一般社団法人 地域創造

平成11年度財団事業紹介

「平成11年度新規事業紹介」

5周年を迎え地域の要望に応えた事業を拡充

 

 財団法人地域創造は今年度、設立5周年を迎えます。設立以来、財団の事業に多大なご協力をいただきまして誠にありがとうございました。平成11年度は、5年間の事業の成果と課題を踏まえ、新しくいくつかの新規事業を立ち上げることになりました。今号は、巻頭で新規事業について詳しくご紹介したいと思います。

 

●“身近な美術館”をバックアップ
市町村立美術館等活性化モデル事業

 

 80年代後半以降、市町村立の美術館が数多く開館しました。こうした美術館は、身近な美術館として地域住民の期待を集める一方、予算規模やスペースの関係上、コレクションの充実や既存の巡回展の開催が難しいといった悩みを抱えているところが少なくありません。

 

 こうした市町村の美術館等の活性化を目的に実施するのが「市町村立美術館等活性化モデル事業」です。都道府県域を越えた複数の美術館等がネットワークを組み、小規模美術館等に適した展覧会を独自に企画。その企画展を、実行委員会を構成する市町村の美術館等で巡回する、というものです。平成11年度は、兵庫県立近代美術館と静岡県立美術館の協力を得て「近代日本の風景画展(仮称)」を開催することになりました。開催会場は、西淡町立滝川記念美術館、氷上町立植野記念美術館、天竜市立秋野不矩美術館ほか両県下の5つの美術館などです。

 

 出品作品は約60点。兵庫県立美術館からは小磯良平、金山平三、静岡県立美術館からは曽宮一念、鳥海青児など、近代日本を代表する洋画家の作品が並びます。展覧会の開催にあたっては、県立美術館の学芸員がさまざまなアドバイスを行い、情報交流によるノウハウの取得や職員のプロデュース力の向上も狙いとしています。

 

●世界の舞台芸術の祭典

シアター・オリンピックス助成事業
  今年4月16日から6月13日まで約2カ月間にわたり、静岡県で「第2回シアター・オリンピックス」が開催されます。「シアター・オリンピックス」とは、ギリシアの演出家テオドロス・テルゾプロス氏の提唱で、世界8カ国の演出家により舞台芸術の創造と再生を目指して創設されたものです。第1回は95年にギリシアで開催され、第2回を静岡県が誘致しました。
  今回は演劇からダンス、オペラなど世界20カ国42作品の公演が、静岡県内13市町の公共ホールなどで行われます。地域創造も、地域住民に海外の優れた舞台芸術作品の鑑賞機会を提供するこの事業に対して支援・助成を行います。

 

●ステージラボ実践編
公共ホール演劇製作ネットワークモデル事業

 

 地域創造は「ステージラボ」をはじめとした人材育成事業に力を入れてきましたが、今年度、より実践的な研修の場として「公共ホール演劇製作ネットワークモデル事業」をスタートさせることになりました。これは、地域創造と複数の公共ホールが共同で演劇作品を製作することを通じて、製作ノウハウを修得し、職員の人材育成を図ろうというものです。平成11年度は、実験的に地域創造と、財団法人世田谷区コミュニティ振興交流財団、財団法人盛岡市文化振興事業団、財団法人びわ湖ホールの4つの財団が、宮澤賢治の童話『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』を原作とした子どものための舞台作品の製作に取り組みます。

 

 この企画は、98年2月に開催した「ステージラボ世田谷セッション」演劇コースに参加した、盛岡市文化振興事業団の職員の「賢治が暮らした盛岡で、賢治作品を舞台化したい」という企画案をきっかけに実現したもので、まさに「ステージラボ実践編」と言えるものです。現在、夏の公演に向けて担当者による制作会議が重ねられているほか、参加各館の技術者による舞台技術会議も開いて、プランの調整などを行う予定です。

 

 この事業のもう一つの大きな特色は、多彩な周辺事業が各館で実施されることです。「宮澤賢治の世界」をキーワードに、劇場探検ツアー、朗読会、子どものためのワークショップなど、各地域でバラエティに富んだ企画を予定しています。

 

●地域文化の核となる劇団を応援
地域舞台芸術情報発信事業

 

