショップの分析が行われました。
  昨年から、島根県で実施したモデル事業を皮切りに本格的にスタートした邦楽地域活性化事業(都道府県等が主体となり、地域創造が派遣するコーディネーターと共に邦楽演奏家の選定や研修会などを実施し、域内市町村のホールと学校での地域交流プログラム、県のホールでのガラコンサートを実施)についての紹介も行われました。セミナーでは、児玉プロデューサーが、「ワークショップへの期待はクラシック音楽よりも強い。楽器に触るワークショップは地域のホールで行い、間近に演奏する姿を学校へのアウトリーチで見せ、県立ホールでガラコンサートを開催するという3段階の構成を考えた」と事業の組み立て方を説明。モデル事業のコーディネーターを務めた日本音楽集団の米澤浩さんは、「アウトリーチとは何か、学校演奏会とは何が違うのか、実演家が把握し、もっと浸透させていくことが必要。また、しきたりなどわかりにくい邦楽の世界だが、ガラコンサートを実施したことでホールスタッフのワークショップにもなったことが大きな成果だった」と語りました。セミナーの後はモデル事業OBアーティストによるデモ演奏も行われ、邦楽事業の可能性をアピールしました。


※今回から交流にも力を入れ、アーティスト、ホール職員等が出会う連日の交流会に加え、「情報交流コーナー」として、演劇の自主事業を活発に行っている全国15の劇場が出展した公共ホール紹介ブースのほか、さまざまな分野の公演情報を入手できるコーナーや打ち合わせコーナーも設置。


●44組のアーティストがプレゼンテーション
 おんかつ関係のプログラムも充実していました。3日間を通してリハーサル室を会場に行われたおんかつ関連アーティスト44組によるプレゼンテーションでは、アーティストそれぞれが工夫を凝らした楽曲解説、迫力ある演奏が次々に披露されました。
  また、セミナーでは、基礎講座に加え「おんかつ事業の発展形をさぐる〜応用プログラムの事例から」と題した応用講座が開催されました。応用講座では、ワークショップを重ねて地域の伝統芸能である神楽とクラシック音楽がコラボレーションしたオリジナル作品をつくり上げた大分県豊後大野市の『神楽オペラSHINWA〜アマテラスとスサノオ』と、同じ小学校に3カ月間で4回のアウトリーチを行い、また、ホールでも子どもプロデューサー養成講座と題して連続ワークショップを行った福岡県直方市「田村緑と音楽であそぼう」シリーズ(→参照)を紹介。深化するおんかつ事業の可能性を提示しました。最終日のおんかつシンポジウムでは、地元自治体との連携に取り組んできた昭和音楽大学や東京音楽大学、神戸女学院大学の事例を基に、音楽分野における地域と大学の協働について熱心な意見交換が行われました。


●地域創造フェスティバル2010プログラム

●「地域創造フェスティバル2010」に関する問い合わせ
芸術環境部 友田
Tel. 03-5573-4064


ステージラボ群馬セッション報告
2010年7月6日〜9日

写真
左上:ホール入門コース「経験の視覚化布絵づくりと即興劇」(完成した布絵の前で群読)
右上:自主事業T(音楽)コース「アウトリーチって? 〜見学してみよう! ! 」( ピアノトリオ「トリオ・ブラン」による前橋市立天神小学校でのアウトリーチ)
左下:自主事業U(ダンス)コース「からだを動かしてみよう〜自分発見!他人発見!A」(砂連尾理さんが市内の福祉施設に出掛けてワークショップを実施)
右下:自主事業U(ダンス)コース「フィールドワーク〜地域の資産の再発見〜」(小見純一さんと共に前橋市街を散策)



 今回のステージラボの会場となったのは、社会貢献活動にも力を入れている群馬県のリーディングカンパニー「ベイシア」がネーミングライツで支援しているベイシア文化ホール(群馬県民会館)です。前橋中心市街地のまち歩きや群馬の郷土芸能である八木節ワークショップなど、開催地の特徴を活かしたプログラムのほか、ジャンルの垣根を越えてアートから多くを学んだホール入門コースなど、充実したプログラムとなりました。共催者として全面協力をいただきました群馬県、財団法人群馬県教育文化事業団の皆様には、心よりお礼申し上げます。


