一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

北海道・東北

●やないづ町立斎藤清美術館(福島県柳津町)
〒969-72 福島県河沼郡柳津町(やないづまち)大字柳津字下平乙187
Tel. 0241-42-3630 長谷川富雄
97年10月1日オープン
会津地方の風景を描いた木版画などで知られる柳津町ゆかりの画家、故斎藤清の作品を展示する美術館。氏から町に寄贈された多数の版画や水墨画などのコレクションの中から約70点を常設展示。年4、5回程度展示替えを行う。展示室のほか、氏に関するビデオを上映する映像コーナーや収蔵作品を検索できる検索システムコーナーをもつ。また体験学習室では子どもから大人まで、幅広い層を対象とした美術講座を開催する。開館記念では版画の代表作に加え、水墨画「会津の冬」「柿の会津」なども展示。
[設置・運営者]柳津町
[展示スペース]298m2
[設計者]株式会社清水公夫研究所

 

関東

●茨城県天心記念五浦美術館(茨城県北茨城市)
〒319-17 茨城県北茨城市(きたいばらきし)大津町椿2083
Tel. 0293-46-5311 征矢真一
97年11月8日オープン
近代日本画の発展に影響を与えた岡倉天心の業績を顕彰し、同地五浦(いづら)地域ゆかりの作家の作品や資料を展示した美術館。同地域は、明治期、天心が研究所を構え、日本画家の横山大観や下村観山らと新しい日本画の創造に励んだ地域で、入りくんだ海岸線や松林などの景勝地でもある。4つの展示室のほか、映像ギャラリー、美術情報ライブラリーなどを備える。常設の「岡倉天心記念室」では天心の業績や近代日本美術の流れを関連資料をもとに紹介。開館記念では「天心と五浦の作家たち」と題した企画展を開催。今後、年3回程度企画展を開催するとともに、美術講演会、実技講座、出前講座、映画会、コンサートを実施するなど普及活動にも力を入れる。
[設置・運営者]茨城県
[展示スペース]2270m2
[設計者]内藤廣建築設計事務所
 
●相模原市民ギャラリー(神奈川県相模原市)
〒229 神奈川県相模原市1-1-3相模原駅ビル4階シティ・プラザさがみはら内
Tel. 0427-76-1262 岩崎洋司
97年11月1日オープン
駅に隣接したビル内に設置されたギャラリー。民間ビルのワンフロアーを借り上げ公共施設として利用し、ギャラリーのほか、市勢情報コーナー、市役所連絡所、消費生活センターが入る。ギャラリーは3つの展示室や美術資料コーナー、会議室などからなる。市民の美術活動の成果発表の場を提供するとともに、企画展、市収蔵美術品展を実施する。開館記念展として「描かれた花-ゴッホからモンドリアン」を予定。
[設置・運営者]相模原市
[展示スペース]357m2
[設計者]株式会社建築研究所アーキヴィジョン

 

中国・四国

●東伯町生涯学習センター(まなびタウンとうはく)(鳥取県東伯町)
〒689-23 鳥取県東伯郡東伯町(とうはくちょう)徳万266-5
Tel. 0858-52-1111 松本昭範
97年12月20日オープン
駅に隣接した図書館、歴史民俗資料館、多目的ホールなどからなる複合施設。調理室、茶室、創作室なども備え総合的な生涯学習機能を有する施設。館内にハイビジョン対応のAV機器を備えるとともに、館内どこからでも、図書館情報、インターネットなど情報検索が可能。ホールは可動席を採用し、町内のほかのホールとの棲み分けを考慮し、小規模な催しものを想定する。今後、ノウハウの蓄積を図り、身近で気軽なステージづくりを検討していく予定。また、町が県のちょうど中間部に位置していることから、県全体の会合や大会としての利用も促進する。
[設置・運営者]東伯町
[ホール席数]266席
[設計者]尾崎・高塚設計監理共同企業体

 

トピックス

●岐阜県加子母村(かしもむら)が山村芸術工房を整備
岐阜県加子母村は、県と連携し、桧や杉などの地域の間伐材を活用した2棟のアトリエ付きモデル住宅を2月をめどに建設する。若手アーティストを対象として入居者を募集し、3年間無償でモニター入居してもらう。芸術家の創作活動を支援し、地元との文化交流による地域活性化・文化振興を促すとともに、住宅に木材を活用することで地場産業の振興を図る。国(建設省・林野庁)の「フォレストタウン」事業を活用し、県の住宅供給公社と同村が整備する事業。将来は10棟を建設し、芸術家村として整備していく。創作作品は県などの公的施設で展示を予定。今後、地域住民との交流活動を深めるなど「文化の村づくり」を推進する。
[問い合わせ]〒508-04 加子母村役場企画課 Tel. 0573-79-2111 内木
[所在地]岐阜県恵那郡加子母村福崎地区

 

クローズアップ

複合的な事業と市民参加型事業が定着~パルテノン多摩

 

 

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 東京・南多摩地区に約3000ヘクタールの広大な敷地をもつ多摩ニュータウン。1996年現在の人口は約18万人、将来的には約30万人の居住が計画されています。その中心、多摩センター地区の文化活動の拠点として、また地域コミュニティの場として、87年、多摩市が74億円を投じて建設したのが、「パルテノン多摩」(運営・多摩市文化振興財団)です。