 公共ホールが地域の芸術環境づくりを進める上で、地域を拠点に活動する実力ある劇団等の存在は今後ますます重要になってきます。現在、公共ホール等が企画するフェスティバルの中心として活躍したり、ワークショップの講師として協力するなど、地域の芸術文化の核となる劇団が全国で育ちつつあります。

 

 そうした地域の劇団等を広く紹介することを目的に、地域創造が主催する芸術見本市の事業の一環として、「地域舞台芸術情報発信事業(リージョナルシアターシリーズ)」を実施します。芸術見本市の中で、地域の劇団等の紹介を行うとともに、東京国際舞台芸術フェスティバルとの共催で、公演とセミナーを開催します。出演劇団等については、全国の地方公共団体と公共ホール等を運営する財団からの推薦をもとに決定します。

 

 東京公演の日程は10月18日~31日、会場は東京芸術劇場ほかを予定しています。セミナー、シンポジウムについては、地域の劇団の主宰者、関係者のほか、ゲストとして多彩な劇作家、演出家等を招き、地域の公共ホール担当者と劇団等との交流の場としたいと考えています。

 

●継続事業より
ステージラボ「美術コース」など

 

 以上、平成11年度新規事業の概要をご紹介いたしましたが、財団の中心事業である研修交流事業について、今年度の予定をご案内したいと思います。まず、ステージラボについて。前期は6月29日~7月2日、会場は静岡県コンベンションアーツセンター。現在、参加者募集中です。後期は、2月15日~18日に高知県立美術館ホールで開催する予定です。高知セッションでは、初の美術コースを開設します。芸術見本市については8月31日と9月1日の2日間、東京国際フォーラムを会場に開催します。

 

そのほか、継続事業については、平成11年度事業計画をご参照ください。今年度も、地域創造の事業にご協力くださいますよう、よろしくお願いいたします。

 

平成11年度事業スケジュール

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平成11年度 財団法人地域創造事業計画

 

1 事業名 財団法人地域創造事業

 

2 事業の目的
地域における創造的で文化的な表現活動のための環境づくり等に資する事業等を行い、もって美しく心豊かなふるさとづくりの推進に寄与することを目的とする。

 

3 事業の内容
平成11年度において、次の事業を実施する。
計 1,001百万円

 

(1)地域の芸術環境づくり支援事業 503百万円
地方公共団体等が自主的に実施する、創造的で文化的な芸術活動の地域における環境づくりを支援するため、次の4プログラムで構成する事業に対して助成を行う。
ア 創造プログラム
芸術創造活動の環境づくりに関し、顕著な工夫があり、段階的・継続的に実施する事業を支援。
イ 連携プログラム
共同で企画・制作して取り組む事業を支援。
ウ 単独プログラム
地域の人々の参画を伴いながら単独で取り組む事業を支援。
エ 研修プログラム
地方公共団体等の職員を対象とした実践的な研修の場を提供する事業を支援。

 

(2)研修交流事業 74百万円
地域の芸術環境づくりに取り組む公共ホール・劇場等のスタッフに向けて、研修・交流事業を展開する。
ア ステージラボ~公共ホール企画運営ワークショップ~
事業の企画制作、施設運営、地域との関わりなどホール・劇場のソフト運営に欠くことのできない要素を体得するための研修を行う。研修は、講師と参加者の双方向のコミュニケーションを重視し、実践的な内容に取り組めるよう少人数ゼミ形式により、集中的に実施する。
イ ステージクラフト~舞台技術ワークショップ~
公立ホールや劇場で舞台技術又は事業企画・制作に携わるスタッフを対象に、舞台技術に関する実践的な研修の場を提供し、人材の育成と相互交流(ネットワークの形成)を図る。
ウ 芸術見本市
地域文化施設や地方公共団体等の関係者が国内外の制作者やアーティストと直接出会い、情報交換できる場を提供する。舞台芸術に関与する様々な立場の人々との交流・ネットワークづくりを図るとともに、舞台芸術が置かれている現状や環境について理解を深め、地域と芸術との関わりを考えるためのセミナー・シンポジウム等を開催する。

 

