一般社団法人 地域創造

アーツセンター情報

中国・四国

●ハートピア勝北(岡山県勝北町)
 
〒708-1205 勝田郡勝北町(しょうぼくちょう)新野東584
Tel. 0868-36-2101 [担当]芦田昭雄
98年4月25日オープン
文化センターと、図書館・公民館の2棟からなる複合施設。町民による文化活動の発表の場として活用するほか、オペラ『智恵子抄』や声明楽を上演するなど鑑賞事業も提供していく。そのほか、町として今後1年間、吉本興業とタイアップし、町民参加型の公演や絵画、工芸品の合同展示会などタレントと触れ合える町民参加のイベントを企画し、「お笑い」を通した町おこし事業も展開する。
 
[オープニング事業]吉本新喜劇(4月25日)
[施設概要]大ホール(575席)、小ホール(120席)、研修室、ギャラリー
[設置・運営者]勝北町
[設計者]丸川建築設計事務所


●保内町文化会館(ゆめみかん)(愛媛県保内町)
 
〒796-0292 西宇和郡保内町(ほないちょう)宮内1番耕地118
Tel. 0894-36-3040 [担当]水野省三
98年4月11日オープン
大ホールは室内楽主体の多目的ホール。図書館や研修室などの生涯学習機能施設を併設。住民に文化活動の発表の場を提供するとともに、クラシック、ポピュラー、歌舞伎、ミュージカルなどの幅広いジャンルの公演も随時提供していく。また、鑑賞事業のみならず、住民への施設見学会や、ピアノを開放し、地元文化団体との連携によるリレーコンサートなどホールのファンを広げるための工夫も行う。また、友の会主催による企画事業なども検討していく予定。
 
[オープニング事業]曽根美紀&二宮和弘(サクソフォーン)ジョイントコンサート(4月11日)
[施設概要]大ホール(812席)、サブホール(200席)、研修室、郷土文化実習室、図書館
[設置・運営者]保内町
[設計者]大建設計工務

 

九州・沖縄

●波佐見町総合文化会館(ウェイブホール)(長崎県波佐見町)
 
〒859-3701 東彼杵郡波佐見町(はさみちょう)折敷瀬郷2064
Tel. 0956-85-2034 [担当]棚倉哲
98年3月15日オープン
文化ホール棟と生涯学習棟からなる複合文化施設。文化ホール棟には、多目的に利用できる中規模のホールを設置。生涯学習棟にはミニコンサートや講演会などが開催できる小ホールのほか、住民のニーズを踏まえ地域のコミュニティ機能を持ったスペースがある。住民が気軽に利用できる施設として、また地元の文化団体などの活動の場としてホールを活用していく。また、町主催の自主事業として落語会やポピュラー、クラシックの公演なども住民に提供する予定。
 
[オープニング事業]ダークダックスコンサート(3月15日)
[施設概要]大ホール(650席)、小ホール(200席)、図書室、研修室ほか
[設置・運営者]波佐見町
[設計者]北居設計

 

クローズアップ

新たなネットワーク事業に意欲、30周年を迎える豊中市立市民会館

 

 大阪市近郊の市には活発に活動を行っている公立ホールが林立している。淀川を越えた北部地域(北摂)には、阪急宝塚線沿線の豊中市、池田市、箕面市をはじめ、高槻市、吹田市、枚方市など山の手のベッドタウンにつながる私鉄の中核都市に開館20~30年を越える老舗市民会館がズラリと顔を揃え、新興住宅地のある南部地域には、1990年代に入ってからすばるホール(富田林市)、ラブリーホール(河内長野市)、SAYAKAホール(大阪狭山市)、泉の森ホール(泉佐野市)などの複合文化施設が次々にオープン。今回取り上げる豊中市立市民会館は、今年で30周年を迎える老舗中の老舗で(最も古いのは64年に開館した高槻市立文化会館)、近畿圏の公立ホールの世話役的存在。今年の7月には、近畿公立文化施設自主事業研究会の小ホール分科会の音頭をとり、藤山直美主演「てれび」の共同製作にチャレンジ。近畿13館をネットワークして約1カ月にわたって巡回公演を行う。在職18年という森田幸司さんに30年の歩みと現在の活動を総括していただいた。

 

 

●貸館からスタート、30年間の歩み

 

  豊中市立市民会館が市長部局の所管する直営館として開館したのは1968年10月。当時の新聞によると、学校の体育館以外に1000人規模で集まれる施設がなく、待望の文化会館の誕生であると記されている。戦後、仙台市公会堂(50年)を皮切りに始まった、50年代から60年代にかけての地方都市文化会館ラッシュの流れの中で建設されたもので、施設的には当時トレンドだった「劇場型」(戦前の集会場タイプの公会堂ではなく、演劇やコンサートもできる多目的ホール)が採用され、テレビ番組の収録設備が新しさを演出していた。「開館当時は貸館でしたが、大変利用率が高く、『全日本歌謡選手権』の収録会場にもなっていました。五木ひろし、八代亜紀などの大物演歌歌手もこのホールからデビューしたそうです」。

 

