一般社団法人 地域創造

平成29年度「公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)」報告

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写真:公演「太陽と月と奇跡の子ども達」(左:クリエーションの様子/右:ゲネプロ)
提供:土佐清水市立市民文化会館くろしおホール

 地域創造では「公共ホール等活性化支援事業」として、音楽・ダンス・演劇・邦楽・美術の各ジャンルで地域と連携した事業を展開しています。例年、秋口から各地での事業が本格的に始まります。今回は、新要綱によって実施されている本年度の「公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)」の模様をレポートします。

ビジョンに基づいてプログラムを選択し実施

 これまでのダン活では地域創造の登録アーティストとコーディネーターを地域に派遣し、1週間程度で地域交流プログラム(アウトリーチと公募型ワークショップ)と公演を実施してきましたが、地域のニーズを踏まえ、右図のように要綱の改変が行われました。
 主な改変ポイントは、①アウトリーチと公募型ワークショップを実施するAプログラム/市民参加作品を創作するBプログラム/アーティストのレパートリー作品を上演するCプログラムから選択できるようにした上で、3年にわたって実施できるようにしたこと、②B・Cプログラムの公演経費の一部を当財団が負担することとしたこと、②これまでダン活を実施したことのある団体も再度応募できるよう応募資格を緩和したことです。
 今年度は13団体(Aプログラム4団体、Bプログラム7団体、Cプログラム2団体)が参加し、その内、過去にダン活を実施した団体も6団体となりました。

 

公共ホール現代ダンス活性化事業(ダン活)の仕組み

公共ホールからの応募

 

地域創造

選考のうえ実施団体を決定

全体研修会の開催(対象:実施団体)
●事業の企画・制作のためのゼミ
●登録アーティストによるプレゼンテーション(ワークショップや作品のデモンストレーション)

 

実施団体

●事業の実施計画案を作成・提出(実施希望時期、派遣希望アーティストを選定)

 

地域創造

●各実施団体の実施時期、派遣アーティスト、担当コーディネーター等を決定

派遣(アーティスト)

事業の実施に向けてアーティスト、コーディネーター等による個別研修(現地下見)を実施

 

実施団体

Aプログラム

(地域交流プログラム)
①学校や福祉施設等でのアウトリーチ(3回以上)
②公募型ワークショップ(1回以上)
①②を合わせて4~5回

Bプログラム

(市民参加作品創作プログラム)
①公募型ワークショップ(1回)
②市民参加作品の有料公演(1回)

Cプログラム

(公演プログラム)
①公募型ワークショップ(1回)
②アーティストのレパートリー作品の有料公演(1回)

 

翌年度以降、他プログラムの実施が可能

 

公共ホール現代ダンス活性化支援事業

閉校する学校の児童と創るダンス公演~くろしおホール

 新要綱の特徴となっている市民参加型のBプログラムに挑戦したのが、高知県の土佐清水市立市民文化会館くろしおホールです(期間:8月15日~18日、24日~28日)。くろしおホールは、平成21年度までNPO法人とさしみずが指定管理者として運営しており、21年度にはバリトンの吉川健一さんによるおんかつを実施しています。NPO法人の解散に伴い、現在は土佐清水商工会議所が運営していますが、24年度にはダンスデュオのほうほう堂によるダン活にも挑戦しました。今回の事業を担当した柿谷幸起さんはNPO時代からくろしおホールに携わり、おんかつで事業制作の面白さに目覚めた“生え抜き”です。
 「ほうほう堂でコンテンポラリーダンスの事業を初めて行ったときには、期待と不安が入り交じっていましたが、結果として参加者それぞれの心に残るものになったと思っています。さまざまな事情でダン活支援に応募できなかったのですが、今回、過去にダン活を実施した団体も再応募できることになり、5年前に置き忘れたバトンを再び拾うチャンスだと思って参加しました。市民参加型事業はくろしおホールの方針でもあり、今年度で閉校が決まっている中浜小学校の子どもたち全12人と一緒に作品がつくれればと思いました。アーティストには、子どもたちを上手くリードしてくれそうな赤丸急上昇さんを選びました」と柿谷さん。
 赤丸急上昇は赤松美智代さんと丸山陽子さんによる愛媛県松山市が拠点のダンスユニット。映像とコラボレーションする内面的な世界とエネルギーを外に放出するコミカルで元気な世界が一体となったパフォーマンスを行い、身体を動かすことを楽しむワークショップにも定評があります。今回の創作では、子どもたちと計5回(各2時間半)のクリエーション・ワークショップを実施しました。二人の軽妙なトークで始まった公演では、赤松さんが子どもたちの記憶をひとつひとつ辿るように中浜小学校の木造校舎を巡る新作ダンス映像や、子どもたちの学校生活をモチーフに生きる力を鼓舞するダンスが披露されました。赤松さんは、「ホールに居ながらにして小学校を感じてほしいと思い、映像をつくりました。子どもたちとのダンスは、その瞬間にしかできない、子どもたちの今を切り取ることができて創作意欲を掻き立てられます。今度は70歳以上のおばあちゃんたちと群舞をつくってみたいです」と参加型ダンスの可能性を改めて感じていました。子どもたちにとっても、地域にとっても、アーティストにとってもダンスで記憶を刻む貴重な経験になったのではないでしょうか。
 今年度はこうした市民参加型の取り組みが全国7カ所で行われます。スケジュールは当ウェブサイトにアップされていますので、近くで行われる新しいダン活の取り組みをぜひ視察していただければと思います。

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