 

 開館当初、大きな注目を集めたのはプロデューサーシステムの導入でした。音楽、演劇、映画の各部門に1名ずつ、外部からプロデューサーを起用し、民間の活力とノウハウを生かした事業を目指してきました。公共ホールでは軽視されがちな広報も、パルテノン多摩の活動を市民に理解してもらい、印象づける役割として力を入れ、民間のノウハウを積極的に活用してきました。

 

 しかし、現在、プロデューサーとして年間契約しているのは音楽の1名のみとなっています。「これまで、プロデューサー以外は市の派遣職員が中心で、皆3年から5年で異動していました。これでは財団の内部にノウハウが残っていかないという危惧から、開館当初から構想していたプロパーの採用に本格的に取り組むことにしました」(パルテノン多摩事業課長柴田清治)

 

 94年からプロパー職員の採用を再開。現在、事業課5名、学芸課2名のプロパー職員が勤務しています。ほとんどが新卒で、20代の若手ばかり。外部のプロデューサーシステムと並行して、財団の内部にノウハウを蓄積し、パルテノン多摩の特性を生かす、一貫した事業展開を目指して職員を育成していくという方向に、大きく踏み出したといえます。

 

 パルテノン多摩がこの10年間に実施してきた事業の大きな柱の1つに、「複合性を生かした事業」があげられます。

 

 これは、1414席の大ホールと304席の小ホールを中心に、郷土資料展示室、マジックサウンドルーム(自動演奏楽器コンサート室)、ミラクルラボ(生物観察実験室)といった博物館的機能、さらには2つの池と芝生広場がある多摩市中央公園を含む、ハード面での複合性、特色を生かしたものです。1つのテーマに基づいた事業(音楽+映画+講演+展示など)を毎年秋に開催するほか、東京都区内の施設にはない、野外を使用した事業が行われてきました。大池の水上ステージを使ったサマーライブや、公園へのアプローチの大階段を座席にした無料の野外映画上映会などは、夏の風物詩になっています。

 

 97年8月には、サマーライブ、野外映画上映会で蓄積したノウハウの集大成ともいうべき企画「寺山修司の迷宮世界」が開かれました。大階段など、人目につくところでパフォーマンスが行われ、3日間の会期中、口コミで観客が増えていきました。これは日常性=都市に演劇を持ち込むという点でも、興味深い企画だったといいます。

 

 もう1つは「市民参加型の事業」です。毎年5グループの劇団を招聘し、優勝劇団に賞金を授与している「小劇場フェスティバル」は、パルテノン多摩の名物としてすっかり定着していますが、開館以来、市民の参加を得て行われてきました。

 

 まず、10名の一般公募者からなる「小劇場探検隊」が、フェス出演候補劇団の作品を鑑賞、リポートを提出して、参加劇団を選出します。さらに30名の一般公募者が「市民審査員」となって上演作品を採点、各賞を決定します。また、探検隊、審査員の経験者10名ほどが「フェス支援隊」としてフェスの運営をサポートし、年3回発行する通信の取材、編集を行うなど、積極的な参加が目立ちます。

 

 96年には、"10周年記念「アイデア・企画大募集」"と銘打って市民から企画を募りました。47本の企画が寄せられ、全ての企画のヒアリングを行った上、オリジナル性や公共性をもとに20本を「市民企画」として実施することに。なかでも97年11月に上演されたバレエ付きオラトリオ『カルミナ・プラーナ』は、オーディションで選んだオーケストラとバレエのメンバー、地域の合唱団が参加。プロのソリストが加わり、舞台に上がる出演者は約400名に。指揮・演出は井上道義氏が担当し、おおいに盛り上がりました。

 

 「多摩市は、もともと合唱や吹奏楽の盛んな地域で、市内では多数のサークルが活動しています。この企画も、その中の複数のサークルから提案を受けて実現したもので、市民の日常の活動の蓄積があったからこそ成功したのだと思います。この事業を通じ、専門家の厳しい練習を受けた成果を、各サークルに持ち帰ってもらい、それぞれのレベルアップにもつながればという期待もあります。今後も、節目節目に、市民の活動の刺激になり、パルテノン多摩でないと出来ないような事業を行っていきたいですね」

 

●複合的な事業展開(一部)
○『フランス月間』(94年10月実施)
「バスキン展(美術展)」「シャンソンの夕べ」「フランス映画祭」「コクトー・屋根の上の牡牛(講演+映画+音楽会)」
○『ザコパネの街から』(95年10月実施)
「グレツキの肖像(音楽会)」「ポーランドの黒い聖母(講演会)」
○『ポーランド特集』(97年10月~11月実施)
「現代ポーランドのピアノ音楽」「多摩国際版画交流展ーポーランド・日本ー」「シネ・コレクション~ポーランド映画特集」

 

●パルテノン多摩
[施設概要]大ホール(1414席)、小ホール(304席)、市民ギャラリー、郷土資料展示室、ミラクルラボ、マジックサウンドルームほか
[所在地]多摩市落合2-35

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