一般社団法人 地域創造

新年のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。

1998年1月1日 財団法人地域創造

 

理事長あいさつ

 

◆金融機関の倒産をはじめとして、21世紀の仕組みづくりのための清算と産みの苦しみが続いています。地域の皆さまには、本当に苦しく、厳しい時期をお過ごしのこととお察し致します。特に、芸術文化関係につきましては、義務的経費ではないため、予算的にもカットされやすく、お困りのところも多いと思います。こういう時期だけに、ある程度は致し方ないにしても、そこは自ずと限界があります。地域づくりは10年先、20年先のことまで考えて行うものであり、芸術文化が発展してきた芽をつみ、ひいては地域の活力をそぐようなことばかりもしていられないと思うのですが、いかがでしょうか。

 

◆現在の行政改革法案の流れを見ましても、地方分権が実態として進んでいくことは明らかです。それも、単に行政システムを変えましょうというのではなく、今回は、市町村が動きやすくなるような財政システムに変えていきましょう、というところにまで踏み込んだ議論が行われると思われます。そうなると、これからの地域は、自分たちの文化をどのようにアピールするかを、自分たちで考え、実行することができるようになり、その分、地域の個性に立脚したかたちで行動することを強く求められるようになります。地方公共団体が、地域の魅力を発揮できるような施策をとっていくことはもちろん必要ですが、住民の方にもどんどん発言していただいて、住民からアクションが起きてくるようにならないとやっていけない時代になるのではないでしょうか。

 

◆そういう意味でも、昨年、雑誌で特集しました「文化ボランティア」は注目すべき事象ではなかったかと思います。ホールの運営をサポートしていただくというだけでなく、ボランティアの方々が核になることで、一般住民の方にホールの活動が広がっていくのは大変素晴らしいことです。実際には、ホールとボランティアの役割分担など、解決しなければならない問題も多いと聞きますが、とどのつまり、これを機に館とボランティアが徹底的に話し合いをすればいいのです。こうした話し合いが、町づくりにも必ず生きてくることと確信しています。

 

◆今年1月には、すみだトリフォニーホールと財団が共催事業として実施する「地方都市オーケストラフェスティバル」がはじまります。私どもの方針の一つに、地域で行われている芸術文化団体の活動をできるだけ多くの方に見ていただきたいというのがあり、ご協力をさせていただきました。このように地域の文化を東京で発信できるシステムが、また一つ増えたことは大変うれしいことです。私は、最近、PerfecTVに加入して、シアターチャンネルを見ているのですが、実にたくさんの劇団が活動しているのがわかります。演劇は劇場で見た方がいいのかもしれませんが、普通だったらそこに行かなければ絶対に見られないクローズドなものが、こういうシステムによって誰にでも見られるような状況になるのは、非常にいいことではないでしょうか。これからも、地域の文化が東京で、東京の文化が地域で見られるような、情報交流ができる環境をつくっていきたいと考えています。

 

◆このところ芸術文化による国際交流が大変増えています。今年は「フランスにおける日本年」としてさまざまな事業が行われますが、ドイツ、ギリシアからも日本の芸術文化を紹介したいとの提案が出されています。考えてみると、国や地域が対等な立場で交流するのに、芸術文化ほどふさわしいものはありません。自治省などが実施するJETプログラムでも、こうした芸術文化交流がもっと盛んになるようお手伝いしようということで、昨年から、芸術分野での国際交流員の受け入れを開始しました。今年度は、財団法人兵庫現代芸術劇場から申し込みをいただき、ラオス人民民主共和国から37歳のシティラト・カンバンさんが派遣されてきています。カンバンさんは、ラオスの国立文化研究所の音楽部門の研究員です。昨年11月に来日したばかりですが、98年秋にラオスをテーマにして開催する「兵庫アジア太平洋芸術フォーラム」に企画制作スタッフとして参加し、1年間滞在して、プログラムづくりから出演交渉まで行うそうで、毎日、忙しく準備されていると聞いています。皆さんの地域でも、こうした芸術文化交流員制度などを活用され、地域のホールがこれからの国際交流の桧舞台となることを、切に願っています。 (聞き手・坪池栄子)

 

●森繁一(もり・しげいち)
昭和10年(1935年)生まれ。趣味は学生時代に出合ったクラシック音楽。地域創造の理事長に就任してからコンサートにでかける機会も増えて、昨年はついに100本をオーバー。ベスト1、ワースト1は立場上、秘密だそうですが、フランス人の指揮者によるドイツオペラがフランスの音になっているのを聞いて、指揮者の力がどれほど凄いものかよくわかったそうです。ちなみに、財団の事務所入口には、理事長のオペラに関するビデオ、LDのコレクション約250本が展示されています。
94年に自治省事務次官を退官。現在、財団法人地域創造理事長、財団法人自治体国際化協会理事長を兼任

カテゴリー