 自主事業がスタートしたのは79年。バブル前夜で、価値観の多様化が叫ばれ始めた時期である。「こういう公演が見たいという住民からの要求に応えるために自主事業が必要だということになりました。それと職員の仕事に対する志気を上げるためにも、仕事に対する考え方を具体化する自主事業が必要とされたのだと思います」。

 

 歌舞伎、クロード・チアリショー、親子映画劇場を手始めに、年数回の自主事業が行われ、84年、隣にアクア文化ホール(490席)がオープンしたのを機に事業数が急増。現在は、教育委員会社会教育部市民会館課の所管で、豊中市立市民会館、アクア文化ホール、ローズ文化ホール(89年開館、367席)の3館が運営されている。

 

 

●「豊中方式」とも言える運営の特徴

 

 豊中市で特筆すべきことが3つある。1つがそもそも貸館としてスタートしたため理事会がなかった点。自主事業を始める際も学識経験者による委員会や理事会を置かず、事業内容はすべて職員が決めるため、2~3年先の事業を現場で折衝することが可能になったという。「他のホールと連動した企画がプロデュースできるのもこうした長期計画に対応できる体制だったから」。

 

 2つ目は市の直営ということもあり、自主事業を始めた当初から財政当局と交渉を重ね、単年度決算に馴染まないホール事業の性質について理解を仰ぎ、ホール側の自主性を尊重した予算決済の仕組をつくったことである。「財政事情とホールとしてどうしてもやらなければならない事業を予め勘案し、必要とあらば切れる事業は切って予算をカットして要求するため、これまで予算決済で事業に変更を迫られたことはありません」。ちなみに、スタート当時は事業費とチケット収入で収支を合わせるのが基本で(「大ホールなので可能でした」)、中・小ホールができてからは事業費の50%回収が基準とか。

 

 そして最後が「豊中市がつくるホールはだんだん完成度が高くなる」と業界で話題になるほど、ホールづくりのノウハウが市のノウハウとして蓄積しているという点である。「学校と違い、建設課の人間にとってホールは一生に一度つくるかどうか。アクアの時に、僕らの提出した要望書が活用できなくて失敗した経験があり、それ以来、文化施設の準備段階から市民会館と建設課が一緒に施設計画を練るという伝統ができました。豊中では、新しいホールができる時に工場に行って納入機材の検査をするのは市民会館のスタッフとホールの舞台技術職員(委託ですが10年以上一緒に仕事をしています)です」。

 

 他の市町村からの相談も多いので、経験が豊富な職員を集めたアドバイザースタッフをつくろうという話も出ているそうだ。

 

 

●30年目の課題と展望

 

 30周年を迎えて、豊中市立市民会館が抱えている課題が4つある。1つが鑑賞事業のプログラムの固定化(※)、2つ目が今一番力を入れて取り組んでいる小ホール向けパッケージ公演のオリジナル・プロデュース、3つ目が豊中の財産だという大阪音楽大学との連携、4つ目が豊中市のイメージづくりである。

 

 2番目は小ホールを運営しているところはどこでも感じていることで、席数が少ない小ホールでは、たとえパッケージ公演を買ったとしてもチケット代が高くなる。かといって小劇団の芝居ではお客さんが来ない。商業演劇系のキャスティングをした小カンパニーで手頃な値段のものがあればいいが現状では望むべくもない。「それなら自分たちでプロデュースして、ネットワークで取り組めば、チケット代が下げられるのではないか。そういう考え方もあるという雛型をつくろうと思ったのが、藤山直美主演の『てれび』なんです」。

 

 3番目については、オペラハウス(大阪音大のカレッジホール)やレジデントオーケストラとの仕事を通して「お互いが何を考えているかがツーカーでわかる関係」をつくっていきたいという。「これは夢ですが、豊中には音大も市民オーケストラも市民合唱団もある。市民オペラを組織できるソースがすべて揃っています。オペラ鑑賞教室をやったのも、将来的に市民オペラがやれればという道筋を考えていたから。でもその時には鑑賞事業をやる市民会館が主体になるのではなく、財団のような受け皿が必要だと思います」。

 

 現在、駅前再開発ビルの中にもホールが計画されている。こうした新しいホールや夢の市民オペラによって4番目の課題が少しずつ解消されていくのかもしれない。

 

(坪池栄子)

 

※自主事業と友の会
 幅広いジャンルを取り上げ、子どもから高齢者まで楽しめる編成。「鑑賞者を増やすためシリーズ化してきたが、財政難で新しい事業ができなくなり、プログラムが固定化。新しい事業がないと新しい観客が掘り起こせないので、見直しを図っているところ」。昭和60(1985)年に友の会をスタート。現在の会員数は4000人余り(50代~60代女性がコア)で、チケット売り上げの約5割が会員。年会費1000円、2年間有効、チケット2割引。「運営費はかなり持ち出しだが、DMリストと会報誌(広報宣伝の手段)のためには必要。これがあると、DMを出すなど職員が打つ手を確保できる」

 

◎豊中市立市民会館
〒561-082 大阪府豊中市曽根東町3-7-1 Tel. 06-864-3901

 

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