一般社団法人 地域創造

沖縄県志頭村ほか 沖縄戦の“事実”を伝えたい 演劇『洞窟(ガマ)』作家 嶋津与志インタビュー

 沖縄戦50周年を迎えた今年、「慰霊の日(6月23日)」に演劇『洞窟(ガマ)』を見た。最初の、そしておそらくは最後の、実際のガマ(洞窟)、ガラビ壕を舞台にしたその公演は、見るものすべてに大きな感動を与えてくれた。戦争とは何か、生とは何か、を考えずにはいられない。
 
『洞窟(ガマ)』の脚本を担当した作家嶋津与志に話を聞いた。

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 「記録映画フィルムには地下の部分が映っていない。しかし、沖縄戦を描くにはこれでは困る。沖縄戦には米軍と日本軍の攻防戦という単純な構図ではとらえられない、沖縄住民がからんだ三つ巴の葛藤劇があった。住民のほとんどは、珊瑚礁の地下に無数に点在するガマ(洞窟)の中で数カ月もの避難生活を送った。沖縄戦の実相は、まさに地下の闇の中に埋もれている。この地下の闇の中の生と死の戦争ドラマをいかにして描くか、というところから演劇『洞窟(ガマ)』の構想は生まれた」
 
 演劇『洞窟(ガマ)』は、1980年8月15日にパモス青芸館(東京)でプロデュース公演したのを皮切りに、1983年11月までに全国200カ所で公演を実施し、高い評価を得ている作品だ。戦後50周年を記念して再演が企画され、ガラビ壕での上演が浮上した。
 
 「戦後50周年にふさわしい『洞窟(ガマ)』にということで、全面的に書き直した。沖縄戦では4人に1人が犠牲となった。前回は、集団自決がどうして起こったのか、いかにして死んでいったのか、が主なテーマだったが、今回は、逆に、生き残ってガマから這い出してきた人たちに焦点を当て、いかにして生き残ったのかをテーマにした」
 
 沖縄芝居はアドリブが多い。5月30日以降、ガラビ壕での公演をはさみ沖縄県内の学校やホールで40回ほどの公演を行っているが、「最初のものと最後のものではすっかり変わってしまった」という。「役者にとっては、ガラビ壕の公演は大きな転機だった。舞台そのものが持つ迫力に負けないように、自分自身で自分の役を問い詰め、ぎりぎりのところで演技をしなければならないから」
 
 若い人にも興味を持ってもらうために、「舞台に若者を3人登場させ、彼らとディスカッションしながら、理解できない台詞はできるだけわかりやすく表現するようにした」
 
 ガラビ壕以外の公演では、「平和教育として若い観客に沖縄戦の実態を知らせるために、スクリーンを使い艦砲射撃や馬乗り攻撃などの状況が理解できるように配慮」している。沖縄戦史、沖縄近現代史を専門とする研究者であり、沖縄県立博物館の学芸課長も務める嶋ならではの配慮だ。同じ手法は、8月3日~5日に東京で公演した『アンマーたちの夏-女たちの沖縄戦記録-』でも取り入れている。
 
 「沖縄戦の事実を伝えるものがあまりにも少ない。沖縄では、米兵よりも日本兵の方が怖かったと口をそろえて語られるし、軍隊は住民を護らなかったという証言も一致している。こうした戦場の実態や軍隊の体質が一般住民の眼前で暴露されたのが沖縄戦であり、これはアジアとの共通体験でもある。しかし、この事実認識が、まだまだ国民共有のものになっていない。だから、作家・嶋津与志として、博物館の学芸員・大城将保として、あの手この手で、まず“事実”を伝えている。沖縄戦を知る最後の世代としてのわれわれの義務だと思う」
 
 一旦途絶えていた映画『GAMA』が地元の篤志家の協力で実現するそうだ。8月下旬にクランクインする。「『ひめゆりの塔』など、沖縄戦についても東京発の映画が当たり前の現実に一石を投じることができれば。『GAMA』は、沖縄の脚本、沖縄の役者でつくる。うまくいけば収益を基金にして、沖縄の文化創造機構をつくりたい。映画、音楽、芝居、みんなぶちこんで・・・」
 
嶋の目は、輝いていた。

(中村広幸)

 

●嶋津与志(しま・つよし)プロフィール
1939年、沖縄県玉城村に生まれる。小説家・脚本家。本名大城将保(おおしろ・しょうほ)。早稲田大学教育学部卒。現在は、沖縄県立博物館主幹兼学芸課長。専門は、沖縄戦史、沖縄近現代史。主な著書に『琉球王国衰亡史』(岩波書店・1992)、『かんからさんしん物語』(理論社・1989)、『沖縄戦』(高文研・1985)、『沖縄戦を考える』(ひるぎ社・1992)があり、戯曲・シナリオも手掛ける。1983年に始まった「子供たちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会」の1フィート運動により制作された『沖縄戦・未来への証言』のシナリオも担当している。

 

●1995年の演劇『洞窟(ガマ)』について
『洞窟(ガマ)』実行委員会(名護市、名護市教育委員会、沖縄市、沖縄市教育委員会、沖縄市文化協会、浦添市、浦添市教育委員会、糸満市、糸満市教育委員会、平良市、平良市教育委員会、石垣市、具志頭村、具志頭村教育委員会)主催。沖縄県共催。作・嶋津与志、演出・幸喜良秀、音楽・海勢頭豊、企画制作・下山久。キャスト・平良とみ、山崎一雄、北村三郎、田嶋基吉、新里奈津子、大田守秀、當間武三、高宮城六江、宮里京子、島袋也子、コロス(喜納兼仁ほか)。
5月30日、沖縄市民会館にて第1回公演を実施、以後40回の公演を行う。6月23日、24日はガラビ壕で公演。財団法人地域創造の助成事業(ネットワークサポート・プログラム)の対象でもある。(文中、敬称略)

 

 

地域創造レター 今月のレポート
1995年9月号--No.5

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