一般社団法人 地域創造

制作基礎知識シリーズVol.14 著作権と契約編(2) 著作隣接権と権利者への対応

●著作隣接権とは一体なんでアルカ?

 ダンサーの舞踊や俳優の演技、またミュージシャンの演奏といった「実演」は著作物ではありませんが、実演家の権利として保護されています(表1参照)。演出家や指揮者も同様です。こうした実演家の権利は、「著作隣接権」といわれるもののひとつです。

表1 実演家の権利

権利の種類
内容 例外
録音・録画権 実演(舞踊・演技・演奏等)を録音・録画する権利(増製権を含む) 実演家の許可を得て映画の著作物に録音・録画された実演
放送・有線放送権 実演を放送・有線放送する権利 実演家の許可を得て録音・録画された実演
送信可能化権 実演をホームページにアップロードするなどの権利 実演家の許可を得て録画された実演
譲渡権 実演の録音物等を公衆に譲渡する権利 1.実演家の許可を得て録画された実演
2.一度適法に譲渡された実演

 表1を見ればわかるとおり、実演家の権利の対象になるのは、現実に行われた「その実演」だけです。ですから例えば、ある舞台作品について、初演の演出と同じような演出で再演されたとしても、初演の演出家は基本的にクレームをつけたり、演出使用料を請求することはできないのです。ですから、このような演出家の権利を確保するためには、初演時に主催者と演出家との間で、再演についての取り決めをしておくことが必要になります。同じように、ある俳優の演技を別の俳優がまねたからといって、原則としては権利の侵害にはなりません(ただし、有名タレントの物まねをしてテレビCMに出演する場合などは違った問題があり得ます)。

 上記のほか、著作隣接権としては、レコード製作者の権利(いわゆる原盤権 注1)や、放送事業者・有線放送事業者の権利があります。しかし、こうした実演家の権利やレコード製作者の権利の中には、「演奏権・上演権」は含まれていません。例えば、買ってきたCDをそのままCDプレーヤーで再生してホール内で流したとしても、ミュージシャンやレコード製作者の権利を侵害することにはなりません。ですから、実務上は、CDから他の媒体に複製したりしない限り、実演家やレコード会社の許可を得る必要はないことになります。

 これに対して、CDに含まれる歌詞と楽曲は著作物ですから、原則として舞台公演のための演奏(テープやCDの再生を含みます)には著作権者の許可を得る必要があります。日本では、ほとんどの楽曲と歌詞は社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理しておりますので、実務上はJASRACへの使用許諾申請を行うことになるでしょう。

注1 音楽用CD等のマスターテープ(いわゆる原盤)を製作した者に発生する権利。

 

●権利者への対応

 このように、「著作権者」「著作者」あるいは「隣接権者」といった権利者は、「著作物」や「実演」に対して一定の「禁止権」をもっており、権利者の「許諾」がなければ作品の録画などの利用行為はできません。しかし、この原則には幾つかの例外があります。例えば、1.非営利目的の上演や演奏は、2.観客から入場料等を受け取らず、3.実演家に報酬が支払われないならば、著作権者の許可なくすることができます。著作権者は、これを止めることはできません。

 また、他人の著作物や実演は、一定の条件で「引用」して利用することができます(注2)。他人の著作物をパロディ化する場合など、この「引用」として認められるか、議論になることがありますが、一般的に、日本の裁判所は他人の著作物のパロディ利用に対して寛大とは言えないように思います。

注2 著作権法第32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定しています。判例では、引用が認められるためには少なくとも、1.引用する側と引用される側の作品がの間が明瞭に区別でき、かつ、2.両者が主従の関係になければなりません。

 

 なお、引用そのものが適法だと認められる場合でも、出典を明示することが義務づけられますので、注意が必要です。このからみで、舞台公演で他人の作品を引用した場合には、どのように出典を明示すればいいのか、質問されることがあります。一般的には、公演プログラムや会場での掲示を利用して、見やすく引用元と引用箇所を示せばいいのではないでしょうか。また、上で申し上げたとおり、そもそも引用が認められるためには一定の条件をクリアしなければなりません。出典さえ示せば、どんな引用でも認められるわけではありませんのでご注意ください。

 このほか、私的使用のための著作物や実演の複製や、教育機関での複製は、やはり一定の場合に認められています。ただし、「私的使用」と認められるための条件は厳しく(注3)、公演のための戯曲や楽譜のコピーや、公演アンケートの内容を次回公演のチラシに掲載したり、ホールのホームページに掲載するような行為は、いずれも疑問のあるところです。ですから、公演アンケートの内容をチラシやホームページに掲載利用したいのであれば、アンケートの目立つ場所に、「本アンケートの内容は、チラシや当ホールのホームページに掲載利用させて頂くことがあります」等と表示し、入場者の了解をとるようにするべきでしょう。

注3 「個人的、家庭内又はこれに準ずる限られた範囲内の利用」でなければなりません。

 

