一般社団法人 地域創造

北海道舞台塾(北海道大会) 「身体文学 イッセー尾形らになろう」

  北海道では、ハードの遅れが幸い(?)して、道内各地の舞台芸術シーンが活性化するという、興味深い現象が起きている。95年に堀達也知事が公約として打ち出した「道立劇場(現在の名称は北海道劇場)」が財政難により凍結されたのに対し、北海道文化財団と道の文化振興課が98年に「北海道舞台塾(以下、舞台塾)」を立ち上げ、ソフトの先行を狙ったのが起爆剤となった。舞台塾の一端にふれるべく、12月22日、前年に引き続き2度目の開催となるワークショップ「身体文学 イッセー尾形らになろう」の現場に出かけてみた。

 指導者は、「イッセー尾形一人芝居」の演出家・森田雄三氏。このワークショップは、森田氏が参加者とやりとりしながら「昔話と犯罪小説」をテーマに5日間で小説を書こうというもの。初日には顧問の先生に誘われた高校演劇部の生徒など、計45名が参加していた。車座になった参加者たちは、森田氏の矢継ぎ早の質問にひたすら答え続ける。
「知ってる昔話を順番に言って」「『舌切り雀』は子どもの虐待の話にも繋がるよね」「昔話の絵本の中で印象に残っている道具を言ってみて」「その道具のディテールはどうなってる? それを現代のものに置き換えると何?」「籠=タクシー。それは意味に捕らわれた連想だよね。世の中で生きていくには意味の世界はとても大切だけど、創作の世界では別のルールになるの」「羽衣=ネグリジェ。これは相当いいねえ」
 みんなでアイデアを出しながら答えているうちに、自分の身体(経験・記憶)に染みついた「昔話」や「犯罪小説」の文体(言葉)が掘り起こされ、ストーリーが生まれてくる。「作家をあがめ奉っても仕方がない。ジャンル(青春小説、時代小説、犯罪小説等)が合えば誰でも小説は書けるというのをみんなで楽しみたい」と森田氏。
 演劇部顧問の泉慈恵さんに初日の感想を聞くと、「創作を自分でやる最初の一歩がなかなか踏み出せない。多感な生徒たちがどうなっていくか、不安と楽しみが半々です」とのことだった。

 舞台塾のプログラムは、ワークショップだけではなく、演劇祭など多岐にわたり、毎年内容をリニューアルしながら1月頃から3月にかけて断続的に実施されている。その最大の特徴は、財団が事務局を担う実行委員会が中心となって企画し、札幌で開催する「北海道大会」と、地域主体で企画・実施し、道の支援を受けて行う「地域大会」の両輪があること。
「そもそも道立劇場は、道内各地で舞台芸術を担う人々のセンターとして構想されたもので、地域での人材育成とネットワークづくりを行う地域大会は不可欠の取り組みでした。当初、地域の反応は鈍かったのですが、第1回北海道大会で誘致した日本劇作家大会に参加された著名な劇作家や演出家が、旭川や函館の地域大会でワークショップを開いてくださったこともあり、理解が得られるようになりました。現在では、協議会や町民劇団を旗揚げしたり、表現教育を導入して町民参加劇をつくったりと、各地で具体的な動きが起こっています。地域を越えた交流も活発になり、お互いを意識しながら地域がそれぞれ目標を立てて進み始めているのが、一番の成果ですね」(北海道文化財団事務局長・山谷吉宏さん)
 北海道劇場のほうは、建設予定地こそJR札幌駅南口の再開発地区で決着したものの、30億円以上の新規施設建設は凍結されたままで、民間資本で劇場を建設して道が借り受ける「PFI方式」の採用を含め、今も模索が続いている。
 それに対し、舞台塾は、99年度に「遊戯祭」(若手舞台人の登竜門)、2000年度に地域の市民参加劇・ミュージカルおよび伝統芸能に札幌公演の機会を提供する「北の元気舞台」「北の伝統芸能」が始まるなど、北海道ブロックを集約するフェスティバルへと成長を続けている。この蓄積がどのような“ネットワーク劇場”に結実するのか、いい便りを待ちたい。

(坪池栄子)

北海道舞台塾北海道大会
○「身体文学 イッセー尾形らになろう」(2001年12月22日~26日)
○宮本亜門講演会(1月20日)
○「邦楽ワークショップ~和楽器とのふれあい」(3月24日)
○「子どもたちの明日のために2002~コミュニティアート北海道」(3月15日~17日)
※イギリスのウェストヨークシャー・プレイハウスによるワークショップやシンポジウム
○「遊戯祭02」(2月9日~11日)
○「北の元気舞台」(浦河町グランドシアター・音楽劇公演:2月10日、ミュージカル「BREATH」ASAHIKAWA公演:2月24日、名寄市民劇場101劇公演:2月24日)
○「北の伝統芸能」(2月17日)
[会場]かでる2.7、琴似日食倉庫コンカリーニョ、ちえりあホール(3会場とも札幌市内)
[主催]北海道舞台塾実行委員会 
[問い合わせ]財団法人北海道文化財団 Tel. 011-272-0501

 

地域創造レター 今月のレポート
      2002.2月号--No.82

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