一般社団法人 地域創造

第4回芸術見本市報告

ダンスのショーケースやタイムリーなシンポジウムが好評

 

 皆様のご協力により、「第4回芸術見本市」を無事終了することができました。ご参加・ご協力いただきました方々、本当にどうもありがとうございました。今回の見本市は、財団法人地域創造、国際交流基金、国際舞台芸術交流センターの3団体の共同主催により、社団法人全国公立文化施設協会などの協力を得て開催されました。会場は見本市会場としてすっかり定着した東京国際フォーラムで、展示ホールのブース部門を中心に、関連団体によるシンポジウムやショーケースなどが2日間にわたって行われました。

 

 今回はブース部門を演劇、音楽、ダンス、ホールなどに分けてエリア構成したのに加え、専門家によるナビゲーターを増員するなど、来場者とブース出展者が出会いやすい会場運営になったのではないでしょうか。特に関連団体が主催したシンポジウムは好評で、会場では熱心にメモをとる姿があちこちで見られ、見本市が研修の場として認知されてきた様子がうかがえました。

 

●タイムリーなテーマ設定で大盛況

 

 今回の芸術見本市では、関連団体主催のものを含め、計6つのシンポジウム・セミナーが実施されました。中でも特に人気だったのが、「市民参加」というタイムリーなテーマ設定で行われた財団法人地域創造と全国公立文化施設協会による2つのシンポジウムです。いずれも市民参加では先進的な取り組みをしているホール・団体のキーパーソンをパネラーに迎えたもので、それぞれの事例発表に続き、市民が参加する際のマネージメントのあり方など共通の課題について意見交換が行われました。

 

 また、今号のレター巻頭でもご紹介している「リージョナルシアター・シリーズ」では、公演の宣伝も兼ねて、参加7劇団の代表がはじめて顔を揃えたシンポジウム「1999地域演劇事情」を企画しました。96年、98年と岸田戯曲賞受賞作家を輩出している関西の小劇場に象徴されるように、このところ地域の演劇活動が東京の演劇シーンをリードしている観があります。平均年齢34歳という、“地域演劇時代”の火付け役たちは、異口同音に「東京にいないと書けないという時代は終わった」と言い切り、会場に集まった約100人の関係者の熱い視線を浴びていました。

 

●一般客も堪能したショーケース

 

 予想以上の入場者数で整理券まで発行されたのがホールDで行われたショーケースです。1日2時間、1団体15分、2日間で計13団体が映像や実際のパフォーマンスを交えて自分たちの活動をアピールしました。海外からダンスフェスティバルのディレクターが見本市に合わせて来日していることもあり、コンテンポラリーダンスの参加が多く(計10団体)、一般のダンスファンも鑑賞に訪れ、延べ720人がショーケースを堪能しました。

 

 今回はじめて見本市に参加したダンスユニットの「ミヅチ」は、ステージ上で女性カメラマンがリアルタイムに撮影するダンサーの映像と絵画の映像を合成し、ダンサーに投影するというコラボレーションを披露。「私たちはダンサー大橋可也、画家かめいみちよ、映像制作集団NEO VISIONが集まって96年から活動しているユニットです。大規模に見えますがパソコンさえあればどこでも実演ができます。日頃は小さな会場で自主公演をやっている程度なのでなかなか自分たちの活動を広く知ってもらえるチャンスがありません。ショーケースの後、感動しましたと声をかけてくださった方もありますし、名刺も集まりましたので、見本市が終わった後、改めて宣伝に回ろうと思っています」(制作担当)と見本市での出会いに期待を寄せていました。

 

 また、カナダの芸術見本市「CINAR(シナール)」からは、同見本市でも絶賛を浴びたモントリオールの劇団レ・ドゥ・モンドの作品「ライトモティーフ」が会場の大画面モニターで上映されました。これは戦火に引き裂かれた家族の愛憎をテーマにした作品で、シルエット映像とメゾソプラノ歌手を効果的に使い、短時間の上映にもかかわらず、その美的迫力に会場からは本物の拍手が送られていました。