●その他、ホール実務に関わる権利

 歴史的なナマの事実は著作物ではありませんので、例えば実在の人物や出来事に基づいて戯曲を著作したという場合、他人の「著作物」を利用したことにはなりません。ただし、題材や描き方によっては、著作権法とは離れて、モデルとなった人物やその遺族への名誉毀損やプライバシー侵害に当たる、というクレームを受ける危険性はありますので、注意が必要です。こうした名誉毀損やプライバシー侵害の場合、作家側の「表現の自由」との衝突が往々にして問題になります(注4)。
注4 もっとも、裁判では表現者の側に厳しい判決が下される例が多く、劇作家でもある柳美里氏の処女小説が実在の人物の名誉とプライバシーを侵害したとされた「石に泳ぐ魚」事件でも、裁判所は、「プライバシーの侵害は、プライバシーの開示が表現行為にとって必要不可欠な場合に限って認められる」と限定的な見方を示しています。

プライバシーとは似て非なる権利に、著名人などに認められるパブリシティ権があります(注5)。典型的なのは、出演タレントのグッズを勝手に製作販売するような場合で、このような「商業目的」や「営利目的」がない場合には、そもそもパブリシティ権は問題になりにくいと言われています。

注5 パブリシティ権とは、「自分の氏名又は肖像を有償で第三者に専属的に利用させる権利」のことで、著名人の顔、氏名、声、個人情報など、およそその著名人を示す情報は広く権利の対象になります。

 さて、以上は、著作や実演、名誉といった形のないものに発生する権利の話でした。これに対して、形あるモノについての問題になるのが所有権です。例えば、舞台美術のデザインは著作物で、そこには著作権が発生します。それと、デザインに基づいて現実に製作された装置や衣装を誰が所有するか、ということとは全く別問題です。主催者が材料費や手間賃を負担して装置や衣装を製作した場合、モノとしての装置・衣装の所有権は主催者がもつ場合が多いでしょう。しかし、そのことは、デザインの著作権が主催者に譲渡されたことを意味しないのです。

 前回お話した著作権の中には、「作品を鑑賞する権利」というものは含まれていませんでした。ですから、誰かがこっそりホールに忍び込んで舞台公演を見たとしても、作家やデザイナーといった著作権者の権利を侵害したことにはなりません。しかし、ホールに忍び込めば、ホール経営者の所有権を侵害することになります(注6)。観客は、入場料を支払ってホールの許可を受けて、初めてホールへの入場を許されるのです。

注6 もちろん、住居侵入罪という犯罪に該当する可能性も高いでしょう。

 何を当たり前な、と思われるかもしれませんが、所有権と著作権の関係は意外と混同されがちです。例えば、著作権や実演家の権利の中には録画権(複製権)も含まれますから、原則として著作権者や実演家の許可がなければ舞台公演は録画できないはずです。しかし、上で説明したように「私的使用」が目的の場合の複製(録画を含みます)は誰でも自由にできますから、「私的視聴のためだ」と言われてしまうと著作権や実演家の権利を理由に録画を止めることは難しいのです。こんな時、ホール側がカメラの持ち込みや場内撮影の禁止の拠り所にできる権利があるとすれば、それはホール自体の所有権(またはその現れである施設管理権)ということになります。

 

●著作者人格権と著作権・隣接権の寿命

 著作物を現実に創作した者を「著作者」と呼び、原則としてこの「著作者」が著作権をもちます(詳しくは前回制作基礎知識参照)。ところが、この著作権は契約などで自由に譲渡することができるため、著作権が譲渡されてしまって、「著作者」と「著作権者」が違う個人・団体になるという事態も起こります。この場合、「著作権者」には著作権(著作財産権)があるのですが、実は「著作者」にも、一定の人格権というものが残ります。これを「著作者人格権」と言って、譲渡も相続も放棄もできない権利だと言われています。

 また、著作権や隣接権には保護期間というものがあり、この期間が過ぎれば誰でも利用できるようになります。このように保護期間の終了した作品を「パブリック・ドメイン」に陥った、などと言います(注7)。なお、アメリカ、イギリス、フランス等の旧連合国や旧連合国民の著作物については、「戦時加算」といって日本での保護期間が延びることがあるため、注意が必要です。

著作権(著作財産権)
公表権 未公表の自分の著作物を公表するかしないか、また、いつ、どのような形で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権 自分の著作物を公表するときに、どういう著作者名を表示するか、あるいは表示しないかを決めることができる権利
同一性保持権 自分の著作物の内容、又は題名を意思に反して勝手に改変されない権利
(名誉・声望保持権) 著作者の名誉等を害する方法で著作物を利用する行為は禁じられる

注7 著作権の場合、原則は著作者の死亡の翌年から50年ですが、無名・変名・団体名義の著作物などは公表の翌年から50年で保護期間が終了します。

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