(3)情報交流事業 89百万円
地域の文化施設同士、また地域の文化施設と制作者等の芸術文化関係者との間の情報交流を支援するメディアを構築する。
ア ニュースレター発行事業
当財団と、各地域の文化施設、制作者等の芸術文化関係者とをつなぐ基本的な媒体として、各地域のユニークな公演・展示の情報、参考となる各地の取組事例、当財団の事業のお知らせ等を軸に 毎月定期的に発行する。
イ 雑誌発行事業
芸術環境づくりのケーススタディーや文化施設の有効な運営方法を模索する企画記事等を内容と する雑誌「地域創造」を年2回発行する。
ウ ネットワーク/データベース事業
インターネット上にホームページを開設して情報提供・交流を行うほか、当財団が収集した地域の芸術文化に関する情報の蓄積・データベース化も図る。

 

(4)調査研究・コンサルティング事業 13百万円     
地域の芸術環境づくりについて全国的な視点から実態の調査・分析・研究を行い、それらの成果を積極的に活用して相談や疑問に応える。
[調査研究項目]
・公立ホールの計画づくりに関する調査研究
より充実した運営を図るための計画づくりに関して、計画の段階と運営の現状の相違などを調査する。

 

(5)芸術提供・共催事業 76百万円
地方公共団体等と共催し、地域のニーズを踏まえた質の高い音楽、演劇、伝統芸能等の公演を実施する。
[実施事業]
・新日本フィルハーモニー交響楽団公演
・舞台芸術活性化事業
・「能楽座」能・狂言公演
・「宮内庁式部職楽部」雅楽公演
・第3回地方都市オーケストラフェスティバル

 

(6)公立美術館等ハイビジョン・ソフト購入助成事業 8百万円
公立美術館等がハイビジョン・ソフトの整備を促進しようとする取り組みに対して助成を行う。

 

(7)公共ホール音楽活性化事業 20百万円
地域の公共ホールと共催で、親しみのあるクラシック・コンサートとワークショップ等を開催する。これにより、クラッシック音楽に触れる機会の少ない地域にコンサート等を提供するほか、新進アーティストの活躍の場を設ける。あわせて、この公演の企画・制作を通じて、公共ホールの担当者が公演実施に関する実践的なノウハウを修得するための機会も提供する。

 

(8)地域舞台芸術情報発信事業 13百万円
地域の公共ホール等を主たる活動拠点として地域の芸術文化活動を支える地域劇団等の紹介とアートセミナーを東京国際舞台芸術フェスティバルの一環として実施する。これにより、地域の芸術文化情報の全国への発信を促進するとともに、地域の芸術文化環境の活性化を図る。また、地域のホール関係者相互間の情報交流、ノウハウ修得にも努める。

 

(9)市町村立美術館等活性化モデル事業 10百万円
市町村立美術館等の活性化を目的に、複数の美術館による巡回展示事業に対して助成を行う。あわせて、各美術館のネットワーク形成を促進し、情報交換によるノウハウの修得、職員のプロデュース能力の向上を図る。

 

(10)公共ホール演劇製作ネットワークモデル事業 30百万円
公共ホール単独では実施困難な演劇作品を、地域創造と複数の公共ホールの連携作業により、共同で企画・製作・公演の一連の行程を実施する。これにより、参加公共ホールと地域創造の職員のノウハウ修得および研修の強化に努めるとともに、地域住民に対する鑑賞機会の拡大に資する。

 

(11)シアター・オリンピックス助成事業 40百万円
地域住民に海外の優れた舞台芸術作品の鑑賞機会を提供するなど、海外の多彩な文化や人々との交流機会となる国際的かつ大規模な舞台芸術の祭典である「第2回シアター・オリンピックス」に対して支援・助成を行う。

 

(12)地域伝統芸術保存事業 126百万円
失われつつあり、記録に残されていない各地域の伝統芸術(祭り、伝説、神話、民話、伝統技能、習俗等)を保存・承継するための文化環境づくりを支援する。
ア 映像記録保存事業への助成
失われつつあり、記録に残されていない各地域の伝統芸術をデジタルビデオに編集・記録する市町村事業に対して助成を行う。
イ 地域伝統芸術保存フォーラムの開催への助成
住民が地域や伝統芸術を愛し、誇りを持つこと、伝統芸術の保存承継に携わる者を鼓舞することを目的に実施する都道府県レベルのフォーラムに対して助成を行う。
ウ 映像ライブラリーの設置
アにより作成された映像記録を広く活用する場として、地域創造に映像ライブラリーを設置する。

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