30日 石見神楽「大蛇」黒川能「道成寺」|「糸満大綱引」アイヌの古式舞踊
新作能「夢浮橋」浪曲「藤十郎の恋」「山鹿灯籠踊り」「新野の雪祭り」
31日 「梵天」壬生狂言「桶取」|「新作狂言「クローン人間・ナマシマ」
文楽「曽根崎心中・天神森の段」越中おわら節津軽三味線「海流・天風」奄美の島唄・六調

地域伝統芸能アンケートに寄せられたご感想


第2回 地域伝統芸能まつり
テーマ「恋(こひ)」

このまつりは、宝くじの売上金から助成を受けて実施しました。
今年も多くの方にご応募いただいた「地域伝統芸能まつり」。4万人以上の方からご応募いただきました。応募いただいた皆様、誠にありがとうございました。厳正な抽選を職員総出で実施しました。(来年応募される場合は、必要事項をもれなく記入してくださいね)

さて、当日。午後3時の開演時刻を迎え、静かに明かりが落ち、今年のテーマ「恋(こひ)」にちなんで、「ひょっとこ」と「おかめ」の恋の物語。続いて三味線にカッと眩しいスポットライト。今年はブレイク中の「木下伸市」の「津軽三味線」。超絶技巧で魂を呼び覚ますように激しくバチを打ち続けるさまは、まさに圧巻。さらに「地域伝統芸能まつり」のテーマ曲「曼陀羅21序章」を和楽器ロックバンド「六三四」が演奏し、福井県織田町の「明神ばやし」の子供たちが太鼓で見事に応ずると、お祭り好きは、いてもたってもいられない。出演者総出で、オープニングは盛り上がりました。

【司会】

司会は昨年に続き2回目の葛西聖司(NHKアナウンサー)。そして、女優の竹下景子。それぞれ特色のある各演目を、テーマ「恋(こひ)」に結びつけて、演目を解説される方々と落ち着いた口調でわかりやすく紹介。そのポイントを押さえた紹介に、実際にはなかなか行くことができない日本各地に伝わる民俗芸能について、実際にご当地に行った気分になってご覧いただけたのでは!また、日頃は敷居が高く難しいと思われがちな古典芸能についても、鑑賞方法などのポイントを紹介・解説してくれることで、はじめて鑑賞される方も、親しみやすさを覚えたのではないでしょうか。


30日

石見神楽「大蛇(おろち)」(島根県/益田市)

 有名なヤマタノオロチ伝説が舞台で再現。8体の大蛇(おろち)がスサノオノミコトに食い付き、逆に首を切られて、のたうち回る姿はまさに迫真。常に技を磨いて伝統を守ってきた地域の方々の苦労が感じ取れます。

黒川能「道成寺(どうじょうじ)」(山形県/櫛引町)

 500年の連綿と守り続けてきた山形県の「黒川能」。今回は「上座」の出演で、代表的な能の演目「道成寺」を。地域の言葉を交えた能に、新鮮さを感じた方も多かったのでは。
また、小学校で謡を取り入れているなど、次世代に伝統を繋ぐ努力をされている黒川能をはじめとして、地域の姿について鈴木健二さんが解説。地域伝統が身近に感じられました。

「糸満大綱引」(沖縄県/糸満市)

 連続テレビ小説でおなじみの平良とみさんが、雌綱(ミージナ)、雄綱(ウージナ)を繋ぎあわせ、太さ1.5メートル、長さ180メートルの大綱を引き合う勇壮なお祭りを映像で紹介。

アイヌの古式舞踊(北海道)

 鳥、昆虫など自然を描写した踊りを披露。自然とともに生きてきたアイヌの方々の姿に感動。
加えて、なかなか煮え切らないカップルを結びつける踊りなどなど、常に変わらない人間の恋模様を描いた伝統芸能を演じて頂きました。

新作能「夢浮橋(ゆめのうきはし)」作:瀬戸内寂聴

 源氏物語の世界を描く新作能。匂宮が浮舟の衣装をさっと脱がすさま、その瞬間にうっすらと会場に色気が広がる。超一流の能楽師にしてはじめて訴えられる芸の世界を堪能。
声明(しょうみょう)が遠くから響き、主人公の内面が動揺する姿を描いているようで大変感動的。

浪曲「藤十郎の恋」

 現代の浪曲を極めた「春野百合子」さんが、芝居役者の色男に翻弄される人妻の姿を物語りました。わずか3人のアンサンブル。表情豊かな「声」と「語りの間」の芸術に、会場が静まって固唾を飲んで見守ります。

