一般社団法人 地域創造

東京都世田谷区 シンポジウム「劇場をつくる 劇場を核とする地域振興の試み」

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 日本建築学会と世田谷区コミュニティ振興交流事業団の主催によるシンポジウム「劇場をつくる・劇場を核とする地域振興の試み」が、世田谷区にある三茶しゃれなあどと4月に開場を予定している世田谷パブリックシアターを会場に2月21日開催された。

 

 このシンポジウムは、急速に増加する施設数の充足が注目を集める反面、施設のつくり方、事業や活動、組織や人材といった面で論議の絶えないいわゆる「公立ホール」について再考する機会として企画された。特に今回のシンポジウムでは、劇場の企画、計画そして建設と10年以上の歳月をかけて立ち上げられてきた世田谷パブリックシアターの見学もスケジュールに組み込まれていたことから劇場関係者、行政担当者、建築関係者そして世田谷区民など長時間の催し物にもかかわらず参加者の総数は約200名にのぼった。

 

 この催しは大きく2部に分かれており、第一部では田村忠雄(元神奈川県立青少年センター副館長)、衛紀生(舞台芸術環境フォーラム代表)、佐藤信(世田谷パブリックシアターディレクター)、斎藤義(建築家)、清水裕之(名古屋大学教授/司会)各氏の報告と議論を中心としたシンポジウムが行われた。

 

 この中で衛氏は、公共セクターが「劇場・ホール」施設を持ち、舞台芸術と関わる上では芸術的な評価と経済的な評価に加え、潜在的な地域の感覚を掘り起こし、個々のニーズに合わせた多様な価値観を寛容していく社会的な評価が求められることを強調した。さらに、地域社会と舞台芸術の相互コミュニケーションの重要性と、それを支援する後方部隊としての行政の位置づけについても話された。

 

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 また、これから開館を迎える世田谷パブリックシアターディレクターの佐藤信氏は、この劇場が今後担っていく役割を施設名称に付加された「パブリック」という言葉に込めた2つの意味を含めて説明をされた。その1つは生活拠点の中に地域の賑わいや交流、市民活動の場をつくる「実」のパブリック、そしてもう1つは市民社会の中で人々がそれぞれの役割を離れて同等の立場で物事を考えたり交流する場としての「虚」のパブリックである。これまでの多くの公立ホールがマスとしての評価に重点を置いてきたのに比べ、個人的な呟きを受け止める器としての役割にも十分に配慮するというのがこのパブリックの意味のようだ。

 

 さて、引き続いて行われた第二部は世田谷パブリックシアターの視察を中心とした見学会であった。この見学会ではシアタートラムで演出家の松本修氏のワークショップの手ほどきが行われたり、主劇場では技術スタッフによる舞台機構設備のデモンストレーションなど盛り沢山の見学会となった。

 

 世田谷パブリックシアターは4月5日の開館記念式典からいよいよ本格的な活動が始まる。新しい時代の新しい公立ホールのありかたについて、その舵取りは今後も一層注目されることだろう。

草加叔也(劇場コンサルタント/空間創造研究所代表)

 

●世田谷文化生活情報センター(愛称くりっく)

 

[所在地]東京都世田谷区太子堂4-1-1
[運営]財団法人世田谷区コミュニティ振興交流財団
[建物]キャロットタワー(地下1F、地上26F)のうちの地下4F~地上9F
[劇場]主劇場「世田谷パブリックシアター」(オープン形式使用:513~552席/プロセニアム形式使用:540~612席)/小劇場「シアタートラム」(可変型:288m2、最大248席)
[劇場オープン]4月5日(開館記念式典『三番叟』野村萬斎ほか)
[5月公演予定]勅使川原三郎+KARAS『Q』(世田谷パブリックシアター)、『ライフ・イン・ザ・シアター』(佐藤信演出、石橋蓮司・堤真一出演、シアタートラム)。また6月には「子どもの劇場」と題してさまざまな公演、ワークショップを企画。
[劇場関連施設]稽古場3、スタジオ1、作業場3(道具・衣装制作など)
[生活工房施設]セミナールーム2、ワークショップ室2、メディア工房、情報プラザ、印刷室など

 

地域創造レター 今月のレポート
1997年4月号--No.24

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