地域創造

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地域創造レター

News Letter to Arts Crew

4月号-No.276
2018.4.1(毎月1日更新)

今月のニュース

ステージラボ横浜セッション報告

左上:共通プログラムでは、横浜みなとみらいホールが実践するクリエイティブ・インクルージョンの試みから学ぶ。受講生は、視覚障がい者が誘導を受ける体験をアイマスクをして歩くことで体感する
右上:箏・三味線奏者の中彩香能さん(左)と五十川真子さん(左から二人目)が受講生の質問に答える
左中:セレノグラフィカによるワークショップで身体をほぐす
右中:星乃もと子さん(シアターマネージメントプラン代表)からホール表方の基礎を学ぶ(チケットのもぎり方の実践)
左下:共通プログラムで行われた事例発表では、東京藝術大学特任教授の新井鷗子さんがプロジェクトを主導し、横浜みなとみらいホールでも実施された「障がいとアーツ」をはじめとする最新のインクルージョン事業に関する内容を詳しく紹介

 地域創造は財団設立以来、20年以上にわたって人材育成事業に力を入れてきました。その中心となっているのが年度の上半期(7月頃)と下半期(2月頃)の年2 回開催してきたステージラボです。地域のニーズを踏まえ、コースなどの内容をリニューアルしてきましたが、今年度は上半期は地域の文化施設を会場とした地域開催、下半期は利便性に配慮した首都圏開催として実施することとしました。首都圏開催の今回は、今年20周年を迎える横浜みなとみらいホールで開催されました。今回は小ホールなどを貸し切り、2コースが開講されました。共通プログラムでは、横浜みなとみらいホールが取り組んできたインクルージョン事業を題材に議論が行われるなど、充実した研修となりました。

新たなホールの役割〜入門コース

 ホール入門コースのコーディネーターを務めたのは、全国の公立文化施設の動向にも詳しい劇場コンサルタントの草加叔也さんです。今回は、劇場・音楽堂の新たな役割を考えるための基礎知識や事例を学ぶとともに、身体表現の魅力やホール職員としての立ち居振る舞いを学ぶワークショップが行われました。
 まず、基礎知識として昨年6月に改正された「文化芸術基本法(旧・文化芸術振興基本法)」について、「文化芸術そのものの振興に加え、観光・まちづくり・国際交流・福祉・教育・産業等の関連分野との有機的な連携」を図ることや、「年齢、障害の有無または経済的な状況」に関わらず文化芸術を享受できる環境整備の必要性が明記されたことなど、より社会との関わりが問われるようになった公立ホールの現状を学びました。
 そうした開かれた劇場の取り組みとして紹介されたのが、埼玉県の富士見市民文化会館キラリ☆ふじみが行っている広場型事業の「サーカス・バザール」(地域の物産によるバザールとサーカスや大道芸などのパフォーマンスを合体させたイベント)と「ふじみ大地の収穫祭」(市内の農家と連携した物産展、郷土芸能や盆踊り、トークなどが合体したイベント)です。仕掛け人である松井憲太郎館長は、「人口11 万人の富士見市で私たち劇場の人間が繋がれているのは多く見積もっても2,000人ぐらい。残りの10万8,000人の内、ひとりでも多く劇場に足を運んでいただくために何ができるかを考えた。市内で暮らすたくさんの魅力的な生活者が交流し、劇場の楽しさにふれる場としてイベントを立ち上げた」と話します。
 「面白そうだけど、どうしたらいいかわからない」という新人職員たちに対し、松井館長は、「一度、文化施設の外の立場に立って考えてみることが必要。できもしないきれいごとの計画をつくるのではなく、自分たちの問題点を見つめながら、面白いことに向かいたいというチャレンジ精神をもって臨むことが大切」など、親身にアドバイスしていました。
 このほか、チケットもぎり体験やダンスのワークショップも行われるなど、受講生たちは頭と身体を存分に動かしていました。

邦楽に親しむ〜自主事業(音楽)コース

 音楽コースのコーディネーターを務めたのは、地域創造プロデューサーの児玉真さんです。地域創造では、小中学校での和楽器教育が本格化したことを受けて、09年度から「邦楽地域活性化事業」をスタート。今回のラボでは、そうした邦楽への理解を深めてもらおうと、箏・三味線奏者の中彩香能さんと五十川真子さんによる邦楽ワークショップ体験を行うとともに、演奏家と受講生がフランクに語り合いました。
 「邦楽を身近に感じてもらうために、どこまで演出が許されるのかがわからない」という質問に対し、「そのほうが身近に感じてもらえるならやるべきだと思う。歌舞伎でもイヤホンガイドがあるし、馴染みがない分、何とか理解してもらいたいと思っているので、若い邦楽演奏家でそうした演出を嫌がる人はあまりいない」「何を伝えたいかによっても異なる。音だけ聴いてもらう、視覚に訴える、参加型にするなど飽きずに邦楽にふれてもらえるようなプログラムづくりを心がけている」など活発な意見交換が行われました。
 また、音楽コースでも広場型事業が取り上げられ、子育て世代の広場としてユニークな活動を行っている神戸市立灘区民ホールが紹介されました。灘区民ホールでは、「すべての市民にとって価値ある場所」を目指し、事業予算の8割以上を子どもや子育て世代に向けて展開。「0歳からのクラシックコンサート」、ベビーカーで来場できる「ベビクラ!」、近所のママたちが集まって企画・実施するバザール「なだMAMAFESTA」、夏にロビーを開放するクールスポット事業、商店街と連携してアーティストを派遣する事業、クラウドファンディングで資金を集めたアウトリーチ事業などなど。
 ホールの担当者で仕掛け人の衣川絵里子さんは、「子ども向け事業をやるうちに近所のママたちが何かやりたがっているのがわかり、MAMA FESTAを始めた。ベビクラ!はコンサート後にロビーで交流会を行うなどママたちの社交場を目指した事業で、緩やかなテーマ型コミュニティになればと思った。地域の人たちがやりたいことをまずは受け入れて、ホールがもっている勝手なルールはできる限りなくし、問題は一緒に考え、常に新しい視点を提案することを心がけている」と話し、受講生たちは目からウロコの面持ちでした。

インクルージョン事業をテーマにした共通プログラムは、受講生たちが目隠しをして歩く体験からスタート。1ドルコンサートに来場した視覚障がい者からパイプオルガンの形を尋ねられたことがきっかけで始まったという、横浜みなとみらいホールと横浜市立盲特別支援学校とのパイプオルガン体験事業や、東京藝術大学とともに実施している発達障がいの子どもたちを対象にした事業のほか、東京藝術大学特任教授の新井鷗子さんによる最新のインクルージョン事業の紹介も行われました。


ステージラボ横浜セッション プログラム表

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