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今月のレポート

宮城県大河原町
4月号-No.264

えずこホール20周年記念「えずこせいじん祝賀祭」


 「え? このホールって20年間で何百本ものアウトリーチ活動をやってきたの?」
  宮城県大河原町にある「えずこホール」。その20周年記念企画を考えていたスーパーバイザーの藤浩志(*)は、ある日の打ち合わせの席でそう叫んだ。「ええ、数えればもっとありますけど」と、スタッフは事も無げに言う。
  「そういう地域のための活動をしてきたのなら、それを見える化しようよ」。藤の言葉で、企画は大きく動き出す。結果、「えずこせいじん博覧祭」(成人、星人、聖人などをかけたダジャレ)と銘打ち、昨年7月から阿武隈蔵王エリアを舞台に地元の阿武隈急行に乗車するアートイベントや、築100年を超える旧家を使った発表会などさまざまなアウトリーチが行われ、3月4日、5日のフィナーレ「えずこせいじん祝賀祭」で締めくくった。

 開館当初から職員として関わり、現在は館長を務める水戸雅彦は、「この20年で訪れた場所は250カ所、参加したアーティストは音楽・ダンス・演劇・美術など75名、届けたプログラムは717回。今年だけで100本のアウトリーチをやりました。アウトリーチのような活動は外には見えづらいので、映像を撮影し、アーカイブをつくることにも力を入れました」と胸を張る。その活動は、建物のガラス窓に貼られた夥しい数のカードにも“見える化”された。カードには、「2013,03,07七ヶ宿町、ゆりの里、俳優、岩淵吉能」など、活動のすべてが記されていた。
  宮城県の約5分の1を占める2市7町という広域を対象にした施設のため、来場者だけでは住民の5%程度しかカバーできない。「ならば出掛けて、残りの95%に文化を味わってもらおう」と、開館10年目あたりから本数を増やしてきた。
  その集大成が今回の祝賀祭だった。4日、オープニングを飾ったのは、庭の芝山の向こうからリズミカルに登場した子どもダンサーたち。2010年からえずこに通い、学校でのアウトリーチをしてきたダンサーの楠原竜也が子どもたちと2日間ワークショップを行った成果だ。大ホールでは、現代音楽家の野村誠が演出家やダンサー、アートマネジメント研究者という異分野の仲間たちとコラボする「門限ズ」の前衛パフォーマンスに、白石高校吹奏楽部やつくしの会児童合唱団などの子どもたちが絡むステージもあった。10周年記念事業「十年音泉」(レター07年4月号参照)の総合監修・演出も行った野村は、「この地域の子どもたちはたった2日間のワークショップでどんなことも受け入れて本番がやれる。凄いことです」とその柔軟性を讃える。



上:住民総出演にアーティストが加わったグランドフィナーレ ©乾祐綺
下:観客や住民団体が取り囲むステージで、中川賢一×野村誠が2台ピアノのためのオリジナル曲『テキストのたね』(作曲:野村誠&ワークショップ参加者)ほかを演奏

 えずこと13年の付き合いになるピアニストの中川賢一はISOPP+GOODmenとのコラボレーションを披露し、ホールを拠点にするAZ9ジュニア・アクターズ、えずこシアター、えずこ☆ゴスペルなども次々登場。2日間、約10時間にわたってアーティストと住民の交流が続いた。
  「これだけできるのもアーティストと長く付き合っていてお互いに信頼感があるから」と水戸が言うと、アーティストたちも「やりたいようにやらせてくれる遊び場」(音楽家・片岡祐介)、「実験的なことができるから刺激的。明日はペインティングとダンスとピアノのコラボをやります」(中川)、「以前はストリートダンスなんて世の中に認められなかったけど、えずこを通して学校でやれるようになり、世の中に認知された。僕は日本一学校を沢山訪問したストリートダンサーになりました」(ダンサー・ISOPP)と親しみを滲ませる。
  トークショーに登場した83歳になる男声合唱団の高橋良知は、住民たちの気持ちを代弁するかのように、「ホールの開館と同時に男声合唱団も生まれました。当初は楽譜も読めなかったけれど、今では歌うことは生きる喜びであり、生きる力を与えてくれています」と言った。
  ホールのカウンターでは、おにぎりや飲み物を売りながら、ボランティアたちが「ここに来ると色々なことがあって楽しいの」と笑った。
  この20年間で建物の周囲には大型店舗が増え、風景はずいぶん変わったけれど、えずこホールに行けばいつでも不思議なアーティストにも会え、楽しく活動できる。
  「こんな偶然が重なったホールはずっと続かないといけない」
  アーティストたちは口々にそう言った。

(ノンフィクション作家・神山典士)


●えずこホール(仙南芸術文化センター)
1996年開館。大ホール(802席)、平土間ホール(300席可動)、練習室など。開館当初から住民参加型文化創造施設を掲げ、音楽や演劇、ボランティアなどの各種住民グループを育成するとともに、住民企画、住民参加事業、アウトリーチを積極的に展開。宮城県が設置し、当初は大河原町など2市7町の広域行政事務組合から委託された仙南文化振興財団が運営。指定管理者制度への移行に当たり、広域行政事務組合による直営に移行。町長や文化協会の代表などによる運営委員会の下、住民等が参加した「えずこ芸術のまち創造実行委員会」が事業を企画・実施。現在、管理運営費は大河原町が67%、残りを柴田町と村田町が人口割合で負担。

●えずこせいじん祝賀祭
[会期]2017年3月4日、5日
[主催]えずこ芸術のまち創造実行委員会、仙南地域広域行政事務組合教育委員会

*藤浩志 現代美術のアーティスト、秋田公立美術大学アーツ&ルーツ科教授。各地で数多くのアートプロジェクトに携わる。えずこホールとは10周年記念事業「十年音泉」で住民と一緒に舞台美術をはじめさまざまなものづくりを行って以来の付き合い。

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