 

●コンテンポラリーダンスネットワークの試み

 

 ブース部門の特徴になりつつあるコンテンポラリーダンスですが、今回、特に目立ったのがNPO法人化を目指して活動をはじめたジャパン・コンテンポラリー・ダンス・ネットワーク(JCDN)設立準備室の共同ブースです。これは単独での出展ができない団体へのスペースサポートとしてJCDNが開設したもので、4ブースを借り切って一口15000円を負担した24団体が参加。「現在、セゾン文化財団からの助成を受けて活動していますが、サポートメンバーを募って2001年にはNPO法人化したいと考えています」という設立準備室の水野立子さん。JCDNでは、今後、全国巡演のためのシステムづくり、各種情報提供、制作サポートなど、コンテンポラリーダンスの制作環境整備に取り組む予定で、すでにホームページを開設し、全国のダンス関係者やファンと情報や意見の交換をはじめているそうです。

 

●芸術見本市に関するお問い合わせ
財団法人地域創造 芸術環境部研修交流担当
細野・佐倉 Tel. 03-5573-4069

 

●公文協シンポジウム「公立ホール運営への市民参加」より

 

◎株式会社横浜フリエスポーツクラブの成り立ち~辻野臣保(同代表)

 

 私は横浜フリューゲルスのサポーターの一人でした。昨年、フリューゲルスとマリノスの合併のニュースが流れた時、哀しいとしか言いようがなかったのですが、翌朝、もの凄い怒りがこみあげてきました。フリューゲルスを応援することによって様々な人の繋がりが生まれ、仲間ができ、コミュニティができあがっていたのに。コミュニティという自分たちのつくった文化が何の相談もなしに企業の論理でつぶされていいのかと思いました。それでフリューゲルスを応援していた3つのサポーターチームが「フリューゲルスを存続させる会」を結成し、企業に対して、合併撤回、もしくは市民クラブとして新しい受け皿をつくるという2点を掲げて交渉をはじめました。

 

 市民クラブは「自分たちで楽しむサッカーを自分たちで支えよう」というもので欧米には古くからあるあたり前の考え方です。現に10万人の会員を持つサッカークラブもあります。スペイン語でソシオ制度、英語でメンバー制度と言いますが、フリエスポーツクラブはそれを日本で実現しようというはじめての試みなんです。

 

●地域創造シンポジウム「1999地域演劇事情」より

 

◎長谷川孝治(弘前劇場)

 

 僕らの芝居のスタイルは家族の関係性をリアリスティックに表現するというものなので、家族の関係性が普遍的に継続している地域にいないと表現できないところがあります。稽古場はある町が無償で提供してくれているし、借りている事務所やタタキ(工房)も安くて広い。こういう環境で作品をつくれるのは現代演劇にとってもメリットだと思います。

 

◎土田英生(MONO)

 

 東京では作家の名前を聞いても商品としての名前という感じがしますが、京都はものすごく人の顔が見える。例えば僕と劇作家の松田正隆は大学時代からの友達で、今でも面白いビデオとかあると一緒に見たりする。東京の人からは「気持ち悪い、お前ら友達か」って言われるんですが、友達なんです(笑)。鈴江俊郎と3人で原稿を持ち寄って「リーフ」という同人誌をつくったり。こういう関係のある京都に利点を感じています。

 

◎泊篤志(飛ぶ劇場)

 

 僕は東京でサラリーマンをやった経験があります。満員電車に揺られながら、ここでゼロから演劇活動を立ち上げて成り上がるなんて僕にはとても考えられませんでした。それで北九州に戻りました。僕の演劇活動は生活とともにあると思っているので、これからも北九州を拠点に活動していきます。地域には切磋琢磨する場がないので、皆さんと一緒にやれていい刺激になるのではないでしょうか。

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