一般社団法人 地域創造

制作基礎知識シリーズVol.1 映画上映会を実施する① 準備編

 公共ホールとその関連施設を上手に使えば、映画上映会から、演劇公演、コンサート、美術展、イベント、ワークショップ、各種講演会などさまざまな事業を実施することができます。そこで今回から「制作基礎知識シリーズ」と題して、事業担当者のための文化事業ハウツーを連載することにしました。その第1回として取り上げるのが映画上映会です。映画上映会を実施するために必要な設備やプログラムづくりの考え方などを今号と次号で連載します。講師は、海外フィルム・ライブラリーをもち、非営利上映会への貸出なども行っている財団法人国際文化交流推進協会の専門員、岩崎ゆう子さんです。

 

 公共ホールで映画上映会を実施するためには何が必要かをテーマに、(1)準備編(設備など)、(2)プログラム企画編に分けて基礎知識を整理したいと思います。映画を上映するためには、一番にフィルム、次いでそれを上映するための映写機、スクリーン、会場が必要になります。それぞれの項目について知っておくべきこと、留意すべきことは次の通りです。

 

 

●フィルムの種類

 

 ここでは35ミリ、あるいは16ミリのフィルムを借りて上映会を開催するということを想定して書きます。手軽だということでビデオでの上映を考えるところもあると思いますが、ビデオでの上映はまた別にさまざまな問題がありますので、ここではフィルムでの上映に限ることにします。劇映画だと大体35ミリフィルムである場合が多く、ドキュメンタリー映画や実験映画などは16ミリが多くなります。

 

 35ミリにしても16ミリにしても、オリジナルのネガからポジフィルムをつくって、(外国映画の場合)それを輸入して、台詞を翻訳して、字幕を打ち込むという行程を経て貸出用(配給用)のフィルムができるわけですから、その間にはかなりの手間と経費がかかっていて、フィルムそれ自体がとても貴重で高価なものです。その上、フィルムはちょっとしたことで傷ついたり、切れたりしてしまうものですから、取り扱いには細心の注意が必要です。

 

●フィルムの事故処理

 

 フィルムが切れたり、裂けたり、キズがついたりした場合、必ず配給元(貸出元)に連絡する必要があります。フィルム缶の中に、フィルムの状態を記録する用紙が入っていたり、上映報告書の提出が義務づけられている場合には、次に上映する人のために必ずフィルムの状態を記入してください(映写技師に頼むとよい)。

 

 

●上映作品を探す

 

◎情報を得る

 

 基本的な資料として役に立つのはキネマ旬報社が発行している『映画ビデオイヤーブック』です。たとえば今出ている『映画ビデオイヤーブック1997』には、1996年に公開された日本・外国映画がすべて解説付きで出ています。製作会社も配給会社も出ているし、配給会社の電話番号まで出ています。これを2、3年分まとめて手に入れてめくってみると上映会のいいアイデアが沸いてくるかもしれません。それにこの本はその年の国内の主要な映画祭で上映された作品も網羅していて参考になります。類似のものとして、ぴあ株式会社が出している『シネマクラブ』(邦画編・洋画編)がありますが、これは「劇場、ビデオ、LD、テレビ、いま日本で見られる映画最強ガイド」とあるとおり、新旧非常に多くの作品がリスト・アップされているので、前述の『映画ビデオイヤーブック』とあわせて資料としてあれば心強いでしょう。

 

 「非劇場用」のフィルム、つまり映画館用ではなく、公共施設用の映画を専門に配給(貸出)しているところもあります。こういうフィルムについては市販されている資料がないので、各々の団体に問い合わせて資料を得るしかありません。私が所属している財団法人国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)は東南アジア各国の映画やロシア・ソビエトの1930年代までの映画、韓国映画やポーランド映画などを貸し出したり、公共的な映画上映に関する情報を掲載した季刊紙『フィルムネットワーク』の発行も行っています。ほかにも、たとえば、外国の文化機関でドイツ文化センター、韓国文化院などはかなり大規模なフィルムライブラリーをもっていて、自国の文化紹介事業の一貫としてフィルムを貸し出していますし、山形国際ドキュメンタリー映画祭は映画祭終了後も上映したフィルムを確保して、上映を希望するところには貸し出しています。映画祭で字幕を付けたフィルムを一定の期間国内において巡回するということも最近はよく行われています。

 

