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今月のレポート

長野県茅野市 茅野市民館

小さな子どものすてきな時間 その8 「0〜3歳に贈るコンサート」

 新宿から特急あずさで2時間余り。茅野駅直結の複合施設として2005年にオープンした茅野市民館が、2018年度地域創造大賞を受賞した。長野県南に位置する人口約5万5千人の茅野市は、八ヶ岳、蓼科高原などを有する諏訪地域最大の都市。そもそもこの施設は、同市を含む6市町村合併による20万都市の実現を目指し、市民・民間主導、行政支援による「パートナーシップのまちづくり」を標榜していた当時の矢崎和宏市長が、そのシンボルとして想定したものだ。
 合併は成らなかったが、施設は生涯学習と地域文化創造の拠点として市民が6年間の議論を重ねて基本計画をまとめ、市100%出資の株式会社地域文化創造とNPO法人サポートCの協働で運営し、主催事業はすべて公募という「茅野方式」を実現した。開館から14年。茅野方式の現場とはどのようになっているのか? 3月30日、サポートCの提案で2011年にスタートした「小さな子どものすてきな時間」の8回目となる企画「0〜3歳に贈るコンサート」を訪ねた。

上:「0〜3歳に贈るコンサート」の楽器体験風景
下:茅野市民館外観

 柔軟に空間を変えられるのが特徴のマルチホールは黒い紗幕で半分に仕切られ、舞台前をパンチカーペットの桟敷に変更。東京の子育てグループと企画した芸大生によるフルート、チェロ、ピアノの演奏&楽器体験は2ステージ(定員計240人)とも満席。お母さんに抱かれた0歳児や小さな子どもたちがカラフルな照明の下、クラシックやディズニー音楽を楽しんでいた。
 この日は視察もあり、コンサート後に市民館ディレクターの辻野隆之さん(市美術館館長、地域文化創造代表取締役)がレクチャー。辻野さんは東京で照明家として活躍した後、文化のまちづくりに可能性を感じ、地域文化創造に応募した逸材(2011年から現職)。「この施設は愛好家だけのものではなく、人間の根幹にある文化芸術に生活の中でふれて、遊べる場にするというのがミッション。事業を積み重ねることで芸術文化はまちづくりに役立つという空気になっていった」と話す。
 市民との関係で転機となった事業のひとつが、2015年から始めた公募による事業提案を公開プレゼンテーションの形で発表する「よりあい劇場」だ。市民が事業を提案しやすくし、さらに想いを共有する場として、3分の持ち時間でやってみたいことのアイデアやパフォーマンスを発表。今では約50〜60件の提案があり、企画会議で揉んで年間25件程度を実施している。
 「市民がどんなアイデアをもっているのか共有できるのが大きい。私たちの役割は、そういうアイデアをリアルなものとして引き出し、市民に返して一緒につくっていくこと。その集大成がこの3月に実現した『変身市場でよみフェスやろうよ!』だ。社員が提案した定期的な市場『つきいちのよいち』と市民による『絵本と読み聞かせのフェスティバル』を合体し、みんなが力を合わせることをやれればと思って実行委員を募ったら120人になった。市民館と関わりのなかった30歳代、40歳代の市民も巻き込み、飲食、ライブなど何でもありで、約3,900人が来場した。クリエイティブなことをやりたいアマチュアが増えている。市民館はそういう人たちがサッカーのように役割を変えながら自由にプレイできるフィールドになれればと思っている」(辻野)
 では、肝心の市民はどのように感じているのだろうか。計画段階から市民館に関わってきたサポートC専務理事の小池真紀さんは、「10周年記念の市民創作劇『となりの縄文人』(構成・演出:西田豊子)をゼロから自分たちでディスカッションしながらつくり、プロセスを共有できたことで、劇場の仕事とは、表現するとはどういうことかが腑に落ちた。サポートCにもいろいろな意見の人がいるが、みんな違うから面白いし、それを言えるのが文化施設のいいところ。私たちの活動としては、市民館で楽しんだ経験をもった人を増やしていくことが重要で、ダシの味がわかるようになるための離乳食教室を開いているようなもの。常に新しい市民が関われるような繋がりをこれからもつくり続けたい」と話す。
 八ヶ岳をフィールドにした「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」が2017年にスタートし、茅野駅周辺をカルチャーゾーンにする構想もあるという。茅野方式を本格的なまちづくりに発展させる新しい挑戦が始まっている。

(坪池栄子)

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