一般社団法人 地域創造

平成9年度調査報告書紹介 「公立ホールにおけるネットワーク活動に関する調査研究」

 地域創造では昨年度、「公立ホールにおけるネットワーク活動に関する調査研究」「ホール文化形成のための調査研究」の2つの調査研究事業を実施しました。皆様には現地調査やアンケートへのご協力をいただき、本当にありがとうございました。今回は、「公立ホールにおけるネットワーク活動に関する調査研究」の概要をお伝えするとともに、現地調査を実施した「C-WAVEネットワーク協議会」の事例をご紹介したいと思います。

 

「公立ホールにおけるネットワーク活動に関する調査研究」
調査の概要と事例紹介~C-WAVEネットワーク協議会

 

●調査の目的と方法

 

 近年、地方公共団体の設立した公立ホールが、共同企画・招聘による事業の効率化、近隣ホール館の企画のバッティング防止、情報交換によるノウハウの取得、職員のプロデュース能力の向上などを目的に、複数館でネットワークを組むケースが増えています。本調査は、こうした国内の公立ホール同士で展開されているネットワーク活動の現状を把握し、その問題点、あるいは効果などを分析・整理することにより、実りあるネットワーク活動のための方策を検討することを目的に実施したものです。

 

 調査では、まず全国の公立ホール478館(※1)に対してアンケート調査を実施、315館から回答を得ました。そのアンケート調査の結果を参考に、各ネットワーク活動の状況をより詳細に把握するため、特徴的な活動の見られる事例についてヒアリングを行いました。ヒアリング調査にご協力いただいた事例は、次の5事例です。

 

※1 全国の公立ホールのうち、広域市町村圏(338)および大都市周辺地域広域行政圏(24)の中心となる市町村に立地する公立ホール362ホールに、都道府県立ホール、東京都内のホール、事前にネットワーク活動実施を把握しているホール等を加えた478ホール

 

【シアターネットかんげき】北海道地域における演劇公演を対象にしたネットワーク活動。1996年10月発足。
【富山県文化ホールネットワーク公演事業】富山県公立文化施設協議会の活動の一環として、県内の公立ホールにおける公演の共同開催を目的にした事業。1996年発足。
【類似ホール企画連絡会議】全国規模のネットワーク組織で、自主事業公演の共同企画・制作を目指す。96年7月発足。
【南河内文化会館連絡協議会】大阪府南河内地域にある公立ホールのネットワークで、リレーイベント「南河内歴史発見ショウ」を共同開催。92年4月発足。
【C-WAVEネットワーク協議会】東九州(大分県、宮崎県、鹿児島県)のホール10館(※2)のネットワーク。93年4月発足。

 

このほか、都道府県を対象としたアンケート調査、国内の代表的なネットワーク活動の事例調査、民間ホール・劇場へのヒアリング調査を実施しました。これらの調査結果に加え、研究会(※3)での議論を行い、報告書にまとめています。

 

※2 C-WAVE加盟館<( )内はキャパ>
大分県:安心院町文化会館(600)、臼杵市民会館(1000・200)、弥生町民会館(670)、宮崎県:門川町総合文化会館(670)、西都市民会館(1003)、小林市文化会館(1117・288)、串間市民会館(1000・300)、鹿児島県:加治木町文化会館(800・300)、鹿屋市文化会館(1200)、種子島こりーな(678)

 

※3 「公立ホールのネットワーク活動に関する研究会」研究委員(五十音順)
荒起一夫(財団法人吹田市文化振興事業団事務局長)
市山裕之(財団法人北九州市教育文化事業団主査)
児玉真(カザルスホールチーフプロデューサー)
佐藤信(世田谷パブリックシアターディレクター)
佐藤まいみ(財団法人神奈川芸術文化財団プロデューサー)
丹羽正明(音楽評論家・那須野が原ハーモニーホール館長)

 

 

 

●公立ホールネットワークの現状

 

 アンケート調査の結果、具体的な活動事例について回答のあったネットワーク数は90件でした。この90事例のうち、37件が「91年~95年」、14件が「96年以降」に発足しており、半数以上が活動実績5年以内の比較的新しい活動となっています(表1)。活動の背景としては、「公立ホールの運営担当者同士が、同じ課題や問題点について議論する場がない」が69.7%を占め、次いで「他の公立ホールの活動状況に関する情報がない」(55.2%)となっており、実際に行われている活動(表2)としても、「公演内容に関する情報交換」(62.2%)が最も多くなっています。

 

 また、ネットワーク活動の効果(表3)として最も多くあがっているのが、「ホール間の人的ネットワークが拡大した」。ヒアリング調査でも、「人と人との交流が盛んになる」(シアターネットかんげき)「他のホールの活動状況に刺激を受け、自ホールの励みになる」(類似ホール企画連絡会議)などの声が多く聞かれました。

 

 1980年代以降、公立ホール・劇場が急増し、各地方での専門的人材やノウハウが不十分な環境の中で、類似した環境におかれている館の"人的交流"や"情報交換"を求めてネットワーク活動が始まっている状況がうかがえます。

 

 

●CーWAVEネットワーク協議会の活動

 

 C-WAVEの発足の大きな理由の一つは、地理的な条件から、交通費を削減しなければ十分な公演が打てなかったこと。「何とかして良い公演を安く提供したい」と門川町総合文化会館が近隣館に声をかけたのがネットワーク発足のきっかけでした。そうして情報交換を重ねる中で93年に6館で東京キッドブラザーズのミュージカル『夢の湖』を開催。以降年に2~3本のネットワーク事業を実施しています。

 

 C-WAVEの活動で特筆すべき点は、公演を廉価で巡回するだけでなく、共同で公演の企画・制作をすることで、ネットワークとしてのノウハウを蓄積していることです。当初は、既成の企画の中から良いと思う事業を協議の上選択し、公演していましたが、途中からは、C-WAVEとしての独自性を組み込んだ事業の企画・制作を行うようになります。95年度に実施した東京カンマーアンサンブルによる「楽しい音楽会」では、未就学児の受け入れと、九州の民謡に基づいた演目をプログラムし、地域の観客層をどれだけ拡大できるかという課題に取り組みました。

 

 そこで獲得したノウハウによって、「事業実施までの段取りについて」「事業企画の工夫について」などのマニュアル的な資料を作成し、担当者が替わってもネットワークに受け継がれていきます。

 

 また、ユニークな活動として、ネットワークでの「合同情報収集」を行っています。11月頃、加盟館全館で上京し、関係諸機関や、音楽事務所、劇団、劇場等を分担して訪問。単館で情報収集するより効率的に、幅広い情報を収集し、企画に生かしています。

 

 公立ホールのネットワーク活動については、まだ始まったばかりであり、本調査はそうしたネットワークの現状を概観できる報告書になっていますので、今後の公立ホールの運営や、ネットワークのあり方等について議論する材料にしていただければ幸いです。

 

●調査報告書の入手方法について
97年度調査報告書をご希望の方は、340円切手を同封の上、下記までお申し込みください。
〒107-0052 東京都港区赤坂6-1-20 国際新赤坂ビル西館13F 地域創造芸術環境部調査担当

 

●調査研究に関する問い合わせ
地域創造芸術環境部調査担当 御園生和彦
Tel. 03-5573-4069 Fax. 03-5573-4060

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