●アートから学んだ入門コース
 今回のラボで最も特徴的だったのがホール入門コースのプログラムです。ミュージアム・エデュケーションプランナーの大月ヒロ子さんがコーディネーターを務め、ホール職員向けとは思えないほどアートの最前線のノウハウが詰まった研修となりました。なかでも、及部克人さん(武蔵野美術大学名誉教授・ソーシャルデザイナー)をファシリテーター(促進者)に迎えた人間関係づくりから始めるワークショップ「布絵づくりを通じた造形による対話」は大変興味深いものでした。
  ホールでのワークショップと言えば、鑑賞事業に対して音楽・演劇・ダンスなどの体験プログラムを指します。今回のプログラムでは、日本のワークショップが1960年代にまで遡る歴史をもつ取り組みであることや、フィリピンの識字教育に端を発するワークショップ・メソッドが確立されていることを学ぶところからスタート。その後、参加者が知り合うためのワークショップをいくつか体験し、いよいよ本番の布絵づくりがスタートしました。
  それぞれが持ち寄った「思い出の布」について語り合った後、子どもの頃の遊び場を思い出しながらスケッチ。そこからモチーフを拾い出して、多彩な模様の素材や色彩の布を組み合わせた布絵をグループ毎に作成し、最後は布絵の前でモチーフから連想した言葉を綴った詩の群読も行われました。布絵や詩の素晴らしさもさることながら、ファシリテーターの存在により参加者の色々な“気づき”を引き出していくメソッドを体験できたことは大変貴重な体験だったのではないでしょうか。
  また、東京・千代田区の旧練成中学校をリニューアルした話題の施設「アーツ千代田3331」統括ディレクターの中村政人さんの講義も刺激的なものでした。アーティストとしてゲリラ的な活動を展開し、近年は氷見や大館でもアートによる地域再生に取り組んでいる中村さん。「地域の再生には、独自の地域因子に連続的に刺激を与えて、地域因子の逸脱(既存のフレームや価値から脱皮しようとする自信と勇気がみなぎる状態)を促し、その地域因子が成長したい方向に発芽を促すことが必要であり、その連続性とプロセスがアートの活動になる」という締めくくりの言葉は、大変示唆に富んだものでした。


●アウトリーチを中心にした音楽コース
 2度目のラボ・コーディネーターを務めたのは、公共ホール音楽活性化事業のパートナーである日本クラシック音楽事業協会事務局長でおんかつコーディネーターでもある丹羽徹さんです。おんかつのアウトリーチを中心にしたプログラムで、TRIO Blanc(トリオ・ブラン)による地元小学校でのアウトリーチ見学、大人向けアウトリーチ体験などが行われました。ホールの舞台上で行われた大人向けアウトリーチでは、楽曲の鑑賞力の向上とピアノトリオの響きを味わうプログラムとしてラヴェルを取り上げました。53歳の時に交通事故で言語能力、記憶力が低下。代表作『ボレロ』は、最後には自分の名前さえわからなくなったラヴェルが58歳の時に公開演奏した最後の曲という解説に、自ずと参加者の耳は開かれていきました。
  また、地元草津で1980年から30年以上にわたって開催されてきた「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル」について事務局長の井阪紘さんを招いた講義も行われました。「草津を偉大な実験場として日本の音楽会でできなかったことをやってみたかった。演奏家が自分の言葉(演奏)で音楽を語ることのできる場というのが草津の原点だ」と井阪さん。クラシックのマネージメントの現場にはこのフェスティバルから巣立った人も多く、老舗音楽祭のスピリットにふれる時間となりました。


●アートNPO等から学んだダンスコース
 自主事業U(ダンス)コースでは、コーディネーターの大谷燠さんが代表を務めるNPO法人DANCE BOXや、前橋でアートによる中心市街地活性化に取り組んでいる小見純一さんなど、非営利活動を行っている民間の事例から多くを学びました。また、ダンスの高齢者への可能性を身近に体感するプログラムとして、地元の福祉施設で砂連尾理さんによるワークショップが行われ、受講生とお年寄りが一緒に体を動かしました。
  DANCE BOXは、2002年から大阪のフェスティバルゲートに小劇場をつくって活動していましたが、閉鎖により09年から神戸市新長田に拠点を移して再出発。国際共同制作、子どもや障がい者とのワークショップ、ダンスや劇場の力をまちの活性化に繋げていくコミュニティ事業など、その活動は多岐にわたります。「ローカル、グローバル、ソーシャル・インクルージョン、自治体とNPOとの連携」の観点から展開されている意欲的な取り組みに、公立ホールの立場で仕事をしている受講生たちは大いに刺激されたのではないでしょうか。
  また、小見さんは、休業したデパートを再生した「前橋元気プラザ21」内で自らが運営している「シネマまえばし」を皮切りに、約2時間30分にわたって街をフィールドワーク。有志や商店会が中心となって行っている空き店舗を活用した劇場やダンスプロジェクト、ポケットパーク事業などを紹介し、受講生の高い関心をかっていました。


●ステージラボ群馬セッション プログラム表


●コースコーディネーター
◎ホール入門コース
大月ヒロ子(有限会社イデア代表取締役)
◎自主事業T(音楽)コース
丹羽徹(社団法人日本クラシック音楽事業協会事務局長)
◎自主事業U(ダンス)コース
大谷燠(NPO法人DANCE BOX代表)
●ステージラボに関する問い合わせ
芸術環境部 坂田・山本
Tel. 03-5573-4066

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