●参考書籍と発行元
『映画ビデオイヤーブック1997』(発行:株式会社キネマ旬報社)4300円
『ぴあシネマクラブ1997-1998(邦画編)』(発行:ぴあ株式会社)3201円
『ぴあシネマクラブ1997-1998(洋画編)』(発行:ぴあ株式会社)3209円
『平成8年度文化事業企画連絡会:映画上映ネットワーク会議 報告書』(発行:国際交流基金、編集:エース・ジャパン/入手したい方はエース・ジャパンまで340円分の切手をお送りください)
季刊『フィルム・ネットワーク』(編集発行:エース・ジャパン/現在7号まで発行)

 

 

◎フィルムを借りる

 

 映画館に映画(フィルム)を配給しているのが配給会社です。映画館でかかっているフィルムも公共ホールで上映するフィルムもモノとしては同じですから、公共ホールも配給会社からフィルムを配給してもらえばいいのです。そこで、何を(どの作品を)上映したいのかということがわかっていれば、前述の『映画ビデオイヤーブック』や、映画館で見て気に入った作品ならその映画のチラシなどで配給会社を調べて交渉すればいいわけですが、配給会社が映画館でかかっているすべての作品を公共ホールに貸してくれるわけではありません。公共ホールは映画館ではないのですから、同じ地域の映画館での上映が決まっている作品を同じ時期には貸してくれないし、公共ホールでそういう作品を上映する意味もないでしょう。これは、とても当り前のことですが、公共ホールで映画を上映するときには決して忘れてはならない大切なことでもあります。地域にある映画館や自主上映グループとどのような連携をとって上映会を開催するか、このことについては次回また詳しく書きたいと思います。

 

 配給会社に限らず、どこからフィルムを借りるにしても、フィルムをもっているところと交渉をして、送付してくれるよう話をつければ、フィルムは会場に到着しますが、フィルム1本あたりのレンタル料はいくらぐらいなのかということも気になるところでしょう。これは千差万別で、作品がまだ公開されていない、あるいは公開中のものだと高いとか、「非劇場用」の作品でもフィルムの巡回で映画祭経費をまかなおうとする場合には高いとか、作品によってかなり違いがあるので一概にはいえません。この辺の事情については、昨年エース・ジャパンが国際交流基金、福岡市総合図書館と共催で開催した「映画上映ネットワーク会議」でかなり詳しく話し合われ、報告書もできていますので、そちらを参照していただければよいかと思います。

 

●フィルム・レンタル料
フィルムのレンタル料は千差万別ですが、エース・ジャパンが貸出している作品の場合、そのフィルムの提供団体によって価格が異なり、現在1作品につき(60分以上)20,000円~100,000円まであります。

 

●第2回映画上映ネットワーク会議
1997年8月25日、26日、萩市にて開催(お問い合わせはエース・ジャパンまで)。

 

●会場づくり

  会場には映写機とスクリーン、それらを操作する映写技師が必要です。公共ホールの場合、35ミリの映写機があるところというと、客席数が1000席以上とかの大きなホールであることが多いのですが、映画の上映で1000席を埋めるのはかなり難しいと思います。映画の上映には多くても300席ぐらいのホールが適当だと思います。実際、昨年できた福岡市総合図書館の映像ホールは246席だし、川崎市市民ミュージアムの映像ホールは270席です。

 

 最近、座席数が500席前後の中小のホールもかなりつくられているようですが、そういうところで35ミリの映写設備を備えているところはあまり多くないようです。これから、この程度のホールをつくられるところにはぜひとも35ミリの映写設備を入れていただきたいと思います。

 

 映写設備がないとなると、映写機やスクリーンを借りなければいけないし、映写技師も探さなければいけません。これらを確保するには、地元の興行組合に相談する、各地にある「映画センター」という公共施設などでの上映を専門的にやっている団体に相談する、各地の映画祭などに機材や映写技師を派遣している会社に頼む、などいくつかの方法があります。このいずれの方法がよいかということも、地域によってそれぞれ事情は異なるので、まずは近隣で上映をやっているところにどうしているかを聞いてみるのがいいでしょう。

 

 会場が整って、映写機もスクリーンもあって、映写技師さんもいて、上映すべきフィルムがあれば、上映はできます。けれど、それだけでは上映会は成立しません。次回ではさらに、上映会を充実したものにするための、ソフトの部分について書くことにします。

 

●財団法人国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
〒107港区赤坂2-17-22、赤坂ツインタワー1階
Tel. 03-5562-4422 Fax. 03-5562-4423

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