「山鹿灯籠(やまがとうろう)踊り」(熊本県/山鹿市)

 一転、大勢の女性が会場に。舞台にも客席にも、美しい灯籠をかぶった女性たちが集まり、優雅な舞を踊ります。一段と暗くなった会場にボッと光る灯籠に、恋心も燃え上がる・・・。
あまりの美しさに夢心地の会場で、つられて司会の竹下景子さんも灯籠をつけて参加。

「新野の雪祭り」(長野県/阿南町)

 長い時間をかけて演じられる雪祭りを短縮して再現。日本に古くから伝わる「恋(こひ)」の姿を。また、子供たちも祭りの中で「しっとで」という演者として参加。次の世代にしっかりと伝統が根付いている姿が。



31日

「梵天(ぼんでん)」(秋田県/横手市)

 ホラ貝とお祭りアンコ(祭り好きの若い衆)の掛け声で会場は一気に熱を帯びる。長さ5メートルの巨大な梵天が、社殿に突入しようと舞台に駆け上がります。舞台に集まった10本の梵天の姿に会場の全員があまりの迫力に唖然。

壬生狂言(みぶきょうげん)「桶取(おけとり)」(京都府/京都市)

 せりふのない芝居でしたが、出演者でもある八木喜久男さんと梅原猛さんが、「泣く」や「怒る」などを示す基本的な所作について身振りを交えて解説しましたので、より理解しやすかったのでは。幽玄な演者の姿とカンデンデンと鳴らされる囃子の音色が印象的でした。

新作狂言「クローン人間・ナマシマ」作:梅原猛

 風刺の効いた新作の登場。「茂山千之丞」さんのキートン博士役は姿だけでも、笑いが止まらない。しかし、最後には、技術偏重の世界観に警鐘を、梅原節は今年も快調でした。

文楽「曽根崎心中・天神森の段」

 人間国宝たちの共演が、有名な曽根崎心中の物語のクライマックスを見事に再現。
大夫のせりふの絶妙な間と、三味線の心に残る響き、文楽人形の生き生きとした動きが、恋の悲しさを痛切に描ききりました。

越中おわら節(富山県/八尾町)

 最近とても有名となっている「おわら風の盆」を再現。息のあった踊り手たちの動きが、前の演目で散り散りになった心をなごませます。「おわら節は、道を隔てるごとにメロディーが違う、それこそが非ヨーロッパの音楽の楽しさ」という話も作曲家の三枝成彰さんからありました。

津軽三味線「海流・天風(あまかぜ)」

 三味線の「木下伸市」さん再度の登場です。
ジャズの「仙波清彦」さんとクラシックの奏者たちとのセッションは、やさしさと激しさの対比が楽しい音楽として結実しました。

奄美の島唄・六調(ろくちょう)(鹿児島県/名瀬市)

 奄美地方の婚礼を完全に再現。数日前に奄美で婚礼をあげたばかりのカップルをお招きして会場はにぎやかで華やかな雰囲気に。最後の六調では客席からも踊りに参加するハプニングがあり客席と一体となって2日間の最後を締め括りました。

30日、31日ともに予定終演時間を超過して、終了しましたことを、お詫び申し上げます。




地域伝統芸能アンケートに寄せられたご感想

全ての演目が素晴らしく、この機会を得られたことは、大変幸せです。あらためて日本の伝統芸能の素晴らしさ、奥深さを感じました。
伝統芸能はその土地、地方に行かないとなかなか見られないので、東京で見られてとても感動した。次回も是非企画してほしい。
北海道から沖縄まで受け継がれた芸能、地方色が豊かで楽しく拝見しました。
小学生の後継者も出演してとても良かった。ますます伝統芸能が栄えるよう、そして、日本の文化に触れる機会を作ってください。
地域振興のためにも、とても良い企画だったと思います。とても楽しく見せていただきありがとうございました。
関心はあっても、そのチャンスの少ない日常です。楽しくかつ有意義な時間を過ごさせて頂きました。来年を楽しみにしています。
地域のまつりが背景美術の効果もあり、自分自身も祭りに参加しているくらい迫力があり、地元の人たちの気持ちがこちらにまで伝わってきました。いつか、それぞれの県に行って本当に参加したいです。
本当に本当に楽しかったです。多くの関係者に感謝申し上げます。ありがとうございました。病身でなかなか旅に行けませんので、すっかり旅をしたような気分です。又、企画して下さい。来年もぜひNHKホールで旅をしたいと思います。
大変楽しく拝見しました。宝くじはこういう分野にも使われていることも初めて知りました。今後も伝統芸能と地域文化に触れる機会をつくっていただきたいと思いました。