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今月のレポート

東京都調布市
8月号-No.268

調布市文化会館たづくり「クリエイティブリユースでアート!」


 地域のものづくりの現場から日常的に生み出される廃材・端材を新たな資源として見直し、クリエイティビティ(創造力)によって生まれ変わらせるクリエイティブリユース。廃材の利活用というだけでなく、市民の参加により、ものづくりの現場とコミュニティが繋がる新たな手段として注目されている。
 調布市文化会館たづくりでは、長年にわたって実施していた公募展を市民や若い人が参加しやすいアート展として刷新したいと、岡山県倉敷市玉島にクリエイティブリユースの拠点「IDEA R LAB」を開設した大月ヒロ子さんに相談。2013年度に「クリエイティブリユースでアート!」事業を立ち上げ、5年計画で取り組んできた。その3回目となる展覧会が6月17日から7月23日まで開催された。
 調布市は日活調布撮影所などがある映画づくりのまちであるだけでなく、かつての特産品だった布を扱う生地屋や、桐朋学園がある音楽のまちらしい楽器工房など、ものづくりに関わる多様な事業所が立地している。今回はそうした28事業所が廃材の提供に協力。調布北高校美術部、美大生などの公募制作者と招聘アーティスト2組が作品づくりに挑戦した。

上:「フィルム缶にアート!」の素材展示
中:日活調布撮影所の巨大な扉を使った「記憶のはがし方プロジェクト」のインスタレーション
下:招聘アーティストの宮田明日鹿さん(左)と総合プロデュースの大月ヒロ子さん

 この展覧会は、まち歩きをしながら事業所を訪問して廃材集めを体験するワークショップ、作品づくり(好きな廃材を持ち帰り、イメージ画を作成し、作品制作)、会場でのセッティング(2〜3週間)、来場者のための廃材遊び「フィルム缶にアート!」で構成されている。7月15日、作家によるギャラリートークの取材に行くと、入り口には廃材遊びのコーナーが設置されていた。撮影所から提供されたフィルム缶にさまざまな廃材が分類され、誰でも自由に空のフィルム缶に廃材をレイアウトして遊ぶことができる(その写真を投稿すると会場に展示される)。
 展示室には、額縁の端材を駒のように並べてオーケストラに見立てた作品、ヴァイオリン工房から提供された歪みを直すための石膏型をレリーフのように飾った作品など、廃材からイメージを膨らませた作品が並んでいた。廃材を提供した画材奈良堂の渡辺幸男さんは、「人の手がかかるとそれぞれの人で発想の角度が違うからいろいろなものが生まれる。発想を変えることで廃材が生かされ、世界が広がった」と楽しんでいる様子だった。
 招聘アーティストの宮田明日鹿(*1)は、「佐藤家結婚式」という個人的なビデオを廃材として提供したテーラーサトウに興味を引かれて取材。洋服の型紙や結婚式の様子を編み物にした作品を展示。また、「記憶のはがし方プロジェクト」(*2)の阿部大介と鷹野健は、日活調布撮影所の全面協力で、60年の歴史がある撮影スタジオの巨大な鉄扉や機材などの痕跡を「はがし刷り」の手法で写し取り、まるで記憶が物から脱皮したかのようなインスタレーションを展開。「物の表面にインクを塗り込むために触れているとそれを触っていた撮影所の人達と繋がっていく感じがして面白かった。日活というみんなの思いがある対象だったことでイマジネーションが広がると感じた」と鷹野。
 大月さんは、「自分の生業から生まれてくる廃材は愛着のあるもの。だから廃材の出自が重要で、これを手掛かりにすると話しが広がって面白いし、廃材が思いの詰まったものになる。また、アーティストと市民が廃材という同じ素材で作品をつくることにより、どこをどう深めればアートになるのかがクリアになり、アーティストの仕事が理解できる。こうした交流が深まるよう会場でのセッティング期間を長くしている」と話す。
 担当の河合理美さんは、「この事業に取り組んだことで財団と地域の事業所との関わりが密接になった。5年で一区切りだが、今後は『フィルム缶にアート!』を地域の学校に出前したり、福祉作業所や幼稚園といった団体で廃材アートに挑戦してもらう企画も考えたい」と夢を膨らませていた。
 ギャラリートークでは、公募制作者のひとりひとりがその廃材に惹かれた理由を話していたが、その着眼点がそれぞれ異なることに驚かされた。クリエイティブリユースの醍醐味のひとつは、そういう発見力にあるのかもしれないと感じた。


(地域創造編集部・坪池/高澤)


「クリエイティブリユースでアート!─市内の端材や廃材をアートな目線で見直そう─」
[主催]公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団
[会期]2017年6月17日〜7月23日
[会場]調布市文化会館たづくり1階 展示室

*1 宮田明日鹿 1985年生まれ。人の記憶の曖昧さをテーマに、家庭用編み機を改造し、写真を編み物にするなどの可能性を探るニット製作所「宮田編機」主宰。
*2 記憶のはがし方プロジェクト
2014年発足。物の表面(凹凸)にインクを塗り、凸部分を拭き取り、その上から木工用ボンドを塗って乾かし、はがすという「はがし刷り」の手法により、物のさまざまな痕跡(記憶)をはがしとるプロジェクト。家屋の外面を1軒すべて剥がしとった「日本 家」(2016)など。

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